大人の文化祭として知られる『オハラ☆ブレイク』の今年のテーマはRCサクセション&忌野清志郎! プロデューサーのGIP・菅真良氏に見どころを聞いた

12:00
インタビュー
音楽

「オハラ☆ブレイク'24 愛でぬりつぶせ」より

画像を全て表示(5件)

2015年の8月の第一週末〜第二週末に、福島県・猪苗代湖畔の天神浜で、音楽、舞台、美術、写真、小説、ファッション、食などのカルチャーミックス・フェスティバル、言わば「大人の文化祭」としてスタートした『オハラ☆ブレイク』。その後、8月第一週末の3日間開催に変更されたり、時期が秋に移ったりしつつ継続してきて、コロナ禍での規制がなくなった2023年からは、ひとつのテーマを設けて、1日開催する、という形になっている。
2025年は、忌野清志郎とRCサクセションのデビュー55周年を記念して、「清志郎さんの世界一色での開催」(公式サイトより)で、タイトルは『オハラ☆ブレイク’25 A GO GO 愛し合ってるかい』。開催日の9月27日は35年前に、RCサクセションの最後のアルバム『Baby a Go Go』がリリースされた日である。ステージはふたつで、RC&清志郎関連のセッションは、それぞれ別の出演者で二回催される。二回目の方には、仲井戸麗市や梅津和時も出演。その他の出演アーティストも、全員がRCもしくは忌野清志郎の楽曲のカバーを披露するという。これまでの道程について、そして今年の開催について、プロデューサーのGIP・菅真良氏に訊いた。

──『オハラ☆ブレイク』が、今のような方向に向かい始めたのはどうしてだったんでしょう?

2015年に始めて、いろいろ紆余曲折あって。2017年から3日間の開催という形に落ち着いて、イベントとしては軌道に乗りつつあったんですよね。宮本(浩次)さんが大トリで出てくださった2019年は売り切れたんです。それで完売はしたものの、始める時の構想から、ちょっとずれてきているな、という違和感があって。

──音楽とアートを軸にした「大人の文化祭」という?

そう、本当は「大人の文化祭」をやりたかったのに、チルな音楽フェスみたいな感じになっていて。

──全然いいじゃないですか(笑)。

でもやりたいのは、メッセージを受け取れる1日というか。いまの湖畔で美術と音楽を楽しめるイベント構成は、2015年に『オハラ☆ブレイク』を立ち上げる前の年に奈良美智さんが提案してくれたんですよね。海外の湖の辺りで、美術の展示の中で音楽を楽しめる芸術祭の写真を、奈良さんが見せてくださいました。だから、そもそもの入口は美術と音楽の融合がテーマだったんです。タイトルの『オハラ』と『ブレイク』の間に『☆』が入っているのも、奈良さんのアイデアです。音楽コンサートじゃないものを軸に置きたい、という。それで、2019年が終わった時、2020年はどうしよう、思い切って1日全部演劇にしようかとか、いろいろ考えていたんですけど、その矢先にコロナ禍になっちゃって。

──ああ、そうでしたよね。

それまで積み上げてきた動員とかも一回ゼロになりました。そこからのやり直しを考えた時に、たとえば、美術家の人が展覧会の時にテーマを設けたり、ミュージシャンがツアーをやる時に、アルバムの世界観を表したり。そういうことのイベント版、みたいなところに焦点を当てたら、何か見つかるかもな、と思って。

──それで、コロナ禍の規制がなくなった2023年から、開催を1日にして、サブタイトルが付くようなテーマを設け始めたんですね。

そうです。2023年は『ザ・カンパイミュージック』という。あの年にひとつ主役に置こうと思ったのが、コロナで、エンタメ業界と同じように飲食業界や第一次産業で打撃があった。その回復期にやる、ということで、どういうのが会津っぽいかな、と考えた時に、「日本酒だ」って思ったんですよ。その数年前の『オハラ☆ブレイク』で、日本酒の総合コーディネートをやってくださった山内聖子さんという方がいて。日本酒専門のライターさんで、酒蔵とか、日本酒業界の人、全部友達という不思議な人なんですけど。その人に相談したら、レシピを学んで自分で作る内容のBSフジの『日本一ふつうで美味しい植野食堂』という番組(元『dancyu』編集長の植野広生の番組)の話になって。山内さんに「植野さんは知り合いなんですか?」って訊いたら「よく知ってます」「じゃあ紹介してください」と。

──面識があったわけではなかったんですね。

それで初めて知り合って。おふたりに、音楽と酒と食べ物で、いいアイデアありますか?って言ったら、植野さんが「コロナ禍の時ってみんな乾杯できなかったんで、乾杯がいいんじゃないの?」と。それで、音楽の方では、さんざん世話になったサニーデイ・サービスが30周年だというので、それも盛り込もうと。あと、この年は、初めてアイドルが出演したんですよね。

──Negiccoが出ていますよね。

NHKの『Dearにっぽん』という番組で、Negiccoが特集されているのを観て(『光の中で、わたしたちは〜新潟 アイドル3人の決意〜』2023年8月12日放送)。3人ともお子さんがいて、とにかく音楽ファンで、曲を書いている作家さんが、ナイスセンスで。

──ああ、田島貴男とか、小西康陽とか。

その番組がめちゃめちゃ良かったんで、公式サイトのインフォメーションにメールを送ったんですよ。「イベントに出てくれませんか」と。そしたら30分ぐらいで「いいですよ」って返事が来て。Negiccoって地元新潟のネギをPRする人たちなので、そういう意味でも、この年のテーマに合うな、というのもあって。

──その年を開催してみての手応えは?

その年は動員はそれほど爆発的に増えはしなかったんですけど、お客さんの表情は良かったんですよね。ただステージにかぶりつく、音楽フェスの感じではなくて、リゾート地みたいな空気が出ていて。ただ、日本酒をテーマにすると、運営は大変だというのは、やってみてわかりましたけど。

──というのは?

酔っぱらいがすごく増えるという(笑)。あと、植野さんのアイデアで、翌朝にモーニングタイムというのを設けて、関取花と日食なつこに出てもらって、最後にみんなで味噌汁とおにぎりを食べる、というのもやったんですけど。その時に、地元の子たちが提案してくれたのが、会津にきな粉をまぶしたおにぎりがあるんですよ。それがめちゃめちゃうまいんです。そういえば僕も、小学校の時に食わされたなと思い出したりして。夜通しイベントを開催した後の朝の閉会の挨拶の時は、奈良美智さんも一緒にいてくださったことが嬉しかったです。

「オハラ☆ブレイク'24 愛でぬりつぶせ」より

■2024年はチバユウスケのトリビュート・イベントとして開催

──それで2024年は『愛でぬりつぶせ』というタイトルで、チバユウスケのトリビュート・イベントとして開催した。

はい。2022年に、MIDNIGHT BANKROBBERSで出ていただいた時に、打ち上げでチバさんとちょっと話したんですよね。翌年はMIDNIGHT BANKROBBERSとthe LOW-ATUSでセッションをやろうか、みたいな話も上がったんですけど、結局できなくなって。チバさんと会話をした最後がそれになった。ちゃんとお別れができないままだったので、完全にそれをテーマにして、1日だけの開催にしたんです。

──この年はが完売したんですよね。

そうですね。当日も目的が一緒というか。出る人にとっても観に来た人にとってもとても大事な日だったんじゃないかなと思う。当日は参加できなくて、あとで放送で観た人たちにとっても……チバさんの存在とか、チバさんの作ってきた音楽との向き合い方とかが、今までとは違って見えるようになったんじゃないかな、って気がするんですよね。最初はThe Birthdayも出るかどうかわかんなかったんですけど。

──結局フジイケンジは出ていないですしね。

先に別のスケジュールが入っていたんですよね。キュウさん(クハラカズユキ)と(ヒライ)ハルキさんは出てくれたんですが。そのおふたりが入ったセッションの企画をまとめる上でキモだったのは(古市)コータローさんで。最初、コータローさんに相談したんです。どうやっていくのがいいのか、とか。たとえばオープニングで、コータローさんとウエノ(コウジ)さんとキュウさんで、「CISCO」をやったんですけど、その発案はコータローさんだったりとか。The Birthdayもこのあと続けるのかどうかも決まっていなかったみたいでしたけど。

──今もライブをやっていますよね。この日が契機になったんですかね。

この日だけじゃないと思うんですけど、きっかけのひとつにはなったんじゃないかな、と思います。

「オハラ☆ブレイク'24 愛でぬりつぶせ」より

■やりたいことが毎年ちゃんとある、という方が大事

──そんな2024年を経て2025年をどうしようと思っていましたか?

僕の中では一回休むのか、一区切りにして違う形を模索するか悩んでいました。ライブじゃなくて、街の美術館で展示だけをやるとか、そういうことも考えていました。でも、2024年の開催が終わって、撤収をしている時にお客さんに声をかけられて。今回のチバさんの企画みたいな、こういうことを続けていってほしい、と言われたんです。その話を聞いた時に、じゃあ自分がこういう企画を進める中での原点ってなんだろう、と考えたら、RCサクセション、忌野清志郎というのは、やっぱりでかいな、と思って。それで『愛し合ってるかい』というサブタイトルで、トリビュート・イベントをやろう、と思いました。ただし、チャボさん(仲井戸麗市)がOKって言ってくれたらというのを、条件にしました。

──トリビュート・セッションだけじゃなくて、普通に出演される人もいますよね。

はい。チャボさんありきだなと思ってたんで、チャボさんのお返事があるまでは、前に進めるのはどうかな、と思いつつ。でも、それより先に、なんとなく出演を相談していた人たちはいて。結果、チャボさんのOKをいただけたので、その人たちに、「RCもしくは清志郎さんの曲をカバーしてもらう、というのが約束事になっても大丈夫でしょうか?」と相談したら、全員がOKだった。それで、ステージが一個だと足りなくなって、2個作って昼からやろう、ということになりました。

──昼のセッションには、若い世代のミュージシャンも入っていますよね。

そうですね、jo0jiくんとか。jo0jiくんは、前にマネージャーさんに、梅津(和時)さんの連絡先を訊かれたことがありました。自分の作品に梅津さんのサックスを入れたかったそうなんです。親の影響で清志郎さんと中島みゆきさんが大好きなんですよね。なので、誘ったらたぶん出てくれるだろうな、と思って。あと、途中で誘おうと思ったのは、清水ミチコさんです。3月に仙台で、弊社がお願いしたライブの仕事があったんですよ(3月19日仙台電力ホール『清水ミチコ 仙台いのちの電話チャリティ公演』)。その日の楽屋で、だったかな、「猪苗代湖でこういうのをやろうと思ってるんです」って相談したら、即「出ます」と言ってくれて。

──あと、深夜の「CAMPERS ONLY」の時間もユニークですよね。21:00からの「朗読:忌野清志郎詩集『エリーゼのために』」というのは?

僕がもともと「君が僕を知ってる」の歌詞が好きで、誰か朗読してくれないかな、と前々から思っていたことがきっかけで。今回のこの企画だったら、誰かやってくれるかなと。

──「朗読者:箭内道彦、奈良美智/音楽:高野勲、フジイケンジ」と、タイムテーブルにありますが、「音楽」というのは?

朗読に合いそうな伴奏をしてもらう、ってことなんですよね。今年のフジロックに僕は土曜から行ったんですけど、前日に会津若松で風街亭っていう老舗のフォーク・ライブハウスのオーナーと話してた時に、本を読み上げながら後ろで音楽を演奏する朗読劇の話になって。それで『オハラ☆ブレイク』でもただ朗読してもらうだけじゃない方がいいな、と思いました。で、たぶん勲さんはフジロックにいるな、と。

──出演がなくてもいますよね。

それで勲さんに「フジロックにいます?」ってメールしたら、「いるよ」って返ってきて。翌日の朝にプリンスホテルのロビーで相談したんです。そしたら「自分以外にも誰かいた方がいいな」って、フジケンさんの名前が出て、オファーしたらやってくれると。あと、朗読者も、箭内さんと奈良さんしか発表してませんが、他の方々も多数出演します。

──楽しみです。しかし、2025年は休む、もしくは終わるかも、と考えていたということは、2026年もどうなるかわからない?

未定ですね。やらないかもしれないし、やるとしても、違う形に変わるかもしれない。必ずやると決めるんじゃなくて、やりたいことが毎年ちゃんとある、という方が大事かな、と思っていて。やりたいことがないんだったらやんなくていいかな、と。だから今年ぜひ来てもらえれば、と思いますね。来年どうなるか、わからないので。

取材・文=兵庫慎司 撮影=石井麻木

「オハラ☆ブレイク'24 愛でぬりつぶせ」より

 

イベント情報

「オハラ☆ブレイク'25 A GO GO 愛し合ってるかい」
9月27日(土)
開場10:30〜 終演予定20:00
CAMPERS ONLY 21:00~24:00
※ステージの観覧にはキャンプサイト券の購入が必要です
猪苗代湖畔 天神浜(福島県耶麻郡猪苗代町大字中小松字四百刈乙)
http://www.tenjinhama.com/
 
出演者
忌野清志郎 / アナログナイト / 梅津和時 / 奥田民生 / 片平里菜 / 河村“カースケ”智康 / 吉川晃司 / 釘屋玄(暴動クラブ)/ GLIM SPANKY(Acoustic Set) / 甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ) / 斎藤有太 / The Birthday(クハラカズユキ、ヒライハルキ、フジイケンジ) / 志磨遼平(ドレスコーズ)/ 清水ミチコ / jo0ji / 鈴木淳 / 高野勲 / T字路s / TOSHI-LOW(BRAHMAN / OAU)/ とまとくらぶ(山田将司[THE BACK HORN]、村松拓[Nothing's Carved In Stone、ABSTRACT MASH]) / 仲井戸麗市 / ニセ☆忌野清志郎(ワタナベイビー)/ のん / 古市健太 / 古市コータロー(THE COLLECTORS) / 湯川トーベン / and more
詳細はオフィシャルサイトにて
https://oharabreak.com/
  • イープラス
  • オハラ☆ブレイク
  • 大人の文化祭として知られる『オハラ☆ブレイク』の今年のテーマはRCサクセション&忌野清志郎! プロデューサーのGIP・菅真良氏に見どころを聞いた