ReoNa 久々の『ふあんぷらぐど』暑く、長い、歌響く夏の一日
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『ふあんくらぶ presents ReoNa Acoustic Concert Tour “ふあんぷらぐど2025”』8/15(金)COMTEC PORTBASE
地下鉄名港線、港区役所駅を降り、焼けるような日差しを受けながら会場へ向かう。約二年ぶりとなるファンクラブ会員限定ツアー『ふあんくらぶ presents ReoNa Acoustic Concert Tour “ふあんぷらぐど2025”』、最終日のこの日の舞台は、今年新設された愛知COMTEC PORTBASE。新しい2000人収容可能なこの多目的ホールには続々とReoNaのお歌を求めるファンたちが詰めかける。
エド・シーランが響く中、ゆっくりと照明が落ちる。アンプラグド編成の今回のライブはキーボード、バンマスの荒幡亮平と、ギターの山口隆志、そしてReoNaの三人で紡ぐ音楽。幕開けは「GG -Naked-」。原曲の激しいサウンドが、アコースティックな雰囲気に変換され、また違う一面を見せる。どこかブルージーで、ジャズの雰囲気も感じられるアレンジが新しく、心地よい。初手から『ふあんぷらぐど』の魅力が濃厚に提供される。
通常のライブとは違い、カバーも披露されるのが「ふあんぷらぐど」の魅力の一つ。この日はエド・シーランの「The A Team」。18歳のときにカバーした動画を見たことがあるが、しっとりと歌い上げる姿を見て、大人になったのと同時に洋楽が似合う声になったと感じた。成熟という言葉を使ってもおかしくないくらいの年月を、ReoNaはアーティストとして過ごしてきたのだろう。
その後も「メメント・モリ」「ジュブナイル」と展開。ライブでの歌唱回数が決して多くない楽曲も久しぶりに奏でられる、観客は静かにじっくりと耳を傾ける。
「今日は懐かしいお歌も、新しいお歌も、ふあんぷらぐどだからこその、心を込めてお送りします」
そうMCで語るReoNa、やはりいつものライブよりはどこか柔らかく、リラックスした雰囲気。
「懐かしいって、とてもとても優しい感情だと思うんです、遠い日においてきた夏の思い出のように……」
まさにその言葉の通りの一曲「Runaway」。そこから気持ちを込めたバラードが続く。どこかこの時期を思わせるような選曲。「Runaway」のうだるように暑くて長くて、静かな夏の午後を感じる曲調から、「3341よ」「一番星」と夕暮れ、そして世界が碧く染まるような時間の経過すら感じる歌声が響く。なんで夏の追憶は冬よりも遠く、切なく、優しく感じるのだろうか。
「もっとやりたかったなぁ……まだ終わってないけど」
そんな言葉も飛び出るのはやはり客席との相互関係があるからだろう、どんなアーティストでもステージでは少しの緊張を持っていると思うが、受け入れてくれる環境が言葉や歌の端々ににじみ出るのが『ふあんぷらぐど』。
このMCでは、2年半ぶり、三枚目のアルバム『HEART』収録時の話にも言及し、今回始めて海外でレコーディングを実施したことを語ってくれた。ロンドン、アビー・ロード・スタジオ。あのビートルズやピンク・フロイドが使用したロックの中心、バンドマンの聖地でのレコーディングはReoNaにとってもかなりエキサイティングな体験だったようだ。
荒幡からは「今度は連れて行って欲しい」と懇願も。そしてロンドンでの思い出話もしてくれたのだが、それを全部書き記すのは野暮というものだろう。あの日、あの空間で一緒に居た人間たちの思い出にするものがあってもいいと思う。「ふあんくらぶの貴方とも、もっと思い出をつくりたいね」というReoNaの言葉が全てのような気がする。そして始まりの“お歌”「SWEET HURT」で成長と進歩を見せたあとは「あしたはハレルヤ」。
実はこのパートは、その日の天気によって曲が変わる予定だったらしいのだが、このツアーは4回とも晴れたことにより、雨の曲が披露できなかったのだ、そしてこの日は最終日、ReoNaから「今日晴れだったけど、雨だったときの曲をやってもいい?」会場からは少しの笑いと温かい拍手が巻き起こる。
もう一つのカバーとして『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』オープニングテーマソングである「Into the Sky」が歌い届けられる、MCではReoNaからガンダムの話を振られると、荒幡が「僕ガンダム初心者なので、教えて下さい」と返答が。
これを受けたReoNaも緊張しながら、宇宙世紀の説明をしていく。客席からの助け舟もありつつ、なんとか魅力を伝えたこのMCは通常のライブでは絶対にありえない緩さ。緊張と緩和がReoNaのライブの魅力の一つだと思っているのだが、こんな時間があってもいい。それでも一気に壮大な空気感に持っていけるのはその歌唱のポテンシャルがあるからだ。囁くようなブレス多めの雰囲気から、一気に爆発するようなサビまで、シームレスに歌い上げるその実力はここ数年で飛躍的に成長していると思える。
宇宙世紀の壮大な空気感をそのままに新曲「End of Days」へ。ここだけはアコースティックの雰囲気を忘れて、響き渡るコーラスと光の共演に目も心も奪われる。この新曲は大きな会場が映えると思っていたのだが、それは間違いなかった。
そして「Starduster」。ReoNaがデビュー前からカバーしているボカロ楽曲だが、遂に今回音源として収録されることとなった。堀江晶太のアレンジで新生、そのメロディの美しさは変わることはない。たとえいま光が届かなくても、そこにあるという奇跡、絶望の果ての存在意義。美しく伸びるようになったReoNaのロングトーンがその魅力を存分に引き出していく。
ライブも最終盤、このツアーで初披露となった新曲「芥(あくた)」が客席に届けられる。「芥」はちりやゴミという意味の言葉。2025年10月8日(水)発売の3rdアルバム「HEART(ハート)」に収録されるこの曲は、「宇宙から見れば 人間も花も 僕も 星も芥」という言葉が胸に突き刺さる美しい一曲。生きることを俯瞰で見ることによって、絶望の抜け道が見つかるかもしれない。ReoNaのお歌と共にもたらされた小さな願い。この素晴らしい歌唱でアルバムへの期待が高まる中、最後の時間が近づいてくる。
「改めて今日はここに来ることを選んでくれて、お歌受け取ってくれて本当に本当にありがとうございました」
最後の一曲は「ふあんくらぶ」の投票で上位になった「じゃあな」。この日初めてのクラップも巻き起こる中、三人体制のアコースティックとは思えないグルーヴとドライブ感を見せつけてツアーは終幕となった。
開演から終演まであっという間だった。どこか夏の一日を感じさせるようなセットリスト。満点の星空から夜明けと共に去っていくみたいだな、笑顔で深々と頭を下げるReoNaを見てそう思った。自分を支えてくれる大事な人達との一対一のお歌の時間は、成長と進化、そして変わらぬ思いを共有しあう時間となった。いつかまた遠くない何処かで。日にちが経っても、このライブをひと夏の思い出にするのは難しそうだ、まだReoNaのお歌の残響が、胸に残っているから。
レポート・文=加東岳史
セットリスト
『ふあんくらぶ presents ReoNa Acoustic Concert Tour “ふあんぷらぐど2025”』8/15(金)COMTEC PORTBASE
リリース情報
ReoNa 3rdアルバム『HEART(ハート)』
※収録内容・特典は後日発表予定
CD予約:https://reona.lnk.to/HEART_AL
ツアー情報
『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART”』
11/24(月・祝)大阪・フェニーチェ堺 大ホール OPEN 17:00 / START 18:00
12/5(金)福岡・福岡国際会議場 OPEN 18:00 / START 19:00
12/20(土)北海道・サッポロファクトリーホール OPEN 17:00 / START 18:00
12/22(月)東京・昭和女子大学人見記念講堂 OPEN 17:30 / START 18:30
12/27(土)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール OPEN 17:00 / START 18:00
※6歳以上必要
※未就学児童入場不可
■オフィシャル2次先行受付中
受付期間:8月22日(金)21:00〜9月7日(日)23:59
https://eplus.jp/reona/