スカーレット・ピンパーネル団 7人の男達に迫る ~ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』

2016.8.17
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インタビュー
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右から矢崎広、上口耕平、相葉裕樹、植原卓也、太田基裕、駒木根隆介、廣瀬智紀


NYブロードウェイ生まれの大人気ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』。ミュージカルやポピュラー音楽のヒットメーカー、フランク・ワイルドホーンが作曲を手掛けた作品としてもよく知られる。日本では宝塚歌劇団星組で安蘭けい主演の初演が好評を博し、後に月組でも再演。宝塚歌劇の数ある作品の中でも常に再演を熱望されているこの珠玉の名作が、日本では初めて、宝塚以外の顔ぶれで上演されることになった。

物語の舞台は1789年のフランス革命。革命物といえば、恐怖政治の貴族VS奴隷や庶民の正義といった歴史的見地がとかく主軸になるものだが、本作のカラーは一味違う。無実の罪で次々と断頭台に送られる貴族たちを救うべく、イギリス貴族のある男が秘密結社的な救済団“スカーレット・ピンパーネル団”を結成し、正体を隠して救出作戦に乗り出すという、痛快な“ザッツ・ヒーローもの”なのだ。

“素性を隠した正義のヒーロー”は日本人の大好物ではないか。その正義のヒーロー、主役のパーシーを演じるのは石丸幹二。フランス人の妻、マグリット役は安蘭けい。マグリットの元恋人でスカーレット・ピンパーネル団の素性を暴くべく近づくショーヴラン役には石井一孝がキャスティングされた。安蘭は、宝塚時代に日本初のパーシー役を演じ、自身の当たり役の一つにしたまさに本人! そんな安蘭を妻役に、石丸がどんなパーシーを魅せてくるのか、物語の本筋とは違う視点からも興味津々。湧き上がる興味いっぱいにインタビューに臨んだ。お相手は、“スカーレット・ピンパーネル団”の7人の男たち。

アルマン役・矢崎広、デュハースト役・上口耕平、ベン役・相葉裕樹、ファーレイ役・植原卓也、エルトン役・太田基裕、オジー役・駒木根隆介、ハル役・廣瀬智紀。これだけの男たちが一堂に揃うと、なんたる壮観な眺め。本作の取材で7人同時のインタビューは、SPICEが初めてとのこと。円陣を組む彼らから視線を向けられるのは緊張の極みでありながら、ハッキリ言ってインタビュアーの役得でもある。どんな話が飛び出すのか。


――わくわくする“ザッツ・ヒーローもの”の印象もある作品。期待値はいかほどですか?

上口 「僕ら男子は、子どものころからヒーローものが大好き。なおかつ、普段は潜んで、実は正義のために戦っているという秘密結社というのは、一番好きなジャンルです。そういう役をやれるのがうれしいし、楽しみです。観に来てくださる方々に憧れられるような“スカーレット・ピンパーネル団”になれたらいいなと思います。僕ら自身が今、本当にわくわくしています」

駒木根 「せっかくなので、今の発言を全員分のコメントにして、以下同文で(笑)」

相葉 「はい(と、挙手)。宝塚版のDVDを見ましたが、衣装がとてもきれいで素敵でした。そして衣装さばきが非常に美しかった。マントをひらり的な(笑)。そこを自分も得たいと思いました」

矢崎 「準備稿を読ませていただいて僕が注目したのは、パーシー(石丸)、マルグリット(安蘭)、ショーヴラン(石井)をめぐる三角関係のドラマでした。日本人が好きな設定ですよね。表と裏の顔があるパーシー、ヒロインのマルグリット、敵対するシューヴラン。そこに秘密結社の要素が絡んでくる。ベタな関係性ではあるんだけど、だからこそわかりやすいし、興味が湧くんです。そして、僕自身、アルマン役が等身大の自分の気持ちのままイケそうなのは、さっき上口さんが言ったように憧れのヒーロー団に入れる、というところ。外国作品のわりには、日本人が好きな設定がいっぱい詰まっていますよ」

アルマン役・矢崎広

駒木根 「ヒーローものといっても、いろいろ役割分担があるじゃないですか。僕はヒーローの中でも少し違う役割かな。あれですよ、ゴレンジャーでいう、黄レンジャー。(取材者が「黄レンジャーが一番好きでした」と言うと)……あ、じゃ、ひょっとしたらそういう特殊な方もいらっしゃって、喜ばれるかも(笑)」

――ヒーローを演じるカッコいい自分をすでに想像しているとか?

植原 「ちょうど、そのトレーニングが始まったところです。あの時代の服装、例えばタキシードの着こなしとか、美しく見せる角度や立ち方、マントをひらり的とか(笑)、歩き方まで、所作のすべてを習っています。ああ、始まったな!と思いましたね」

ファーレイ役・植原卓也

廣瀬 「基礎から入らせてもらえる稽古は有難いですね。みんなで一緒にトレーニングして、そこで初めて知る所作というものが、僕らピンパネール団のカラーになっていくと思います。個人的にも、この先の自分のためなると思います。だから、明日もがんばろう~」

――今日、7人は初めての顔合わせですか?

駒木根 「この作品で全員揃うのは、顔合わせ以来今日が2回目。共演で揃うのは初めてですね」

矢崎 「誰かと誰かはどこかでチョイチョイ共演しているけど、そこを全部説明するのは複雑なので……(笑)」

――この7人でどんな団になりそうですか?

太田 「この作品の大きなテーマは“正義”だと思いますが、スカーレット・ピンパーネル団7人でひとくくりの正義で終わるのでは面白くない。だからそこは、それぞれの正義が出てくると思います。もちろん、敵対する相手もいますしね。パーシーとスカーレット・ピンパーネル団にとっては敵対相手が悪だけど、悪には悪なりの正義もある。それぞれに信念や正義があるのだから、単純な正義VS悪ではなく、正義VS正義の構図になるんじゃないかと。僕らスカーレット・ピンパーネル団としては、一人ずつの個性と正義をどんどん出してそれぞれのキャラを立たせつつ、まとまって熱いものを湧き上がらせたいですね」

エルトン役・太田基裕

上口 「確かにそう。日本の皆さんがこれまで見てきたミュージカル、特に、フランス革命の話では、だいたい貴族が悪で、民衆が正義、という対立が多いでしょう。そこがひっくり返っているんですよ、僕ら貴族がヒーローになる。今までと違うものが観ていただけると思います」

駒木根 「そう、革命物ミュージカルの悪って、貴族のイメージですよね」

上口 「何が悪で、何が正義か、わからない時代。だから、この7人で稽古を始めて、いったいどんな正義のカラーが出てくるのか、まったく想像できない。そこが一番の楽しみだし、観る方にも新鮮味を感じていただけるようにしたいですね。こういう正義の形もあるんだと」

――石丸幹二さんや安蘭けいさんと共演する期待はどうですか?

上口 「安蘭さんは初代パーシー。宝塚で人気を博した方です。安蘭さんが、どう石丸さんのパーシーを見るのか楽しみです。そのうち、僕らにもダメだしもらえるんじゃないかという期待も(笑)」

相葉 「そう、宝塚の方々は本当にすごいですよね。僕ら男の役者が演じているのを見て、ダメだし等頂けたらうれしいですね」

ベン役・相葉裕樹

――本作の魅力は音楽によるところも大きい。ワイルドホーン氏の楽曲は素晴らしいゆえに、歌うのは難しいとも噂で聞いたのですが……。

矢崎 「僕、ワイルドホーンさんの楽曲をミュージカル『ドラキュラ』で歌ったことがあります。日本を大好きな作曲家さんですが、彼の楽曲に日本的なものを感じることもあります。歌いながら、日本人の心で日本人が親近感を感じる、そんな曲の流れがあるように思いました。だから、むしろ歌いやすいんじゃないかとさえ思います。技術として言えばきっと難しいんですが、ここ(ハートを指さして)って大事じゃないですか? 耳心地もいいですし」

駒木根 「それは有難いですね。というのも、僕はミュージカルが初めてなものですから。もちろん観たことはあるし、音楽劇ならやりましたが、いわゆる本格的なミュージカルに出演するは初めてだから少し不安でもあったんです」」

廣瀬 「僕も本格的なミュージカルは初めてなので、緊張感が高まります」

ハル役・廣瀬智紀

――ミュージカル経験者から二人にアドバイスはありませんか?

上口 「そのことは、さっきみんなで話していたんですよ。7人で歌う場面もきっとあるけど、それぞれ持ちパートが違う。僕の場合、みんなで歌う時に、人に引きずられて自分のパートを守るのが難しかったから、まずは自分のパートをしっかり守ることが大事じゃないかな。……と言ったら、駒木根さんが“パートを守る?”って言うんです(笑)。まるで書かれたセリフのように“それって何だい?”と(笑)」

デュハースト役・上口耕平

駒木根 「その時、さっそくね、一つ学んだんですよ(笑)」

植原 「僕もまだまだ学んでいる段階です。みんなと一緒に、そして、石丸さん、安蘭さん、(平方)元基さんたちの姿を見ながら、学びたいと本当に思っています」

駒木根 「(改めて全員を見渡し)意外と経験もジャンルも結構バラバラだよね。……いや、ジャンルが違うのは僕だけですか?(笑)」

オジー役・駒木根隆介

矢崎 「ミュージカルってそういうケースが発生するんですよ。歌手、ストレートプレイの方、アイドルの方も来ることがある。多ジャンルが集う最初の顔合わせなんて、一種の異種格闘技戦のようですから。これが混ざったらどうなるんだろう、戦ったら何が起きるんだろうと。戦うのではなく協力ですけど(笑)。その意味で今回もワクワク感は強いですね」

――最後に、読者の方々へメッセージをお願いします!

矢崎 「作品のファンはもちろん、これが初めての方も楽しんでいただきたいです」

上口 「とてもアクティブな舞台になります。どうぞお楽しみに」

相葉 「最高にカッコいいスカーレット・ピンパーネル団を演じたいと思います」

植原 「皆様に楽しんでいただけるよう精一杯がんばります」

太田 「個性豊かなキャストが揃っています。ぜひ楽しんでください」

駒木根 「何度でも僕らに会いに行きたくなる、そんなミュージカルになればと思います」

廣瀬 「初ミュージカル、気合を入れて一生懸命がんばります。ぜひ劇場に足を運んでください」

彼ら7人の華麗なヒーロー団が誕生するのは今年10月。心躍る舞台が待ち遠しすぎる!

スカーレット・ピンパーネル団から動画メッセージが届きました↓
 

 (取材・文:丸古玲子、写真撮影:大野要介)

公演情報
ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』

【東京公演】2016年10月19日(水)~26日(水)赤坂ACTシアター
【大阪公演】2016年10月30日(日)~11月7日(月)梅田芸術劇場メインホール
【東京凱旋公演】2016年11月24日(木)~29日(火)東京国際フォーラムホールC
■原作:バロネス・オルツイ 「The Scarlet Pimpernel(紅はこべ)」
■脚本・作詞:ナン・ナイトン
■作曲:フランク・ワイルドホーン
■訳詞・翻訳・潤色:木内宏昌
■潤色・演出:ガブリエル・バリー
■出演:石丸幹二、安蘭けい、石井一孝、平方元基/佐藤隆紀(LE VELVETS)Wキャスト
矢崎広、上口耕平、相葉裕樹、植原卓也、太田基裕、駒木根隆介、廣瀬智紀、則松亜海
川口竜也/青山航士/新井俊一/石井雅登/木暮真一郎/田村雄一/長尾哲平/藤井凜太郎/天野朋子/彩橋みゆ/熊澤沙穂/神在ひろみ/中村香織/森実友紀
■公式サイト:http://www.umegei.com/the-scarlet-pimpernel/

 
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