SAKANAMON、憧れのSuiseiNoboAzとツーマンライブーーー『憧憬 vol.2』でぶつけた18周年の感慨と新たな決意

18:00
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音楽

撮影=酒井ダイスケ

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『SAKANAMON 18th ANNIVERSARY 2MAN LIVE“憧憬 vol.2”』2025.11.11(TUE)東京・Shibuya eggman

SAKANAMONのメンバー達が、憧れを抱いているバンドを迎える2MAN LIVEシリーズ『憧憬 vol.2』がバンドの結成日である11月11日(火)に、東京・Shibuya eggmanで開催された。

『SAKANAMON 18th ANNIVERSARY』とタイトルで謳っているとおり、この日、結成18周年を迎えたSAKANAMON。前回から2年ぶりの開催となった今回、ゲストに迎えたのはSuiseiNoboAz。ご存じ、10年にナンバーガール~ZAZEN BOYSの向井秀徳がプロデュースしたセルフタイトルの1stアルバムでデビューしたオルタナロックバンドだ。

その彼らが「何を隠そう、我々も18周年。SAKANAMONとは同期の桜」と年齢こそ違えど、活動歴が変わらないことをことさらに強調したことが、後述するように、もしかしたら先輩に胸を借りようと考えていたかもしれないメンバー達の闘争心を掻き立てたのか、SAKANAMONの3人がいつも以上に気合の入った演奏を繰り広げたのだから、それが彼らの予想通りだったのかどうかはさておき、前回のthe band apart同様、今回もまた対バンの選択は正しかったということだろう。これこそが1+1が2どころか、3にも4にも5にもなる2マンライブの醍醐味だ。

SuiseiNoboAz

先攻のSuiseiNoboAzは自身のテーマ曲なんて言えそうな「水星より愛をこめて」から、ファンク、ロックンロール、ハードロック、スポークンワード(いや、アジテーションと言うべきか)を、SAKANAMONと同様に90年代にルーツを持っていると思しきオルタナロックサウンドに巧みに落とし込んだ曲の数々を、熱度の高い演奏とともに繋げていった。代表曲に加え、新曲の「Autoboy2」も披露。

曲間のMCでは前述したとおり、SAKANAMONと同期であることを強調しながら、「おべっか使いやがって。許さない」と石原正晴(Vo.Gt)は闘争心を剥き出しにした。SAKANAMONのベーシスト、森野光晴が自分のバンドのフロントマン、藤森元生(Vo.Gt)に「おべっか使ったの?」と尋ねると、藤森は「使ってない」と返答。「喫煙所の場所は教えたけど」と付け加えたが、おべっかとは先輩扱いしたことを言っているんじゃないかと想像する。

ロックバンドに先輩も後輩もない。ステージの上では対等の立場で、いつまでもバチバチとやり合おうぜ。前掲の石原の言葉には、そんな思いが込められていたような気もするが、その一方で、石原はSAKANAMONにエールを送ることも忘れなかった。

「SAKANAMON、18年間おつかれさまでした。18年っていうのはすごく長い。その間に飯が食えない、金がない、痩せるなんてこともあったから、もう18年間できるかって言ったら、うーん。それに、もう18年経ったら還暦ですね(笑)。でも、SAKANAMON! 18年と言わずに1,000年ぐらい一緒にやろうじゃねえか!」

石原が力強く言ってから、バンドが演奏したのは2020年発表の5thアルバム『3020』収録のラップナンバー「3020」。河野“TimeMachine”岳人(Ba)と松田タツロウ(Dr)による手数の多いプレイがグルーブを作る、たゆとうような演奏の中、石原が語り掛けるように歌う<3020年まで ずっと友達でいよう>という言葉が胸を打つ。

50分に及ぶ熱演を締めくくったのは、石原がギターをかき鳴らすロックナンバー「PIKA」だった。
コード感が洗練を印象づけたファンキーなラップナンバー「liquid rainbow」から一転、エモーショナルかつストレートな演奏に応えるように観客が拳を振る。そんな真っ直ぐな反応に煽られるように最後、石原が言い放った言葉は、ともに18年間、ロックシーンをサバイブしつづけてきたSAKANAMONと自分達を称える勝鬨に聞こえたのだった。

「2007年の東京にSAKANAMONとSuiseiNoboAzが生まれたぜ!」

SAKANAMON

一方、ロックバンド賛歌と言える「ロックバンド」と「光の中へ」をいきなり繋げ、スタートダッシュをキメた後攻のSAKANAMONは時折、変化球も交えながら、アンセミックなロックナンバーでセットリストを固め、真っ向勝負を挑んだ。

チアリーディング風の女性コーラスを同期で流しながら、「CATCHY」でスタンディングのフロアを揺らして、観客を巧みに自分達のペースに巻き込んでいったところで、「(自分達のホームである)eggmanにボアズを呼べてよかった」という藤森の言葉とともに不意に披露して、驚きと歓喜が入り混じる声を観客に上げさせたのが、この日、SuiseiNoboAzが2曲目に演奏した「MISO」のカバーだ。演奏する前に「ロックンロールとミソは古ければ古いほどいい」と石原が嘯いたSuiseiNoboAz流のロックバンド賛歌。もしかしたら、石原が言っていたおべっかとは、このカバーのことなのか? ともあれ、ロックンロールのグルーブを持つ原曲を、ソリッドなバンドサウンドとともに見事、自家薬籠中の物とした「MISO」のカバーバージョンはこの日の聴きどころの1つだったと言ってもいい。

そこから、マスロック風の演奏をエモーショナルに展開させる「東京フリーマーケット」に繋げると、<でもまだこれから まだまだ諦めてないんだ>と歌いながら、「うおぉぉぉ!」と藤森は雄叫びを上げ、フロアの熱をぐぐっと上げる。

ところで、この日、SuiseiNoboAzが会場入りした時まさにリハーサルの真っ最中だったSAKANAMONの演奏を目の当たりにして、「謎の変態世界を繰り広げている」と石原は思ったそうだが、それが中盤で立て続けに演奏した2曲ーー赤ちゃん向けテレビ番組『シナぷしゅ』に提供したSAKANAMON流のナーサリーライム「すきなきもちもち」とエンディングがサンバになる「すっぽんぽん」だったことは言うまでもないだろう。前者では、おもちゃのラッパ、ガラガラ、ぷにぷにも演奏に交える遊び心を、そして、後者では<すっ><ぽん>という声をサンプリングしたパッドを即興で打ち鳴らす藤森と、それに合わせようと森野と木村浩大(Dr)が繰り広げるアクロバチックな演奏を楽しませたが、「今のセクションのリハをしているとき、ちょうどボアズのメンバーが入ってきた。どんなバンドなんだ」と森野は苦笑い。

その森野は2011年に『GFB(つくばロックフェス)大忘年会』で共演して以来、ずっとその背中を追い続けてきたSuiseiNoboAzと初めて対バンした感想を、「これぐらい歴を重ねれば、対等にやれるんじゃないかということで、今回呼ばせていただきました。当たり前ですけど、僕らのレベルが上がっていたら、SuiseiNoboAzも上がっている。見せつけられてしまいました」と正直に語ると、「悔しい気持ちになりかけたけど、それもバンドを続けているからこそ」と続け、「18年分、全部置いていきます。最後までよろしくお願いします!」と自らに活を入れるように声を上げた。

しかし、しっくり来なかったのか、「今のは締まってない。もう一度やらせてください」と活を入れ直すように「18年分置いていきます。みんなついてきてくれますか!? 行くぞ、渋谷!」と改めて声を上げ、後半戦は「マジックアワー」から再スタート。たちまち白熱していった演奏に観客が声を上げ、そのままシンガロングする。

「渋谷!」という藤森の渾身のシャウトに「おぉぉ!」と観客がさらに大きな声で応え、ステージの3人は「DUAL EFFECT」「ミュージックプランクトン」とお馴染みのアンセムをたたみかけるように繋げていく。そして、観客のシンガロングとともにクライマックスにふさわしい盛り上がりを作り上げていった。

「長いようで、短いようで、長い18年でした。この18年間ずっと好きな音楽をやって、みなさんと楽しんでいけたらと思い続けて、バンドをやめたいなんてほんとに一度も思ったことがない。たぶん、この2人もそうだと思う。そういう意味では、気づけば18年。だから、これからも急に死んだりしないかぎりは大丈夫。これからもしょうもないことだったり、真面目なことだったりを我々なりに叩き砕いて、みなさんに届けたい。我々の音楽がみなさんの人生のBGMになれるように続けていくことはこれからも一緒です。これからも続けていきますので、よろしくお願いします」

18周年を迎えた感慨と新たな決意を、藤森が語ってから、本編最後を飾ったのは、バラードの「テヲフル」。18周年を迎え、「これからも続けていきます」と改めて宣言した直後だけに<ラブソングを作ろう 彼方に歌う ラブソングを作ろう 彼方に 前に進む為に歌ってるよ>という歌詞がことさらに胸に染みる。

前述の宣言を裏付けるように来年3月20日(金)にSAKANAMON初の主催サーキットフェス『UOOO!! 2026』を開催することに加え、1月21日(水)に『kodomo to otona』と題したミニアルバムをフィジカルリリースして、2月11日(水)から東名阪と福岡を回るワンマンツアー『SAKANAMON TOUR 2026 “kodomo mo otona mo”』を開催することを発表。さらに「20周年は大きなところでやりたい」と森野が付け加え、観客を沸かせると、アンコールに応え、『kodomo to otona』から輪唱スタイルのコーラスも印象的なリード曲の「unique」とさらにもう1曲、「妄想DRIVER」を披露した。

ご存じ、こういうバンドがやりたいと藤森が作ったこの曲の元に森野と木村が集まった、まさしくSAKANAMONの原点と言える曲だ。結果18年に及んだSAKANAMONのキャリアはここから始まった。18周年記念ライブの大団円にこの曲を選んだ理由はいろいろあるのだと思うのだが、そこにノスタルジックな気持ちはこれっぽっちもないはずだ。なぜなら、すでに20周年を目指している彼らには、過去を振り返る時間などないからだ。

19年目のキャリアをスタートさせたSAKANAMONの活動は、まだまだ勢いを増していきそうだ。

取材・文=山口智男 撮影=酒井ダイスケ

ツアー情報

『SAKANAMON TOUR 2026 “kodomo mo otona mo”』
2月11日(水祝)愛知・池下CLUB UPSET
2月28日(土)福岡・INSA
3月1日(日)大阪・Music Club JANUS
3月6日(金)東京・Veats Shibuya

前売り:¥4,800 / 当日:¥5,300

<モバイルFC会員限定先行>
受付中〜11月24日(月祝)23:59 
sp.arena.artist-site.jp/sakanamon/ 
※モバイル&スマートフォン専用サイトとなりますのでPC/Macからはアクセスできません。

リリース情報

Mini Album
『kodomo to otona』(完全生産限定盤)

2026年1月21日(水)リリース
TLTO-052 ¥2,500(税込)
1.ありありあり
2.ただそれだけ
3.すきなきもちもち
4.アオイ
5.うちゅうのかいぶつ
6.Jellyfish
7.とのさまとファラオ
8.unique

イベント情報

『UOOO!! 2026』
2026年3月20日(金祝)
場所:shibuya eggman / murffin STUDIO
OPEN 14:00 / START 14:45
 
<ACT>
SAKANAMON
osage
hozzy&田中ユウイチ(藍坊主)
ヨネダ2000
meiyo
 

前売り:¥5,500 / 当日:¥6,000
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