凛として時雨のツアーファイナル ささやきと絶叫、静寂と轟音で場内を完全支配
凛として時雨 Photo by河本悠貴
凛として時雨が、6月より全国8カ所で行った自主企画イベント『凛として時雨Presents “トキニ雨#15”~Hybrid Tornado Edition~』。そのツアー・ファイナルとなる東京・新木場STUDIO COAST公演が7月7日に開催された。以下、オフィシャルレポートよりその模様をお届けする。
同会場で行われた6日のセミファイナルには“PERFECT GUEST”として「PERFECT HUMAN」で世間を騒がせているRADIO FISH、さらにドラムのピエール中野が“PERFECT DJ”として登場して、フロアを湧かせたが、最終日となるこの日はワンマンライブとして開催。満員の会場は開演前から熱気であふれていた。
凛として時雨 Photo by河本悠貴
開演時間となりフロアにノイズが響くと、会場の熱気はますます高まっていく。そしてTK(Vo&G)、345(Vo&B)、ピエール中野(Dr)がステージに現れ、さあ一気に爆発だ――と思った瞬間、3人が奏で始めたのは、ダウナーなビートを軸にした「mib126」だった。凛として時雨の楽曲のなかでも、ひときわトリッキーな構造をもつこの曲。途中でテンポアップしてテンションを上げるも、複雑なフレーズが絡み合ってうねる独特のグルーヴに翻弄され、思わず口を開けてステージを凝視してしまう。とまどいと緊張に満ちたフロアをよそに、3人はそのまま間髪入れずに「想像のSecurity」へとつなぎ、今度はドライヴ感のあるリズムで一気に走り出す。ここで堰を切ったように声を上げ、高く飛ぶ観客たち。どうやらいきなり3人の術中にハマったようだ。彼らは冒頭2曲だけで、完全に場の空気を支配してしまった。
凛として時雨 Photo by河本悠貴
そのまま「DISCO FLIGHT」など激しい曲をたたみかけていくが、なかでも「Enigmatic Feeling」は圧巻だった。この曲はとにかく3人の出す音数がハンパなく多い。ギター、ベース、ドラムが弾丸のような音を切れ目なく叩き出し、その音がガッチリと結びつき、カタマリとなって押し寄せてくる。とても3人で出しているとは思えない音の厚みに圧倒される。
そして、この「Enigmatic Feeling」の対極に位置していたのが、次に演奏された「illusion is mine」だった。345がメインで歌うこの曲は、彼女の澄んだ歌声が際立つよう、前半部分は音数が抑えられている。TKもギターを持ち替え、少し丸みを帯びた音を奏でる。水中で揺らめくようなグルーヴが幻想的なムードを生み、その音色は心の一段深いところへ入りこんでくるような気がした。その心地いい感覚は、「Who What Who What」など人気曲が繰り出される中盤のパートでもずっと続いていた。
ギターのアルペジオが美しく響く「this is is this?」を終えたところで、TKと345がステージから去る。ここからはピエール中野の独擅場だ。ライトを一身に浴びながら、ドラムを使って歌うように楽しげに叩きまくる。そしてTKと345が戻り、性急なビートの「abnormalize」、345の“JPOP!”の叫びが耳を貫く「JPOP Xfile」、さらに曲間にブレイクを入れず「Telecastic fake show」へとキラーチューンが続く。感極まった観客たちが暴れだし、フロアが右へ左へ大きくうねるのが見える。彼らをさらに挑発するように、ピエール中野が「nakano kill you」で華麗にスティックを回しながら、地鳴りのような轟音を叩き出す。ここにきて、この余裕とパワー! 恐るべしだ。
凛として時雨 Photo by河本悠貴
ライブも終盤に近づき、この日唯一のMCとして、345がたどたどしくグッズ紹介を始める。その言葉にいちいち観客が大歓声で応えるというコントのような時間が流れ、すっかり場の空気が和んだところで初期のレア曲「O.F.T.」を披露。ファンクっぽいギター・リフといい、ミドル・テンポで聞かせるフラットなアレンジといい、この日のセットリストの中で異彩を放つ1曲として新鮮に響いた。
そしてギターの残響音を残したまま、ラストの「傍観」へ。重いリズムと感傷的なメロディが、熱のこもった体を冷ましていく。<君は知らない 僕は汚い 僕は見えない 僕は死にたい>……TKが囁くように歌うセンシティヴな言葉に不思議な気持ちよさを覚えていると、その囁きは徐々に絶叫へと変わり、演奏はノイズの嵐になだれこむ。体を折りベースをかきむしる345、この日いちばんの強打で応戦するピエール中野、そしてギターを歪ませ絶叫し続けるTK。夕陽のように真っ赤なライトに照らされた3人は、ありったけの力で爆音セッションを繰り広げ、耳をつんざくノイズを残したまま何も言わずにステージを去っていった。
撮影=河本悠貴 レポート・文=廿楽玲子
凛として時雨 Photo by河本悠貴
1. mib126
2. 想像のSecurity
3. DISCO FLIGHT
4. SOSOS
5. Enigmatic Feeling
6. illusion is mine
7. I was music
8. Who What Who What
9. Dynamite Nonsense
10. this is is this?
11. abnormalize
12. JPOP Xfile
13. Telecastic fake show
14. nakano kill you
15. O.F.T.
16. 傍観
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