70年代の“運動の演劇”を現代の視点でつくり上げる 佐藤信『キネマと怪人』が西沢栄治演出で上演
佐藤信の音楽劇『キネマと怪人〜喜劇・昭和の世界その2』が、29日(金)よりSpace早稲田にて上演される。
60年代アングラ演劇界において、唐十郎の「状況劇場」、鈴木忠志の「早稲田小劇場」とともに、“アングラ御三家”と呼ばれた、佐藤信・山元清多らの「68/71黒色テント」。“表現の変革”を重視した状況劇場、早稲田小劇場に対して、黒テントは“政治的・社会的な変革”を目指す“運動の演劇”を主張してきた。
彼らの70年代の代表作「喜劇昭和の世界・三部作」(『阿部定の犬』『キネマと怪人』『ブランキ殺し 上海の春』)の第二部として、76年に初演された本作。ホテル「ひばりケ丘(ビバリーヒルズ)」を舞台に、映画のワンシーンのような夢と覚醒のイメージの連続が繰り広げられる。溥儀やその妻たちと思われる人びとが織りなす「満州国」の建国と消滅を通して“昭和”をあぶり出す、ブレヒト的音楽喜劇だ。
演出を手掛けるのは、14年の『阿部定の犬』で佐藤信からの信頼を得た西沢栄治。60〜70年代の安保闘争をうけてつくられた本作に、新進演劇人や実力派俳優たちとともに、現在の視点から取り組む。音楽には、スペインの民族楽器ドルサイナ奏者でもある諏訪創、振付は「コンドルズ」のスズキ拓朗を迎える。