閉ざされた過去の記憶が心を突き刺す…中川翔子初舞台『ブラック メリーポピンズ』ゲネプロ

2016.5.14
レポート
舞台

『ブラック メリーポピンズ』


2012年、韓国ソウルの演劇街テハンノで誕生し大ヒットとなった、心理スリラー・ミュージカル「ブラック メリーポピンズ」の日本版再演が5月14日(土)世田谷パブリックシアターにて幕を開ける。

昨夜行われた本作のゲネプロの模様をお伝えしよう。囲み会見の模様はこちらから。

ドイツの著名な心理学者の豪邸で火事が起こり、博士の遺体もろともすべてが燃え尽きた。猛火の中、全身にやけどを負いながら家庭教師メリー・シュミットが博士の4人の養子を救出するが、その翌日にメリーは失踪、子どもたちは誰一人その出来事を覚えていない。
あれから12年。事件はいつしか忘れ去られ、4人は別々の里親に引き取られていったが、当時博士が残した手帳の存在を知る。そこには事件の真相が書かれていたのだ。
あの夜、いったい何があったのか…。

『ブラック メリーポピンズ』

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『ブラック メリーポピンズ』

『ブラック メリーポピンズ』

『ブラック メリーポピンズ』

子どもたちを演じるのは、前回に引き続きハンス役・小西遼生、ヘルマン役・上山竜治、ヨナス役・良知真次。そして舞台初挑戦となる中川翔子がきょうだいの一人アンナ役を演じることとなった。家庭教師メリー役は一路真輝が務める。

三方を高い壁に囲まれ、その奥に一つだけ扉がある部屋で繰り広げられる5人だけの舞台。壁と思ったそれは実は布であり、部屋に豪邸の重厚感を与えるとともに、ときに彼らの心の不安を表すかのように揺れ動く。

大人になってから再会した4きょうだいが互いに離れて立ち止まる姿は、子どもの頃を思い出しているときの立ち位置とはまるで別のもの。何かをきっかけに生まれた彼らの心の距離感を表しているのかもしれない。

同じ服装、髪型のまま「昔」と「今」を行き来する子どもたち。幸せに包まれている笑顔、子どもならではの身体の軽さまでが伝わるくらいのはしゃぎっぷりは、冒頭そして終盤に向けて加速していくこの物語の中で、唯一見るものに救いをもたらしてくれる明るさだ。

『ブラック メリーポピンズ』

『ブラック メリーポピンズ』

今回初舞台を務める中川、予想以上にしっくり物語にはまっていた。天真爛漫で勝気な子ども時代のアンナと、大人になり常に何かにおびえたようなアンナの演じ分けも見事。本作をご存じの方にはおなじみの「椅子取りゲーム」で見せるアンナの姿にぜひ注目していただきたい。

『ブラック メリーポピンズ』

『ブラック メリーポピンズ』

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もちろん中川だけでなく、小西、上山、良知の再演組は、以前よりもっと細かい心の動きを表現しつつ、この物語の持つ闇の深さを作りあげている。また、子どもたちなりに、兄二人が弟と妹を必死に守ろうとする姿が実にいじらしい。

『ブラック メリーポピンズ』

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そして要所要所をぐっとまとめるのが一路。ステージに登場するだけで、観るものの意識がそこにギュッと集中するのだ。たとえ舞台上にいないときでもどこかにメリーがいるように思わせるくらい、その存在感の強さに惹きつけられる。

『ブラック メリーポピンズ』

きょうだいたちの謎に包まれた過去の記憶。それを知ることは果たして彼らに幸せをもたらすのか。ぜひ最後まで見つめ続けてもらいたい。

公演情報
ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』
 
■脚本・作詞・音楽:ソ・ユンミ
■演出:鈴木裕美
■上演台本:田村孝裕
■訳詞:高橋亜子
■出演:中川翔子、小西遼生、良知真次、上山竜治、一路真輝
 
●5/14~5/29◎世田谷パブリックシアター
〈料金〉S席9,000円 A席7,000円
●6/3~5◎兵庫県立芸術文化センター  阪急 中ホール
●6/9◎福岡市民会館
●6/17◎愛知県芸術劇場  大ホール
〈お問い合わせ〉キューブ 03-5485-2252(10:00~18:00)
〈公式ホームページ〉http://m-bmp2.com/

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