今秋日本初上陸! 舞台『モンゴル・ハーン』の魅力をアンバサダーの元横綱・白鵬氏が熱弁 プロデューサー&演出家独占インタビューも
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アンバサダーを務める 白鵬翔氏(写真右)らが舞台「モンゴル・ハーン」をPRした(翡翠撮影)
古代モンゴル帝国3000年の歴史を背景に、愛と野望、王位継承を巡る壮大な戦いを描いた舞台『モンゴル・ハーン』が東京と愛知で2025年10月に上演される。日本モンゴル友好記念事業として企画された同舞台は、モンゴル出身で元横綱の白鵬翔氏が公式アンバサダーを務めることが決定。この度、都内で行われた取材会で白鵬氏は「舞台を見て、本当に感動しました。10月10日が待ち遠しい、ワクワクしています」とPRした。
SPICEでは白鵬氏と演出を担当したヒーロー・バートル氏と、正妃役で出演するプロデューサー兼俳優のバイラ・ベラ氏が行ったトークショーの様子をレポートするほか、ヒーロー氏とバイラ氏に行った単独インタビューで見どころを聞いた。
『The Mongol Khan』Photo:Katja Ogrin
舞台はモンゴル人の作家、バブー・ルハグヴァスレン氏の戯曲『印章のない国家』(1988年)が原作。3000年前のモンゴル帝国を舞台に2人の王妃が生んだ王子の一方が王の血を引かぬ子供だったことから、王位継承を巡る争いに発展していく。芝居に加えて、その人物の心情を可視化するために数十名の演者が、ダンス、殺陣、パペットや映像、フライング演出などを展開。その斬新な手法が話題を集めている。2022年にモンゴルで初演されると200回近いロングランを達成。イギリス・ロンドン、シンガポールを巡り、今秋日本で初上演されることが決まった。
トークショーではまず白鵬が「本日はこうしてこの場に立っていることをうれしく思います」と感謝。「『モンゴル・ハーン』はモンゴルの歴史や哲学が詰まった作品です。モンゴルと日本は相撲やスポーツだけでなく、精神性や文化的な価値観にも深い繋がりがあります。ぜひ会場にお越しいただき、モンゴルの壮大な歴史、世界を感じてほしい。この作品を通じて両国の絆が深まることを願っています」とあいさつした。
演出を手がけたヒーロー氏はこだわった点について「モンゴルに昔からある楽器を使った伝統的な演奏、ダンス、サーカス、殺陣やアクションなどを取り込んでいます。昔からある演劇的な要素を全て含んだ、分かりやすい舞台にしています」と説明。コロナ禍に制作した作品には「自分だけ生きていくということではなくて、周囲と共に生きる。自然と共に生きるというメッセージを込めました。この思いを世界中に発信できる作品になったと思います」と胸を張った。また今年7月に天皇皇后両陛下がモンゴルを訪問したことについても触れ「日本との友好関係がもっと深くなることを祈っています」と願っていた。
真っ赤な民族衣装を着用したバイラ氏は「2000年前に、当時のフン族が使っていたものが中央アジアで発見されて、それを基にモンゴルのデザイナーが新しく作り直したものです。公演を観た方々は『生きた博物館』として当時の様子や衣装を学ぶこともできると思います」と呼びかけていた。
『The Mongol Khan』Photo:Katja Ogrin
『The Mongol Khan』Photo:Katja Ogrin
第69代横綱として日本の相撲界を盛り上げた白鵬氏には「舞台のハーン(王)に共感できる部分は?」という問いかけも。白鵬氏は「新白鵬時代、朝青龍さんとの2横綱時代、ひとり横綱時代、4横綱時代、新入りとの戦いという5つの時代で私は相撲を取り続けたと思っています。何人横綱がいても、横綱の重責を1人で負うという部分は変わらないこと。それがハーンと似ている部分だと思います」と当時の苦労を明かした。
横綱として土俵に上がっていた時代は「朝稽古などのトレーニングで口が切れていないのに血の味がしたんです。どうして血の味がするのか分からなくて、サッカー日本代表のドクターに聞いたら『人間は自分のキャパシティを越えると肺の毛細血管が切れることによって口の中に血の味がする』と教えてもらいました。〝血のにじむような努力〟と言いますが、言葉の通り本当に血のにじむ稽古をしていた。だからこそ結果が出たのだと思います。舞台前は数秒で終わってしまいますが裏は本当に大変なものですからね。引退した今は、食事がおいしいし、明日の朝起きて稽古がないことがうれしい」と満面の笑顔を見せると会場から笑いが起こっていた。
ヒーロー氏とバイラ氏に独占インタビュー!
インタビューに答えた(左から)プロデューサー兼出演者のバイラ・ベラ氏、プロジェクト発起人で演出家のヒーロー・バートル氏
取材会後にはヒーロー氏と、バイラ氏に単独取材を実施した。
正妃ツェツェルを演じるバイラ氏は「感情の振り幅が大きい正妃役は、精神的に大変な役ですが『女優として乗り越えるべき作品』と位置づけ役と向き合っている」と語った。そんなバイラ氏に対し、何百回と舞台に立つ姿を見ているヒーロー氏は「役を演じているのではなく、その時代を生きているように見える」と絶賛。バイラ氏は「衣装を身につけて舞台に立つと〝ゾーン〟に入ってしまうんです。観客の皆さんには私を通じて一緒に過去のモンゴルにトリップしてもらえたら」と笑った。
舞台は全編モンゴル語での上演。演劇の本場、ロンドン・ウエストエンドでの公演についてヒーロー氏は「演劇好きの皆さんに世界で通用する作品と認めてもらえた」と自信。シンガポールでは「マレーシアなど近隣の国からもたくさんの国の人が見に来てくれました。アジアの方々には特にサーカス部分を喜んでもらえたようです」と観客が見るポイントが違ったことに気がついたことも発見だったそう。10月に東京と名古屋で行う日本公演は「本当に楽しみ」と口を揃えた。
『The Mongol Khan』Photo:Katja Ogrin
日本での上演は今回が初めて。日本人は感情をあまり面に出さないが「素晴らしかった!」と伝えたい時は、拍手などのほかに「ブラボー!」など声を掛けても良いのだろうか――?
問いかけると、ヒーロー氏は「ありがとう」と日本語で前置きをし、称賛や感謝の意味で使われる言葉として「バヤルララー」を教えてくれた。ほかにも万歳の意味として「ウライ!」とアンコールの意味を持つ「ダヒン!!」をレクチャー。「たくさんの人に喜んでもらえたらうれしい。是非、劇場にお越しください」と呼びかけた。
またヒーロー氏は公演をきっかけにモンゴルに興味を持った人に向け、オススメの場所として「大草原と美しい山脈、そして満天の星空」をあげてくれた。バイラ氏も「『モンゴル・ハーン』を通じてモンゴルへの理解を深めてくれたらうれしいです。モンゴルの食べ物、場所など伝えたことはたくさんあるので、興味を持っていただけたら是非、検索をして知るところから初めてほしい」と笑顔を見せた。
『モンゴル・ハーン』東京公演は2025年10月10日(金)~20日(月)に、東京国際フォーラム ホールCで。名古屋公演は10月24日(金)~26日(日)に愛知県芸術劇場 大ホールで開催される。
『The Mongol Khan』Photo:Katja Ogrin
The Mongol Khan(モンゴル・ハーン)30秒スポット
取材・文・撮影=翡翠