"まったく新しい不条理劇"を創作する「劇団普通」主宰・石黒麻衣へインタビュー

2016.4.27
インタビュー
舞台

劇団普通『クノセカイ』

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2006年~2008年まで役者として活動したのち、2012年に「劇団普通」を旗揚げした石黒麻衣。「能のような、新しいタイプの不条理劇」と評される独自の劇作品を生み出していることで、話題を集めている。そんな劇団普通の主宰であり、これまでの全作品の作・演出・出演を行ってきた石黒麻衣に、次回公演や劇団の今後の展望などについて話を伺った。

 

--劇団普通の結成までの経緯を教えてください。

それまでずっと演劇とかかわりのない生活をしていましたが、ふと思いたって2006年の春から演劇教室に入って芝居の勉強をはじめました。自分で主宰するということは全く考えておらず、役者としてはじめは教室の公演に出演し、そのうち公演にも出ることなく、自分の納得のいく演技ができるまではと稽古だけを続ける山ごもりのような日々をすごしていました。

ですが、そのうち、自分が本当に面白いと思うことではなく、誰かが面白いと思うことをなぞろうとしているだけではないかと疑問が生まれました。私自身への評価で、よく言えば素直、悪く言えば人の言うことを聞きすぎるということを言われたことがあるのですが、素直さがはじめは知識の吸収に役立っていたものの、そのうち演技だけでなく、演劇そのものに対する評価の基準をひとに預けてしまっていたのです。それに気づいて、誰の評価も気にしなくてよいところで演劇をしなければだめだと思い立ち、2012年の秋ごろ、劇団の立ち上げを決めました。

それから準備期間に一年をかけて、2013年の冬に東中野のRAFTで旗上げ公演「宇宙がこわい!!」を上演しました。その公演がきっかけとなって興味を持ってくださる方が増え、今の劇団普通があります。

主宰 石黒麻衣



 

--劇団普通の作品の特徴や雰囲気、作風を教えてください。

独特の息もできないような緊張感がずっと持続していて、「感情の表出をおさえておさえてそこから滲み出るようなもので芝居をしている。」「これは劇団普通にしかできない。」「唯一無二だ。」と言われたことが今まで言われたなかで、最も嬉しかったことです。ほかに今まで作品へいただいたご感想では、前衛的と言われたり、能のよう、新しいタイプの不条理劇のようと言われています。確かにとても静かな芝居で、耳の痛くなるような長い「間」が随所にあるのは特徴的かと思います。

ただ、具体的に能の動きを取り入れたり、不条理劇をつくろうとしているわけではなく、自分の目を通してみた世界をそのまま舞台の上に焼き付けられればと思い作品づくりをしています。物語は特に変わったことが起こるわけではなく、今までの作品で出てくるのも兄弟や家族のような関係性の人々で、そういった人々のある日常の話を描いたものです。音響も照明もほぼ使わないため役者の演技だけで進行していきますが、出演者の方に会話劇ならぬ「態度劇」だと言われたことがありまして、言いえて妙だなと思ったことがあります。

合同企画 普通のラジオ「人形」



合同企画 普通のラジオ「人形」




 

--次回公演『クノセカイ』について、作品のあらすじを教えてください。

■あらすじ

この世界で何が悲しいことか、

私は知らなかった

マフィアのボスが射殺され、その片腕、養子、後妻の弟それぞれが犯人を追う。
その中で徐々に家族の過去が明るみとなり、現在と過去の人間関係が交錯しながら悲劇的な結末に向かっていく。

 

--次回公演『クノセカイ』の見どころを教えてください。

今回、初めて外部脚本の演出をします。「クノセカイ」を書かれた劇団日本のラジオの屋代秀樹さんの作品は、魅力的なキャラクター造形や静かな中に緊迫感のあるストーリー展開が特徴的ですが、なにより「ことば」に対する感覚の鋭さ、繊細さが際立っていて、何気ないのに台詞がとても美しいのです。そこに劇団普通のある意味特異な演出が加わることにより、どうなるかというのが見どころかと思います。

また、今回はじめて出演してくださる客演陣、皆さんとても個性的で魅力的な方ばかりです。そして劇団普通の第2回公演「悪霊」のメンバーが全員出演しています。「悪霊」をご覧になった方は、今回あの4姉弟のまた違った役どころをご期待ください。

会場のギャラリースペースしあんは築60年の古民家なのですが、板張りの床の綺麗なとても雰囲気のあるところで、会場そのものが舞台美術のような、劇場とはまた違った空気感の中で観劇を楽しんでいただけると思います。

 

--劇団普通の今後の展望・野望があれば教えてください。

ただ、少しでも長く続けてひとりでも多くの方に劇団普通の芝居を観ていただくことが目標です。

 

--劇団普通に関心を持たれた方に、メッセージをお願いいたします!

劇団普通の芝居は、説明ができない、観ないとわからないとよく言われます。
少しでも気になった方は是非、公演にお越しください!

第2回公演「悪霊」


第2回公演「悪霊」


第2回公演「悪霊」



 

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公演情報
劇団普通 企画公演『クノセカイ』

日時:2016年5月11日(水)~5月15日(日)

11日(水)19:30
12日(木)19:30
13日(金)14:00 / 19:30
14日(土)14:00 / 18:00
15日(日)12:00 / 16:00

受付開始・開場は開演の30分前

料金:日時指定自由席
予約/当日 2000円
平日昼割り 1500円 ※13日(金)14:00の回

会場:Gallery & Space しあん

出演者:しまおみほ、藤田早織、三澤さき(ゲンパビ)、市川賢太郎、澤原剛生、三瓶大介、宮崎雄真(アマヤドリ)、村山新、石黒麻衣

演出:石黒麻衣

作:屋代秀樹(日本のラジオ)

スタッフ:宣伝美術 関根美有

企画製作:劇団普通
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