三浦春馬や佐藤健の意識の高さ、低予算と大作映画の違いまで……アクション監督たちが語りまくる『アクションサミット』レポート前編

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2016.6.8
谷垣健治氏をはじめとする日本屈指のアクション監督たち

谷垣健治氏をはじめとする日本屈指のアクション監督たち

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4月29日、新宿・ロフトプラスワンでアクション監督、俳優、スタントマンらが一同に会したイベント『春のアクションまつり』が開催された。同イベントで、その年の日本で最も優れたアクション俳優、スタントマン、アクション監督、そして作品を決める『第4回ジャパンアクションアワード』各賞が決定したのは以前の記事で触れたとおり。今回お届けするのは、同イベントの後半に設けられた、日本アクション業界の現在と未来を語るトークコーナー『アクションサミット』のようすだ。多忙を極める日本屈指のアクション監督たちが本音で語り合う機会は、今後いつ訪れるかわからない。SPICEではその貴重なトークの詳細を、前・後編2回にわたって詳しくお伝えしていく。

『アクションサミット』に参加したアクション監督、アクション・スタントコーディネーター、俳優は以下のような面々。『るろうに剣心』の谷垣健治氏をはじめ、誰もが一度は参加作品を観たことがあるであろう一流のプレイヤーたちばかり。※以下、敬称略

谷垣健治
映画『るろうに剣心』シリーズなど多数の作品でアクション監督をつとめた。「宇宙最強」の異名を持つアクションスタードニー・イェンの盟友として、多数の香港・中国映画にもスタントコーディネーターとして参加。日本俳優連盟アクション部会委員長。

辻井啓伺
ジャパン・アクション・クラブ(JAC)出身で、『宇宙刑事ギャバン』『大戦隊ゴーグルファイブ』などのスタントも経験したベテラン。近年も映画『テラフォーマーズ』『クローズZERO』シリーズなど、多数の作品でスタントコーディネートを担当。Stunt Japan代表。

下村勇二
映画『VERSUS -ヴァーサス-』、『GANTZ』シリーズ、『図書館戦争』シリーズ、『アイアムアヒーロー』などのアクション監督。ドニー・イェン作品にもスタントコーディネートなどで多数参加。ユーデンフレームワークス所属。

田渕景也
映画『HK/変態仮面』シリーズアクションコーディネーター、『進撃の巨人』シリーズスタントコーディネーター、ドラマ『仮面ライダーアマゾンズ』アクション監督などを担当。Stunt Japan所属。

横山誠
米ドラマ『パワーレンジャー』シリーズ、ドラマ『牙狼』シリーズなど、多数のドラマ・映画で監督およびアクション監督を担当。AAC STUNTS代表。

坂本浩一
米ドラマ『パワーレンジャー』シリーズ監督およびアクション監督など。映画『破壊王 DRIVE』ほか、海外作品でアクション監督などを担当。日本でも、ドラマ『仮面ライダーフォーゼ』『仮面ライダーゴースト』や、映画『俺たち賞金稼ぎ団』など多数の作品を監督。アルファスタント所属。

坂口拓(TAK∴、匠馬敏郎)
映画『VERSUS -ヴァーサス-』『デス・トランス』『極道兵器』などの主演、『魁!!男塾』などの監督、『TOKYO TRIBE』『虎影』などのアクション監督。

鈴村正樹
映画『片腕マシンガール』『デッド寿司』アクション監督など。『るろうに剣心』ほか多数の作品にもスタントで参加。現在は、ドラマ・映画『HiGH&LOW』アシスタント・アクションコーディネーターも。

園村健介
『東京無国籍少女』『珍遊記 -太郎とゆかいな仲間たち-』『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』『BUSHIDO MAN』など多数のアクション監督、『GANTZ』シリーズ、『ディストラクション・ベイビーズ』などのアクションコーディネーター。ユーデンフレームワークス所属

高瀨將嗣
ドラマ『特捜最前線』、ドラマ・映画『あぶない刑事』シリーズ、ドラマ『刑事貴族』シリーズ、『七星闘神ガイファード』、映画『ビーバップ・ハイスクール』シリーズ、『カムイ外伝』など多数作品の殺陣師。『ファンキー・モンキー・ティーチャー 2 東京進攻大作戦』『嗚呼!!花の応援団』(96年)など監督作も多数。高瀬道場主宰。日本俳優連合常務理事。

三元雅芸
俳優。『AVN/エイリアンVSニンジャ』『忍者狩り』主演など、アクション作品への参加多数。ゲーム『龍が如く』シリーズの主人公・桐生一馬のモーションアクターも担当。『極道大戦争』『忍者狩り』『虎影』出演で第4回ジャパンアクションアワード・ベストアクション男優賞最優秀賞を受賞。谷垣健治の下でスタントマンの経験も。


クロストークは、横山氏の司会で進行。前半はアクション映画に出演する若手俳優たちについて、実写映画化でのアクションの扱い、製作予算の大小が現場にもたらす影響など、話題は多岐にわたった。
 

三浦春馬、佐藤健……増えるアクション意識の高い若手俳優たち
 

左から、谷垣健治、辻井啓伺、高瀨將嗣、園村健介、三元雅芸、田渕景也、下村勇二、鈴村正樹、坂口拓、坂本浩一(敬称略)

左から、谷垣健治、辻井啓伺、高瀨將嗣、園村健介、三元雅芸、田渕景也、下村勇二、鈴村正樹、坂口拓、坂本浩一(敬称略)


横山:まず、坂本さん。(最近の)役者さんについてどう思われますか? アクション映画を作っている、作っていく人間として。

坂本:身体能力が高い方が増えてきているので、これからどんどん参加していただけると撮る側としては嬉しいですね。

横山:高瀬さんが(『ビーバップ・ハイスクール』の殺陣師を)やってらした頃は、仲村トオルさんたちは協力的だったんですか?

高瀬:クランクイン前、だいたいひと月びっちりリハーサルしてくれましたから助かりましたね。その頃はクランクイン前のリハーサルはあまりなくて、おおむね現場で手順を組んでいくスタイルだったんです。そこから今の若手のみなさんがそのあたりを盤石にして下さって、撮影前のリハーサルがスタンダードになったのは、とてもいいことだと思いますね。

横山:田渕さん、(『進撃の巨人』撮影時は)三浦春馬さんはどんな練習をしてらしたんですか?

田渕:今の日本のスタントマンは分かっておいたほうがいいと思うのは、「みんなは彼(三浦)に勝ってるのか?」ということですね。これだけは言わせてください。今、日本ではワイヤースタントをいっぱいやってますけど、ぼくはちょっと「やりすぎたことが間違っている」と思ってるんです。ハーネスを付けて、天井に吊られて、(ワイヤーに)テンションがこう掛かって、吊られるからこういう動きをしなきゃいけない。そういう、スタンドイン(※編注:俳優の代わりに動きをテストするスタントマン)の見せ方が、たぶん彼(三浦)にとってはNOだったんですね。

谷垣:(動きが)ワイヤー合わせになってるということですね。

田渕:そう。スタンドインが「カメラに合わせるだけだろう」という見せ方をしていたのが、彼らに火をつけたと思うんです。彼らがやる動きの自由度は、誰にも真似できなくてスゴイですよ。ワイヤーが切れることなんてまず考えないし、落っこちて、マットがあろうがなかろうが関係ない。自分自身の動きをやるだけだから、ほぼ一発OK。しかも、ノーテストでやっています。「スタンドインである程度引き手の練習だけはしたんだけど。三浦くん、どうしよう? 一発でカメラ回してみようか?」と言って、実際にやったら誰も勝てなかった。
 

田渕景也氏は『進撃の巨人』三浦春馬のスキルの高さを語り、スタントマンに激をとばす

田渕景也氏は『進撃の巨人』三浦春馬のスキルの高さを語り、スタントマンに激をとばす


辻井:ぼくたちはスタントマンの新人に教えてますけど、彼らに半年、1年教えるより役者さんに1週間教えたほうが覚えが速いですよね。やっぱり、モノが違うというか。ちょっとスタントマンは頑張らなきゃダメだよ。

谷垣:役者さんについては、昔は「カメラに合わせた芝居」がアクションの基本と言われてましたね。ワイヤーも最初は自分で飛ぶんじゃなく、「ワイヤーが切れやすいから、(引っ張られるのを)感じてから芝居しなさいね」と。ところが、今の役者さんだと……例えば、佐藤健は速くてトラック(※編注:動きを追うこと)できなくて、(スピードを)遅くするよう言ったら、「絶対に嫌だ」って言うじゃないですか。今は芝居の流れとして、彼ら(アクション部)が役者に合わせることが多くなってきている。自在感というか、自由さでは敵わない、というのはありますね。

田渕:引き手も、そこはよくないと思うんですよね。引く瞬間に(ワイヤーの)テンションを張ってなきゃといけないとか、芝居を不自由にさせているだけというか。昔みたいな0.5ミリのワイヤーと違って切れないんだから、もうガンガンゆるませといて、自由に動くのをぼくらがどう撮るか、というのをやってかないと。

横山:坂口さんはどう思われます?

坂口:俺はワイヤーが嫌いなんで、特に何も思わないですね。自分の力でぶっ飛ばすのが俺のやり方。気に食わないやつがいたらぶん殴る。

一同:(爆笑)    
 

漫画の実写映画化でアクションに求められるもの
 

ベテランの辻井啓伺氏はトークのボケ担当

ベテランの辻井啓伺氏はトークのボケ担当


横山:みなさん、漫画原作をやられることが多いですよね。どんなところに注意したり、どう思ってやってるんでしょうか? 『アイアムアヒーロー』の下村さんお願いします。

下村:何度かやらせてもらってますけど、ぼくは原作が好きで、「実は実写化するんだ?」というところから入っていきます。読者目線というところもあって、世界観を重要視してアクションも作っていくんですけど、映画なんで2時間の枠に収めなきゃいけないので、やっぱり変えなきゃいけない部分もある。でも、それってお客さんには伝わらない部分もあって……やっぱり、何をやっても言われるんですよね。賛否両論はつきものなんですけど、つねにベストは尽くしてるつもりではあります。

辻井:高瀬さんの『ビーバップ・ハイスクール』も聞きたいですね。

高瀬:30年前の話なんですが……。

辻井:(実写映画化の)走りですから。

高瀬:結論から言うと、いわゆる劇画・漫画の原作があれば、極力そこに映画のキャラクターを合わせていくというのが、大事だと思うんです。映画は映画で咀嚼していってしまうと、劇画や漫画のファンが引くんですよ。ですから、やはり人相・風体は似てないといけない。それが馴染んでいくと、もちろん漫画の通りではないにしても、「映画のキャラクターが漫画になればこうなるんだな」と、逆の納得をしてもらえる。実は『ビーバップ』のさらに10年前になるんですけど、わたしがこの業界に入った頃の作品『嗚呼!!花の応援団』、これもやっぱり劇画原作だったんです。

辻井:はいはい。

高瀬:日活が左前になっていたときに、その収入で一気に盛り返したという伝説の作品です。このとき、パート1の主役の方は原作にはあまり似ていない、非常にいかつい、東海大の剣道部の元主将の方だったんです。一方、パート2はまったくソックリの方だった。ところが、前作の勢いは続編には結びつかず、パート1のキャラクターが漫画に勝ったんです。これは皮肉なケースだったと思います。ただ、いかに劇画・漫画原作に登場人物を似せるかというのは、究極のテーマだと思いますね。

辻井:ぼくは、原作をどこまで監督がリスペクトしているかだと思うんですよね。これをこう見たいんだっていう、読者の期待に応えるっていうのは、やっぱり監督のリスペクトが必要だと思います。ぼくなんか、原作を読まないし。

横山:あらま(笑)。辻井さん、『クローズZERO』やってますよね。

谷垣:『テラフォーマーズ』もやってます。

辻井:今度は『無限の住人』もやります。そうなんですけど、やっぱり監督のリスペクトだと思います。すいません(笑)。

大作映画と低予算映画、アクションの現場はどう違う?
 


横山:みなさん、ビッグバジェット(大きな予算の作品)をやってますけど、ローバジェット(低予算の作品)の話もしてもらいたいんです。坂本さん、園村さんはローバジェットも結構やってますよね。ビッグバジェットとローバジェットはどう違うんでしょう?

坂本:だいたいのローバジェットって、基本的に撮影スケジュールが平均10日から14日間くらいしかないんです。しかも、事前にリハーサルを組んでビデオコンテ(※編注:アクションの全体像を理解してもらうための映像。絵コンテの映像版)を撮る時間もまったくない。例えば、ぼくが(監督として)ドラマを撮影している間に、アクション部がアクションを作って確認しながらやっていく。役者さんについても、ラッキーなら何日かリハーサルできるけど、基本的には現場で教えるしかないスケジュールしか組まれない。そういうときに逆にアクションができる役者さんを使えるか、というと、やっぱり映画を売らなきゃいけないから、(俳優には)名前がなきゃダメ。そういうジレンマがありますよね。その中でどれだけ上手く撮影して、上手く見せて、どれだけアクションに時間を費やせるか、どういうアクションを見せていくか、というところが勝負どころ。ローバジェットって、お弁当みたいにいつも具材が同じで、毎回どういう風に調理するかの問題なんで。そこが面白いところでもあるし、大変なところでもある。ちょっと哀しい話ですけど(苦笑)。

横山:どっちが楽しいですか?

坂本:自由度で言うと、低予算のほうが色々とやらせてはくれます。「こうしてください。ああしてください」と言う人も少ないですし。自分は結構監督をやらせてもらっていて、自分が決めたらその方向で進んでくれるので、それはそれで楽しいんですけど。でも、表現的に「ここはああしたい、こうしたい」というのが出来ないジレンマもあります。谷垣くんとか下村くんを見てると、「ああ、いいなあ。俺もやりてえなあ」と。

横山:園村さんは、『東京無国籍少女』は何日くらいで撮ったんですか?

園村:アクションシーンは2日間だけですね。リハは先で5日間、あと、アクションつけるので1日です。

辻井:すごい!

横山:ちなみに、ローバジェットとビッグバジェットどっちが好きですか?

園村:個人的には、ローバジェットのほうが楽しめる部分が多いです。あと、ずっと集中してやるのでテンションが続くというか。ワンカット、ワンカットでセッティングに時間がかからないじゃないですか。これ撮ったら、次撮って、次撮って……という集中力が画に出ている気がするかな、と。

横山:なるほど。ローバジェットというと、ぼくは『VERSUS ヴァーサス』(下村アクション監督、坂口主演)を思い出すんですけど。あれは合宿のようなかたちで撮ったんですか?

坂口:あれ、1年くらい拘束……監禁されて。

一同:(爆笑)

坂口:別にプロでもなんでもなかったので、メシとかも食えなくて、ずっと映画を撮ってたよね。

下村:そうですね。群馬の山奥で、ほんとに監禁状態じゃないですけど、映画を撮るだけという。撮影したら夜はみんなでリハーサルをして、また朝になったら撮影をする、の繰り返し。一年かかったので……やっぱり四季があるんですよね。寒くなってくると、雪が降ってくるんで、どんどん(ロケ地が)南下していくんですよ。

一同:(笑)

下村勇二氏と坂口拓(左から3番目と4番目)は10年以上の盟友

下村勇二氏と坂口拓(左から3番目と4番目)は10年以上の盟友


下村:どんどん大阪のほうに下りて行って、また暖かくなってくると東京のほうに戻る、という繰り返しなので。15年くらい前で、まだぼくたちがプロになる前だから、「何かここで一石を投じたい」という思いがあったので、ある意味、制約のない中で自由にはやってましたね。

坂口:自由しかなかったよね。

下村:そうですね(笑)。お金もないんで、自由しかなかったです。

坂口:「好きなことをやろう!」っていうね。当時はワイヤーも(日本でほかに)全然やってなかったくらいだもんね。俺、3回くらい勇ちゃん(下村氏のこと)にワイヤー切っていただいてね。

下村:(苦笑) フィルムは1秒に24コマあるんですけど、当時はワイヤー1コマ消すのに1万円くらいかかったんですよ。今みたいにCGで簡単に消せないんで、ワイヤーを使うんだったら現場で秒数を決めなきゃいけなかった。あとは、見えないようにギリギリ1.5ミリのワイヤーに黒マジックを塗って。

横山:下村さんは今、『アイアムアヒーロー』をやられてますが、志とか、コントロールできることとか、(ローバジェットと)違いますか?

下村:予算が増えれば増えるほど期間も増えるし、スケールも大きくなるんですけど、作品にもよりますね。大作は、どうしてもつじつま合わせで、ほんとは自由にやりたいアクションがどんどん抑えられていく傾向が強いです。最近はネットもあるので、やっぱりツッコミも多いんですよ。アクションに対しても、ドラマに対しても、「嘘なんじゃないか」「やりすぎじゃないか」と。プロデューサーの意見も入って、どんどん整合性を求めていくと、アクションというよりもただの喧嘩、格闘技になる。リアリティを求めすぎて面白くなくなってくるんです。そういう面では、なんとか微妙なラインで戦ってはいますが。

辻井:言っときますけど、この人(谷垣)とこの人(下村)、ローバジェットだろうがビッグバジェットだろうが、好き勝手やってますから。

谷垣:いやいや、ぼくも我慢してますよ!

横山:谷垣さんは、『るろうに剣心』では好き勝手できたんですか?

谷垣:できました。

一同:(爆笑)

谷垣:予算が増えることで、時間も人も多くなって、アクション部という構成が分厚くなるっていうのがすごくありがたい。分担して作業が出来るから、色んなことが見渡せて、逆に自由になれるかな、と。どうせ10日もらったって、3週間ぶんぐらいの分量を考えるじゃないですか。結局、どんな作品でも1週間足りなくて、1,000万円くらい足りないような気がしていて。『るろうに剣心』だって、エンディングに8日間というのは、少なくはないけど、多くもない。例えば、ドニー・イェンが「健治、俺が『カンフー・ジャングル』のエンディングを何日で撮ったか知ってるか?」って言うんで、「いや、知らない」って答えたら、ドニーは「19日だよ!」と。

辻井:「たった19日で撮れたんだ」っていうこと?

谷垣:そうそう。「こんな短期間で撮れたんだ。スゲエだろ?」と。それと同じで「8日もかかったんですね」という人もいれば、「(たった)8日で撮ったの?」という人もいる。時間の制約って、結局そういうことじゃないですか。でも、海外では、ドニー・イェンの作った映画だろうが、ぼくらが作った映画だろうが、同じアクションだから言い訳できないわけじゃないですか。だから、バジェットが低かろうが高かろうが、その中でどれくらい面白いことをするかに懸けるしかないかな、と思うんですよ。時間がなくて、「1分でも面白いところを撮るしかない」となる場合もある。自由っていうのは、誰とやるかにもよりますよ。もちろん、バジェットにもよるんだけども。

横山:鈴村さん、『HiGH&LOW』は、はたから見ると、「スタントマンをたくさん持っていきやがって、この野郎!」と(いうくらいビッグバジェットだと)思うんだけど。

辻井:40人ですよ、40人! 40人を2週間拘束したんですから。

谷垣:3週間ですよ。神戸に3週間!

鈴村:神戸で40人、大阪で100人とか使うんです。

 

一大プロジェクト『HiGH&LOW』で大内貴仁アクション監督のアシスタントをつとめている鈴村正樹氏

一大プロジェクト『HiGH&LOW』で大内貴仁アクション監督のアシスタントをつとめている鈴村正樹氏



横山:ということは、自由度も厚みもあったってことですよね? 特に劇場版。

鈴村:谷垣さんがおっしゃっていたように、時間があるけどそれ以上のことを考えるのが大内アクション監督なんで(笑)。その中で大暴れをして、削るところは削って。みんながみんなハッピーになることはないんで、『HiGH&LOW』に関しては、アクション部はやれることはやった、という感じですね。

横山:ローバジェットでも熱量はあるってことですね。でも、みんなビッグバジェットになっても熱量は変わらずやってるみたいなんで、来年のアクション映画も楽しみだな、と思います。


次回、『アクションサミット』後編では、日米スタントマンの給料事情や、保険制度、高齢化などシリアスなテーマで激論が繰り広げられる。

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