佐野瑞樹・佐野大樹・ロンブー田村亮がいちばん懲らしめたいのは…あの男!?『懲悪バスターズ』
WBB『懲悪バスターズ』田村亮、佐野大樹 (撮影=こむらさき)
ジャニーズ事務所所属の佐野瑞樹と、その弟であり演劇ユニット*pnish*(パニッシュ)のリーダーである佐野大樹による兄弟演劇ユニット「WBB」のvol.10『懲悪バスターズ』が5月19日(木)から東京芸術劇場プレイハウスにて上演される。初日を目前にして、稽古場で追い込み真っ最中の佐野兄弟と、客演となる田村亮(ロンドンブーツ1号2号)に話を伺ってきた。
間もなく真夏を迎える大都会の片隅で、今日も今日とて悲鳴が響く。毎夜毎夜続く悲鳴の正体は、悪霊たちによるイタズラのせいだった!?悪霊退治に立ちあがったのはある一人の天才科学者!落ちこぼれの悪霊たちが巻き起こす、なんちゃってポルターガイストに人間の背筋が凍る…のか!?
――初日まであとわずかですが、いまの心境は?
田村:僕は昨日からドキドキし始めました。緊張感が急に増してきて。場面場面で稽古をしてきたときにできていたことが、通し稽古になるとスコーンって抜けたりして「あれ?あれ??」ってなってます。
佐野瑞樹(以下「瑞樹」):初日が見えてきたので、いよいよエンジンを全開にしていかないと、という感じ。スキのない舞台を作りたいという気持ちですね。ドキドキではないけど圧迫感があります。背中をめちゃ押されている感じです。
佐野大樹 (以下「大樹」):いい感じになってますよ。僕の世界観をキャストの皆さんが作り上げてくれて。あとは本番が始まってお客様がそれをどう観るか、というのが僕の中でいちばん緊張するところですね。
――製作発表のときに、この作品は「サイエンス・ホラー・アクション」なのか、「ハートフルコメディ」なのか、と意見が分かれましたが、最終的にどのような内容に落ち着いたんですか?
大樹:「サイエンス・ホラー・ハートフル・コメディ・アクション」!!
田村:混ぜてるし!(笑)
田村亮、佐野大樹 (撮影=こむらさき)
――WBBに初参加の田村さん、客演自体も初ということですが、この座組みの印象はいかがですか?
田村:すごくやりやすいです。もう少しキチッと動いていくのかな、と思っていたんですが、休憩の取り方の感じとかが…一気に緊張がほどける感じもあるけど、なんだか意外と柔らかくて、「今から休憩に入りますよ」という感じがあった上で休憩に入るという(笑)。ヨソ(の劇団)はどんな風にやってんやろ?という思いもあったので、こういう空気のようにふわっと流れていく感じは好きですね。
――ご自身の劇団はもっとメリハリがある感じなのでしょうか?
田村:いや、逆です。どこから始まってるのかがわからん(笑)WBBのふわっとした感じよりさらにふわーっとしてます。「タバコ吸っている人がいたら休憩にしよかな?」くらいのふわーっと感です(笑)
稽古の様子 (撮影=こむらさき)
――製作発表から始まり、稽古が大詰めとなってきました。最初に想像していたお互いの印象と今の印象、何か変わったことや新たに気が付いたことなどありますか?
瑞樹:(田村)亮さんはとにかくマジメ。それがすごく衝撃です。もっとざっくり役を作っていく人なのかなって思っていたんですが、すごく丁寧にお芝居を作られる。ものすごくお忙しいのに、ちょっとした時間を縫って稽古に顔を出したりするんです。僕なら絶対休むのに(笑)「稽古場に1時間しかいれない」というときでも「行きます」って言うし。あと、お芝居に対する責任感が強いですね。役者って結構そういう点はズボラなところがあって、「やったもん勝ち!」とか「とりあえずやってみよう」という発想になったりするんですが、亮さんはどうやったらお客さんが笑ってくれるのかな、とかそういうところをすごく考えているんです。
稽古の様子 (撮影=こむらさき)
――超・優等生じゃないですか!…あれ、田村さんが「違う」と言いたげですが(笑)大樹さんから見た田村さんの印象は?
大樹:亮さんは、おもしろシーンをおもしろシーンとして作るのではなくて、その前の場面のこともしっかり踏まえて作るんですよ。おもしろくなると、つい全体的に長くなってきて、演出としては「今は短く作らなきゃ」と思うのに亮さんのそれはおもしろくて。
役者にもよるんですが、おもしろシーンをキャラクターの設定とは関係なくおもしろくしようとする人もいるんです。「おもしろいけど、それはそのキャラとは違うよ」という人もいるけど、亮さんは芝居の延長線上で考えるから、逆にこっちがアドバイスをもらったりして、おもしろいなあと思っています。
瑞樹:その人をおもしろくしてあげたい、という気持ちが強いんでしょうね、亮さんは。そこがいいな、って思いますね。誰かが何かやってたら「どう拾ってあげようか、どうやって受けてあげたらおもしろくなるかなあ」って常々考えている。人を活かすことで自分も生きる、いちばんいい方法論だなあって勉強になります。役者ってどうしても「自分」が強くなっちゃうから。
稽古の様子 (撮影=こむらさき)
――逆に、田村さんから見た佐野兄弟の印象はいかがですか?
田村:初めは何も想像がつかなかったんです。僕、客演で出ること自体初めてだったので、みんなはどうやるんやろ?台本渡されたら翌日はもう台本持たずに稽古をやるっている演出家さんもいるっていうし…そんな噂ばっかり入ってくるので、ここの現場はどうなんやろ?と。だから、最初は逆にあまりいろいろ考えず、その場の雰囲気に自分が合わせていこうって思ったんです。
次の日に「台本を持たないでやるってことあるんですか?」って、瑞樹さんと大樹さんではなく、鈴木勝吾とか若手のコ(笑)に聞いたら、「この日に渡されるってことは、覚えてこなくていいパターンです!」って言われて「OK…」って思いましたね。とはいえ、瑞樹さんとか台本を手放してくるかもわからんで!と警戒しつつ現場入ったら、しっかり持っていたのでホッとしました。
それでも「これは何かの前フリなんか?」とも思ってました。台本を持つと見せかけて、みんなで一斉にパッと台本を手放したら…俺、どうしようかと(笑)
瑞樹さんはキャラクターを作り出すことをすごくしっかりやっているイメージですね。このときはこうだから…とゆっくり進めているんです。なるほど、そういう風にやっていくんや、と思いましたね。この人はセリフを覚えるよりも、「人」をしっかり作ってからやらはるんや!勉強になるなと思いました。
大樹さんは、作・演出をやっていて「こういう風にやりたいんや」というところはしっかり言うんですけど、どっちでも取れそうなときには一気には言わないで「そっちもありか」というスタンス。演技プランに迷っている、というのではなく、自分と違う考えがでてきてもしばらくほっといて様子を見る。そして全体がつながったときに改めてその場面まできて「あ、やっぱり、元に戻して」って言うタイプ。演出でそういうやり方もあるんやなあと、これも勉強になりました。僕はすぐ止めて「ああしてこうして」って言ってしまうから。
大樹:僕、昔は違いましたよ。ガッチガチに固めて「違う、ここはこうやって」っていうタイプでした。でもどこかで可能性を広げたい、と思い始めて。とある役者さんに出会ったときに「これもおもしろいなあ。そのほうがイケてるかもしれない」と思うようになってから変わりましたね。
おちゃめなワンシーンも (撮影=こむらさき)
――通し稽古をした感触で、ここが特におもしろくなりそうだ、という場面はどのへんですか?ネタバレしない程度で教えてください!
田村:エンディングに向かっていく場面ですね。アクセルをどんどんかけながらテンポよく一気にあげていくところ。やっている側も楽しいし、しんどいし、でもあそこはお客さんも引き込まれていくんじゃないかな、と。
瑞樹:亮さんは、大変ですもんね、後半。ダンスもアクションもしょっぱなから全力でやっているから。すごいんですよー!毎回全力でやるからゼーハーゼーハー言ってるし。そこがすごいなと思っています。
田村:ダンスも覚えるのがいちばん遅いから、他の人よりやらな!と思うので。ダンスがうまい人はパッって覚えるじゃないですか。それこそ瑞樹さんはすぐ覚えるし。
瑞樹:いやいや、僕もだいぶ遅いです。
田村:僕は先生の振りを見て「ああ、こうね」ってスッとやれることがまったくないから。振りを見たら、まずは「覚え方」を探さんといかんのです(笑)だからがむしゃらにやるしかなくて。アクションのほうがまだなんとかできるけど、ダンスは全くわからないから。
稽古の様子 (撮影=こむらさき)
――ならばその道のプロ、瑞樹さんに教えてもらうとか…!?
瑞樹:いやいや、僕が教えてもらいたいほうで!
大樹:また亮さんとはフリが違うから教えられないんだよね。
――人間と悪魔の役ですしね。とはいえ、踊り方のコツとかは教えられそうな…。
瑞樹:いやいや、それは僕が教えてもらいたい!そろそろOH-SEさん(電撃チョモランマ隊)に真剣に相談しようと思っているくらいですから。初日が見えてきちゃたし。
田村:みんなは「ダンスがきれいに見える方法」を探しにいってるんですが、僕は「どうやったら間違わないか」のレベルですから(笑)まずマイナスからゼロのところまでいかないと「あいつ、失敗しよったな!」って言われるし。
瑞樹:俺、亮さんの好きなところは、ミスしたときの笑顔!「あ、やっちゃった!」って顔するんですよ。「ああ、いい顔してるなあ」ってなっちゃう(笑)
稽古の様子 (撮影=こむらさき)
――「今のはアドリブです」みたいな顔にはならない?
田村:絶対なりません(笑)ミスしたけどヘラヘラしているだけです。
大樹:でも、それ大事だと思いますよ。
田村:でもねー。他人のせいにしますよー!これをやらせた大樹くんが悪いんじゃねーの?みたいな顔しますよー!OH-SEさんの振りが難しかったんじゃねーのー?ってヘラヘラと…。
瑞樹・大樹:(笑)
――この作品で、田村さんは落ちこぼれの悪霊、瑞樹さんは天才化学者、そして大樹さんはロボットの役を演じますが、それぞれ自分の役について共感できますか?
田村:僕はすごくわかります。僕がやっているレイブンと(鈴木)勝吾がやっているアミットという役の中間くらいが、僕の本当の性格に近い。だから感情の動き方もわかります。でもたぶん「裏切られたこと」に対して僕はもっと引きずるタイプですね。そういうことがあったら俺はそこまで優しくできないかなあ。
――そんな展開があるんですね!瑞樹さんは、製作発表のときに天才化学者の設定を福山雅治さんの「あの」役に寄せる(笑)とおっしゃってましたが。
瑞樹:俺が演じる役は福山雅治さんではなかったですね(笑)先日、通し稽古をやってみて、そこまではなんとなくそのイメージがあったんですが、ま、無理だということがわかって。今大きく舵を切りなおしています(笑)
稽古の様子 (撮影=こむらさき)
――この段階で!?間に合うんですか?
瑞樹:大丈夫ですよ!ある程度セリフが入っていて、大まかに流れが自分の中に落ちてきた状態で、いざ演じてみるとこの役作りは意外と物語の中で機能しないな、ってわかったので。どっちかというと「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のドクのほうがこの作品には近いかな。福山さんが4、ドクが6くらいの割合で。
田村:そうかもしれんね。天才過ぎて訳わからんところとか。
瑞樹:テンションもアゲ目のほうにシフトしています。これ、いつものパターンなんです。通し稽古が始まったあたりで「これ違うな」って急激に方向転換することがあるから、だからこそ、あまり役作りのスピードを飛ばせないんです。あとで大変なことになるから。たとえ福山さん風にやったとしても舞台の上だと棒立ちに見えちゃうからお客さんに伝わらない。大きくリアクションをとれる何かがないとね。
大樹:ロボット役は…感情は…(笑)
田村:演じることに対する感情はないけど、ロボットとしての感情は…?
大樹:ないですねー。ただ、演じているところをビデオで撮って確認したらすごい人間っぽかったんです。これはよくないなって。ある種「モノ」として存在しないとね。
――他のキャストのこともお伺いしたいのですが…製作発表のときに強烈なインパクトを残した*pnish*の土屋佑壱さんはお元気ですか?(笑)
田村:元気ですよ、もう(笑)
瑞樹:「劇団・土屋佑壱」を組織していますよ。子分を4人抱えて、何かを指導しているんですよ(笑)
田村:この座組でクーデターを起こしていますね(笑)
瑞樹:何か、変な芝居をしているって!
大樹:立ち回りも衝撃ですよ。どうしてあげたらいいんだろうと困るくらいで。そこで亮さんが「どう拾ってあげようかな」ということになるんですよ(笑)
瑞樹:僕らはもう慣れているからね。「あ、これいつものパターンだ」って。だから、僕はほっといたんですが、亮さんがそれを拾いにいくから…(笑)
田村・大樹:あははははは。
田村:彼は動きとかやっていることはすごくおもしろいんです。ただ、突然すぎて前フリがないからどうしようかと(笑)だからこそ、どうやってこれを受けたらいいんやろ、これを成立させるには…って思っちゃう。
瑞樹:それがアイツのいつものパターンです(笑)俺は絡まないほうを選びます!(笑)たぶん「劇団・土屋佑壱」の劇団員たちも「今この演技でいいのか…」と不安になりながらやっていると思いますよ(笑)
稽古の様子 (撮影=こむらさき)
――この話の流れで質問するのもアレですが…本作のタイトルにある「懲悪」に絡めて、今あえて懲らしめたい人は誰ですか?
瑞樹:さすがにこれは言えないでしょ!ヤバイでしょ!…わかりました、俺が言っときます。T・Yさんね(笑)理由は勝手に劇団立ち上げているから。劇団員たちが苦しんでいるから!
田村:他の稽古…ダンスとか殺陣の稽古とかもやりたいだろうに、彼に連れていかれて、よくわからないことをやらされているんです(笑)
瑞樹:めっちゃ稽古をしているんですよ。かわいそうに!休憩中とかに連れていかれるんです。みんな休みたいだろうに。彼はいいよ、出番少ないから!劇団員たちを休ませてあげて!しかも、大樹に「それ、カットするよ」って言われているのにまだやり続けるし。カットされるかもしれないのにやっている劇団員の気持ちを思うとねー(笑)
――その劇団の活動、止められないんですか?
大樹:タイミングを待っているんですよ。あと3回通しができるので、2回やったところで言おうかなーって(笑)
瑞樹:あれ、絶対スベると思うんですよ!
田村:僕、彼がすごいと思うのは「それスベる」って言われているのに、スベるスベらん関係なしに人にぐっと見せつける力があるところ。そのやりきる芝居はマジですごいと思うんです。俺ならスベったら一度それを崩して別のところでもう一コ(笑いを)もらいに行こうとするけど、彼はそのまま行こうとする。「ここはそういうシーンなんだ!」と思わせる能力があると思うんです。やっぱすごいなって。役者っぽいなって。
――別途、お呼び出しをかけたいですね。劇団員の皆さんに本音を聞く機会を。アフタートークとかやっていただけませんか?
田村:覆面座談会とかね。4人いる段階でもうばれてるけど(笑)
田村亮、佐野大樹 (撮影=こむらさき)
■日時・会場:
2016年5月19日(木)~22日(日)東京芸術劇場プレイハウス
2016年5月28日(土)~29日(日)新神戸オリエンタル劇場
■振付:OH-SE(電撃チョモランマ隊)
■出演:
佐野瑞樹 佐野大樹/
田村亮(ロンドンブーツ1号2号)/
鈴木勝吾 OH-SE(電撃チョモランマ隊) 五十嵐麻朝 有澤樟太郎 政岡泰志(動物電気)/
小野友広 平井浩基 磯村洋介 花塚廉太郎/
土屋佑壱(*pnish*) 原金太郎