bokula.『RUSH BALL 2025』クイックレポートーー「こっからは俺たちらしさで戦います」歴戦の猛者と戦うために手に取った優しさという武器
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bokula. 撮影=松本いづみ
bokula.『RUSH BALL 2025』クイックレポート
『RUSH BALL 2023』のオープニングアクトから、ATMCのトリに抜擢されたbokula.は、「SiMで帰ろうとしてる人たち、おいで!」「SiMで『RUSH BALL』締めてる場合ちゃうぞ!」と「涙ばっかのヒロインさん」でロケットスタート。かじ(Gt)のギターとさとぴー(Ba)のプレイが鼓膜を揺らす中、時として「おいでおいで!」とキュートに、またある折には「MAHさん、すいません。こっちで大トリもらいます!」「帰る人たち、気をつけてね。またメインで待ってるわ」なんて大胆不敵に、オーディエンスを取り込んでいく。
ソフトな招待と誤魔化しを一切知らない硬派な表明を口にするえい(Gt.Vo)は、bokula.というバンドの骨格をダイレクトに表象していると言えよう。「君たち、この夏に迷惑してんでしょ?」とドロップした「夏の迷惑」でふじいしゅんすけ(Dr)が演奏するポップな四つ打ちを、ザクザクのギターとえいの歌声がガツンと轟いた「ライトメイカー」でパンクを根底に流したギターロックを、「遊ぼうぜ」と誘った「満月じゃん。」でカオスめいたフロアを建設するツービートをそれぞれ炸裂させたように、あらゆるジャンルを飛び越え、自らの味に変えていくのが彼らの戦術なのだ。
こうしたジャンルミックスなbokula.のミュージックを語る上で、決して忘れてはならないもう一つのシグネチャーがある。人と人と繋げ、包み込む温もりである。それはライブ終盤、えいが語ったこんな言葉に深く宿っていた。
「正直、あっちのステージには100レベルの魔王がゴロゴロおるから、24レベルのまだ駆け出しの勇者が狩りに行っても、歯が立たんと思ってました。だけど、今日はこのステージのトリです。俺たちは音楽を優しさで包めるようなバンドなので、こっからは俺たちらしさで戦います」
名だたる猛者たちと戦うため、「君の愛するミュージックがあったから、この場所へ来れたんだよ」と「愛すべきミュージック」が捧げられる。<悲しい時に歌え 君が信じてる愛すべきミュージック><嬉しい時に歌え 忘れない為に口ずさむミュージック 誰にも奪えない形じゃない宝物>と、とびきりの音楽愛を爆発させるこの賛歌に乗り、観客は飛んで、跳ねて、砂ぼこりを被って、まだまだ汗を輝かせていく。そんな絶景が目の前に広がっているのだから、メンバーもこれ以上ないほどの笑顔だ。
クライマックスでは「初めましてでも、名前を聞いたことがある人も、いつも最前におる愛のある人も、全ての人にとって優しいバンドでありたいです」と「愛してやまない一生を.」を投入。「そっちに任せていいかい?」の問いかけにオーディエンスが特大のチャントで応えると、4人はもはや上手い下手なんて関係ないほどの魂の叫びで打ち返す。「愛すべきミュージック」から「愛してやまない一生を.」という人生を称える讃美歌への拡張を経て、共に生きることを、音楽でまた出会うことを伝えたbokula.。ラストは3度目の「満月じゃん。」をねじ込んで、『RUSH BALL 2025』のエンディングを鮮やかに彩った。
取材・文=横堀つばさ 撮影=松本いづみ
セットリスト
2.夏の迷惑
3.ライトメイカー
4.満月じゃん。
5.満月じゃん。(2回目)
6.愛すべきミュージック
7.愛してやまない一生を.
8.満月じゃん。(3回目)