ピアニスト林そよかの「私らしいプログラム」で聴かせるアレンジの世界、広がるクラシックの可能性
-
ポスト -
シェア - 送る
林 そよか (撮影=荒川 潤)
林そよか、二度目の登場はソロで! 第27回 “サンデー・ブランチ・クラシック” 5.22ライブレポート
5月22日の日曜日に開催されたサンデー・ブランチ・クラシックには、作曲家・ピアニストの林そよかが登場してくれた。この日が2回目のサンデー・ブランチ・クラシック登場となった林だが、前回とはちょっと違ってオールソロでの演奏。自身も「いつもは他の楽器の方との共演が多いので、ソロは珍しい」という貴重な機会となった。
定刻になり、静々とステージに登場した林は、客席に一礼しピアノに向かうと、ゆっくりとカフェ空間にメロディを染み渡らせていく。林と言えば、なんといっても“楽曲編曲”。あのクラシックの名曲が、こんなアレンジで!という、驚きと楽しさ溢れる演奏で新たな命を吹き込まれていくのだ。
サンデー・ブランチ・クラシックには2度目の登場 (撮影=荒川 潤)
1曲目はなんだろう? と耳をそばだてていると、やがて聞こえてきたのはエルガー作曲「愛の挨拶」(林そよか編)。「こんにちは」「ごきげんよう」「元気?」「お久しぶりですね」……挨拶にもいろんな種類がある。くるくると表情を変えるメロディが、耳元でそんな風に、一人一人に語りかけてくるようだった。
1曲目を弾き終え、大きな拍手で迎えられた林は「皆様、こんにちは。本日は、30分という短い時間ではございますが、皆様と楽しい音楽の時間を過ごすことができたらいいなと思っております」と改めて挨拶。
林そよか (撮影=荒川 潤)
「これまで私が作曲してきたオリジナル曲や、様々なクラシックの名曲を、ピアノで林そよかバージョンに編曲してお届けしたいなと思っています」という今回のプログラム。1曲目の「愛の挨拶」のアレンジについては、「愛妻家として知られるエルガーが奥さんと楽しく会話している様子が表現できたらいいな、と思いながら編曲してみました」と裏話を教えてくれた。
続いても、タイトルに“愛”のつく曲、ヴァイオリンの名曲としても知られるクライスラー作曲「愛の悲しみ」が披露された。この曲の編曲イメージについては、「今回ピアノ用に編曲するにあたっては、フランスのおしゃれな恋愛映画を観ているような気持ちで編曲してみました」と語っていた林。よく知る名曲が、また違ったドラマ性を帯びて聴こえるのがとてもおもしろい。
(撮影=荒川 潤)
3曲目は、「皆さんに聴いて頂きながらなんの曲か、ぜひ当てて頂きたいです」と、クイズ形式で提示された。ヒントは“チェロの名曲”。当日、会場でお聞きになった方は、すぐにおわかりになっただろうか。左手が奏でる静かに水面を滑るような旋律に、右手が優美でキラキラと輝くようなメロディを重ねていくその曲は、サンサーンス作曲「白鳥」だった。
林は、姉でありチェロ奏者である林はるかとともに“アウラ・ヴェーリス”というデュオユニットを組んでいる。二人でコンサートをする時は、必ず演奏しているというこの曲を「今回は私一人のステージですが、大好きなので(一人でも)弾いてみたいなと思って演奏してみました」と、笑顔を見せた。
クイズも交えながら (撮影=荒川 潤)
カフェに溶け込むピアノの音色 (撮影=荒川 潤)
「次は2曲続けて演奏したいと思います」と紹介した1曲目は、福山雅治の「家族になろうよ」。もちろん林のアレンジバージョンだ。これは、林が今年の1月に新しくリリースしたCDアルバム『恋するピアノ』にも収録されており、Wedding Ver.と明記されたアレンジには、ワーグナーの『結婚行進曲』がチラッと顔を覗かせる林ならではの仕上がりになっている。
続いては、林のオリジナル曲の「ある街の思い出」が披露された。「皆さんの思い出の街や、風景を思い起こしながら聴いていただけたら嬉しいです」と林が語ったように、どこかノスタルジックな優しい響きが、瞼の裏にいつかの風景を蘇らせていった。
「あっという間で、最後の曲になってしまいました……」と名残惜しそうに会場を見渡しながら、最後はクライスラー作曲「愛の喜び」を選曲し、林のアレンジによって名曲の“喜び感”はMAXに! もちろん、拍手は鳴りやまない。アンコールには、林のオリジナル曲「夕暮れのワルツ」で応え、ソロライブを締めくくった。
時には力強いタッチで (撮影=荒川 潤)
このほか、第二部ではヘンデル作曲歌劇『リナルド』より「私を泣かせてください」を明るくPOPに編曲したバージョンや、シューベルト作曲「アヴェ・マリア」、ホルスト作曲:組曲『惑星』より「木星(ジュピター)」、坂本冬美の演歌の名曲「夜桜お七」(CDアルバム『ピアノで聴きたい 桜ソング』より)、モーツァルト作曲「きらきら星変奏曲」などが披露された。
終演後のインタビューでは、「2度目の出演ができて、すごく嬉しいです」と語ってくれた林。本日のプログラムについては、「私らしいプログラムにしたいなと思って、既成のクラシックの曲をそのまま演奏するのではなく、アレンジを加えた自分の世界を作れたらいいなと思って、プログラムを組んでみました」と振り返る。
サイン会の様子 (撮影=荒川 潤)
インタビューの模様 (撮影=荒川 潤)
編曲については、「普段から、ピアノを遊び弾きするのがすごく好きなんです。先にイメージを持って作るというよりは、弾きながらどんどんイメージが湧いてくるという感じです」と明かした。本日披露してくれた曲からも、原曲のイメージの拡大や、既成のイメージを覆すアイデアなど、林の柔軟なひらめきがたくさん感じられた。
珍しいというソロでの演奏については、「これを機に、自分なりに楽しくアレンジをして聴いて頂ける機会を増やしていけたらいいなと思いますので、ぜひ注目していただきたいです」と意欲的な様子を見せた。
最後に、「アレンジによって、クラシックって堅苦しくないんだ、クラシックって楽しいなって思ってもらえたら。そう思って頂きたいと意識して演奏活動しているので、今後もクラシックをお好きな方にも、クラシックにまだ馴染みのない方にも親しんで頂けるようなプログラムでお届けしていきたいと思っています。ぜひ、またお会いできたら嬉しいです」とメッセージをくれた。
林は、アウラ・ヴェーリスの活動の他にも、様々なアーティストとの共演、映像・アニメーションの音楽なども手がけている。林が広げるクラシックの可能性を、これからも楽しみにしていきたい。
ピアニスト 林そよか (撮影=荒川 潤)
サンデー・ブランチ・クラシック、次回もお楽しみに!
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院音楽音響創造分野修了。
卒業時に同声会賞受賞、また大学院修了時に大学院アカンサス音楽賞受賞。
大学在学中より自身のアレンジとピアノ演奏による「桜ピアノ」をはじめ、姉の林はるか(チェロ)とのユニット『アウラ・ヴェーリス』として、「イマジン~ピアノとチェロのためのジョン・レノン・クラシックス」「愛燦々~美空ひばり クラシックス」などこれまで多数のCDを日本コロムビアよりリリース。またヴァイオリニスト花井悠希や1966カルテットに楽曲提供、「高嶋ちさ子12人のヴァイオリニスト」の楽曲編曲など、作・編曲家として活躍するほか、津軽三味線奏者の吉田兄弟と共に「弦奏」の全国ツアーに出演するなど様々なアーティストと共演、ピアニストとしても活躍中。松田彰監督「異し日にて」、鉾井喬監督「福島桜紀行」の音楽を担当するなど映像・アニメーションの音楽なども手がける。
山田姉妹(山田華、山田麗)(ヴォーカル)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE:500円
7月17日(日)
上野耕平(サクソフォン)&反田恭平(ピアノ)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE:500円
公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html