劇作家協会・東海支部の【俳優A賞】受賞者が決定

2016.3.11
レポート
舞台

第1回【俳優A賞】に輝いた八代将弥。賞状とトロフィー、賞金5万円が授与された

名古屋の新進劇団・room16の八代将弥が、延べ400名の俳優の頂点に

去る2月27日・28日、当サイトでも紹介した日本劇作家協会東海支部プロデュースのイベント『劇闘』が催され、第1回【俳優A賞】の発表と受賞式が28日(日)に行われた。

【俳優A賞】は「舞台俳優を応援する」目的で昨春に誕生。「9月1日~12月31日に名古屋近郊で上演される作品(有料公演のみ)に出演している俳優」を対象に団体単位で応募を募り、エントリーした29団体が審査対象に。審査員は、東海支部員のはせひろいち(初代支部長)と佃典彦(二代目支部長)に、安住恭子(演劇評論家)、西本ゆか(朝日新聞社会部記者)、筆者(編集者・ライター)の5名が務めた。

全公演終了後の年明けに審査会が行われ、12名のノミネート俳優が決定。そこからさらに討議が重ねられた結果、審査員のほぼ全員が名前を挙げた八代将弥(room16 役者・脚本)を第1回の受賞者とした。また発表当日は、客席の特別席に並んだノミネート俳優10名(2名は東京公演中で欠席)一人ひとりの評価ポイントについても審査員が語り、その演技や魅力を讃えた。

【俳優A賞】発表と講評の様子


 

◆【俳優A賞】ノミネート俳優 ※( )内は所属劇団、下段は出演作品

・秋葉由麻(あきばゆあさ/フリー)
日本演出者協会プロデュース 劇作家VS演出者『木村さんと鈴木さん』

・浅井拡敬(あさいひろゆき/44口径マグナム)
44口径マグナム『キル』

・大脇ぱんだ(おおわきぱんだ/劇団B級遊撃隊)
日本演出者協会プロデュース 劇作家VS演出者『木村さんと鈴木さん』

・岡本理沙(おかもとりさ/星の女子さん)
星の女子さん『門番』、刈馬演劇設計社『クラッシュ・ワルツ』

・空沢しんか(からさわしんか/フリー)
劇作ユニット§リリスの友達『完全なる誤認』、虚構オメガ『呼吸する肉塊』

・コヤマアキヒロ(劇団ジャブジャブサーキット)
星の女子さん『門番』

・中尾達也(なかおたつや/オイスターズ)
オイスターズ『その味』

・長嶋千恵(ながしまちえ/劇団B級遊撃隊)
刈馬演劇設計社『クラッシュ・ワルツ』

・平塚直隆(ひらつかなおたか/オイスターズ)
オイスターズ『その味』

・真臼ねづみ(まうすねづみ/うめめ)
うめめ『シゲル』

・八代将弥(やしろまさや/room16)
えのもとぐりむプロデュース『えのもとぐりむのやわらかいパン』
日本演出者協会プロデュース 劇作家VS演出者『木村さんと鈴木さん』

・吉見茉莉奈(よしみまりな/劇団PEOPLE PURPLE)
星の女子さん『門番』


見事受賞した八代に対し、審査員を代表して述べた安住氏の講評(一部抜粋)は以下のとおりだ。
「高校野球の素晴らしいピッチャーだったのに、難病で筋肉が麻痺していくという役。舞台中央にベッドが置かれ、彼はずっと障害者として寝ている。知覚はあるが、身体能力も言語能力も使えなくなっている障害者として、周りの出来事にちゃんと反応している。そして回想シーンになって立ち上がると、凛々しいスポーツマンになる。その瞬時に演じ分ける力に驚いたし、障害者を形だけでなく実に繊細にリアルに演じていると思いました」

尚、八代が所属するroom16の次回公演は半年後と少し先になってしまうが、9月29日(木)に「あいちトリエンナーレ2016」の舞台芸術公募プログラムに参加予定(愛知県芸術劇場小ホールにて上演)なので要チェックだ。


さて、ここで『劇闘』のメイン企画、~短編芝居の東西戦!~についても結果報告を(開催概要については関連記事を参照)。東海支部員22名が<東軍>と<西軍>に分かれ、2日間にわたって熾烈な劇作対決を繰り広げたわけだが、3部構成の闘いの勝敗は、すべて観客投票のみで決定された。

まず、東西各4団体が参戦した初日昼の部の10分「超短編戯曲」対決!は<西軍>が勝利をおさめ、東西各2団体による夜の部の20分「芝居」対決!は引き分けに。そして運命の2日目、平塚直隆・議長率いる<東軍>12名と、鹿目由紀・総司令官率いる<西軍>10名が、それぞれ同タイトル『「南」から来た男』で原稿用紙1ページ分ずつ書きつないだ「リレー戯曲」対決! の上演は、共に素晴らしい劇空間を構築したが、書き手の順番や大胆な演出など緻密な戦略が功を奏した<西軍>が得票。よって、<西軍>の勝利で激戦は幕を閉じた。

たった2日間の催し(しかも上演は各1回のみ)では心底「もったいない!」と言えるほど、見応えたっぷりのイベントとなった『劇闘』。『劇王』時代から見られる光景…慣れない裏方作業に奔走しつつ、面白がりながら真剣勝負を繰り広げる劇作家たちの姿は、一見の価値アリなのである。これまで未見の読者も、来年開催予定の『劇王<アジア大会>』はお見逃しのなきよう。