26年1月に歌舞伎座にて上演の『壽 初春大歌舞伎』 初春を寿ぐ華やかなラインナップが発表
『壽 初春大歌舞伎』
2026年1月に歌舞伎座にて上演される、『壽 初春大歌舞伎(ことぶき はつはるおおかぶき)』の演目と主な配役が発表された。
古典の名作が並び、午年の幕開きを飾る歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』は昼夜にわたり、世代を超えた豪華競演により初春を寿ぐ華やかなラインナップでおくる。
昼の部は、『當午歳歌舞伎賑(あたるうまどしかぶきのにきわい)』と題し、「午年」の幕開きを祝うおめでたい舞踊三作品から。江戸歌舞伎では初春興行に曽我兄弟の仇討ちを題材とした作品を上演とするのが吉例とされていた。『正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』では曽我五郎を坂東巳之助、小林朝比奈を中村歌昇が勤め、江戸時代から続く伝統を受け継ぎ、正月らしい華やかな舞踊で開幕。
坂東巳之助
中村歌昇
人々に福を招く祝祭的な舞踊『萬歳(まんざい)』では萬歳を人間国宝の中村梅玉、才造には松本幸四郎と中村勘九郎という舞踊巧者二人の顔合わせで楽しむことができる。
中村梅玉
『木挽の闇爭(こびきのだんまり)』は暗闇の中で繰り広げられる歌舞伎独特の「だんまり」の演出で、曽我兄弟ゆかりの人物が並び、歌舞伎座のある旧町名「木挽町」に因んだタイトルで。曽我五郎を坂東巳之助、曽我十郎を中村隼人、秩父庄司重忠を尾上右近、片貝姫を中村米吉、梶原平次景高を大谷廣太郎、大磯の虎を坂東新悟、工藤左衛門祐経を中村歌昇という花形が顔を揃える。
続く『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』では尾上右近が七役の早替りを初披露。女童扇弥・薬売り研作・番頭新造四つ輪・太鼓持栄寿・座頭音市・傾城薄雲実は女郎蜘蛛の精の七役を尾上右近、坂田金時を坂東巳之助、碓井貞光を中村隼人の同世代が、源頼光を市川門之助が勤める。蜘蛛の糸が歌舞伎座に舞う、ダイナミックでエンターテインメント性溢れる舞踊だ。
尾上右近
そして、源平合戦の時代を背景とした時代物の大作『源平布引滝』より、源氏の白旗を巡り主人公・斎藤実盛の才気が冴える『実盛物語(さねもりものがたり)』を上演。知勇を兼ね備えた武将・斎藤実盛を中村勘九郎、源氏の白旗を託された娘・小万を中村七之助、憎々しい平家方の武将・瀬尾十郎を尾上松緑という豪華顔合わせ。勘九郎が満を持して初めて歌舞伎座で実盛を演じるのも注目したい。
中村勘九郎
中村七之助
尾上松緑
夜の部は華やかな『女暫(おんなしばらく)』から。歌舞伎十八番のひとつ『暫』の主人公を女性にした作品で、歌舞伎の様式美と豪奢な舞台を楽しむことができる。巴御前を中村七之助、舞台番に松本幸四郎が出演し、轟坊震斎を坂東巳之助、女鯰若菜を坂東新悟、成田五郎を坂東亀蔵、清水冠者義高を中村錦之助、蒲冠者範頼を中村芝翫。続く『鬼次拍子舞(おにじひょうしまい)』はのどかな山中を舞台にした古風な舞踊劇で、登場する山樵と白拍子の姿が一変する展開に江戸の粋や風流が感じられる。山樵実は長田太郎を尾上松緑、白拍子実は松の前を中村萬壽。
打ち出しは、近松門左衛門が実際に起きた事件をもとに書いた世話物の傑作『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』。油屋を営む河内屋の放蕩息子・河内屋与兵衛を松本幸四郎(Aプロ)と中村隼人(Bプロ)、豊嶋屋の女房お吉を坂東新悟(Aプロ)と中村米吉(Bプロ)がダブルキャストで勤める。兄太兵衛を市川高麗蔵、豊嶋屋七左衛門を中村錦之助、父徳兵衛を中村歌六という充実の配役。
松本幸四郎
中村隼人
坂東新悟
中村米吉
定評のある幸四郎と、2025年3月南座以来二度目となる隼人が演じる河内屋与兵衛。殺しの場さえも美しさで魅せる歌舞伎の真骨頂と称されており、衝撃的な展開に目が離せない。
どんな公演になるのか、楽しみにしよう。