「2016年度 座・高円寺プログラム説明会」15名の演出家・劇作家が意気込みを語る
「2016年度 座・高円寺プログラム説明会」 (撮影:渡辺敏恵)
4月4日、座・高円寺阿波おどりホールにて、「2016年度 座・高円寺プログラム説明会」が開催された。2016年4月から2017年3月までの1年間、座・高円寺で上演される主催・提携公演の演出家・劇作家ら15名が一堂に会し、作品の説明や公演に対する意気込みを語った。第二部では「助成金と演劇<演劇を創るために、ほんとうに、必要なこと>」と題した座談会が行われた。てがみ座の長田育恵氏、演劇実験室◎万有引力の髙田恵篤氏、チャリT企画の楢原拓氏、劇団桃唄309の長谷基弘氏が出席し、助成金との関わり方や、公共劇場と民間劇場の違いなどについて率直に語り合った。
初めに座・高円寺館長の桑谷哲男氏が挨拶した。「今年は座・高円寺設立から8年目を迎え、三期目の最初の重要な年。座・高円寺は今後も演劇人の目標になるような劇場を目指し、地域劇場として社会と劇場をつなぐアートマネジメントの役割を担う」。
座・高円寺館長 桑谷哲男氏 (写真提供:座・高円寺)
次に、座・高円寺芸術監督の佐藤信氏が劇場主催事業について説明した。「座・高円寺1」では、今シーズンも主催企画・提携企画の公演、日本劇作家協会プログラム公演を常時上演。『世界をみよう!』、『劇場へいこう!』、『ピアノと物語』は、前シーズンから一部作品を変更して上演される。また、今シーズンからスタートする『ワンテーブル・ツーチェア』では、中国と東南アジアから6名の演出家を呼び、一台のテーブル、二脚のチェアを使ってシェイクスピアを題材にした作品を上演する。
座・高円寺芸術監督 佐藤信氏 (写真提供:座・高円寺)
続いてカリキュラム・ディレクター生田萬氏が、事業を体験しながら演劇を学ぶ『劇場創造アカデミー』について説明。2月に6期生修了公演として、上演時間8時間のエドワード・ボンド『戦争三部作』を上演した。続いてダンスアワード アーティスティック・ディレクターの竹屋啓子氏が、座・高円寺ダンスアワードについて説明した。
カリキュラム・ディレクター 生田萬氏 (写真提供:座・高円寺)
ダンスアワード アーティスティック・ディレクター 竹屋啓子氏
その後、2016年度上演の提携公演について、演出家・劇作家ら15名が公演にかける思いを語った。
InnocentSphere 西森英行氏 「『悪党』は、附属池田小事件とシェイクスピアの『リチャードⅢ世』を題材にとった作品。事件に巻き込まれた人々が、それでも生きていくという力を描きたい。座・高円寺はアーティスティックだけど手が届く作品を上演している劇場。参加できて光栄に思っています」
演劇集団Ring-Bong 山谷典子氏 「『名も知らぬ遠き島より』は、衛生兵の人生を軸にした物語。太平洋戦争と現代をリンクさせて描いています。杉並区は、戦争について勉強して市民運動をした女性たちの『杉の子会』が活動した場所。そんな杉並区の劇場の取り組みに参加できて嬉しいです」
とりふね舞踏舎 三上宥起夫氏 「とりふね舞踏舎は1991年に創立され、一般の中高年による舞踏公演を行っています。最高齢は81歳。プロではない人たちならではの強みがあります。『SAI』は東日本大震災の影響を受けて作った作品です」
劇団桃唄309 長谷基弘氏 「公共の劇場でやりたいと思い、劇作家コンクールに応募しました。上演できることになって嬉しいです。『風が吹いた、帰ろう』はハンセン病を題材にした作品。元患者に話を聞いたとき、世間から隔離されてきた彼らのズレた部分が愛おしいと思いました。がっちりと作品に取り組み、お客さんとなんらかの愛を分かち合いたいです」
いわてアートサポートセンター 詩森ろば氏 「『残花‐1945さくら隊 園井恵子‐』は、岩手出身で広島の原爆で亡くなった女優・園井恵子さんを描いた作品。私が岩手県盛岡市出身ということで今回のお話をいただきました。主催者の思いを受け、岩手で初日を迎えて座・高円寺に戻ってきます。上演を心待ちにしています」
演劇実験室⦿万有引力 高田恵篤氏 「万有引力は、天井桟敷で音楽と共同演出を担当したJ・A・シーザーが設立した劇団で、上演作品の半分くらいが寺山修司のもの。『犬神』は『邪宗門』の先駆けとなった作品。いつか寺山の『書を捨てよ町へ出よう』を高円寺の町に密着させた形で上演したいと思っています」
カムカムミニキーナ 松村武氏 「カムカムミニキーナはコメディをやっていると思われがちですが、そうでもないです。『野狂(やきょう)~おのしのこのし~』は、日本の古典を題材にして現代にもつながるスケール感のある作品にしたいと思っています。座・高円寺の色合いにヒットした作品だと思います」
東京高円寺阿波おどり 冨澤武幸氏 「今年の高円寺阿波おどりは8月27・28日に開催。今年で60年を迎えます。盆踊りの歌を作り、YouTubeで配信する予定。6月には昔を振り返る座談会を開催します。『広げる』『深める』をテーマに、阿波おどりで町を豊かにしたいです」
てがみ座 長田育恵氏 「『燦々(仮)』は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師お栄の話。シーボルトと出会ったことが彼女に大きな影響を与えました。海外から押し寄せる大きなものを目の前にしたとき、どうするべきか。お栄を題材に作品を作りながら、このことを考えていきたい」
燐光群 坂手洋二氏 「10年務めた日本劇作家協会会長の任期が2月に明けました。劇作家協会と座・高円寺の設立に尽力してくださった斎藤憐さんが亡くなってから5年が経ったということもあり、節目の年。今は、言葉のアクチュアリティが失われていると感じます。アートは言葉に対して開かれた場。言葉を大事にして新しい作品を作ることによって、世の中に批評性を生み出せれば」
チャリT企画 楢原拓氏 「チャリT企画がやっていることは『ふざけた社会派』。憲法改正について描く『アベヲミックス(仮)』で、世の中に対してカウンターパンチを与えたいです。座・高円寺での上演は4回目になりますが、毎回、阿波おどりや地元の小学生たちにパワーをもらっています」
wonder×works 八鍬健之介氏 「『不埒なチェイン』は不動産業界が舞台のコメディ作品。ただのコメディでもブラックコメディでもない、日本らしい『グレーコメディ』にしたい。座・高円寺でやらせていただけることは非常に励みになります。プレッシャーもありますが、少しでも理想に近づけたら」
トラッシュマスターズ 中津留章仁氏 「『妄信(仮)』はまだ具体的な形は見えていませんが、民主主義について描こうと思っています。よく『社会派』と言われますが、現代を生きていて思うことが作品の種になっています。座・高円寺での上演は3回目。劇場の使い方もこなれてくると思うので、楽しんでいただける作品にしたい」
ドキュメンタリーフェスティバル 清水哲也氏 「9年前に斎藤憐さんから、『演劇以外の表現をやってみないか』と言われ、2010年に映画やテレビの名作の上映を始めました。演劇とドキュメンタリーは表現行為としては一緒。ドキュメンタリーの強みは権力をウォッチできること。演劇ファンにもドキュメンタリーファンにも観てほしい」
OFFICE SHIKA PRODUCE 丸尾丸一郎氏 「『親愛ならざる人へ』は、新しい家族の形を描いたコメディ。わかりやすい話ですが、美術は抽象的にしようと思っています。座・高円寺での公演は4回目。普段演劇を観ない人にもアプローチし、劇場に足を運んでもらいたいです」
演出家・劇作家ら15名が公演にかける思いを語った (写真提供:座・高円寺)
第二部では「助成金と演劇<演劇を創るために、ほんとうに、必要なこと>」と題した座談会が行われた。出席者はてがみ座の長田育恵氏、演劇実験室◎万有引力の髙田恵篤氏、チャリT企画の楢原拓氏、劇団桃唄309の長谷基弘氏。以下のテーマについて語り合った。
助成金との関わりは?
長谷 「今回の作品で助成金を申請し、内定をいただきました。今までは自分たちでなんでも賄えるやり方で作ろうと思っていたので、『助成金をもらわない』という選択をしてきたんです」
楢原 「アゴラ劇場で上演したときは、劇場に助成金がおりて、それが劇団に回ってきました。助成金を申請するために書類を書かないといけないのは大変。社会的な広がりを意識して書かないといけないので。書類を書くのは劇作家の仕事じゃないと思う」
髙田 「J.A.シーザーは、国からお金をもらうことが嫌い(笑)。でも劇団が赤字なんだから、綺麗事を言っても仕方がないし、お金をもらってないから好きなことができるというわけでもない。ここ何年かは文化庁から助成金をいただいています」
長田 「赤字を補填するため、2012年から文化庁の芸術文化への助成金を受けています。それまでは、私が外部の仕事で得たお金を劇団につぎこんでいました。それでも借金があった。助成金は経済的に助かるだけでなく、申請する際、自分が今後どんな演劇を作りたいかを改めて考えるきっかけになると思います」
公共劇場と民間劇場の違いは?
長谷 「震災後、飲食可能なイベントスペースを借りて公演をし、黒字になりました。一方、座・高円寺は地元なので、自分の税金も使われている。その地域の経済の一部に組み込まれているかどうかの違いだと思う。座・高円寺が潤えば、高円寺の町にもメリットがある」
長田 「公共劇場のほうが、企画が動き出すのが早い。事業担当がずっと同じ人なので、しっかり話し合って作っていけるという安心感がある」
楢原 「公共劇場はゆっくりと取り組める。下北沢とかでは、ガツガツしてないと劇場を押さえられない」
髙田 「公共だからとか民間だからとかではなく、その劇場が使いやすいかどうか。ここ何年かは毎年座・高円寺でやらせていただいていますが、稽古場が充実しているのが素晴らしい。同じぐらいの広さの稽古場を借りると1日何万もかかりますから」
座談会にて 長谷基弘氏 長田育恵氏 楢原拓氏 髙田恵篤氏 (写真提供:座・高円寺)
劇団の良さは?
髙田 「劇団は共通言語があるので、ゼロから始めなくていい」
楢原 「土台があるところ。初期のメンバーが残っているので」
長谷 「長いスパンでできるところ。劇団公演でハンセン病の芝居をやるということも、ずっと前から決めていました」
長田 「自分をプレゼンする場が劇団。ペイできなくても、それをやりたいかどうかが大切」
集合写真 (写真提供:座・高円寺)
※◎は主催・新作公演、★印は日本劇作家協会プログラム
4月13日(水)~17日(日)★
InnocentSphere『悪党』
作・演出:西森英行
演劇集団Ring-Bong『名も知らぬ遠き島より』
作:山谷典子
演出:藤井ごう
みんなのリトル高円寺(座・高円寺 大ワークショップ)
高円寺びっくり大道芸
とりふね舞踏舎『SAI』
演出・振付:三上宥起夫
劇団桃唄309『風が吹いた、帰ろう』
作・演出:長谷基弘
6月1日(水)~5日(日)
いわてアートサポートセンター『残花‐1945さくら隊 園井恵子‐』
原案:上田次郎
作・演出:詩森ろば
演劇実験室⦿万有引力 呪術音楽劇『犬神』—月と不死、魂の古代形式譚—
作:寺山修司
演出・音楽:J・A・シーザー
脚色:高田恵篤
つかこうへい×扉座 第2弾『郵便屋さんちょっと2016』
作:つかこうへい
上演台本・演出:横内謙介
カンパニー・ノン・ノヴァ(フランス)『牧神の午後 version1』
座・高円寺+国立台湾戯曲学院(日本&台湾)『お月さまのキッス』 ◎
構成・演出:生田萬
ディ・ルー・ヘスト(デンマーク)『はじまりのはじまり』
シルク・イナシュヴェ(フランス)『ピスト&ラブ』
カムカムミニキーナ『野狂(やきょう)~おのしのこのし~』
作・演出:松村武
虚構の劇団『天使は瞳を閉じて』
作・演出:鴻上尚史
下鴨車窓『旅行者』
脚本・演出:田辺剛
三代目橘大五郎 襲名五周年記念公演
座・高円寺阿波おどり
9月3日(木)~10月3日(月)劇場へいこう!
原作:コッローディ
脚本・演出:テレーサ・ルドヴィコ
台本監修:佐藤信
美術:ルカ・ルッツァ
原作:宮沢賢治
脚本・演出:佐藤信
美術:tupera tupera
音楽:KONTA
“one table two chairs”meeting ◎
佐藤信、ダニー・ユン+アジアと日本の若手演出家6人
SENDAI座☆プロジェクト『エル・ドラド・ホテルアメリカーナ』
作:R・リーマ
演出:小林裕
高円寺フェス
てがみ座『燦々(仮)』
作:長田育恵
演出:扇田拓也
燐光群「天使のように大胆に(仮)」
作・演出:坂手洋二
劇団チャリT企画『アベヲミックス(仮)』
作・演出:楢原拓
12月8日(木)~12月12日(月) ★
wonder×works企画製作公演『不埒なチェイン』
作・演出:八鍬健之介
K-ARTS Dance Performance
『アメリカン・ラプソディ』『ジョルジュ』
作:斎藤憐
演出:佐藤信
座・高円寺ダンスアワード
エムキチビート『赤い月』
作・演出:元吉庸泰
日韓演劇交流センター『韓国現代戯曲ドラマリーディングⅧ』
トラッシュマスターズ『妄信(仮)』
作・演出:中津留章仁
ドキュメンタリーフェスティバル
座・高円寺寄席
劇場創造アカデミー7期生修了上演
『戦争戯曲集・三部作』
作:エドワード・ボンド
演出:佐藤信、生田萬
3月2日(木)~12日(日) ★
OFFICE SHIKA PRODUCE「親愛ならざる人へ」
作・演出:丸尾丸一郎
OCTOPOP(オクトポップ)
佐藤健作和太鼓ライブ