空中技に特化した現代サーカス『YA!』高松から発信
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今年は、美しい瀬戸内海の島々を舞台に3年に一度開催される現代アートの祭典、瀬戸内国際芸術祭の開催で盛り上がっています。パフォーミングアーツもどんどん積極的に参加していて興味深いです。アートの領域が広がる面白さを感じます。
その瀬戸内国際芸術祭の流れとリンクするように、さまざまなアートな展開で盛り上がっている香川県高松市には瀬戸内サーカスファクトリーがあります(前に、ここで紹介しましたね)。「フランス発祥の芸術活動である“現代サーカス”を通じて、地域の芸術、文化、芸能、技術、産業、観光、コミュニティなどの活性化と、文化ジャンルとしての“現代サーカス”をさらに周知、発展させることを目的とする」がそのコンセプトです。
その瀬戸内サーカスファクトリーでは、7月の公演に向けて、フランス最大の空中ブランコ集団「シルク・ヴォスト」の演出家ブノワ・ベルヴィルと、3人の日本人女性アーティストーー空中ブランコのサカトモコ、空中ロープの谷川育子、エアリアルティシューと足芸のあんこーーが去る6月20日から高松市内塩江町の旧上西小学校で、空中パフォーマンス作品『YA!』の滞在創作を行っています。
「今回、世界のサーカスアーティストの信頼を集める、フランス人器具製作者を直接訪ね、彼のつくる空中トラス(空中芸のあらゆる器具を取り付けて演技できる汎用性の高い器具)を手に入れることになりました。同時に、地元の香川県に“サーカス器具設置専門集団”を養成すべく、なんと鳶さんたちを結集! フランス最高峰の空中パフォーマンスカンパニーのもつノウハウを学びつつ、彼らが、フランスの空中トラスやサーカス器具を安全に設置するのです。地方ならではのゴチャマゼ感と結束感。しかし、あくまでアーティストと作品は、最高のレベルを目指して」と語るのは、瀬戸内サーカスファクトリー代表の田中未知子さんだ。
わかる、わかる、その感覚。東京などはアーティストや仕事が専門化しているから頼みたいときに頼むこともできるけれど、地方に行けば行くほど、そんな都合のいい人材はほとんどいない。けれど「畑違いだけれど、もしかしたらお願いできるかも」な展開がめちゃくちゃ面白いものを生み出すきっかけになることだってある。がんばっちゃうのだ。そしてアートの良き理解者になってくれるのがうれしい。
それはともかく。これまで5年にわたって国内外のアーティストとともに、電車工場、学校、お寺、倉庫などイメージの合うさまざまな場所を探し出して実験的創作を重ねてきた瀬戸内サーカスファクトリー。「たくさんの壁、ふがいなさ、未熟さゆえに、活動を続けていくべきなのか? いけるのか? 本当に悩みました」と言う田中未知子だが、このたび「アーティストたちがここで“創作しながら生きられるしくみ”を確立するために、常設の創作拠点がどうしても必要な段階にきました」と腹をくくった。自分たちで本格的サーカス器具を持つということは、これから必死になってここでやっていくという強い決心の表れだ。
ブノワ・ベルヴィル
ブノワ・ベルヴィルが所属する「シルク・ヴォスト」はフランス政府公認のアートサーカスカンパニー。1993年にフランスで誕生した空中ブランコ集団“レザッソ”の流れをくみ、野外空間を舞台にサーカスの花形・空中ブランコに特化したパフォーマンスで大注目を集めている。先鋭的なエレクトロサウンドのライブ演奏、空中を踊り絡み合い、美しく落下していくパフォーマンス。伝統的なサーカスとは一線を画す、その表現スタイルでヨーロッパを中心に高い人気を集めているのだ。2015年、アジアで初めて実現する公演として大阪で『Epicycle』が予定されていたものの、メインの出演者がケガのため開催が延期になった(また来てくれないかなあ、と思っていたら東京公演をやるとブノワ・ベルヴィルが語っていた)。そんなカンパニーの演出家が、高松に来てしまうすごさ! 田中未知子のパワーと粘りの賜物だろう。
『YA!』創作風景
『YA!』は、空中ブランコやティシュー、ロープなどを軸に、空中技に特化した全国的にも珍しい作品になる。「すばらしい自然と一体となったパフォーマンスを楽しんでください」とは、ブノワ・ベルヴィルからのメッセージ。
地域密着インターネットTV「まちテレ@かがわ」でも田中未知子の思いが聞けます!