やなぎなぎ ツアー初日で見せた彼女の「旅」を彩る歌声

2016.4.28
レポート
音楽
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やなぎなぎ ライブツアー2016「Follow Your Tracks」4.24 EX THEATER ROPPONGI


待望の3rdアルバム『Follow My Tracks』を引っさげてのツアー初日となったこの日、会場となったEX THEATER ROPPONGIは静かな期待と興奮で開演を待つオーディエンスに埋め尽くされていた。

アルバムと共に「旅」をテーマにしたツアーとなる今回。開演と同時に映像でその世界観が紡がれ、舞台上にはどこかツアーコンダクターを連想させるようなやなぎなぎの姿があった。

「いよいよ今日からツアーがスタートします、旅がテーマのアルバムなので、みなさんにも旅をしてもらえるようなツアーにしたいと思っています」

そう語ったやなぎなぎは立て続けに歌を紡いでいく。焦ることもなく、戸惑うこともなくあくまでマイペース。しかしデビューから4年を迎えた彼女はしっかりと確実に自分の世界に観客を引き込んでいく。

やなぎなぎの歌には色がある。彼女の歌を聞くと、どこか切なげで子供の頃の良かった記憶をくすぐられるような、そんな気持ちになる。

思い出には大体その人それぞれの色が付いているもので、それを喚起させるのがやなぎなぎの歌だと思っている。今回もそんなノスタルジックな風景を見せてくれるのかと期待していたのだが、彼女が展開した「旅」はもっとビビッドで、新たな希望に満ち溢れていた。それは彼女がこの4年間でアーティストとして、人間として経験、体験してきた世界の一部なのかもしれない。やなぎなぎの成長を本人のアテンドで体験できるなんて、こんな贅沢なことがあるだろうか!

トーベ・ヤンソンのイラストの世界を思わせるような淋しげな場所もあれば、急に開けた都会の雰囲気、夜の賑わった景色など、コロコロとその世界を切り替えていく。舞台上に大きく置かれた道のセットの中央に彼女は立つ。大きくステージを飛び回り続けるわけではなく、道の真ん中でしっかりと歌い上げる彼女はその先にある次の世界を想像させるようだ。

マイクの前で息を吸うブレスの音さえもユーザーの心を捉えてしまいそうな、そんな繊細な表現が日常と非日常の間で揺らぐ。饒舌に自らを語るような感じではない彼女が、本編のラストで自身の旅に対する思いを語ったこのツアーは、ひょっとして彼女のキャリアの中でとても大事なポジションをしめるのではないか、そう感じさせてくれた。

アンコールの代わりに観客席から巻き起こった「FYT」コール。ツアータイトルである「Follow Your Tracks」の頭文字を叫ぶ観客の声を聞いて驚きながらステージに帰ってきたやなぎ。まるでツアーのお礼を彼女に返すようなこのコールは、ただアーティストが導くだけではない、観客がアーティストに与える景色だってあることを印象つけるような美しい光景だった。

アンコールを含む全曲を歌い終わったやなぎの顔には大きな微笑みが浮かんでいた。一曲一曲終わる度に丁寧に頭を下げる彼女は、人前で歌うこと、自分の歌を聞きに来てくれることの感謝と凄さを体感しているのだろう、だからこそ伝わるように、誤解のないように心の一番近くに届くように歌い続ける。その歩みは遅くとも、彼女の思いを受け取る人が沢山いることがこの日のライブで理解できた。

きっとこの旅は新幹線のグリーン席や、飛行機のビジネスクラスでひとっ飛びするような旅ではない。各駅停車の一般座席に揺られながら、一つ一つの駅ごとに変わる空気や町並みを感じながらする旅だ。ツアーが終わった時、辿り着く場所はどんな景色なのだろうか。

それはきっと、やなぎなぎ本人も楽しみにしている気がする。


レポート・文=加東岳史

イベント情報
やなぎなぎ ライブツアー2016「Follow Your Tracks」

4月30日(土) cube garden (北海道)
5月3日(火・祝) 広島クラブクアトロ (広島県)
5月4日(水・祝) イムズホール (福岡県)
5月21日(土) 仙台Rensa (宮城県)
5月22日(日) NIIGATA LOTS (新潟県)
5月28日(土) Electric Lady Land (愛知県)
5月29日(日) umeda AKASO (大阪府)
6月4日(土) TOKYO DOME CITY HALL (東京都)