電気グルーヴ “スペシャルゲスト”の名に相応しいフジロック20周年のクロージング
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電気グルーヴ photo by Masanori Naruse
FUJI ROCK FESTIVAL '16 2016.7.24
GREEN STAGE 電気グルーヴ
フジロックの20周年を締めくくったのは電気グルーヴだ。記念すべきこの日、堂々たるヘッドライナー・Red Hot Chili Peppersの後でこの大役を担えるのは彼らしかいないだろう。
20周年という節目ということで、例年以上に様々な見所が散りばめられた今年のフジロック。そのひとつとして、久々にクロージングが行われるということと、しかもそれが日本人ミュージシャンであり、尚且つそれが電気グルーヴというトリプル・サプライズ情報がもたらされ、歓喜した人、見逃せないアクトとして上位に置いた人の数はかなり多いだろうという予想はしていた。しかし、現実は予想を遙かに超え、およそ4万人が湧いたレッチリの後に電気グルーヴの登場を待つ人の数はほぼ変わることなく、多くがその場に残り待っていた。その光景はこれまでも国内外問わず多くの大舞台を踏んできた電気グルーヴの潜在するファン数の多さを如実に物語っていたと言えよう。
稜線だけがかろうじて見える山奥の夜11時20分。メインであるGREEN STAGEエリアを埋め尽くす期待に満ちたオーディエンスに迎えられ、電気グルーヴの2人がサポートメンバーのagraphと共に黄色い揃いのユニフォーム姿で登場、「Hello! Mr. Monkey Magic Orchestra」で電気祭りが始まった。
電気グルーヴ photo by Masanori Naruse
「Fallin’ Down」「Missing Beatz」「SHAME」「SHAMEFUL」ときて、あややならぬ石野卓球が「めっちゃサンデー! 電気グルーヴでございます」と挨拶。続く「新幹線」では会場最寄り駅である越後湯沢駅に触れるであろうことは想定内だったが「もう終電終わってるから 踊るしかありません」という煽りを咬ませたメッセージが映し出されたことにより、フジロック開催期間の3日間でもう全部押されたはずの自己解放スイッチの、体内のどこか奥の方に眠っていた最後のひとつがカチっと押された人が続出。新幹線車両内の電光掲示板にもじってのことだろうが、同内容の英文も出すあたりが外国人来場者のスイッチも漏れなく押してあげる電気の気配りと海外経験の豊富さが現れていた。
「俺たち一回目から出てるけど、いまだにこんなことやってるぜー!」という卓球の言葉によって、この人たちは嵐の初回から出ているんだと改めて気づかされ、「あすなろサンシャイン」ではミュージシャン顔で雄叫びをあげるピエール瀧の姿に、俳優もいいけどやっぱりこの顔だよねと感じ入る。多彩なアレンジや聴かせ方の振り幅は年々変化と進化をし続けているけれど、おっぱいを寄せてあげるのに忙しい卓球が「20年前から、もっと前からやってるぜー!」と叫ぶ姿を見て、この人たちって本当に変わらないという事実に安堵しながらの「Baby’s on Fire」。続いてスクリーンにはUFO出現「Flashback Disco」からの「ジャンボタニシ」で盛り上がりは最高潮に到達。さらに「N.O.」で大合唱、続けてだめ押しの「富士山」ではオーディエンスが嬉々として富士山を叫び、飛んでいた。しかしながら、今回は瀧が富士山を被らなかった。フジロック20周年なので盛大な富士山の冠り物を装う瀧を期待していたのだが、そこは外されてのジャンプ&大合唱で本編が終了。続くアンコールでは「Shangri-La」からの「虹」。新旧余す所なく、電気グルーヴ史上、最高最強のセットリストだった。
最後の「虹」では場外に飾られていたフラッグや各ステージなどのフジロックのここかしこに次々と虹が架かる映像と歌なしの音が交わり、電気グル−ヴの持つ底抜けなポップさとフジロックへの強い想いがたっぷり込められた、スペシャルゲストの名に相応しい演出であった。「フジロックには特別な思い入れがあるんで嬉しいです。明日死にまーす」と言い切った卓球の言葉通り、彼らにしかできないやり方で魅せた圧巻のショーは20年というフジロックの持つ歴史に深く刻まれたのと同時に、人々の記憶にも永く残ることだろう。
撮影=Masanori Naruse 文=早乙女‘dorami’ゆうこ
電気グルーヴ photo by Masanori Naruse