神戸セーラーボーイズと三原大樹が魅せる、心に響く青春会話劇『Boys☆Act ~maple『あの春を迎えに』から一瞬たりとも目が離せない

2025.10.18
レポート
舞台

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Boys☆Act ~maple『あの春を迎えに』 2025.10.17(FRI)〜10.31(FRI) 神戸三宮シアター・エートー

10月17日(金)、神戸を拠点に活動する全員10代の演劇ユニット「神戸セーラーボーイズ」(以下、神戸セラボ)の最新公演『神戸セーラーボーイズ Boys☆Act ~maple「あの春を迎えに」』が、神戸三宮シアター・エートーで開幕した。

本公演は「Boys☆Act」シリーズの第三弾。脚本は関西出身のクリエイター・タカイアキフミ(TAAC)が神戸セラボのために書き下ろした新作オリジナルストーリー。音楽は大石憲一郎が、演出は前回公演『Assort Box 2025』の「小学生コント」で脚本・演出を担当した佐野大樹(WBB)が手がけた。

キャストは神戸セラボから7名、ゲスト2名が登場。髙山晴澄、山本歩夢、細見奏仁、石原月斗、三原大樹(ゲスト)からなる「teamフラット」と、津山晄士朗、大熊蒼空、崎元リスト、石原月斗、宮脇優(ゲスト)からなる「teamシャープ」のダブルキャストで上演する。普段の神戸セラボとはひと味違う、シリアスで赤裸々で、心に深く残る青春劇に仕上がっている。本記事では、「teamフラット」のゲネプロの模様をお届けする。

舞台は廃校が決まった小学校。佐伯航(髙山晴澄)、枝野栄作(山本歩夢)、今泉時生(細見奏仁)、大谷瞬(石原月斗)、宇都宮麟太郎(三原大樹)はこの学校の最後の卒業生だった。しかし、2020年に猛威を振るった新型コロナウイルスの影響で卒業式が中止になってしまう。あれから5年半、いよいよ思い出の詰まった校舎が取り壊されることに。航は思う。「置いてきてしまった、あの春を迎えに行きたい」。果たして5人は「あの春」を取り戻せるのかーー。

佐伯航(髙山晴澄)

物語は、高校生に成長した航が、廃校となった学び舎を訪れるシーンからスタート。懐かしそうに教室を見つめる航。学習椅子に腰を掛けると、楽しかった思い出が蘇る。そして教室の片隅に見つけたのは、埋められるはずだったタイムカプセル。中には当時の自分が書いたメッセージ。手紙を開き「みんなと卒業式がしたかった」と呟くと、まさかの5年半前へとタイムリープ!

小学生の栄作、時生、瞬、麟太郎に会って戸惑う航だが、「卒業式をやり直せるかもしれない」と思い立ち、過去を変えようと奮闘する。だが過去を変えると「今」が変わる。それが及ぼすのは、思いもよらぬ結果だったーー。

「今」と「5年半前」を行き来しながら、目まぐるしく展開するタイムリープ会話劇。キービジュアルから想像されるあたたかなイメージだけではない、リアルな心の揺れ動きやヒリヒリした人間模様も描かれる。

枝野栄作(山本歩夢)、佐伯航(髙山晴澄)

今回、キャストは小学生時代と高校生時代の両方を演じる。セリフには、緊急事態宣言や東京オリンピックといった当時の世相を表す単語も多く登場し、観る者の記憶も呼び起こされる。無邪気に小学生を演じていた神戸セラボのメンバーだが、彼らは実際にコロナ禍で学校生活を過ごした世代。だからこそ共感できる部分も多々あったのではないだろうか。

佐伯航(髙山晴澄)

主役の航を演じた髙山は、ジェットコースターのように上下する喜怒哀楽の感情を、繊細かつ解像度高く表現した。「卒業式をやりたい」と願うがゆえに、予想外の方向へと転がる未来。その事実と向き合う航の心の変化を、丁寧に演じきった。4月から神戸セラボのリーダーになった責任感や持ち前の向上心の高さも相まってか、ステージから放たれる存在感はますます磨かれていた。

宇都宮麟太郎(三原大樹)、大谷瞬(石原月斗)、宇都宮麟太郎(三原大樹)

大谷瞬(石原月斗)

今回唯一シングルキャストとして全公演に出演する石原は、夢に挫折した不安定な瞬を熱演。素直になれずにこじらせていた麟太郎との友情や葛藤を鮮やかにうつし出した。石原は昨年、シアター・エートーで行われたBoys☆Act 〜maple『果てなき夢のその先へ』(2024年9 〜10月)でもメインキャストとして48公演を走り切った。あれから1年、役者としての実力を高めてきた努力が見事に結実していた。

今泉時生(細見奏仁)

細見は、ムードメーカーで優しく、思いやりもあるがお調子者の時生を好演。彼は9月にアンサンブルとしてミュージカル『「Fate/Zero」~A Hero of Justice』の舞台に立った。SPICEに掲載された事前インタビューでも「会話劇の基盤を築けた」と語っていたが、テンポの良い会話だけでなく、自然な振る舞いや表情管理のスキルも格段に上がっていた。

枝野栄作(山本歩夢)

ポテンシャルを感じたのは、内気な栄作を演じた山本だ。4月に神戸セラボに加入してわずか半年ながら、フレッシュな空気はそのままに、堂々たる佇まいで演技をし、歌声を響かせた。既に完成度は高いが、これからの伸び代に期待しかない。

大谷瞬(石原月斗)、宇都宮麟太郎(三原大樹)

宇都宮麟太郎(三原大樹)

ゲストの三原はナチュラルに輪の中に溶け込み、落ち着いた麟太郎の役柄を演じきっていた。最初は一触即発だった関係の瞬と打ち解けていく様子も、リアルで息を飲んだ。

今回はいつもの二部制ではなく、お芝居パートが多めに構成されている。観客は、物語が進むにつれて徐々に明らかになっていく事象を、まるで同級生の一員のように、はたまた家族のように見守っていくだろう。5人の想いやストーリーにぐっと惹き込まれて、一瞬たりとも目が離せなかった。最後に5人がみせる笑顔と絆にたどり着く頃にはきっと、涙を誘われるはずだ。

後半では、学生服に着替えたメンバーが「見上げてごらん夜の星を」と、神戸セラボの代表曲「ボクラカラー」を合唱バージョンで披露。芝居パートでも合唱曲「旅立ちの日に」「大切なもの」を歌い上げ、力強くて美しいハーモニーを響かせた。お芝居だけでなく、歌唱面でもしっかりと成長を見せた、teamフラットだった。

取材・文=久保田瑛理 撮影=福家信哉

公演情報

神戸セーラーボーイズ Boys☆Act ~maple『あの春を迎えに』
【日程・会場】2025年10月17日(金)~10月31日(金)神戸三宮シアター・エートー

【脚本】タカイアキフミ(TAAC)
【演出】佐野大樹(WBB)

【音楽】大石憲一郎
【美術】乘峯雅寛
【音響】中島 聡
【照明】山口 星
【衣裳】川島加菜果
【ヘアメイク】小屋敷裕子
【歌唱指導】今泉りえ
【演出助手】矢本翼子 千代麻央
【舞台監督】松澤紀昭
【技術監督】寅川英司

【宣伝美術】西本恵理子
【宣伝写真】宮坂浩見

【キャスト】
《teamフラット》
佐伯 航:髙山晴澄
枝野栄作:山本歩夢
今泉時生:細見奏仁
大谷 瞬:石原月斗
宇都宮麟太郎:三原大樹(ゲスト)

《teamシャープ》
佐伯 航:津山晄士朗
枝野栄作:大熊蒼空
今泉時生:崎元リスト
大谷 瞬:石原月斗
宇都宮麟太郎:宮脇 優(ゲスト)

※髙山晴澄の<たか>ははしごだかが正式表記
※石原月斗はシングルキャストとして両チームの公演に出演いたします。

価格】5,800円(全席指定/税込)
 
【公演に関するお問い合わせ】ネルケプランニング https://www.nelke.co.jp/contact/
【公演公式サイト】https://kobesailorboys.com/stage/ba-maple2-anoharu
【神戸セーラーボーイズ公式サイト】https://kobesailorboys.com/
【神戸セーラーボーイズ SNS】https://lit.link/kobesailorboys
【公演ハッシュタグ】#神戸セラボ #あのはる
(C)神戸セーラーボーイズ製作委員会
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