After the Rain “狼男”のそらると“死神”のまふまふによるハロウィンライブ、ぴあアリーナMM公演をレポート
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After the Rain
After the Rain Live 2025 ~After Halloween Night Party~
2025.11.1 ぴあアリーナMM
そらるとまふまふによる音楽ユニット・After the Rainが、11月1日から3日にかけてぴあアリーナMMにて3daysで企画ライブを開催した。各日異なるコンセプトの公演が行われ、初日には『After the Rain Live 2025 ~After Halloween Night Party~』と題した1日遅れのハロウィンパーティーが実現。AtRとしてだけではなく、そらるもまふまふもハロウィンライブを行うのは初めてとのことで、会場には特別な1日を存分に楽しもうと仮装に身を包んだ観客の姿も散見された。
ハロウィンをイメージしたオープニングムービーの後、ステージ下から狼男姿のそらると、死神姿のまふまふが登場する。キービジュアルと同じコスチュームに身を包んだふたりは、「Mrs.Pumpkinの滑稽な夢」で3days初日の幕を開けた。そらるの落ち着いた低音とまふまふの張りのある高音によるツインボーカル、洋館を模したステージセットとトーチが楽曲のムードをより高める。続いて2019年にAtRがリリースしたハロウィンソング「ユメクイ」を披露し、そらるの情熱的なボーカルとまふまふのクールなラップが会場のテンションをさらに高揚させた。
そらる
ふたりは観客とコミュニケーションを取りながら自然体のトークを繰り広げると、そらるの「(3daysのライブのうち)今日だけの曲をたくさん持ってきているので、1日遅れのハロウィンを一緒に楽しみましょう」という言葉をきっかけに、「ロウワー」で憂いを感じさせるミステリアスなボーカルを響かせ、「EYE - Arrange ver. -」でダークかつエモーショナルなムードを作り出す。その後はまふまふが「皆さんまだまだ盛り上がってまいりましょう!」と呼び掛けてユーモラスでアッパーな「極楽地獄」へ。火の玉が次々と打ちあがり、ふたりもスケールが大きくのびのびとしたパフォーマンスを見せる。余裕を感じさせる佇まいに観客も全力でコールを送った。
その後は「懐かしい曲」と前置きして和の要素をふんだんに盛り込んだ「妖のマーチ」を披露する。“ハロウィン”というコンセプトを自由かつ存分に活かしたこの日ならではの選曲は、会場を大いに沸かした。ユニット名の“After”とリンクさせてハロウィンの翌日にそれを開催することも含めて、名実ともにAfter the Rainにしかできないハロウィンライブと言っていいだろう。
まふまふ
まふまふはこの1年でそらるの腕にかなり筋肉がついたことに触れ、「僕の知っているそらるさんはそんなんじゃない!」「もっとなよなよしているほうがいい」「(ひ弱でも)無理をして限界まで挑戦する姿に、観ている人は心を打たれる」と主張するものの、そらるは「ちょうど今のまふまふくらいの年齢のときに、ライブ終わりに(体力が限界で)ヤバいと思った」「ちゃんと体力をつけてライブに臨んでいる俺のほうが観ている人にも支持される」「お前も大人になれ」と反論する。まふまふは「今のそらるさんは努力して身体も引き締まっているから言葉に説得力があってよりウザいな……」といじけながらも、現在の生活スタイルで持ち前の痩身をキープすることを約束した。狼男と死神というコスチュームが、このトークをよりリアルかつシュールに演出していることも微笑ましかった。
公開したばかりの新曲「ハロウィンは踊らない?」をライブにて初披露し、初期曲「アイスリープウェル」では心地のいい緊迫感で観客を引きつけると、ピアノのイントロからまふまふが「桜花ニ月夜ト袖シグレ」を歌い出し、客席のペンライトはたちまち桜色に様変わりする。音楽で観客と心を通わせながら歌うふたりの姿に、この楽曲があらためてAtRのアンセムのひとつであることを再確認した。この曲の最中は、間違いなく会場は桜が舞い散る春の夜だった。
After the Rain
バンドのインストセクションを挟むと、衣装チェンジをしたふたりは「ハッピーホロウと神様倶楽部」「Happy Halloween」を届け、再び軽やかにハロウィンムードで包み込む。「アイスクリームコンプレックス」では一転、冬の清涼感で会場一帯を染め上げてパーティームードを高め、「第3次カラクリ国家計画」ではさらにお祭り騒ぎにスケールアップする。ふたりのハーモニーやツインボーカルはまさに阿吽の呼吸で、合わせようとせずとも自然と引きあってしまう磁石のような伸びやかさだ。お互いを尊重しながら、時には支えに回り、時には自ら牽引し、時には互いを刺激し合うようにエネルギーを放出する様子も非常に痛快で、「セカイシックに少年少女」はそれらがおしなべて花開く、非常にすがすがしいアクトだった。
「セカイシックに少年少女」はAtRの前身である“そらる×まふまふ”名義時代の楽曲ゆえに「歌うと過去のいろんなライブの景色を思い出す」とそらるが話すと、まふまふは「間奏はただみんな(観客)の表情を見ていることが許される空間なんだと感じた」と感慨に浸る。さらにそらるは、ライブで歌うとその楽曲を作ったときに抱いた葛藤や、相談したことなどの思い出が蘇ってくる旨を明かし、そこから会話は楽曲制作についての話題になった。
そらる
ふたりが音楽活動を始めてからの10数年でも音作りのニーズが変わったこと、近年の楽曲はイントロや間奏がほとんどないことなどに触れると、「音楽から間奏が消えるのはちょっと嫌だよね」「イントロも間奏もアウトロもない2分台の曲ばっかりだとライブのときはつらいだろうな」とそらるが話し、その発言にまふまふは「そういう曲を前向きな気持ちで作るのはいいと思うけど、無理矢理やらされるのはちょっと違うかなと思う」「ただ申し訳ないけど僕はイントロが大好きなので、これからもイントロはめちゃくちゃ入ります」と重ねて、今後も自分たちの美学を貫くことを表明する。その後に披露した「叢雲に風、花に月」と「アイムユアヒーロー」は前述の発言を立証するかのように、AtRのストロングポイントが瑞々しく輝いていた。
そらるは「これだけ長く活動していて、こんなに大きな会場で
まふまふ
アンコール1曲目に「ヴァンパイア」を届けると、そらるは「好評だったらまたハロウィンライブをやるかもしれない。俺たちがいちばんハロウィンに関われるのがハロウィンライブかも」「(明るくてハイテンションなタイプではない自分は)ハロウィンに馴染めないんだ、受け入れてもらえないんだという思いがあったけれど、みんなのおかげで今日は最後まで楽しかった」と語る。まふまふは「3daysの初日だけど、ステージを降りたときに『全力を出し切った』と思えるライブにしたい」と話し、そらるも「今日みんなからもらった元気を糧に、明日明後日とさらなる成長を遂げたい」と意気込みを見せて最後に「彗星列車のベルが鳴る」で力強さと優しさを兼ね備えた歌声を響かせた。
After the Rain
2025年はまふまふがソロでライブ活動を再開し、そらるもソロで3年半ぶりのフルアルバム『ユメトキ』をリリースして5月には同作のリリースツアーを開催するなど、新たな物語をスタートさせた。そんなふたりの約1年3ヶ月ぶりのステージは、それぞれのこれまでの経験に裏付けされた安定感のあるパフォーマンスと両者がじっくりと育んできた信頼関係、ハロウィンというテーマをAtR風に解釈したエンターテイナーとしてのセンスなどがクリアに表れていた。自分にないものを持っている者同士だからこそ、お互いのカラーを照らしながら、手を取り合って新しい世界を作ることができる。今の彼らにとってAfter the Rainは、軽やかに様々な挑戦ができる場所なのだろう。澄んだ星空のような爽快感のあるラストの光景を観ながら、そんなことを思った。
文=沖さやこ
撮影=岡本麻衣(ODD JOB)、堀卓朗(ELENORE)、笠原千聖(cielkocka)
セットリスト
2025.11.1 ぴあアリーナMM
1.Mrs.Pumpkinの滑稽な夢
2.ユメクイ
3.ロウワー
4.EYE - Arrange ver. -
5.極楽地獄
6.妖のマーチ
7.ハロウィンは踊らない?
8.アイスリープウェル
9.桜花ニ月夜ト袖シグレ
10.ハッピーホロウと神様倶楽部
11.Happy Halloween
12.アイスクリームコンプレックス
13.第3次カラクリ国家計画
14.セカイシックに少年少女
15.叢雲に風、花に月
16.アイムユアヒーロー
17.1・2・3 -2023 ver.-
[ENCORE]
18.ヴァンパイア
19.彗星列車のベルが鳴る
グッズ情報
2025年11月30日(日)23:59まで
2026年3月1日(日)までに発送予定