KANA-BOON、“格付け”も飛び出した幕張メッセ初ワンマンでバンドの現在地を表明
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KANA-BOON Photo by TEPPEI
KANA-BOON 格付けされるバンドマンツアー 2016 2016.4.16 幕張メッセ国際展示場9-11
「音楽が仕事になってたまるかって思うんです」——本編ラスト前、谷口鮪(Vo、Gt)が発した言葉に込められた意味が、そのままデビュー以降の第二章の宣誓に聞こえた。この日のライヴを誰より待ちわびていたのは、間違いなく彼ら4人だ。いつの間にか音楽を楽しめなくなっていた自分に気づき、嫌悪感さえ抱き、その流れの中でアルバム作りをすることを良しとせず、メンバーだけでアルバム作り、いや、音楽そのものに対する姿勢を話し合って完成したニューアルバム『Origin』。このアルバムでバンドはグッと音楽的なウィングを広げ、従来のイメージを軽快に越えていった、その事実をファンがどう受け止めているのか?それはツアーを始めてみないと分からないことだ。そしてバンドは、変わったこと・変わらないことを飽くまでもKANA-BOONらしく全力で表現し、楽しんでいた。デビュー時の渋谷クラブクアトロから続いている、青春映画のようなストーリーは、大人の階段を上りながら、今も続いていたのだ。そして彼らの人気や評価の高さは、飽くまでもその音楽と彼らの人間性によるものであることを改めて感じ入るツアー初日になった。
KANA-BOON Photo by TEPPEI
ツアー初日につき、詳述は避けるが、幕張メッセの無機的な会場のステージエリアに入り、ステージを目にした途端、大笑い。ツアータイトルである「格付けされるバンドマン」にちなんだものなのだが、BGMも含め、周到すぎる。これからライヴハウスでどう演出するのだろう?大笑いした分だけ、演奏のタイトさ、4人の楽器と鮪の歌のクリアさや出音のバランスの良さも手伝って開始早々、この日のライヴの答であり最も見せつけたいものを提示された印象だ。
KANA-BOON Photo by TEPPEI
特にニューアルバムの中でもエッジの効いたリフとどこか憂いのあるコード感に乗せ<さっきまでの自分を捨て 放てよ宣誓>と歌い、ファルセットであるにも関わらず<何度も何度も>というリフレインが叫びと同じぐらいの切実さを鮪のヴォーカルが叩きつけた「革命」は、まさに革命的な瞬間だった。しかもフロント3人に派手な動きはない。曲の強度が初めて聴くオーディエンスにも有無を言わせず突き刺さる。ああ、大丈夫だ、大丈夫どころかこちらの想像を遥かに超えるタフさを手にした4人が大きなステージにいたのだ。
KANA-BOON Photo by TEPPEI
が、しかしというか、だからこそというか、そこは相変わらずというべきか、「格付けされるバンドマンツアー」の意味は、“格付犬”がメンバーにクイズを出題し、間違えると一流から最低だとKANA-BOONのそっくりさんにまで転落するという、かなり意味不明なブロック。いやこれが彼らがやると相当可笑しい。タキシード着用がフル装備で、クイズに間違え続けた古賀隼斗(Gt)、小泉貴裕(Dr)は、早々に袖を千切られたそっくりさんに転落。可笑しかったのはクイズではなく、鮪の歌詞間違いで地位転落という場面。衣装やタオルの質が落ちるという、お馴染みのバラエティを模したものだが、それ以外の格下げ状況も細かく、チームKANA-BOONで真剣に遊んでいる感。最高の音響や照明にチーム一丸で取り組むというのなら分かる。でも、バカバカしいことも全力で支える、いや、むしろ前のめりでスタッフもやりたくなるのがKANA-BOONというバンドの愛すべきところだ。
KANA-BOON Photo by TEPPEI
ユルい演出との落差が大きければ大きいほど、演奏のテンションが際立つわけで、ソリッドな楽曲に加えて、16ビートやちょっとクロいグルーヴを感じさせる「talking」や「グッドバイ」では飯田祐馬(Bs)の驚くべき成長を見れたことも大きな収穫だったし、ファンクやフュージョン的なエレメント多めな「グッドバイ」で引き出しの多彩さを見せた古賀のフレーズも新鮮だった。フロアは横乗りまではいかないにしても、歌いたい男子が相当数いたことはまちがいない。そう。このメロディを歌ってみたい、そう素直に思わせる歌を生み出し続けるソングライター・谷口鮪のポテンシャルにも改めて感じ入る。
KANA-BOON Photo by TEPPEI
ラウド要素やスケール感のある強い楽曲「anger in the mind」や「インディファレンス」も、ツアー初日とは思えない完成度。作りたいものを楽しんで作った音源でのアレンジの必然を活かして、ライヴでも細部まで聴こえてほしいフレーズやビート感がしっかりツボに入ってくる。潔いまでのエンディングまで、1曲1曲の持つ意味を完遂できる地肩がすでに完成している。KANA-BOONは想像以上にミュージシャンとしても進化していたのだ。
KANA-BOON Photo by TEPPEI
笑ったり泣いたり、瞠目したり感情が揺さぶられまくって、体感としては1時間半ぐらいなのに、実質2時間半のライヴを振り返ると、『Origin』から多数披露しており、そこに効果的にお馴染みの人気曲やレア曲を配置していく。『Origin』というアルバムは彼らが改めて音楽を純粋に楽しんで作ったアルバムであると同時に、”僕と君の歌”から、もっと広い世界とその世界との摩擦も希望も歌ったアルバムでもある。そして”僕の苦悩”のその先にある、僕らの音楽は君の助けになると思う、そうした意思表示のアルバムだ。そのアルバムの取っ掛かりになった「スタンドバイミー」は、昔とは同じじゃないけど、もう一度、ワクワク・ドキドキしていた自分自身に出会いたいという意味だろう。
KANA-BOON Photo by TEPPEI
少なくともこの日の4人は再びワクワク・ドキドキしていたし、その興奮がどんなに毎日を助けてくれるか?も体現していた。この曲の最後のフレーズ<とびだせ世界もう一度>を歌う鮪の表情は、まるで生まれたての生き物のようにこれから起こる何もかもを見てやるぞ、そんな意思で輝いていたのだから。
こなすものじゃなく、作り出し楽しむもの。冒頭の発言の意味はそこだろう。替えの効かないバンドへさらに大きく踏み出したこの日はさしずめKANA-BOON二つ目の誕生日。ファンの顔を見て、バンドはそれを血肉に変換し、ツアーを続けていく。心からそのプロセスが楽しみでならない。
レポート・文=石角友香
KANA-BOON Photo by TEPPEI
5月3日(火・祝)大阪 インテックス大阪 5号館
5月4日(水・祝)大阪 インテックス大阪 5号館
5月11日(水)広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
5月12日(木)広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
5月14日(土)福岡 福岡国際センター
5月31日(火)新潟 新潟LOTS
6月1日(水)新潟 新潟LOTS
6月3日(金)宮城 仙台PIT
6月4日(土)宮城 仙台PIT
6月10日(金)札幌 Zepp Sapporo
6月11日(土)札幌 Zepp Sapporo
6月16日(木)石川 金沢EIGHT HALL
6月17日(金)富山 MAIRO
6月22日(水)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
6月24日(金)高知 CARAVAN SARY
6月25日(土)香川 高松 festhalle ※新ライブハウス
7月3日(日)沖縄 ナムラホール
7月9日(土)香港 Music Zone@E-MAX
7月10日(日)台湾 THE WALL
一般発売日:
幕張~福岡公演:2016年3月13日(日)
新潟~沖縄公演:2016年4月10日(日)