Amelie、sumika、SUPER BEAVERが集った[NOiD]LABEL NIGHTに華麗で愚直なロックの真髄を観た
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SUPER BEAVER Photo by MAYUMI -kiss it bitter-
[NOiD] LABEL NIGHT ~お祝い事多すぎてわけわからんくらい遊びましょうSP~ 2016.1.27 Shibuya eggman
Amelieのmick(Vo/G/Pf)は
「5年やってて、ずっと芽が出なくて、しんどいなって毎日が続いて / 諦めないでやり続けたら[NOiD]っていう素敵な居場所に入れてもらえて。みんなが観に来てくれて、いい顔が見えて、私が歌えて本当に幸せです」と感謝を表した。
sumikaの片岡健太(Vo/G)は
「[NOiD]って気持ちだけで成り立ってるチームなんだよ。」と、そのインディ的メンタリティを誇った。
SUPER BEAVERの渋谷龍太(Vo)は
「手をつないで仲良しこよしで、輪の中でやってると、広い世界が見えなくなっちゃうかなって。俺らは最初からいるから、背負って立つっていう気概でやってます」と、仲間にしてライバルでもあるレーベルメイトへの宣戦布告をした。
1月27日、東京・Shibuya eggman。murffin discs内のレーベル[NOiD]に所属する3バンドが出演し、[NOiD]というイベント部門の5周年をはじめとした諸々の祝事を記念したライヴ『[NOiD] LABEL NIGHT ~お祝い事多すぎてわけわからんくらい遊びましょうSP~』が行われた。いずれも現在のロック・シーンにおいて、それぞれの方法論で確固たる存在感を放つ3組であるが、イベンターがブッキングしたり交友関係から派生した対バンライブとは違い、彼ら3組には共通の拠り所=[NOiD]が存在する。そして各々が自らの言葉で[NOiD]への想いを口にしたのが冒頭のMCであり、その「[NOiD]とは何か」をそれぞれのパフォーマンスで証明するかのような一夜となった。
Amelie Photo by MAYUMI -kiss it bitter-
オープニング・ムービーに湧き上がる中、パンパンに膨れ上がったeggmanのステージに最初に登場したのはAmelieだ。「楽しむ準備はできてますか!?」と一声かけてから、弾むようなピアノと清冽ながらアグレッシヴな直人(G)ギターが引っ張るバンドサウンドが心地良い「honey」へ。ちょっとハスキーながらよく通るmickの瑞々しい歌声にグッと引き込まれる。
この日は昨年末にリリースした1stアルバム『グッバイ&ハロー』収録曲から次々に楽曲が披露されていき、あっきー(Ba)、アサケン(Dr)からなるリズム隊がアクションでも魅せながらダンサブルなノリを生み出した「メグリメグル」や、OiOiコールとタオル回しで盛り上がった「GuruGuru」といったアッパーな楽曲では明快なアジテーションを提示する。また、一歩踏み出す勇気を、髪を切った女子をモチーフにしてキュートに歌う「グッバイ&ハロー」では日常と重ねられるような親近感を、感謝の想いを伝えた後ラストに披露された情感たっぷりの「ヒーロー」でのアンセミックなギターロックの陶酔性を味わわせてくれた。
カラーの違った楽曲たちを並べながら、そこにしっかりとした一貫性を持たせているAmelieの音楽は、サウンド面での巧みさはもちろん、真っ直ぐなMCでも垣間見える一人ひとりと向き合った姿勢、そして長い雌伏の時を経たことで強さを獲得したからなのだろう。彼女たちの音は、今後ますます多くのリスナーを魅了していきそうだ。
Amelie Photo by MAYUMI -kiss it bitter-
続いてはsumika。カラフルに明滅する照明の中登場すると大歓声が上がる。片岡の体調不良による休養から、先日ここeggmanで復活を果たしたばかりの彼ら。その姿を待ち望んでいたオーディエンスは、この日も大勢詰めかけているようだ。
自らにリラックスを促すためなのか、それとも昂りを抑えるためなのか、その場で一度小さくジャンプしてから高々とギターを掲げた片岡。「各バンドがホームラン狙ってんだよね。繋ぎや脇役に徹するヤツはいない、だから居心地良いんだ。俺は」とこの日出演の3バンドについて語り、軽やかなサウンドにロック色の強いフリーキーなボーカルが映える「グライダースライダー」を投下。そのまま転がり込むように「チェスターコパポッド」へと繋ぐ。荒井智之(Dr)の生み出すリズムとコード感の妙で生み出されるキャッチーなサウンドに黒田隼之介(G)のテクニカルなギターソロが華を添え、続く「FUN」では小川貴之(Key)のピアノソロで大いに沸かせる。このあたりはさすがのステージ巧者ぶりだ。
sumika Photo by MAYUMI -kiss it bitter-
片岡が自らの休養について「クソ休んでました。反省してまーす(笑)」と懐かしいネタ(分かるだろうか?)をぶっこんで盛り上げたりと、演奏中も含め終始楽しそうで、久々にライヴを出来ている現状が嬉しくて仕方がない様子のsumikaの面々。盛り上がり必至のナンバー「ふっかつのじゅもん」を経て「あんたがたが”しんどいなあ”っていうとき、俺たちはいつでもここに”住処”を構えて待ってます」と、その存在意義を明らかにして放ったラストナンバーは「雨天決行」だった。曲中、片岡はオーディエンスのクラップに合わせてオフマイクで歌った。ステージと客席双方から送られる熱と想いが一つになる、ライヴの醍醐味ともいえる瞬間に触れた彼は、こう言ってステージを後にした。
「この気持ちは多分、愛してる、だと思います。sumikaでした。バイバイ」
飾らない言葉も胸を打つけれど、最後の最後に飾った言葉を置いていく心憎さ。正直、これにはやられた。
sumika Photo by MAYUMI -kiss it bitter-
この日の最後に登場したSUPER BEAVERは、[NOiD]所属の3バンドの中で最も古株である。それゆえまさに「[NOiD]とは何か」を体現するかのようなステージとなった。
インストナンバー「→」から、藤原“27才”広明(Dr)がフロアを射抜くような力強いビートで導き「361°」へと繋ぐと場内は早くもクライマックスか!?というくらいの熱狂に包まれていく。渋谷はお立ち台から大きく客席側へ身を乗り出して噛みつくように「行けるかeggman!!」と煽り、続く「らしさ」でもマイクを振り回したり大きな身振り手振りを交えながら歌い上げる。ボーカルがギターやキーボードを兼任することの多い昨今のロックバンド。その所為かギターを弾かない曲では若干の手持ち無沙汰感があったりする場合も有るのだが、ボーカル一本で勝負している渋谷にはそんな問題は皆無だ。ロックスター然とした、キザとさえ言える振る舞いとパンクロッカーのようなガムシャラな姿勢とが奇跡的に融合する彼の一挙手一投足に、オーディエンスは瞬く間に惹きつけられていく。そして歌詞に込めた言葉の一つひとつが荒々しくも丁寧に、まっすぐに届いてくる。
SUPER BEAVER Photo by MAYUMI -kiss it bitter-
「ちょっと久々な曲をやります」と演奏されたのは「ささやかな」。柳沢亮太(G)のザックリとしたディストーションサウンドと、メランコリックで静謐なサウンドとが行き来する。「言葉の本当の意味は、あなたの心とあなたの気持ち」と伝えたのちは新曲の「ことば」を披露。続く「証明」では、ここまでクールにボトムを支えていたベースの上杉研太がステージ最前まで出て客席に向かって叫び、中央のお立ち台でギターソロを展開した柳沢とともに場内の熱をさらに上げた。
終盤、「あの雑誌が「このバンドが良い」っていうから好きになったり、音楽好きな友達が「好き」って言ってたバンドがいつの間にか自分の趣味になっちゃったり」したことが自分もあると語った渋谷。「みんなが右って言ってるのに、左に行くのは怖いよな。でもあなたがそう思うなら、左に行ったっていいんだよ」と続ける。流される自分、弱い自分。マイノリティであることへの不安。そんな誰しもが抱えたことのある気持ちを掬い上げる、名MCであった。そこから「始まる、未来」を優しく大切に歌い上げ、本編は終了。アンコールでは「ありがとう」を届け、3時間超えの大ボリュームとなった『[NOiD] LABEL NIGHT』を締めくくった。
MCだけを抜き出していってもライヴレポが成立するくらい、渋谷は、SUPER BEAVERはたくさんのメッセージを投げかけてくれた。だが、このレポでは一部分を抜粋するのみに留めておきたい。MCだけでは、言葉だけでは伝えきれないことがあるからこそ彼らは音楽をやっていて、きっとそれはSUPER BEAVERのライヴに足を運んでみれば分かるはずだからだ。
SUPER BEAVER Photo by MAYUMI -kiss it bitter-
飽きるほどディスコミュニケーションが叫ばれる時代。Amelieも、sumikaも、SUPER BEAVERも、ある種愚直で青臭いほど「人との繋がり」や「想い」の大切さを歌っていた。それこそが彼らが信じたものであり、そうやって音楽を続けてきて、出会い集った場所、そして彼らの音楽を求めるリスナーが集まった場所が、この[NOiD]である。
約5年前、SUPER BEAVERとsumikaの前身バンドが対バンしたときにはeggmanを埋めることができなかったのだという。それが今回は20分でSOLD OUTした。その事実は、彼らそれぞれの成長と、彼らの信じる音楽が着実に多くの心を打ち、大きな広がりを見せていることの何よりの証明だ。いつの日か、3バンドが(もっと増えているかもしれないが)何千、何万のオーディエンスを集めてツアーをするようになっても、この300人ちょっとしか入らないライヴハウスに集まって、数10cmの距離で、カッコよくて青臭い、真っすぐなロックを聴かせて欲しい。
撮影=MAYUMI -kiss it bitter- 文=風間大洋
[NOiD] LABEL NIGHT ~お祝い事多すぎてわけわからんくらい遊びましょうSP~ 2016.1.27 Shibuya eggman