『キンキーブーツ』小池徹平&三浦春馬にインタビュー
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「キンキーブーツ」小池徹平、三浦春馬 (撮影=原地達浩)
2013年にトニー賞を受賞した大ヒットミュージカルで、昨年9月に開幕したウエストエンド公演も好調の『キンキーブーツ』が、いよいよ日本で初上演される。主役のチャーリーとローラを演じるのはそれぞれ、今やミュージカル界でひっぱりダコの小池徹平と、ブロードウェイ・ミュージカル初挑戦にしてドラァグクイーン役に挑む三浦春馬。初タッグとなるふたりが取材会に臨み、お互いの印象から作品の魅力まで、たっぷりと語ってくれた。
「キンキーブーツ」小池徹平、三浦春馬 (撮影=原地達浩)
“学校の先輩・後輩”の初タッグ
――まずは、『キンキーブーツ』という作品との出会いと感想、そして出演が決まった時のお気持ちを聞かせてください。
小池:僕は、今回のお話をいただいて映画版を観たのが最初です。そのあとで舞台の資料映像を観たり、音楽を聴かせていただいたりしたら、とにかく曲が本当に素晴らしくて!ミュージカル仲間たちに自分が出ることを伝えると、みんなに羨ましがられることもあって、どんどん期待が膨らんでいるところです。
三浦:僕は2013年に、ブロードウェイで舞台を観させてもらったんですが、とっても興奮したのを覚えてます。ホテルに帰ってもずっと楽曲が頭の中で鳴っているような状態で、英語が分からないながら、ラララーみたいな感じで歌ってみたりして(笑)。その時は、まさか自分が出られるなんて夢にも思っていませんでしたけど、「いつかローラ役がやれたら」という強い思いはありました。
小池:春馬君と初めてガッツリ絡むのが、まさか舞台、しかもミュージカルだなんてね。
三浦:本当ですね。
小池:出演が決まった時は、こんな素晴らしいミュージカルで春馬君と共演できる!っていうワクワクもすごく大きかったです。
「キンキーブーツ」三浦春馬、小池徹平 (撮影=原地達浩)
――今回が初タッグとのことですが、お互いの印象は?
三浦:あの、僕にとっては、かなりの大先輩なわけですよ。
小池:え、そんな?(笑)
三浦:そうですよ、だって小池さんは「ごくせん」のパート2に出てて、それを「いいなあ、僕も出たいなあ」とか思って見てた僕が、今度はパート3に出させてもらって。だから学校の先輩というか(笑)、同じ先生に教わったみたいな特別な感覚があります。
小池:ま、恩師が一緒やからな(笑)。初めてちゃんと喋ったのは、この作品のスチール撮影の時。僕が今稽古してるミュージカルの出演者には、『キンキーブーツ』でも一緒の人が多いんですよ。そういう話をしたら、春馬君が「寂しい」みたいに言ってて。
三浦:本当ですよ!稽古が始まる頃には、僕だけ蚊帳の外なんじゃないかって心配で。
小池:最近は、そんな“春馬イジり”をするのがちょっと楽しくなってます(笑)。
「キンキーブーツ」小池徹平 (撮影=原地達浩)
――役者としての印象、という部分ではいかがですか。
小池:映画やドラマを観てて、体を酷使して演じている、ストイックで集中型の役者さんという印象がありますね。観てて心配になるくらいだけど、そのストイックさが今回の作品でどう生かされるのか、すごく興味があります。
三浦:僕、実は 舞台『デスノート』を拝見していて。
小池:ああ、嬉しい!
三浦:ブレない幹の強さがあるというか、歌にも存在にも安定感があって、芯がちゃんとしてるという感じを受けました。歌については、小さい頃からずっと音楽番組で観てたので、「高いところまで出るなあ!」っていうのは分かってたんですけどね。
小池:本当に?(笑)
三浦:本当に!中学生の時、隣の女の子がファンで、めっちゃ騒いでたのも覚えてますし(笑)。そんな方と同じ板の上で歌えるなんて、すごく喜ばしいことだなと思います。
「キンキーブーツ」三浦春馬 (撮影=原地達浩)
――おふたりの役どころと、現時点で抱いている人物像について聞かせてください。
小池:僕が演じるチャーリーは、靴工場の跡取り息子。ずっと靴と向き合ってるからこそ、人とコミュニケーションをとるのはちょっと苦手だったりもして(笑)。どう演じるかは、まだ大まかにしか言えないですけど、自分の感情がうまく表現できない繊細さみたいな部分を出していけたらいいですね。あとはもう、とにかく靴を愛せたらと(笑)。
三浦:僕が演じるのは、ローラというドラァグクイーン。父親からの期待を背負って育った幼少期があって、その中で芽生えたものがどんどん膨らんで、「私は私で行く」という強さに繋がっていったんだと思います。その積み重ねを、歌や立ち居振る舞いを通して表現できたらいいなあ、と。課題になるのは、やっぱり歌ですね。
小池:歌、難しいもんね。すぐに入ってはくるんだけど、練習してみると意外と細かくて、かなり歌い込まないと、感情をしっかり乗っけて歌うのは難しそう。でも、登場人物の心情に合わせてグンって明るくなったりするところが、すごく面白いなあって思います。
三浦:よーく聴くと、「ここは心臓の音っぽくなってるんだな」とか、「時計の音みたいに聞こえそう」っていうところがあるんですよね。誰もが親しみを持つ軽快さの中に、心に訴えかける懐かしさみたいなものも随所にあるので、そんなところも大切に歌えたら。役作りについては、ドラァグクイーンの方のショーを観に行くとか、分かんないけど新宿二丁目に行ってみるとか(笑)、そういうことも必要だと思いますけど、大前提として、まずは歌のスキルを磨き上げなきゃいけないと思っています。
小池:二丁目か。…一緒には、行かない方がいいかもしれない(笑)。
三浦:え、行きましょうよ~!
小池:いや、俺は全然いいけど(笑)。チャーリーは、そんなローラを引き立てる感じのイメージですかね。ローラが華やかな分、地味に徹して演じられればと、今は思っています。
三浦:ローラは、チャーリーの人生を一変させる役なんですよね。そこに説得力が生まれるように、何にも動じない、大木のようなローラを作っていきたいです。
小池:楽しみだなあ。
「キンキーブーツ」三浦春馬、小池徹平 (撮影=原地達浩)
――スチール撮影で、三浦さんは既に“キンキーブーツ”を履かれたそうですね。
三浦:すごい存在感でした、本当に。履くとここらへん(脚の付け根)までくるので、ただの靴というより、洋服の一部みたいな感じもあって。例えば浴衣とか、すごく仕立てのいいスーツとか、何か特別なものを身につけている感覚でした。
小池:春馬君にこれずっと履かれたら、俺多分、公演中に首やっちゃうな。
三浦:あ、見上げるから?(笑)
小池:うん(笑)。でもすごく似合ってたよ。履くことで気持ちがローラになり切ってるのが分かって、見てたら俺も早くチャーリーになりたいなあって思いました。
「キンキーブーツ」三浦春馬 (撮影=原地達浩)
「キンキーブーツ」小池徹平 (撮影=原地達浩)
「お互いの“キンキー”な部分を知ろう!」
――演出のジェリー・ミッチェルさん、日本版演出協力の岸谷五朗さんとの稽古に対しては、どんな不安や期待がありますか?
三浦:ジェリーさんにはまだ会ったことがないんですが、すごく楽しみです。もちろん言葉の壁はあると思いますけど、英語版の台本も自分なりに勉強して、英語のニュアンスも考えながら稽古したい。というのは、やはり作家も演出家も外国人だった『地獄のオルフェウス』という舞台で、大竹しのぶさんがそれをすごく熱心にされてたんですね。元々の台本を書いた人の感覚に寄り添ってみるってことはすごく大切だと学んだので、大竹さんにならって、今回もそういうことを時間を惜しまずやっていけたらと思っています。
小池:言葉の壁があるからといって、言われたこと全部に「ああそうですね」ってなるんじゃなく、「僕はこう思うんですけど」っていうやりとりがたくさんできたらと思います。岸谷さんとご一緒するのも初めてですけど、それも含めて、不安より楽しみのほうが強いですね。僕、そもそも稽古が大好きなんですよ。稽古が始まると生活が規則正しくなって、目覚ましがなくても起きられるようになる(笑)。この作品のことばっかり考えていられる日々が、今から楽しみです。
三浦:僕は岸谷さんとは、地球ゴージャスで2回お世話になっていて。日頃から多くの出演者をまとめ上げている方だけあって、心のケアまですごく丁寧にしてくださるんですよ。だからと言って頼っちゃいけないんですけど、いてくださるのは心強いですね。
「キンキーブーツ」三浦春馬 (撮影=原地達浩)
――今年はこの日本語版のあと、秋には来日公演もある『キンキーブーツ』イヤーですが、来日版のことは意識されますか?
小池:僕はしないですね。Wキャストの公演と同じで、演じる人が違えば、同じ作品でも自然と別物になると思うから。
三浦:そうですね。まずは僕たちが一生懸命やって盛り上げて、「面白かったから来日版のほうも観てみよう」って、たくさんの人に思ってもらえるようにしたい。僕はむこうで観てますけど、日本語の台本を読んだら、「こんな面白いこと言ってたのか!」っていうことが目白押しだったんですよ。それを、僕たち日本人の感覚でお客様に渡していけたら。
小池:うん。言葉に関係なく面白い作品だと思うから、“競う”とかっていうんじゃなく、僕らは僕らの面白さを出せればいいなと思います。
「キンキーブーツ」小池徹平 (撮影=原地達浩)
――映像作品でしかおふたりを観たことのない方に、ミュージカルの魅力を伝えるとしたら?
小池:僕も初めは苦手意識みたいなものがあったんですけど、自分がやる側に回ってから色んな作品を観ると、すごく引き込まれるんですよね。「なんで芝居中に歌うんだろう」と思っていたけど、じつはちょっとした音とかテンポの違いが全て感情を表していて、全く無駄がない。僕はミュージカルに出会えたことがすごく嬉しいから、観たことのない人には、まずは1回観てほしいですね。そうしたら、絶対に印象が変わると思います。
三浦:僕は初めてミュージカルを観た時、稲妻に撃たれたような感覚に陥ったんですよ。みんながハツラツと歌って踊っていて、小池さんがおっしゃったように、感情と歌・踊りが板の上で一体化しているのが分かった。そして、僕もそこに連れて行ってもらっているような感じがして、よく言われる「舞台はお客さんと一緒に作り上げるもの」ってこういうことなのかって思ったんです。作る側の頑張り次第でもあると思うんですけど、よく出来たミュージカルって、お客さんが作品世界の中に、自然と身を投げ出したくなるようなものなんじゃないかなあ。なんか、うまく伝えられないですけど。
小池:大丈夫、伝わってるよ。
三浦:伝わったかなあ…。とにかく、そういうミュージカルにできるように頑張ります。
「キンキーブーツ」三浦春馬、小池徹平 (撮影=原地達浩)
――ここでひとつ軽めの質問を…。「Kinky」という言葉には「ねじれた、ちぢれた」、あるいは「奇妙な」「変態の」といった意味があるそうですが、おふたりが持っている“キンキーな物”、または自分の中にある“キンキーな部分”とは?
小池:ま、僕ちょっとSっ気はありますね(笑)。だから春馬君のこともイジりたくなっちゃうんだと思います。ははは!
三浦:でもなんか、人ってイケナイ変態性みたいなのが、ちょっとはあったほうが面白いと思いません?
小池:うん。春馬君にも絶対あるでしょ?(笑)
三浦:ははははは!ありますね、どこかは言えないですけど(笑)。
小池:今回の共演を通して、それをさらけ出せる仲になれたらいいよね。
三浦:はい!僕も多分、「言えない」と言いつつ言いたいんだと思いますから(笑)。
小池:お互いの“キンキー”を知ろう、ということで!(笑)
――改めてひとことずつ意気込みをお願いします。
小池:譜面通りにただ歌うんじゃなく、ちゃんと感情を入れて歌いこなせるようになるまで、楽しく頑張りたいなと思います。苦しさも大事ですけど、楽しく頑張れたほうが、僕はいい結果に繋がる気がするので。皆さんと助け合いながら、刺激し合いながら、素敵な作品だったと思ってもらえる舞台を作っていきたいですね。
三浦:2013年に夢見たことがこうして実現しているので、「この役で板の上に立って良かったなあ!」と思えるように努力を積んでいきたいです。お客様に、喜びと共に、良い驚きを届けたいなと思っています!
「キンキーブーツ」三浦春馬、小池徹平 (撮影=原地達浩)
【三浦春馬】
ヘアメイク:MIZUHO(vitamins)
スタイリスト:TAKAO(D-CORD)
【小池徹平】
ヘアメイク:加藤ゆり(fringe)
スタイリスト:松下洋介
◆東京
2016年 7月21日(木)~8月6日(土)
新国立劇場 中劇場
※7月25日(月)と8月1日(月)は休演日です。
◆大阪
2016年 8月13日(土)~8月22日(月)
オリックス劇場
※8月18日(木)は休演日です。
※未就学児童はご入場できませんのでご了承ください。
※車椅子でご来場のお客様は、
◆出演者
ソニン/玉置成実/勝矢/ひのあらた/飯野めぐみ/白木美貴子/施鐘泰(JONTE) 他
【脚本】ハーヴェイ・ファイアスタイン
【音楽・作詞】シンディ・ローパー
【演出】ジェリー・ミッチェル
【日本語版演出協力/上演台本】岸谷五朗
【訳詞】森雪之丞
◆公式HP