芸人にして俳優の前田健さん死去 彼が「プリキュア」に残したもの

2016.4.26
コラム
アニメ/ゲーム

所属事務所ケイダッシュ公式サイトの前田健さんプロフィール

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芸人にして俳優の前田健さんが26日死去した。44歳の若さだった。

前田さんといえば松浦亜弥のモノマネでブレイク、自身がゲイであることをカミングアウトした後も俳優として映画「20世紀少年」や「愛と誠」などにも出演。多方面で活躍されていたが、我々アニメ/ゲームジャンルからみた前田健といえば、東映系人気アニメ「プリキュア」シリーズの振り付け師としても記憶されている。

2009年に放送されたシリーズ通算6作目の『フレッシュプリキュア!』は過去作からの一新を掲げて作られた意欲作であった。キャラの等身も上げ、ストーリー性を重視されたこの作品のテーマの一つに、ダンスがある。

「フレッシュプリキュア!」公式サイトより引用

主人公たちは作中で「クローバー」というダンスユニットを組んでおり、そのコレオグラファーとダンス監修を担当したのが前田さんであった。高校卒業後に渡米し、ブロードウェイダンスセンターで3年10ヶ月間ダンスと歌のレッスンを重ねた振付師でもあった前田さん。劇中でも主人公たちを見守る強面のドーナツ屋「カオルちゃん」役として声優としても参加、作品に深く関わった。

『フレッシュプリキュア!』は当時の少女たちだけでなく、大人たちも驚くセンセーショナルな作品だった。

エンディング映像がシリーズ初となる3Dアニメーション、それもそれまでに様々な作品で打ち出されてきた3DCGと比べて断然に可愛かった。アニメーションで描かれる本編のキャラクターと同じように、ややもすればそれ以上に可愛く微笑み、ダンスをするプリキュアたち。その振付を行ったのが前田健さんだった。

このCGアニメーションの可愛さとキャッチーなダンスが業界でも評判となった、何よりもキャラの雰囲気を壊さず、かつ覚えられるレベルのダンス。小さな女の子は友達たちやお母さんとこのダンスで踊り、ネット上でもこのダンスを投稿する人が現れだした。プリキュアを視聴している青年層もこのダンスをイベントなどで踊るなど、「プリキュアのエンディングはダンス」という流れはここから生まれたのだ。

その後前田さんは『ハートキャッチプリキュア!』、『スイートプリキュア♪』、『スマイルプリキュア!』と計4作品のエンディングテーマの振り付けを担当、エンディングダンスの伝統は最新作『魔法つかいプリキュア!』に至るまで続いている。

「フレッシュプリキュア!」内で前田さんが演じたカオルちゃんの台詞

「誰だってさ、どっかしら自分に自信がないんじゃないの?でもさ、それも全部ひっくるめて自分。誰かが代わってくれるわけじゃない。だから結局、最後は自分を信じて結果を出すしかないんじゃない?」

これは声優として、俳優として、振付師として、芸人として仕事に対して真摯だった前田さんの言葉のように思えてならない。

SPICE編集部アニメ/ゲーム担当として、一アニメファンとして、心からお悔やみを申し上げます。