近頃アツイ名古屋・円頓寺に、また小劇場が誕生! こけら落としは『楽屋』を上演
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perky pat presents 9『楽屋ー流れ去るものはやがてなつかしきー』チラシ
前回、当サイトで名古屋駅からほど近い円頓寺商店街に「カブキカフェ ナゴヤ座」がオープンしたとお伝えしたばかりだが、5月21日(土)にもうひとつ新たな劇場「円頓寺 Les Piliers(えんどうじ・レピリエ)」 が誕生する。小屋主は演劇プロデューサー・演出家の加藤智宏で、自身が主宰するperky pat presentsが、こけら落とし公演として3週にわたり毎週末『楽屋』を上演する。
円頓寺商店街を少し南に入った場所に位置する「円頓寺 Les Piliers」は、築80年~100年の七軒長屋の一軒を改装。戦禍を逃れた木造建築の室内には建築当時の柱や立派な梁が残り、その雰囲気を活かした木目の壁を設え、20~30名収容可能な小劇場に仕上げるという。名称の “Les Piliers”は、その名もフランス語で「柱」の意だ。
手前が「円頓寺 Les Piliers」。七軒連なる長屋の中には古酒バーなども
基本的には自主公演のみで運営し、上演前後や公演のない日には入口近くのスペースでバーも展開するのだが、実はここ、今年1月に『四人姉姉』の記事内で紹介した「バー・パプリカ」の移転先なのである。旧「パプリカ」同様に、夜な夜な演劇人たちが集う場になるはずだ。
しかし、取材日はオープン1週間前にもかかわらず、現場はこの状態(下の写真参照)。果たして間に合うのか少々不安だが、チラシには〈第一期工事終了こけら落とし公演〉と記載があり、プロデューサーがコメントしている通り、「場所は、ゆっくりと酒が熟成するようにできていく」ということなのだろう。
奥がアクティングエリア、手前が客席になる予定。中央の柱が名称の由来
そして、劇場オープンを飾る作品『楽屋』は、舞台裏で展開される4人の女優の壮絶バトルを描いた、清水邦夫の傑作戯曲である。1977年の初演以来、日本で最も上演されている戯曲とも言われ、4月末から東京の梅ヶ丘BOXで行われた【燐光群アトリエの会『楽屋』フェスティバル】では、なんと17団体が連続上演。音響・照明・セットがほぼ同じという条件下で、perky pat presentsも参加したのだ。今回、演出を手掛けた森秋音に、東京公演の様子や名古屋公演に向けての思いなどを聞いた。
── 『楽屋』はこれまで幾度となく上演されてきた作品ですが、プロデューサーから演出の依頼を受けた時はどう思われましたか。
まず、清水邦夫を知らなくて。それから調べて、日本で一番上演されているんだということを知りました。古典のセリフなどもいっぱい入ってたので、これまでどんな人たちがやったのかなという興味を持ちました。難しいなと正直思ったので、知り合いの方などに「高校演劇とか学生もやってるんだよ」と聞いて、馴染み深い作品なんだなぁというのが最初の印象ですね。
── 戯曲として、魅力を感じた点はありましたか。
古典のセリフが含まれているけれども、話の流れを邪魔しているわけではなくうまく取り入れられているので、役者のやりがいがある作品だなと思いました。流れ自体はしっかり固められているので、役者さんがどれだけ楽しめるか、というのがキーなのかなと。
稽古風景より
── かなり感情を爆発させる作品ですものね。
女優の業がものすごく込められた作品なので、「とにかくやりたいようにやってください」と(笑)。気持ち良く演じてもらわないと楽しくないだろうなと思って。話もわかりやすいですし、こけら落としで演劇にちなんだ女優の話をやれるということをまず第一に考えた方がいいんだろうなと思いました。
── 演出プランはすぐに思い浮かんだんですか?
最初にこうしようと思っていたプランと、加藤さんがキャスティングされた役者さんの印象が全く違ったので、現場に来て話しながら、「じゃあ、こうしていきましょうか」と変えていきました。
── みなさんご存知の役者さんだったんでしょうか。
名前も知らなかった人もいますし、過去に私の作品に出てくれた人もいて、まちまちですね。
── みなさんの第一印象はどうでしたか?
まず、大ベテランが2人いるっていうところで大丈夫かなと(笑)。でも若手もいたので、若手とベテランの方がご一緒することが名古屋はあまりないので、良い機会になればと思いつつ、私自身も学ばせていただければなと。
稽古風景より
── 舞台美術や音楽などはどのような感じにされたんでしょう。
舞台美術は、正直決められなかったんですね。小屋の空間がどんな感じなのか…。
── まだその時点では全く劇場が出来ていませんものね。
東京の「梅ヶ丘BOX」も未知の劇場だったので、与えられたものでやるしかないぁぐらいで。いつもは絵先行で決めていくんですけど逆だったので、役者さんにもぼんやりとしか伝えられず苦労はさせたなと思うんですが。音楽はいつも組んでくださる真都山みどりさんだったので、チェーホフの『かもめ』を上演中の話だからロシアっぽい感じで…と打ち合わせして、全部オリジナルで作っていただきました。
── 舞台美術は今も未定?
未定です(笑)。でも抽象よりは具象、本当に楽屋の部屋という感じになると思いますけど。「こういうものが欲しいです」と注文しましたが、その写真などもまだないので、現場に入って「あ、なるほどね」っていう感じでたぶんスタートします。なので、最初の週と3週目では小屋自体も進化していくと思いますし、役者さんもだいぶ練られていくんじゃないかなという楽しみはありますね。こけら落としというプレッシャーはあるんですが、こういうのも手作りの空間じゃないとなかなかないので、逆に楽しんでやるしかないかなと思っています。
稽古風景より
── 東京公演の反応はどんな感じでしたか?
前日入りはしたんですけど、小屋を見たのが当日の3時間前で。1日目はもうバタバタしてワーッと終わった、みたいな(笑)。正直、余裕がなかったなと思います。役者ももちろん、そんな環境でやることは滅多にないので。あまり記憶にないですけど、お客さんは皆さん優しかったなと思います。2日目は自分たちのペースで出来たので、「(参加団体の上演の中で)一番良かった」という声もいただいて。それはすごくありがたかったですね。
── 他の団体の方の上演は、アプローチの仕方など結構違いましたか?
最初に話した台本の印象にもつながりますけど、役者さんがどれだけ楽しんでるか、というので見え方がだいぶ違うなと。話の流れはあまり変わらないのに、最後に残るものが違うな、という印象でした。
── 東京での上演から演出的に変えられた部分はあるんでしょうか。
結構変えてますね。東京は70分で収めるというルールで、普通に上演してもギリギリだったので力技で押していったところが非常に多くて。役者さんの持ち味などを活かせていなかったので、その点は名古屋に帰ってきたらちょっと変えたいなと思って、いま変えてるところではあります。
── 東京公演とは、また別物という感じになるんですね。
そうしたいと思っています。
前列左から・藤島えり子、藤崎アンジェ 後列左から・金原祐三子、演出家の森秋音、プロデューサーの加藤智宏、長縄都至子
■作:清水邦夫
■演出:森秋音(ヨテラシイチ)
■出演:金原祐三子(avecビーズ)、長縄都至子(劇団きまぐれ)、藤島えり子(room16)、藤崎アンジェ(猛烈キネマレコード)
■日時:2016年5月21日(土)14:00・19:00、22日(日)11:00・15:00、28日(土)14:00・19:00、29日(日)11:00・15:00、6月4日(土)14:00・19:00、6月5日(日)15:00 ※平日不確定公演(5月27日(金)・6月3日(金))もあり。公演時間は当日18時に決定。Twitter @perkypat1962 または 090-1652-4591(加藤)で確認を(上演は19時半以降)。
■会場:円頓寺 Les Piliers(名古屋市西区那古野1-18-2)
■料金:一般/前売2,500円、当日2,800円 学生以下/前売1,500円、当日1,800円 ※平日不確定公演は一般2,000円、学生以下1,000円(いずれも当日券のみ)
■アクセス:名古屋駅から地下街ユニモールを抜け、「国際センター」駅2番出口へ。地下鉄桜通線「国際センター」駅2番出口から北東へ徒歩5分
■問い合わせ:office Perky pat 加藤 090-1620-4591 rsm87200@nifty.com
■公式サイト:http://officeperkypat.web.fc2.com/