宝生流能楽師 田崎隆三と田崎甫による『二人の会』今年も開催 オフィシャルインタビューが到着
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田崎隆三、田崎甫
 宝生流能楽師 田崎隆三と田崎甫による『二人の会』が2025年11月9日(日) 宝生能楽堂にて開催される。今回は、舞台生活70周年を迎える隆三氏が「大原御幸」のシテを勤め、甫氏は「是界」を、また、狂言の大曲「武悪」などが上演される、特別な会となっている。隆三氏、甫氏に会への思いや演目について聞いた、オフィシャルインタビューが到着した。
――田崎隆三様、舞台生活70周年おめでとうございます。 お能を始められた頃のことや、今までに印象に残っていることなど、お話しいただけますでしょうか。
能をはじめたのは、満6歳。当時は右も左もわからず、ただ先生から教えられた通り、お稽古をしていただけです。自分が能楽をやっているということもわからないので、当然演目の内容(物語)を知るはずもなく、自分の発声する謡(言葉)の直前の謡だけに注意して、この言葉が聞こえたら次は自分が謡う番だ……という覚え方でした。
田崎隆三 過去の舞台より 「木賊」(撮影:三上文規)
――今回の演目、「大原御幸」について。勤められる上で心がけていること、大切にされていることなど教えていただけますでしょうか。
20年前に初演を勤めて以来の再演です。
 今回の「大原御幸」では初演よりも時間をかけて望んでいます。建礼門院の心情を、能楽に与えられた表現方法を逸脱せずに、しかしより強く、より大きくだしたいと思う。
――改めて、これからも続く舞台生活に思うこと、目指してらっしゃることなど、ありますでしょうか。
与えられた役を着実に演じ、後に続く者の手本となる様にしたい。
_田崎隆三 過去の舞台より(撮影:三上文規)
――ありがとうございました。このたびは本当におめでとうございます。次に、田崎甫様にお話しを伺います。 今回で『二人の会』も4回目を迎えられますが、今までの思い出や、毎回心がけてらっしゃることはありますでしょうか?
舞台の本質的な部分とは異なりますが、全体のプログラムの総合時間はかなり気にしています。簡単に言えば、長すぎるプログラムは飽きてしまうと、そう考えています。
 しかし今回は、全く違います。とてもとても長い、プログラムなります笑
 これはただひとつ、田崎隆三の芸歴を記念する、お祝い会だからです。
 そして大事なことは、このことはお客様には基本的に関係がないということです。
 演目的に、短く簡潔に、現代に見合ったスピード感に、とはならない演目が「大原御幸」です。
 であればもはや、時間のことは気にせず、この番組を見たら能を見た、と言えるくらい濃い内容にしようと思いました。
 狂言も非常に長い、また能の会では珍しい「武悪」をだしていただきました。
――「是界」はどのような内容でしょうか? 見所を教えてください。
ジャンルとしては「天狗物」(てんぐもの)と呼ばれ、その名の通り天狗を主人公としています。
 前半の舞台である京都・愛宕山は天狗の住む山として有名です。
 後半では天狗と日本の僧が戦うのですが、写実的な天狗特有の動きが魅力です。
 内容もわかりやすく視覚的にも楽しめる作品になっております。
田崎甫 過去の舞台より「葵上」(撮影:三上文規 )
――お能を続けてらっしゃる中で大切にされていることはありますでしょうか? また、今回初めてお能をご覧になる方へのアドバイスなどありますでしょうか。
能という芸能は、あまりに深く、様々な視点から楽しめます。
 豪華絢爛な能面・能装束。独特のリズムによるお囃子の音色。候調で語られるセリフ。
 今回のプログラムは、能を楽しくわかりやすく感じるものではありません。しかしこのプログラムをご覧いただければ、能楽という芸能が保持する表現方法、芸能としての性質、つまり私は能という芸能を見た!と言い切れるほどに濃い内容となっております。
――ありがとうございました。ご盛会をお祈り申し上げます。
公演情報
会場:宝生能楽堂