井手茂太&藤田桃子がイデビアン最新作『ハウリング』を語った!

2016.3.15
インタビュー
舞台

イデビアン・クルー『ハウリング』稽古場風景

井手茂太の率いるイデビアン・クルーが今年(2015年)、結成25周年を迎える。記念公演として新作『ハウリング』(振付・演出=井手茂太)が、3月18日(金)より東京・世田谷パブリックシアターで上演される。今回はカンパニーデラシネラから藤田桃子を客演に迎え、さらに大谷能生が音楽を担当することとなり、新しい何かが生まれそうだ。公演直前の稽古場を訪ね、井手そして藤田から話を聞いた。

井手茂太、藤田桃子


--イデビアン・クルーを結成してから、もう四半世紀になるんですね。

井手: 自分でも驚いてます、よく続いたな、と。学生時代の発表でつけたカンパニー名で、いろいろなイベントなどに出て、正式なイデビアン・クルー旗揚げ公演として95年に作品を出しました。イデビアンは女性が主体で出入りが多く、今では子どもが生まれた元メンバーが観客として来ていたり…。でも基本的に昔と変わってないなと思ってます。みんなも自信をもってやっていられるようになったと思うし、自然体を見せたいというのをずっとやってきて、それは今も同じですね。僕自身で言えば、考え方が大人になった。他の現場での仕事を通じて、動きを分かりやすく、具体的に、オーダーの通りやることで、物事を全て動きで説明しすぎなくてもいい、と思えるようになりました。それを受けて、自分の作品ではやりたいことをやれたり、メンバーの個性もさらに生かせるようになって、そういう意味でも他の現場での経験がとても勉強になっています。

--新作『ハウリング』は東京では2014年10月の『図案』以来、1年半ぶりの公演ですね。その1年半の間、井手さん個人はどんな活動してましたか?

井手: ワークショップや芝居の振付(青木豪演出/音楽劇「星の王子さま」、野田秀樹作・演出/NODA・MAP『逆鱗』等)、また、映像関係の振付、地方滞在の作品の創作などさせてもらってました。CMの振付では、丸2日程がんばって撮影したものがそのままお蔵入りになってしまい、舞台作品を創っている時とはまた違った貴重な体験でした(笑)。

井手茂太

--『ハウリング』はどのようなコンセプトで作られているのですか。

井手: "人間関係"というところから、フィーリング、遠からず近からず、といった感覚を出したくて。日常的によくあること、普段言いたいこと・吠えたいこと(=ハウリング)がダンスの中に見えてくれば、と思ってます。新たな試みという点では、カンパニーデラシネラから桃子さんに来ていただき、そこで我々との釣り合いや、起こると失敗とされるハウリングを、心地よく舞台に展開させたいですね。また、それが大谷能生さんの生演奏とどう響き合うかも試していきたいと思っています。

--今回、大谷能生さんに音楽を依頼したのはどうしてですか。

井手: 2015年の大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレに参加した映像作品で、知人からの紹介があってご一緒させていただきました。その時ラフにもらった音がもう(映像作品に)どんぴしゃで。今回のハウリングへのお声がけにも快く受けていただき、”サックスカルテットで生演奏”という提案も大谷さんからのものなんです。最初にいただいたデモも僕の中でイデビアンぽくて、デモ自体が好きになってそれを「そのまま使いたい!」と思ったくらい。作り込みすぎない曲を生演奏でやってみたいと思ってます。

イデビアン・クルー『ハウリング』稽古場風景

--藤田桃子さんを客演に招いたのは何故ですか。

井手: カンパニーデラシネラにうち(イデビアン)のメンバーが出ていたことや、デビューも同時期(水と油時代)ということで以前から交友関係はありました。うちは女性が多いカンパニーだし、桃子さんが出たらきっと合うと思って。学生時代から25年経っていることは自分でも驚きなことですが、その記念にぜひお呼びしたいな、と。彼女はすぐに馴染んでくれたのですが、稽古に対する熱心さに、普段の我々の稽古はゆるいのかも?なんて思ったりもしました(笑)。

--藤田さんはイデビアン・クルーに参加してみて、いかがですか。

藤田: イデビアン・クルーをごく初期の頃から一観客として観てきたので、今回参加させて頂けることは大変感慨深いです。90年代に旗揚げしたダンスカンパニーがいくつかあって、そこがここまで続いているんだなという。私も95年に結成した「水と油」というグループに所属していて、イデビアン・クルーは背中を追いかける気持ちで観ていました。25周年という数字には、本当に感嘆の溜め息です。新鮮なのは稽古の進め方。井手さんが、降って湧いたように一人一人にパーッと振りを渡して行くのですが、その様子が神憑っていてびっくりしました。そして、出演者各々の根本を素敵に引き出してくださって、それがイデビアンの強みなのだなあと思いました。

藤田桃子

--藤田さんから見た『ハウリング』の魅力とは?

藤田: 井手さんの作品を観ているといつも、馴れ合っていない、個人に目が注がれていることを感じます。今回の『ハウリング』も、個人個人が近付いて共鳴したり反発したり、俯瞰してみると私たちの人間関係そのものだなと感じます。言葉を使ってではなく身体を通して相手を感じることは常日頃実践していることで、社会の縮図を覗き観るようなスリリングさがあります。相手があって音が発生する。個々人なんだけど集団の一員であり、イデビアン・クルーという25年を迎えるダンスカンパニーそのもののようにも思います。

--ありがとうございました。公演がとても楽しみです。

井手・藤田: SPICE読者の皆さま、『ハウリング』を、ぜひご覧になってください。

井手茂太、藤田桃子



(インタビュー・構成/安藤光夫)
 
公演情報
イデビアン・クルー新作『ハウリング』


■振付・演出:井手茂太
■音楽:大谷能生 
■出演:
斉藤美音子/菅尾なぎさ/中尾留美子
依田朋子/福島彩子
藤田桃子(カンパニーデラシネラ)
小山達也/中村達哉/原田悠/井手茂太

 
■会場:世田谷パブリックシアター
■日程:2016年3月18日(金)〜3月20日(日)
■問い合わせ:days(イデビアン・クルー制作事務所) 
[mail] infoidevian.com
問い合わせ:世田谷パブリックシアターセンター [TEL] 03-5432-1515
■公式サイト:http://www.idevian.com/