編集部で語る! 2016年春アニメ振り返り&期待の夏アニメ

2016.7.21
コラム
アニメ/ゲーム

『甲鉄城のカバネリ』公式サイト(http://kabaneri.com/)より引用 ©カバネリ製作委員会

2016年夏アニメが絶賛放送中のなか、先日SPICE編集部のアニメ担当3名が集まり、春アニメを振り返る会合を執り行った。アニメ・ゲーム編集長の加東、副編集長・アート担当ながらアニメも一部担当する岡本、そしてアニメライター鶴岡。3人の中での答え合わせをするかのような内容になっているが、意見の一つとして会話のエンタテインメントを楽しんで頂ければ幸いだ。終盤には、各担当による夏アニメ注目作も提案しているので併せてチェックして欲しい。

 

鶴岡:じゃあまず『甲鉄城のカバネリ』からいきますか。春季のマストだったと思うのですが、いかがです?

加東:作画だけでも頭一つ抜けてた気がします、『進撃の巨人』の監督なので類似点とかいろいろ言われてましたが、やっぱり世界観も含めて正しく「ゾンビムービー」だったと思ってます。カバネが発生した理由も語られないまま根本的な解決をせず、ただ理想の場所を求めて荒野を突き進む、という正しいゾンビムービーの終わりなんですよ。ジョージ・ロメロの『ゾンビ』のオマージュかと思うくらいでした。

鶴岡:ゾンビのない世界を求めて旅立つのは特にそう印象付けられますね。声優が総じて良かったイメージもありましたが。

岡本:メインに若い声優さんが多く、誠実な演技だった印象があります。生駒役の畠中祐さんは夏以降も様々なアニメに出演されてますね。

加東:無名役の千本木彩花さんも良かったよね。今後人気が跳ね上がるでしょう。

岡本:SPICE的には、主題歌を担当したEGOISTの話も避けて通れないですかね?

加東:EGOISTは凄いよね、OPでがっちり掴まれた気がするし、澤野弘之さんの劇伴も世界観を作るのに凄い貢献してる。音楽も素晴らしかったですね。やはり春季1位かと。

 

 

鶴岡:個人的には『ふらいんぐうぃっち』が日常系アニメとしては春季1位と思っているのですが、皆さんの感想が聞きたいです。

加東:いやー、僕の中で不動の日常系3巨頭、『ARIA』『ばらかもん』『灰羽連盟』に迫る出来の良さでしたね。

岡本: 私は全然見れていないのですが、確かに名前はよく聞きました。どの辺が良いんですかね?

加東:まず、タイアップされてる青森の広前の自然がとてもよく描かれているんですよね。

鶴岡:青森で魔女が生活する、っていうだけのゆるーいアニメなんですけれど、登場キャラクターと舞台が魅力的なのと、その日常の中のアクセントになる魔法があったり。魔女の姉妹、友達を優しく見守るホームステイ先、自然の美しさ、田舎の良い所をピックアップした表現、などなどをすごくフラットに描いてる。

加東:川のせせらぎだったり、木々だったり、土曜日の深夜帯に最適なヒーリング具合というか……。

鶴岡:ブレなさが良かった。

加東:ブレなかったですよね。魔法ものなんだけど、なんか田舎の生活に密着してるというか。

鶴岡:魔女らしい魔女だと思いました。土着的な存在だと思いますし、魔女って。

加東:ヨーロッパの土着の魔女みたいのがいるように、日本に魔女がいたらこんな穏やかに魔法を使っているんだろうなぁ、みたいな。

岡本:魔女っ子アニメ的にも新しいですね! 普通だと「東京でドンパチ」みたいなイメージですが(笑)。

 

 

鶴岡:さて、次は読者人気一番と想定される、皆さんお楽しみの『Re:ゼロから始める異世界生活』です。面白いですよねえ!

加東:まだ終わってないですけど、なんというか毎回視聴者をどん底に落としてますよね(笑)。

鶴岡:主人公に感情移入できないのに名作と思えるラノベ作品は久し振りですね。

岡本:どんな作品なんでしょう?

鶴岡:主人公スバルが持っている能力があるんですが、それが他の登場人物には全く伝わってないのがポイントですね。スバルは自分の力を過信して立ち回ろうとして、人間関係がこじれにこじれまくるんですよ。更に容赦なく登場人物が死に、絶望していく。並行してそれが原因でスバルがクズまっていくんですけども、どうカタルシスにつなげるのかが楽しみなんですよ。

岡本:なかなか複雑な人間関係を描いてるんですね。いわゆる「THE・ラノベ」って感じのポップな作品かと思っていたので意外でした。結構エグいですね……。

鶴岡:これほど感情移入できないクズはそうそういない(笑)。 でも面白いし、復活して欲しいという客観視ドラマですね。

加東:僕がよく使う言葉なんですけど、最高に好きだし、とにかく続きが見たいけど、「早く終わって欲しい!」と懇願する作品ってのがあるんですよ。コミックだと『シグルイ』とか、今ジャンプ+で連載している『ファイアパンチ』とか。アニメだと『蒼穹のファフナー』とかですかね。すごく好きで続きが気になるんだけど、早くこの話の決着をつけて欲しいんです。それは主人公が報われないからとか、話が面白いけどしんどいからとか、いろいろ理由はあるんですけど、『リゼロ』はまさにそれですね。

鶴岡:確かに確かに。はやくフィニッシュのカタルシスがほしいですね。

加東:逆に延々と終わらないで欲しい作品もある。『ふらいんぐうぃっち』とかはそっちで、そういう意味では今期対照的な2本かも。

鶴岡:なるほどー。さて、岡本さんの春イチオシはなんでした?

 

 

岡本:『とんかつDJアゲ太郎』を楽しみに生きていた人生でした……。

鶴岡:ミニアニメだと一強ですね。

岡本:間に挟まっていた『磯部磯兵衛』とのコントラストも含めて良かったのではないかなと思っていますし、本物のDJを各回ゲスト声優として起用したのも制作側の音楽愛が感じられてよかったです。

鶴岡:一般層にDJがあれで伝わったのかなという疑問はありつつ、ある程度リアルではあったかと。

加東:僕も鶴岡さんも趣味の範疇だけどDJをやっているんだけど、結構リアルなとこ多いですよね。

鶴岡:それが一般的に響いたかどうかが気になります(笑)。

岡本:一般層としては「リアルだー!」と感じたというよりか「あ、そういう感じで成り立っていくのね、へー 」という、新発見させてもらった感覚が強いです。『アゲ太郎』以外ですと、『坂本ですが?』『文豪ストレイドッグス』『田中くんはいつもけだるげ』『テラフォーマーズリベンジ』あたりが女子が好きそうなラインナップですね。『文スト』は期待されていたほどはブームにならなかったかな……って印象があります。

 

 

鶴岡:『文豪ストレイドッグス』はファンは確実にいるんですけどね。

加東:『文スト』は正直もっと跳ねるかと思ってました。跳ねなかったのは何故なんだろう?

鶴岡:なんか淡々と進むんですよ。キャラクターの掘り下げはそんなにガッツリじゃなかった気も。

岡本:個人的にはバトルものなのに、あまり「わー、これ倒せるのかなどうなるのかなー!」って感覚が起きなかった印象です。鶴岡さんの淡々としている、というコメントとも通じますが。

鶴岡:ドキドキが足りないアクションだった、といったところでしょうか。

 

 

鶴岡:同じ異能力バトルものといえば、『ジョジョの奇妙な冒険』は愛にあふれてますね。まあ『JOJO』は宗教、ご神仏をどう取扱うかというレベルかも。

岡本:主役をつとめた小野友樹さんが大好きなので、『JOJO』は正直冷静な判断ができないです(笑)。能登麻美子さん演じる山岸由花子は良かったですね!

鶴岡:能登さんのお下劣発言は正直「ありがとうございます!」としか言いようがなかった。さすが能登さん。

岡本:本当にそうですね。女子ですが同じ思いです(笑)。

 

 

鶴岡:僕、個人的には岡本さんの『テラフォ-マーズ』に対する意見が聞きたいですね。

加東:東京でオンエアをチェックしてる身としては『JOJO』を見てると、必然的に『テラフォ』見ることになるしね。

鶴岡:なりますねえ、果たしてリベンジ出来たのか?

岡本:主人公の声をやっていた細谷佳正さんが好きなので、もちろん見ました。ですが、アニメ1期の暗くてエグーい雰囲気の方が自分は好みでした。良かれと思って軽めにしてくれたんでしょうけれど、わたしは違和感がすごくて……。

加東:無茶苦茶軽かったよね。膝丸燈(主人公)の出番が少ないのも印象的だったな、確かに群像劇ではあるんだけど。

岡本:テイストが変わるのは制作側の意図としてチャレンジしてる気がしたんです。もちろん好き嫌いはあると思うんですけど、でも視点がぶれるって点はアニメとしてはあまり良くないのでは?と思っちゃいました。あくまで一般人の声ですが……。

 

 

鶴岡:さて、それ以外の作品だと、『マクロスΔ』も推したいですね。歌と三角関係とドッグファイトに基本は押さえたうえで、音楽ももちろん良し、作品中では過去のマクロスに対してのオマージュもしっかりしてます。例えば、メッサーはロイ・フォッカーのオマージュで、主人公が死んだエースの機体に乗るとか正統後編として確立されていますし。

加東:いやー、さすがのマクロスですよね。

岡本:社内でも話題でしたね。

加東:『デルタ』に関しては面白い事があってですね、前作『マクロスF』が2008年、もう8年前なんですけど、僕の周りだと『デルタ』好きな人って、『フロンティア』が好きで最近アニメ離れてた人と、『フロンティア』をリアルタイムで知らない世代の人、っていうのが結構いたんですよ。もちろん従来のアニメ好きが多いんですけど、なんかこれはちょっと驚きでした。『マクロス』っていうコンテンツの持ってる求心力みたいのを感じましたね。

鶴岡:自分としては『AKB0048』の正統続編って言う気持ちで見てましたね!

加東:そういう人も多い(笑)。

 

 

鶴岡:では最後に、みんな大好き『田中くんはいつもけだるげ』の話をしてハッピーに終わりましょう!

岡本:いやぁ、けだるげでしたね。

加東:本当にけだるげだった……見てたら寝てしまった(笑)。

鶴岡:ああやって生きていきたい。α波出てるアニメでしたね。

岡本:わかります。最後まで清いアニメでした。

加東:『たなけだ』ってしばらく経ってから再評価されそう。

鶴岡:そうそう、えっちゃん可愛いし変に媚びなかったし。再放送とかで火が付きそう。

岡本:えっちゃんかわいい! 本当にその一言に尽きますよね!

 

加東:さて、夏アニメで期待している見どころについてコメントしましょうか。

鶴岡:伝統芸能枠で『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』は注目すべき作品ですね。

岡本:私は『B-PROJECT~鼓動*アンビシャス~』と『ツキウタ。』と『SERVAMP -サーヴァンプ-』の攻防戦を見守ります!

加東:『B-PROJECT~鼓動*アンビシャス~』面白いですね。俺は『甘々と稲妻』『あまんちゅ!』ですね……。

鶴岡:その2つは破壊力高いですね、『甘々と稲妻』は『ばらかもん』難民キャンプですしね。

岡本:私も難民なので見ないとな……。

鶴岡:じゃあ、締めとして、かぶり無しで3本ずつオススメのアニメを出してみましょうか。
 

加東オススメの3本

『甘々と稲妻』
本当に心温まるというか、アニメで飯テロと家族の愛情を同時に食らうとは思いませんでした……今期イチオシ。

『あまんちゅ!』
天野こずえ好きな僕としては追わないわけには行かない作品。この酷暑に一服の清涼剤になって欲しい作品です。

『91DAYS』
久々に本格的なハードボイルド作品が出てきたな、と。実力派の豪華声優陣も見所です。

岡本オススメの3本

『B-PROJECT~鼓動*アンビシャス~』
群雄割拠する男性アイドルコンテンツに満を持して飛び込んできた感があります。どんな仕掛けを用意してくるのか、観察していきたいです。また西川貴教さんが総合プロデュースをつとめている作品なので、音楽も注目です。

『モブサイコ100』
原作者が『ワンパンマン』のONEさんであるという点からして、内容が面白いのは火を見るよりも明らか。アニメの要素が入ってどう化けていくのか気になります。結構攻めた絵の表現も取り入れているそうなので、期待。

『ReLIFE』
設定自体はポップな感じなのですが、実はすごく切なかったり、清々しかったりする結末が待っているのではないかな……と感じました。舞台版でも同じ役をつとめる小野賢章さんの演技にも注目しています。


鶴岡オススメの3本

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』
伝統芸能と最新技術の融合が、今までにないエンタテインメントを生み出す! 表現の奥深さと爽快なストーリーが軸となった幻想的世界をを心ゆくまで楽しめる。

『ラブライブ!サンシャイン!!』
Aqoursがμ’sを抜いていくのかどうか! と中心に、製作委員会の「心底」全力投球を見られるレアな作品。今のところ上々の滑り出し、この後どうなる?

『テイルズオブゼスティリア ザ クロス』
制作会社:ufotableの恐ろしいほどの作りこみを見られるアニメ。そのクオリティは映画レベル。複雑なストーリー展開とバトルシーンが今後楽しみ!