「一丸となって作り上げた」 人気ファンタジー小説を柚香光&加藤梨里香で初ミュージカル化『十二国記 -月の影 影の海-』開幕
左から演出・山田和也、柚香光、加藤梨里香
小野不由美による、シリーズ累計1300万部突破の大人気大河ファンタジー小説「十二国記」が初めてミュージカル化され、2025年12月9日(火)から日生劇場で上演される。
「十二国記」は、1991年に刊行された『魔性の子』から始まり、翌年刊行された『月の影 影の海』でシリーズ化され、以降30年以上にわたり、熱烈な支持を受けながら書き継がれてきた小説。物語は、我々が住む世界と地球上には存在しない異世界とを舞台に繰り広げられる壮大なファンタジーで、今回の初ミュージカルではヨウコ役を柚香光、陽子役を加藤梨里香が演じる。
初日前日となる12月8日(月)には、囲み取材と公開ゲネプロが行われ、柚香と加藤、演出の山田和也が公演に向けた思いを語った。
囲み取材
――いよいよ明日から本番が始まります。今の心境を教えてください。
山田:緊張しています。でも、自信はあります。自信作に仕上がっていますが、緊張しています。
柚香:私は、この三人の中で一番緊張しています(笑)。いよいよ始まるんだなという思いと、明日に向けて少しでも前に進んでいきたいという思いで今、稽古をしていました。気合いが十分、そして緊張が十分という感じです。
加藤:私も同じくとっても緊張していますが、たくさん稽古に励んできましたし、皆さん心強い方ばかりです。劇場に入ってみて、映像など全てのセクションが揃ったので、明日お客さまに観ていただいて、どんな反応をいただけるのか楽しみでもあり、緊張でもあります。
――初ミュージカル化となる本作ですが、山田さんは演出や見せ方ではどのようなことを考えてクリエイトしましたか?
山田:小野不由美さんによる原作の小説がとても素晴らしいので、とにかくその素晴らしさを舞台、演劇、ミュージカルのやり方でお客さんに届けるということに一番気を配ってきました。舞台のやり方でストーリーを語っているところがありますが、小説を読んだときと変わらない興奮、感動を味わっていただけるように一生懸命考えました。
――特にこだわった部分は?
山田:原作の小説がヨウコさんの一人称で書かれているというのがすごく大事なことなのではないかと僕は思ったので、この舞台も主人公のヨウコさんの視点で物語が進み、お客さんもヨウコさんと一緒になって異世界に行って、見たことのない人、見たことのない街を進んでいく冒険ができたらいいなと思いました。
山田和也
――柚香さんと加藤さんにお伺いします。それぞれご自身が演じる役の魅力と注目してほしいポイントを教えてください。
柚香:ひたすらに次から次へとやってくる試練に立ち向かっていき、前に進もうと思ったら、また次の試練が来て、希望が見えたら、また次の出来事が起こって……という怒涛の彼女の旅路を皆さまも一緒に体験していただいて、共感していただいて、そして彼女の成長を見守っていただいて、心寄せていただけるようにご覧いただきたいと思っています。
加藤:序盤は私が演じる陽子から始まるので、どのように空気作りをしていくのかを課題にやってきました。最初に大きな妖魔と戦うのは私なのですが、舞台上全部を使って戦いながらとんでもない歌を歌います。そこを頑張ってきたので、観ていただきたいなと思っています。
――二人はそれぞれヨウコという人物を演じますが、二人でこうしようと話し合ったことはありますか?
柚香:最初の二人の関係性から物語が進むにつれて、陽子がヨウコのお尻を叩くような言葉をかけてくれたり、気づかせてくれたり、物語が進むにつれて関係性も変化していきます。そうしたところは、こういうことかなとお話ししながら作っていきました。
加藤:でも、多くを話さずとも劇中で目を合わせて気持ちや思いを交換できているので、ものすごくお話ししたというのはないです。
柚香光
――通じ合える関係になりましたか?
柚香・加藤:そうですね。
――原作の小野先生からはどんな言葉がありましたか?
山田:折に触れていろいろと意見交換をさせていただく機会を設けていただいています。稽古の最後の頃の通し稽古の映像をご覧くださって、とても良いとおっしゃってくださって、我々カンパニーに原作者も感動しているということをぜひとも伝えてほしいというメッセージをいただきました。それは印象に残っていますね。
――柚香さんと加藤さんは、今回の山田さんの演出でここが面白いと思ったところを教えてください。
柚香:たくさんありますが、お芝居的な様式美の効果と映像のマッチングがすごくて、こんなふうになるんだって。山田さんから(あらかじめ)「こういうイメージです」とお話を伺っていましたが、それでも驚きと感動があったので、そこからパワーをいただいてお届けしたいなと思っているところです。
加藤:演劇的に人力を使って表したり、お客さまに想像していただいて完成する作品になっているところがすごく面白いし、やっていても楽しいなと思うところです。
加藤梨里香
――初ミュージカル化で大変なことも多かったと思いますが、稽古中のエピソードを教えてください。
柚香:怒涛でしたね。オリジナルで1からみんなで作っていくので、ああかな、こうかなって、みんなで構築していきました。
加藤:だから、楽俊が癒しになってくれて。パペットのお顔がものすごく可愛いんですよ。あ、ちゃんと生きていますよ(笑)。生きていますが、楽俊の存在が稽古場の癒しになっていました。
柚香:稽古場の端っこでスタンバイしているんですよ。可愛いですね。
――では、そこも見どころですね!
柚香:視線泥棒だと思います(笑)。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
――今回、お二人が苦戦したところは?
柚香:いっぱいあります。私は、初めての本格的なミュージカルで、宝塚歌劇団を卒業して、女性として歌うというのが本当に難しくて、今、皆さんの中で一生懸命頑張っているところです。今の自分の状態には全然満足していないですが、今日より明日、明日より明後日、その先もその先ももっともっと、皆さまに「何度でも観たい」と思っていただけるようになれるよう、今、頑張っているところです。
加藤:今回、私は自分が今までやらせていただいた作品の中で、おそらく一番歌っている作品だと思います。なので、そこはすごく苦労したところです。これからも公演が続いていくので、どう歌を保ち続けられるか、挑戦になっていくと思います。陽子としては、話さないシーンがたくさんあるので、そのときの居方にも苦戦して、山田さんともいろいろとお話ししながら作り上げてきました。
――最後に観劇を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。
柚香:原作のファンの皆さまにも、そしてミュージカルファンの皆さまにも楽しんでいただける作品になるよう一丸となって作り上げています。素晴らしいスタッフの皆さまとこうして一緒に作品作りに携われていることが本当に光栄でございます。皆さまに観に来てよかったと思っていただけるような、そして、「十二国記」を大切に思っていらっしゃる方にも「こんなふうに舞台化してもらえたのだ」と言っていただけるように大切に務めてまいりますので、応援のほど、よろしくお願いいたします。
ゲネプロレポート
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
物語は、平凡に暮らす女子高生・中嶋陽子(加藤)のもとに、景麒(相葉裕樹)と名乗る人物が現れ、異世界へと連れ去るところから始まる。目を覚ますと、そこは全く知らない世界。服装は制服のままだが、髪の毛はより赤く、体つきは筋肉質に変化していた。自分の容貌に驚き、何が起こっているのか分からず、混乱するヨウコ(柚香)。どうすればよいか分からず苦しむも、元の世界に帰ることを心に決め、次々に襲い掛かる試練を乗り越えていく。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
「十二国」という至高の存在・天帝が創ったとされる世界を舞台とし、霊獣や妖魔などといったキャラクターが登場するため、ファンタジー要素の強い作品に感じられるが、今回のミュージカルで描かれているのはヨウコの成長だ。内面の葛藤や心情の変化を丁寧につづり、ヨウコがどのように“心の旅”を続けるのかが描かれている。もちろんアクションシーンも全編にわたって楽しめるが、あくまでもアクション活劇ではなく、壮大な音楽とともに展開する心の成長物語といった印象だ。それゆえ、ヨウコへの共感度が高くなり、一緒になって苦しみ、悩み、何度も立ち上がるヨウコを心から応援したくなる。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
我々が住む世界、日本の女子高生である陽子を加藤、異世界に連れてこられたヨウコを柚香が二人一役で演じるというのも本作の面白さの一つ。異世界では、ヨウコが主体となって物語が進行するが、陽子はその姿を陰で見守り続け、ヨウコとともに悩み、苦しみ、そしてヨウコを励まし、前へと進ませる力になる。二人で演じることで、よりヨウコの内面に迫り、その心の動きを明確に描き出すことに成功していた。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
柚香が演じるヨウコは、裏切られても裏切られても立ち上がって前を向く人物。柚香自身が放つオーラと相まって、苦しみの中でも決して折れない芯の強さを感じさせた。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
一方、加藤が演じる陽子はその歌声に心が大きく動かされた。陽子は、ヨウコの中の正しさの象徴でもあるように思う。ヨウコが立ち止まりそうになったり、自害を考えるような場面でヨウコを救い出す加藤の伸びやかで美しい歌声が印象に残った。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ(太田基裕)
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ(牧島輝)
ミュージカル化されるにあたって、誰もが気になっていたであろう楽俊はパペットという形で登場。太田基裕と牧島輝がダブルキャストで演じる。太田も牧島もパペットを動かすのは初めてだというが、楽俊を実に表情豊かに演じた。そのかわいらしい姿は、本作の大きな見どころの一つである。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
蒼猿を演じる玉城裕規の存在感も忘れられない。ヨウコが苦しんでいるときに現れて、ヨウコをからかい、そそのかそうとする蒼猿を、絶妙な嫌らしさで不気味に演じきった。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
また、相葉裕樹が演じる景麒は凛とした立居振る舞いが美しく、この先のヨウコとの関係性に期待を感じさせた。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
演劇的手法を駆使した演出に加え、紗幕や照明、マッピングを使い、「十二国記」の世界観を見事に再現した山田の手腕も目を引く。原作を未読でも存分に世界観に浸れるので、ぜひ劇場で「十二国記」の世界を体感してもらいたい。
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
ミュージカル『十二国記‐月の影 影の海‐』ゲネプロ
取材・文・撮影=嶋田真己
公演情報
【日程・会場】
2025年12月9日(火)~29日(月) 東京 日生劇場
福岡 2026年1月6日(火)~11日(日) 博多座
大阪 2026年1月17日(土)~20日(火)梅田芸術劇場 メインホール
愛知 2026年1月28日(水)~2月1日(日)御園座
【キャスト】
ヨウコ(中嶋陽子):柚香 光
陽子(中嶋陽子):加藤梨里香
楽俊(らくしゅん):太田基裕・牧島 輝(Wキャスト)
蒼猿(あおざる):玉城裕規 舒栄(じょえい):原田真絢 延王(えんおう):章平
景麒(けいき):相葉裕樹
【スタッフ】
原作:小野不由美『月の影 影の海 十二国記』(新潮文庫刊)
脚本・歌詞:元吉庸泰
音楽:深澤恵梨香
演出:山田和也
振付:原田 薫
ビジュアルディレクション:松井るみ
美術:平山正太郎
照明:髙見和義
音響:山本浩一
衣裳:中原幸子
ヘアメイク:宮内宏明
映像:横山 翼
アクション:渥美 博
キーボードコンダクター:長濱 司
歌唱指導:本田育代・吉田華奈
演出助手:末永陽一・國武逸郎
舞台監督:北條 孝・都倉宏一郎
舞台化企画:馬場千晃
アシスタントプロデューサー:柴原一公
プロデューサー:塚田淳一・村田晴子
スーパーヴァイザー:今村眞治
企画協力:新潮社
ビジュアル原案:山田章博
製作:東宝株式会社
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