The Birthday フジロックの切なくて熱い夜
The Birthday 撮影=Tsuyoshi Ikegami
FUJI ROCK FESTIVAL '16 2016.7.22
RED MARQUE The Birthday
The Birthdayとしては6回目の出演となった今年、あまり話さないチバが「元気そうで何より」と口にした。のっけからずいぶんとご機嫌な様子だ。
去年は結成10周年で3回目となる日本武道館公演を行うなど、ライブバンドとしての活動は今も昔も変わらないThe Birthday 。『FUJI ROCK FESTIVAL』には2年ぶり、6回目の出演。会場となったRED MARQUEは、彼らのフジロック20周年でのステージを見届けようと集まったオーディエンスの熱気に溢れ、開演前は静かながら高揚感に満ちていた。
暗転、そして音が鳴る。スコーンと突き抜けるフジイのギター、それを支えるヒライの野太いベース、そして轟くクハラのドラム。小気味よいサウンドにチバのウタが乗っかって、「Love God Hand」が始まった。そうそう、これこれ! 今年もここで、彼らの音を苗場で聴けて、ビールが飲める。これが日本の夏、フジロックなんだってば。
「今日から3日間くらいは嫌なこと、忘れていいんじゃないの? それはそれで感じてなきゃいけないけど、でも今くらいは」
「FULLBODYのBLOOD」「くそったれの世界」「声」「涙がこぼれそう」など、相変わらずのチバ節、相変わらずの軽快なリズムのおかげで嫌なことはすべて吹き飛ばしてもらった。
The Birthday 撮影=Tsuyoshi Ikegami
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが初の日本人ミュージシャンとしてヘッドライナー出演をするという偉業を果たしてから15年が経過した。あの日も、清志郎さんの代打で急遽出演したときも目頭を熱くさせられたけれど、月日が流れても、バンドが変わっても、心を熱くするロックを奏でてくれる彼らは日本のロックシーンにとって掛け替えのない存在だ。
ライブ中、何時になく饒舌なチバが「アイラブユー。We love Fuji Rockだよ」と口にした。そのことが引き金となり、過去に観たフジでのライブシーンなどを走馬燈のように思い出してしまい、それこそ涙がこぼれそうになって本当に困った。アベくんがあっちの世界へ逝ってしまった日にフジロックか。
この偶然て、何だろう? アベくん、見てるかな。きっと見てるよね?
そんなことをぼんやり思いながらステージを観ていた。場内にいたオーディエンスの多くの心には、おそらく同じ思いがあったことだろう。切なくて熱い夜だった。
文=早乙女‘dorami’ゆうこ 撮影=Tsuyoshi Ikegami
The Birthday 撮影=Tsuyoshi Ikegami