舞台『黒蝶のサイケデリカ』山田ジェームズ武&北村健人にインタビュー「裏切りまくりますよ、この物語は!」
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山田ジェームズ武、北村健人
恋愛アドベンチャーゲーム、通称「乙女ゲー」の人気作品を原作とした舞台「黒蝶のサイケデリカ THE STAGE」が8月3日(水)から紀伊國屋ホールにて上演される。一人の少女が眠りから目覚めると、そこは初めて目にする謎の館だった。自分の名前はもちろん、これまでの記憶をすべてなくし、元の世界に戻ることもできない中、少女は同じように記憶をなくした若者たちと出会う。何故この館にいるのか。どうすればここから出られるのか。謎の人物からの命題の意味は…幻想怪奇な館で繰り広げられる、サスペンスラブストーリーだ。本作の主人公、緋影(ひかげ)を演じる山田ジェームズ武と、山都(やまと)を演じる北村健人にこの謎の物語について話をきいた。
――原作のゲームは、やってみました?
山田:今ちょうど進行中です。少しずつやっています。ものすごく序盤ですが。
北村:僕もやっているんです。先ほど原作者の方に伺ったら、どうやら本筋は終わっているみたいです。
山田:おおお!
――ゲームはもともと得意なほうですか?
北村:そんなことはないんですけどね。ネットの力を借りて……(笑)。
山田:ちなみに自分のキャラを選んだんですか?
北村:もう、山都びいきで!
山田ジェームス武:緋影役、北村健人:山都役 (撮影=こむらさき)
――原作ファンがたくさんいる作品の舞台に出ることになりましたが、お気持ちは?
山田:もともとファンの人がたくさんいて、その人にとって大事な作品だったり、心の助けになるような作品だったり……。いろいろな想いがあると思いますが、そこに僕らが横から入ってきた状況なので、舞台版の『黒蝶のサイケデリカ』がその人にとって大事な作品になるきっかけになればいいなと思っています。
北村:原作のキャラクターをお借りしてやっている立場だと思うので、役者としてやらせていただくからには、物まねとか心がないようなものではなく、舞台としてそこに生きているというところを意識しながらやっていきたいですね。
――そもそもこのお仕事をいただいたときの第一印象は?
山田:僕は『乙女ゲー』というジャンルのイメージで、もっとベタベタな恋愛ゲームだと思っていたんです。実際ゲームを手にしてみるとサスペンス要素が多くて、ドラマ感、映画、ストーリー構成が本当に好きで。『乙女ゲー』というよりはアクションゲーやRPGとかいろいろな要素が混ざり合っている、たくさん楽しめる作品だなと思いました。
北村:ストーリーがしっかり作りこまれているなって。普段、本を読むのが好きなんですが、本当にミステリー小説を読んでいるような内容で、乙女作品は何度かやらせていただいたことがあるんですけど、その中でも一人一人の掘り下げ、ストーリーとの絡み、男性としても展開が読めないところがおもしろいですね。
山田:どっちかというと恋愛がスパイス的ですよね。僕は乙女ゲー自体好きなので!『ときメモ』(ときめきメモリアル)とか『ラブプラス』もやっているし!
北村:それは自分の御趣味ですか?
山田:はい、御趣味で(笑)。いい出会いがないとゲームで探すというか(笑)。
北村:メモしておきます(笑)。
山田:そういうのをやっていると、どうしても内容にゲームならではのいやらしさがある。わざとキュンキュンさせたり、相手を落とすために自分を磨く…というのがベースにあるじゃないですか。でも『黒蝶』はみんなが助け合ってそこから抜け出すために躍起になっている場面で一瞬出てくる「素」に恋をしたり……お互いが作りこんでみてきたものではなく、自然に出てきたものに恋をする、その恋愛観が映画やドラマのようで。引き込まれますね。
北村:恋愛の前に「人を想う」ということが大切で、その中に垣間見える「男としての魅力」がキャラクターごとにあって、プレイヤーの女性は「私はこの人がすき」「あの人が好き」って思うんだろうなと思います。
北村健人:山都役 (撮影=こむらさき)
――ご自身のキャラクターについての印象は?
山田:緋影は、めちゃくちゃ大人ぶっててクールで、ちょいちょい垣間見える天然さとかやさしさ、抜けた部分もあって。ゲームをやっているうちに、こっちが「素」の緋影だろうな、と思うときがあります。大人ぶっている部分はあくまでも作っている部分で、いろいろ抱えている何かを無意識に心の奥底に押し込めてクールぶっているように思いますね。
北村:山都は、最初、仲間の中でも和を乱す、協力的でない役で、第一印象の「ぶっきらぼう」そのままかと思っていたんですが、途中から豹変して、みんなが記憶を取り戻しながら絆を深めていくときに、ヒロインの紅百合(べにゆり)にとって心のよりどころになるようで。恥ずかしいし照れ屋だからつっぱねたりするんですが、男の子にありがちな、「好きだからいじめちゃう」の感覚に似てて、かわいらしいなと思いますね。
――お二人の役って途中、一瞬繋がるときがあるじゃないですか。
山田:「え?あれ?そういう設定なの!?」って思いましたね。
北村:「●●(ネタバレにつき伏字)だったの?」って思いました。
山田:ね、裏切りまくりますよね、この物語。
山田ジェームス武:緋影役 (撮影=こむらさき)
――今は脚本を読みこんでいる時期かと思いますが、本の段階でどのあたりが見どころとなりそうですか?
山田:お互いの存在を理解してきた瞬間、バラバラだったピースがまとまっていくところはワクワクするし、次は?次は?? と、どんどん先を知りたくなるので、そこらへんはぜひ観てほしいです。前半はそれこそ恋愛シミュレーション的な要素のほうが強いけど、途中からそれまでのストーリーの伏線をどう回収していくのかがおもしろいと思います。
北村:他のゲームや原作と比べて、原作ならではの設定があまり複雑ではないので、予備知識がなくてもミステリーが好きな方は好きだろうし、謎解きをしながら観ていけると思うので、そういう点では幅広い人に楽しんでいただける作品になるかと思います。
――さきほど、自分が演じるキャラで原作ゲームをしている、という話が出ましたが、もし自分以外のキャラクターで、と言われたらどのキャラを選びますか?
山田:俺は山都! ツンツンしているところもあるけど、男らしいし、一番頼りがいがありそう。ほわっとしたやさしさもあるし、突き放されつつも見ていたい。いちばん恋愛観が出そうだし……。
――乙女ゲーをやりこんでいる感満載のコメントですね!
山田:人としては鴉翅(からすば)が尊敬できますね。
北村:鴉翅、いいですよね!
山田:鴉翅は、あそこまでキャピキャピしているのに、憎めないし、根っこの部分でいいものを持っているんだろうなって。俺はああいう人になりたい。
北村:僕は、「手を差し伸べたくなる」という意味で紋白(もんしろ)ですね。一途で不器用で、伝えたいことがいっぱいあるのにボキャブラリーが足りないから伝えきれなかったり。見ていて切ないです。だから、こっちが踏み込んでいかないと……支えたくなりますね。
山田ジェームス武:緋影役、北村健人:山都役 (撮影=こむらさき)
山田ジェームス武:緋影役、北村健人:山都役 (撮影=こむらさき)
――今回、主に拳銃を使うガン・アクションがメインとなりそうですが、そもそもアクション経験は?
山田:好きではありますが、得意じゃないんです。
北村:僕は一年くらい練習してました。でも、どうもこの舞台では、ガン・アクションというより、“ダンス・ガン・アクション”らしくて!
山田:本当に!? 俺、ダンスできないよ(笑)。
北村:某演出家さんからその言葉が出まして。ダンス・ガン・アクションにするって言ってたんです。新ジャンルですね。今思っているイメージより派手になりそう。
――話の流れ的にも緋影は撃つ回数が多そうですしね。
山田:やばいですねー。踊りながら撃つのかよー!
――この作品では、各キャラクターが身に着けている何かが「お守り」の役割を果たしているという設定があるようですね。お二人にとっての「お守り」って何かありますか?
北村:僕、お守りってほどではないんですが、身に着けるアクセサリー、例えば腕時計は成人式に父親からもらったり、とかアクセサリーは憧れの先輩、お世話になった先輩が身に着けていたブランドを選んだりとか、母親からもらったパワーストーンとか、そういう想いがあるアクセサリーを付けたいと思っているんです。パワーストーンも付けてないときはバックに入れていたり。それを見るたびに頑張ろうとか、いいお仕事をいただいたときにこれのおかげかな?とか思ってみたり。あとはおじいちゃんの命日が舞台の本番中ということが多くて、その日になると空を見上げて写真撮ってブログに上げたりしています。
山田:僕の家はカトリックなんです。子どもが生まれたと同時に一つ人形を買うんですって。その子に何かあったときに身代わりになってくれる、という意味があるらしく、それが実家においてあって、何か大きいことがあるとその人形に願掛けをするんです。木製で結構大きくて。26年間一緒に生きてきました。今は実家に置いていますけどね。兄貴にも母親にも同じように人形があるんですよ。
――実家からもってきて楽屋に置いとけばいいのに。
山田:ビビるよ、結構大きくてちょっと怖いから(笑)。
北村健人:山都役、山田ジェームス武:緋影役 (撮影=こむらさき)