LIVING ROCK・1日目 武藤昭平 with ウエノコウジが創り出した、酒と音楽が満ちるオトナのロック空間

レポート
音楽
2016.1.27
武藤昭平 with ウエノコウジ

武藤昭平 with ウエノコウジ

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LIVING ROCK day-1 2015.1.25 LIVING ROOM CAFE by eplus

東京・渋谷にあるLIVING ROOM CAFE by eplusで1月25日~29日にわたって開催されている『LIVING ROCK』シリーズ。ライブハウスではなくライブカフェという環境で、しかもアコースティック編成での「ロック」はどのようなものとなるのか。期待を抱きつつその初日を観に行った。出演するのは武藤昭平withウエノコウジだ。

拍手の中、客席の間を縫ってステージに上がった2人。するといきなり武藤のギターの弦が切れるというハプニングに見舞われる。だがそこは百戦錬磨のロッカー達。弦を張り直す間、ウエノが「武藤さん、早くしてよ(笑)」と言いながらも軽快なトークで場を繋ぐと笑いが起き、かえって演奏前から盛り上がる結果に。出だしからひと味違う『LIVING ROCK』なのである。

武藤昭平 with ウエノコウジ

武藤昭平 with ウエノコウジ

第一部ではカバー楽曲のみで構成されたセットリストが用意され、耳に馴染みのある人も多い「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」(スティング)や、思いっきりマッドなブルース「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」(スクリーミン・ジェイ・ホーキンス)、日本の曲も…とソウル・フラワー・ユニオンの「道草節」などを演奏していく。武藤のギター、ウエノの掻き鳴らすアコースティックベースの音色に加えて、2人がパーカッション代わりにボディをタップする音色とが絶妙なノリを生み出し、自然とパルマ(手拍子)が沸き起こる場内。武藤のしゃがれたハスキーボイスは、渋みとファンクネスを兼ね備え、アコースティック編成で奏でられるブルースやカントリー調の楽曲にピッタリはまる。ウエノのベースもツボを押さえたフレーズと豊かな音色で、主役と脇役とを巧みに演じ分けるかのようだ。

ステージ上も客席もお酒を飲みながら楽しむという環境だけに、2人を観ながらその音に触れているとカフェ&バーとして営業されているこの店も、酒と煙が充満したパブのように思えてくる(禁煙なのだが)。これぞ筆者のごとき若造には決して作りえない、匂い立つようなオトナのロックンロールってやつだ。ラストをパンクの象徴的ナンバー「ロンドン・コーリング」(クラッシュ)で締めたのもロック好きにはたまらない。

ここで1時間ほどインターバルを挟んで第二部へ。第一部に間に合わなかったファンも駆けつけ満員状態。しかもこのインターバルを挟んだことにより、お客さんもどうやらお酒がすすんだご様子だ。明らかに客席があったまってリアクションもより良くなっているところを見ると、この『LIVING ROCK』で実現した、ロック好きな人×お酒×適度なインターバルという組み合わせはかなり相性が良いらしい。

武藤昭平 with ウエノコウジ

武藤昭平 with ウエノコウジ

第二部はオリジナル楽曲が披露されていった。まず「レッツ・ブーズ・イット」では俳優の顔も持つ武藤をウエノがイジり、間奏中に即興の演技披露をすることに。なんともいえない仕上がりで喝采を浴びる。3拍子のリズムにみな心地よく体を揺らしながら自然とハンドクラップが巻き起こったのは「ワルチング・マチルダ」。店内を見渡すと隅々までみな笑顔だ。武藤・ウエノはお酒が進んできたのも手伝ってか第一部以上にサービス精神旺盛で、「楽器は顔で弾くもんです!」と宣言して顔芸を披露したり、「時間が30分しかないんだよ」と言いながら間奏中に“ギターのドラムソロ”で魅せたり、「サルー」では会場全体と乾杯をしてから一気にグラスを飲み干したりと、存分に楽しませてくれる。楽しませすぎて予定曲数を消化できなかったのもご愛嬌、この自由気ままさを観たいのだ。そして一旦ステージを後にしたものの、鳴り止まない手拍子に応えてまさかのアンコール。ラストナンバーはブルースの名曲「グッドナイト・アイリーン」で温かなサウンドとソウルフルな歌声、そしてちょっとの哀愁を残して武藤昭平withウエノコウジのステージは幕を下ろした。

初日を終えたこの『LIVING ROCK』。会話も成立するくらい近い距離で、演者もファンも食事とお酒を傾けながら音楽を楽しむというこの店のコンセプトと、ロックのルーツまで血肉としたベテランロッカーたちによるパフォーマンスという組み合わせは、予想以上の親和性を見せていたように思う。ビシッとキメたらとんでもなくカッコ良いオッさんたちによる、あえてキメない姿。悪ふざけと紙一重なアドリブの数々。円熟のグルーヴ。いやはや、ものすごい贅沢感であった。

そういえばウエノはこんなことを口にしていた。
「いくら飲んだって小便にしかならないんだよ。だけどさ、いい思い出になったりするからお酒って止められないんだよ」

お酒を飲めない方には申し訳ないのだけれど、これは真理だと思う。ただこの日に関して言えば、ソフトドリンクを飲んでいた人にとっても最高の思い出になったことは間違いないけれど。


撮影・文=風間大洋

武藤昭平

武藤昭平

ウエノコウジ

ウエノコウジ

イベント情報
LIVING ROCK

日時:2016年1月25~29日
会場:LIVING ROOM CAFE by eplus
出演者:1/25(月)武藤昭平withウエノコウジ 1/26(火)THE “BLUES” NEATBEATS 1/27(水)花田裕之 1/28(木)マリアンヌ東雲(キノコホテル) 1/29(金)百々和宏
出演時間: <第一部> 19:30~20:00 <第二部> 21:00~21:30

 

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