#野水映画 “俺たちスーパーウォッチメン” 第五回レビュー『ノック・ノック』

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2016.6.10

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

あなたに愛する彼女や家族はいますか? もし美しい女性に迫られたら、断れますか? …なんて。そんな、答えに一瞬戸惑ってしまうような質問を投げかけてくる作品、『ノック・ノック』を今回は紹介する。

1977年公開の『メイク・アップ 狂気の3P』(77)をもとにしたこの映画。以前紹介した『グリーン・インフェルノ』(13)に続いて、残酷王子・イーライ・ロス監督がてがけている。「え、てことはまた人を食べたり人体損壊したりするの!?」と思った方はどうぞご安心を! 今回は血しぶき飛び交うガッツリホラーではなく、精神的に抉られるようなスリラーとなっている。結局どこかしら“イタイ”のは変わらないけれど。
 

絵に描いたような理想的な家庭。メガネのおじさんは、芸術家でもある奥さまのマネージャー © 2014 Camp Grey Productions LLC

絵に描いたような理想的な家庭。メガネのおじさんは、芸術家でもある奥さまのマネージャー © 2014 Camp Grey Productions LLC

 

美しい妻と子どもたちに囲まれ、幸せに暮らす優しい父親のエヴァン。彼は週末、バカンスに出掛ける妻と子どもを見送り、急な仕事のため1人で留守番をすることに。どしゃ降りの雨となった深夜、玄関をノックする音が。仕事の手を止めドアを開けると、そこにはびしょ濡れの若い女性が2人たたずんでいた。エヴァンは道に迷った2人を助けようと家に招き入れるのだが、そこから悪夢のような出来事がはじまる……。

必殺のスケスケTシャツ作戦で攻勢をかける2人 © 2014 Camp Grey Productions LLC

必殺のスケスケTシャツ作戦で攻勢をかける2人 © 2014 Camp Grey Productions LLC

凍える2人に暖を取らせ、タクシーを手配するエヴァンの優しさにどんどん付け込んでいく、美しいジェネシスとベル。演じるのはロス監督の若き妻でもあるロレンツァ・イッツォと、「世界で最も美しい顔100人」で31位に選ばれたアナ・デ・アルマス。そりゃそんな2人に大胆に迫られたら、私でもドキッとするよ!! 「経験豊富な年上がいい」「ただの○○○○」(ハレンチなので私の口からは言えやしない!)などと奔放にエヴァンを誘うような発言を連発する2人に対し、エヴァンは面食らいうろたえてしまう。体に触れられる度、落ち着かない様子で座る場所を何度も変える。

 
左から、ロレンツァ・イッツォ、キアヌ・リーブス、アナ・デ・アルマス © 2014 Camp Grey Productions LLC

左から、ロレンツァ・イッツォ、キアヌ・リーブス、アナ・デ・アルマス © 2014 Camp Grey Productions LLC


2人に「実年齢には見えない」と言われるほどハンサムで理想的な父親のエヴァンだが、彼女達に翻弄され惑わされ、ただの野暮ったい中年男性に引き戻されてゆくのだ。

主役・エヴァン役を演じるのは、なんとキアヌ・リーブス! キアヌといえば、『スピード』、『マトリックス』など、“カッコイイアクション俳優”というイメージが強いかと思う。最近はひとりぼっちの姿がよく激写されたりと少し心配されることもあったが、昨年公開の『ジョン・ウィック』で「キアヌ・リーブス完全復活!」と謳われ、アクション映画に返り咲いたのが記憶に新しい。そんなキアヌがまさかイーライ・ロスとタッグを組むとは!! しかも、プロデューサーに名前を連ねるほどの力の入れようだ。この異色のタッグに私がワクワクしないわけがない!
 

ナイフと鍋を手にとるキアヌ。この後大変なことになります © 2014 Camp Grey Productions LLC

ナイフと鍋を手にとるキアヌ。この後大変なことになります © 2014 Camp Grey Productions LLC


満を持して観させていただいたのだが、やはりキアヌの演技が圧倒的だった。いや、圧倒的といっても今回見られるのは、もちろん普段のクールなキアヌではない。若い女の子にいいようにされあたふたし、自由を奪われ半ベソで叫ぶ情けないキアヌだ。こんなキアヌ・リーブス、今までに見たことがあるだろうか?ある意味でとてつもなく気合の入った芝居だと言えよう。そして、ジェネシス役のロレンツァ・イッツォ。『グリーン・インフェルノ』では食人族に食べられそうになり恐怖におののいていた彼女だが、今回は打って変わって、腹の底が読めない悪女に徹している。

家の中のワンシチュエーション、ほぼ3人だけで進んでゆくこの作品。最後までそのままいくかと思いきや……ちょっと驚きの展開が待っている。今までよりも彼女達の恐ろしさが垣間見えるそのシークエンスは、観ているあなたにさらなる刺激と絶望を与えてくれるに違いない!
 

当然こうなりますね © 2014 Camp Grey Productions LLC

当然こうなりますね © 2014 Camp Grey Productions LLC


エレン・ペイジがヒロインを務めた『ハードキャンディ』(05)も、当時社会問題となった、日本の“オヤジ狩り”にヒントを得て作られたというが、こちらも現代社会に合致した作品と言えるだろう。『グリーン・インフェルノ』では昨今の“若者”の特徴をうまく捉えていたロス監督。その監督が“iPhone世代”と呼ぶ若い世代は、SNSなどを見栄のために使いこなし、相手を攻撃する方法をよく知っている。そんな若者に狙われた年長者は、果たして太刀打ち出来るのか。

男性と女性で感想が分かれそうなこの作品。カップルで鑑賞して意見を交わし合うのもオススメなので是非!

映画『ノック・ノック』は6月11日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開
 

イベント情報
『ノック・ノック』​
 
© 2014 Camp Grey Productions LLC

© 2014 Camp Grey Productions LLC


原題:Knock Knock
(2015/アメリカ/99分/シネスコ/デジタル)

監督:イーライ・ロス
脚本:イーライ・ロス、ギレルモ・アモエド、ニコラス・ロペス
出演:キアヌ・リーブス、ロレンツァ・イッツォ、アナ・デ・アルマスほか

配給:日活/東京テアトル

【ストーリー】
家族思いの献身的な父親・エヴァン(キアヌ・リーブス)は週末に仕事の都合で一人留守番をすることになる。その夜、ドアをノックする音がし、開けるとそこには雨でずぶ濡れになった二人の美女が立っていた。ジェネシス(ロレンツァ・イッツォ)、ベル(アナ・デ・アルマス)と名乗る二人は道に迷ってしまったため助けを求めていた。彼女たちに暖をとるように招き入れるエヴァンだったが、それは破滅の道への第一歩だった。
 
© 2014 Camp Grey Productions LLC

 

野水伊織 関連情報
京都アニソンスペシャルライブ

日程:8月20日(土)
時間: 開場15:00/開始 16:00
会場:KBSホール(京都府)
:前売 4,980円(税込) / 当日 5,480円(税込)
※当日ワンドリンク制(500円)

出演: AiRI/アース・スター ドリーム/千菅春香/野水いおり/MICHI/Luce Twinkle Wink/Ray

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