After the Rain(そらる×まふまふ)1stアルバムを語る「一人ではできないようなことにも挑戦していこう」

2016.4.28
インタビュー
音楽

After the Rain

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ニコニコ動画などインターネット上をメインに活動するシンガー&クリエーター“そらる”と“まふまふ”によるユニット・After the Rain。過去に『アフターレインクエスト』『プレリズムアーチ』といった同人アルバムを発売。そして4月13日に、NBCユニバーサルからAfter the Rainとして初のアルバム『クロクレストストーリー』をリリースした。
「成り行きで活動していたものに区切りをつけて、一人ではできないようなことにも挑戦していこう」。“そらる×まふまふ”でなく、After the Rainとして、より多くの人に自分たちの音楽を届けたいと思うようになった経緯とは。それぞれの口からありのままを語ってくれた。

――お二人が今回このような形で、所謂レコード会社からCDを出そうと思ったキッカケってなんだったのでしょうか。

まふまふ:同人で2枚作品を発表し、次はもっと多くの方に自分たちの音楽を届けるにはと考えた中で、今回の様なリリースをトライしてみようと思いました。自分たちのスタンスは今までのまま、流通経路やプロモーションなどのアイデアを相談して一緒にやっていくっていう。なので、自分たちはメジャーデビューをしたという感じではありません。

そらる:コンポーザーとアレンジは主にまふまふがやって、ミックス、マスタリングは自分がやって、一緒に歌って……二人で完結させるということも、変わっていないんです。でも、今まで二人でやってきたのは同人だったから、自分たちを知ってくれている人たちにしかCDが届かなかったんです。だからもっと多くの人に届けたいという思いもあって。成り行きで活動していたものに区切りをつけて、一人ではできないようなことにも挑戦していこうと話し合ったんです。新しい名前をつけるかどうかも、最初は相談してたんですけど、やっぱりちゃんとした名前を決めてやっていこうということになって。

――じゃあ、“そらる”と“まふまふ”、“そらまふ”としてやっていくかもしれなかったんですね。

まふまふ:当初は今までの延長線でコラボアルバムを出すという話だったのですが、話し込んでいく内にちゃんとユニットとしてやる方向になりました。

――捉え方としては一つのユニットとして考えていていいんですよね?

そらる:そうですね。

――流通経路を拡大してもっと多くの人に届けたいっていうお話もありましたが、そういう思いを感じるようになったのは個々の活動の中からなんですか?

そらる:この話は、まふまふに聞いた方が面白いと思うんですけど(笑)、自分は同人で……ソロはもちろん、まふまふとやったり、サークルでやったり。レコード会社さんからも、『そらあい』と『夕溜まりのしおり』を出していて。でも、今回は予約枚数とか、イニシャルひとつにしても今までと全然違うので、ビックリはしています。一方まふまふはその点、本当に狭くひとりでやっている感じだったので。

――ですよね。最近は楽曲提供などされているものの、まふまふさんってそもそもメディアに出ているイメージもあまりなくて、それがドンと出るわけじゃないですか。

まふまふ:(笑)。自分は作品を作れるのであれば、流通形態は何でもいいと思ってるんです。それと、「メジャーじゃないと後に繋がらない」ってよく言われるのですが、自分はそもそも後に繋げる繋げないとか考えていなくて、口下手な自分の考えを音楽作品という形で伝達できることに魅力を感じていたり、生まれた時から音楽が好きで好きでしょうがないという感じなのです。だから、別に自分がメジャーで活動しなければならない理由はないんです……。あともちろん一般的なバンドも好きですが、同人音楽やゲームの音楽がすごく好きでいい音楽は認知されてなかろうといい音楽だと思っているんです。今回NBCユニバーサルさんで出させていただきましたが、今の担当さんと別件の仕事で出会って、本当に良い方で、たくさんお世話になって。初めて、“ここでだったらご一緒したい”と思って……とまぁ、綺麗なことを言いつつ、僕が大好きな『ご注文はうさぎですか??』っていうアニメをやっている会社だということが一番大きいです(一同笑)。

――いろんな背景はあったけど、最後の決め手はそこだと(笑)。

まふまふ:いえ、最初の決め手から最後の決め手までそこ『ご注文はうさぎですか??』です(真顔)。

そらる:枕カバーももらったし。

まふまふ:『魔法少女チノ』の添い寝枕カバーと添い寝CDとちょこちょこといただけて、もう幸せだなぁと。

担当:僕が良い人とか関係ないんです。

まふまふ:まぁまぁまぁ(笑)。

――マインド的には何も変わっていないということはお話しいただいたんですけど、リスナーの人たちからはこうなると良いリアクションもあれば、そうではないものもありますよね。今のところの反響っていかがですか?

そらる:メジャーデビューするという意味では無いので、今のところそういった反響はないですね。同人アルバムに入っていた曲が今回のアルバムに入っていたりしますし、取り分け変わったことをしているわけじゃない、変わらないんだよっていうことは伝わったらいいなと思います。

――作品についてはまずアートワークからすごく印象的ですね。『アフターレインクエスト』に続き、そこからきているファンタジー感であったり、ロールプレイングゲームみたいな感じだなっていう印象を受けました。

そらる:そんな感じですね。RPGとか冒険感みたいなところを引き継いで、その流れで今回も出そうっていう感じで。

――ユニット名からしてそうですもんね。背景に物語のようなものがお二人の中にはあったりするんですか?

そらる:大きな物語というよりは、曲ごとの物語があるという感じです。

――作っていく上でこだわった部分ってありますか?

まふまふ:あります。作曲・編曲をする立場で考えたことは、一人の作品ではないので、お互いが楽しめる作品を作ろうと思いました。

――もともとニコニコ動画に上がっている動画でまふまふさんの曲は聴かせてもらっていて、当時から、いろんなものを吸収しているんだろうなって思ってたんです。それが遺憾なく発揮されているなぁと。

まふまふ:ありがとうございます!

――順番に聴いてても似たような感じの曲が出てこないじゃないですか。

まふまふ:1曲ずつ違うバンドの曲を聴いている感じにならないかなっていう不安はありました(苦笑)。

そらる:最初は統一感を出すためにロックで合わせるかっていう話があったりもしたんですよ。でも、(まふまふは)すごく引き出しが多くてアレンジの幅が広いので、あえてそこを狭くしなくてもいいだろうっていう話になって、できることをどんどんやって既存のポップシーンにはないようなものにしようっていう話はしてましたね。

まふまふ:僕が一人で作ってたらもっとロックなアルバムになってたと思います(笑)。

そらる:それはそれで良さはあると思うけどね。なんだこの曲!?っていう曲も結構入っているんですけど、それで良いよなって。

――さっき別のバンドの曲みたいに聴こえないか不安だっておっしゃってましたけど、そうはならなかったのはお二人の歌が芯としてあるからなんだろうと思います。例えば、3曲目をまふまふさんが歌って、4曲目はそらるさんが歌って……みたいな分け方もあれば、1曲の中でお二人が交互に歌ってたりもするじゃないですか。それってお互いの声の特性を考えて決めていって?

まふまふ:1曲目(「桜花ニ月夜ト袖シグレ」)なんかは特に、サビ前半のメロと後半のメロが違うんですけど、もともと本当は同じメロディだったんですよ。そうするとお互いの声の高さの都合上合わなくって。そのまま作るのはおかしいと思ったので作り直して、前半と後半でメロディを分けてどっちも良い感じに入るように作ってたので、すっごい大変でした。

――バラバラになっちゃいけないですしね。

まふまふ:そうなんです。前半・後半とすんなり聴けるんだけど違うメロディ……みたいなところを探すのって大変です(苦笑)。

――クリエイター魂がさく裂してますね(笑)。それがAfter the Rainの魅力になってるんだろうなって思います。作り方の点でも、普段ボーカロイドの曲を作っている時とは全然違いそうですね?

まふまふ:2人の曲を作るのは、一番作りにくいです。お互いの得意な音域が全然違って、そらるさんの得意なところは僕が歌いにくくて、僕が得意なところはそらるさんは歌いにくく。その中間を選ぶと微妙な歌になってしまうんです(笑)。お互いの良いところを発揮するには、どこでどうパートを分けるかを考えるのですが難しいです。

――自ずと一つの曲の中で使う音域が広くなっていく感じなんですね。

まふまふ:そうです。男性女性でのデュエット曲みたいな(笑)。

――そらるさんから見て、そらるさんが歌うために作られた曲、お二人で歌うための曲を歌うっていうのはいかがでしたか?

そらる:曲自体は難しいものが多かったんですけど、自分が歌うことを前提として曲を作ってくれていたので、どの曲もすんなりと歌えたんじゃないかなと思います。キーの問題でどうしても高くなってしまうところはあったんですけど、そんなに“これ、歌えないよ”っていうのはなかったですね。

――普段ボカロ曲を歌っている時よりもしっくりきますか?

そらる:歌ってて映えるメロディになってたり、こういう風に歌ってほしいんだろうなっていうのは歌いながら伝わってくるようなものになっていたので。

――そこはお二人の付き合いの長さだったり、信頼関係があってこそですよね。

そらる:今回のアルバムが二人の作品として最初のものだったら、難しかったと思うんですけど、今まで二枚アルバムを出して、いろいろとコラボもしてきた中で培われたものだなって思います。

――では今作を制作をしていく上で、新たに気づいたことや発見したことってありますか?

そらる:曲に関しては常に変化していってて、昔よりも自分の好みを理解してくれたというか汲み取ってくれているなって、今回のアルバムで感じました。

まふまふ:そらるさんはどっちかというと、ミドルテンポで歌い上げるものの方が気持ちよく歌ってもらえるなと今回のアルバムで改めて思って。無理に速く歌うよりは、気持ちを込めて一つ一つ歌っていくものの方がきっと映えるんだろうなって再認識したので、今後そらるさんの曲を書き下ろす機会があれば、そこをもう一度考え直さないといけないなと思いました。自分の作風は、アップテンポでバンバンいくようなものが多いので、勉強し直さないとなと。4曲目の「天宿り」は最後に出来た曲なんですけど、基本呟くような曲でサビでワーっとなる感じで、ワンフレーズ歌ったら呼吸ができるような間の取り方を意識しました。こういった部分が新たに発見できたところです。なんか分かりづらくなってしまってすみません……。

――いやいや、そういう制作の裏側の話って聞いていて面白いですし、普通に聴いているとどんな風に作っているか分からないじゃないですか。確かにそらるさんって、呼吸感や息遣いが映える曲って合ってるイメージがあります。それこそナノウさんの曲とか。

まふまふ:そうなんです! 1・2・3・スッって入る方が、合うんですよ。

そらる:そうなのかなぁ。

――お二人のそれぞれ得意なものが集まっている作品になっているんですね。そして本作のリードトラックでもある「アイスリープウェル」についてもお伺いさせていただきたく。

そらる:これは、作る段階ですごく悩んでた曲なんです。

まふまふ:すっごい時間かかりましたからね(苦笑)。

そらる:もともと実写PVを1曲録るっていう話になっていて。その曲どうしようっていう話から入っていったんですよ。

――じゃあ、もともとリードトラックを作るぞというところから。

そらる:そうですね。シンプルでメロディアスな曲にするかとか、純粋なロックにするかとか、いろんな案が出て、結果かなりテクニカルな曲になりました。この様な機会で実写PVも録って、これから自分たちのことを知ってくれる人たちが真っ先にこの曲を見たり聴いたりするんだとしたら、他のバンドと同じような曲にしてしまったらもったいないかなと思って。今までボーカロイドで楽曲を作ってきて広がったまふまふの引き出しって探してもなかなかないものだと思うんですよね。

――ボカロ曲を聴いたことがない人たちだとよりそう思うでしょうね。

そらる:それでいてサビとかはキャッチーだし、一度聴いたら“すごいな”って感じるような曲になっているなと思います。

――ありきたりな言い方だと、名刺代わりになるわけじゃないですか。そこにふさわしい曲ですよね。

そらる:そうなっているといいなと思います。

――『musicるTV』(テレビ朝日系全国放送)のテーマソングになっているということは、全国のいろんな方が耳にすることになるわけです。そういう人たちの入口としての機能を果たしていますよね。作曲者目線ではいかがですか?

まふまふ:趣味全開であまり人に理解してもらえない曲だなぁと(笑)。このアルバムで初めての方にもすんなり聴いてもらえそうなのは「桜花二月夜ト袖シグレ」「ベルセルク」「セカイシックに少年少女」あたりかなと思っていて、実際僕も好きですし。「ベルセルク」なんて自分の曲で一番好きな曲なんです。ただ単純に作編曲という点での自己満足で曲を作ると「アイスリープウェル」「盲目少女とグリザイユ」とか、わけわからないものが出来上がってしまうんです。それを「そういうのでいいじゃん」って言ってくれたから、今回作らせていただきました。僕の好きなコード進行があって、終始そのあらゆる亜種みたいなのが使われていて、転調もするし、セクションごとに浮き沈みが違うし、間奏とか作ってておかしくなるかと思いました……もうなんかこの曲を考えている最中ずっと幸せでしたね。

――聴いていてもそうなんですけど、作り方的にもかなりトリッキーなことをいっぱいしている曲っていうことですよね。こういうタイプの方が作っていて気持ちいいというか好きなんですか?

まふまふ:楽しいです。「この響きいいから使ってみようかな」って。メロに合わせてコードをいじったりたり、コードに合わせてメロをいじったり制約の中で書き直していくことも楽しいです。そうこうしているとすごく歌いづらい曲ができちゃって、それもまた楽しい(笑)。

――やっぱり自分で歌う時も“歌いづら!”って思うんですか?

まふまふ:思います(笑)。

――そんなことを考えながら作ったり歌ったりしていたとは(笑)。そんなトリッキーな楽曲ですが、アルバムを通して聴くと色々なタイプな曲があって、最後に「アイスリープウェル」が来ることで、スッと腑に落ちる感覚はありました。そして、7月16・17日には両国国技館でライヴがあります。

そらる:ZeppツアーとTOKYO DOME CITY HALLとライヴをやって、もっと大きいところでやってみたいなと思ったんです。それで探してもらったら両国国技館でやらないかと言ってもらえて。

――両国国技館はすごく歴史があって、キャパシティも大きいですけど、ここでやると決まってどんなことを考えていますか?

そらる:演出面とかはまだなんですけど、大きいところじゃないとできない演出にしたいなとは思っていて。Zeppで出来なかったことをやれるんじゃないかなと思ってます。

――なにしろ二日間で12,000人ですもんね……すごいです。

まふまふ:ひぃ~……。

そらる:埋まるかどうかは分からないんですけど、埋まったらすごいですよね。

まふまふ:ガクブルです(笑)。

――まふまふさんってそんなに頻繁にライヴに出ないですもんね。

まふまふ:ひきこもりたいタイプです。

そらる:僕がライヴやりたいから、「頼むから出て」って言ったことがスタートでしたね。年末にライヴをやってすごくみんなの反応が良かったんですよ。今回も終わった後に“やってよかった”って思えれたらいいなと。

――そらるさんはライヴ好きですか?

そらる:僕も怖いです。まふまふは作曲家としてもやれるんですけど、自分は表に出て行かないといけないとも思うので、もっとライヴをできるようにならないとなって思ってます。

まふまふ:僕はみんなでスタジオに入って、ギターボーカルとかをやるっていうバンドみたいな方が好きなので。歌い手さんのライヴと自分がやりたいライヴはちょっと違うのかもしれないのです。

――ちなみにバンドをやるとしたら、ボーカルをやります?

まふまふ:ギターが好きなので、ギターボーカルとかギターコーラスとかやりたいです。

――やっぱりマインド的には曲を作ったりする方に比重がいってるんですね。

まふまふ:ライヴとかもMCがあまりなくて、ひたすら音楽をやるっていう方が好きかもです……話すのヘタクソですし(苦笑)。

――でも、そらるさんもタイプ的にそんな感じですよね。

そらる:そうですね。僕も積極的に盛り上げるよりは、世界観に入り込んで歌う方が好きですね。

――お二人を観に来る方もそれを観たいでしょう。やたらポップにMCをし続けるライヴは想定していないでしょうし(笑)。でも、この作品がきっかけで今まで足を運んでこなかった人にも、お二人の魅力が伝わることを願っております。ちなみに、今後はこんな活動をしていきたいっていうことはありますか?

まふまふ:好きなアニメとか声優さんに曲を書きたいです!!!!(ドヤ顔)

そらる:ソロではやりにくいことが二人ではできるだろうっていう思いがあって、ユニットを組むことになって……実写PVとか一人では絶対やらなかっただろうし。今季アニメのタイアップのお話をいただいてたりもするので、二人でだったらどんどんそういうことにも挑戦していきたいですし、まふまふの気持ち次第ではもっとライヴをやるとか。自分一人ではできないことを、このユニットではやっていきたいですね。


インタビュー・文=風間大洋

リリース情報
クロクレストストーリー
 
2016年04月13日発売
 
【初回限定盤A (CD+特典CD)】

『クロクレストストーリー』初回限定盤A

GNCL-1262/税抜価格¥2,500
 
【初回限定盤B (CD+特典DVD)】

『クロクレストストーリー』初回限定盤B

GNCL-1263/税抜価格¥2,500
 
【通常盤 (CD only)】

『クロクレストストーリー』通常盤

GNCL-1264/税抜価格¥2,000
 
発売元・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

 

ライヴ情報
After the Rain 両国国技館2016
~モーニンググロウ アフターグロウ~

■開催日時:
2016年7月16日(土) OPEN 16:00 / START 17:00
2016年7月17日(日) OPEN 14:00 / START 15:00
■会場:
東京・両国国技館
料金:
全席指定4,500円(税込)
■問い合わせ:
ディスクガレージ 050-5533-0888

アルバム「クロクレストストーリー」CD購入者限定優先受付実施決定!
受付期間:4/13(水)18:00~5/1(日)23:59
※ 応募方法ほか詳細はアルバム封入の応募用紙にてご確認ください。
※応募用紙は初回限定盤Aおよび初回限定盤B、初回生産分の通常盤に封入致します。
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