3年に一度の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2016」が開幕!
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ジェリー・グレッツィンガー《Jerry’s Map》2016 「愛知県美術館」を訪れると、まず目に飛び込んでくるのがこの作品。ポスターやチラシ、公式ガイドブックの表紙などに今回のメインビジュアルとして起用されている
世界各国を旅して芸術とふれ合っていくような、感動に満ちた虹色の体験を!
10月23日(日)まで74日間にわたって開催される「あいちトリエンナーレ2016」が8月11日(木)、ついに開幕した。2010年、2013年に続き3回目となる今回は、名古屋、豊橋、岡崎の3都市を主な会場として、【現代美術】【舞台芸術】【普及・教育】の3本柱を軸とした多種多様なプログラムが展開され、38の国と地域から119組のアーティストが参加している。
大巻伸嗣《Echoes-Infinityー永遠と一瞬》 3会場で3作品を発表する大巻の作品。「愛知県美術館」10階の大空間を埋め尽くす花や鳥の模様─その迫力と色彩の美しさ、驚くべき立体感は、現場で鑑賞してこそ味わえるもの
今回は、フランスを拠点のひとつとし、南米での滞在経験も持つなどグローバルな視点で活動している港千尋を芸術監督に迎えたことに加え、ブラジルとトルコを拠点とする2人のキュレーターを招聘。それによって、参加アーティストの出身国や地域が過去最大に拡大した。
日本ではあまり見る機会のないアーティストも多数含まれる上、国際展参加アーティスト85組のうち、66組が新作を披露。さらに、従来のアートの枠組みを拡大する試みにも挑むなど、いろいろな意味で“新しい表現との出会い”がより楽しめる芸術祭になっているのも大きな魅力のひとつだ。
開幕日の前日に行われた記者会見で港芸術監督は、
「これだけの規模と内容になるとは、正直2年前には想像していませんでした。激動の世の中ではありますが、その激動に正面から向かい合って、これだけの人が物を考え、現実と対峙して物を創ることを通してどうやって未来に我々の希望を繋いでいけるのか、その非常に真摯な姿勢が全ての表現を通じて皆さんと共有できるという自信があります。本当に大人から子どもまで幅広い方々に見ていただきたいと、我々スタッフ、企画体制一同、心から望んでおります」と挨拶。
記者会見には、港芸術監督(前列中央)やキュレーター、多数のアーティストも参加
質疑応答では、新作が多く発表されることについて、「どんな作品になるかわからず、リスクが高かったのでは?」と記者から声が上がると、
「もちろん新作を創っていただくリスクは高いですが、やはり「あいちトリエンナーレ」という場で発表する以上、愛知をリサーチしていただいて、そこでしか出来ないこと、そこだから出来ることをなるべくやっていただきたいと思い、新作を増やしていくことになりました。その結果、現場がたくさん増えていきましたが、多くのスタッフと一緒になんとかチーム体制で新作を創り上げていきたい、愛知ならではの展開として繰り広げていきたいと思い、それが今回はギリギリ実現できたという感じがしています」と、拝戸雅彦チーフ・キュレーター。
また、港芸術監督は、改めて今回の全体テーマ〈虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅〉について記者から問われると、
「芸術監督の役割というのは、そのテーマを最後まで信じられるかどうかだと思います。そこがしっかりしていれば、多少のことがあっても揺らぎがないと思うんです。私は’80年代の初めから世界を旅してきました。旅の中には戦乱、革命、災害といった、日常が大きく変わってしまう状況がありました。その中で、何が自分をここまで導いてきたのかと考えると、アーティストの姿でした。どんな状況でも諦めずに物を創る。表現を続けてそれを共有する。その姿に刺激を受けてここまで来たわけです。時代は大きく変わりましたが、厳しさは増すばかりです。この時代に於いて、どんな状況にあっても逞しく、技術とチームワークで表現を通してなんとかして希望を繋ごうとしているアーティストが世界中にたくさんいる。そのことを伝えたいというのが、私の意図であります。
もうひとつ、愛知県の位置を世界地図の中でもう一度眺めたい、という気持ちがありました。愛知県は日本列島のちょうど中央に位置しています。今日来てくれているアーティストの多くが直接、愛知の空港に入られていますが、ここを起点とすると東京や関西を起点とする日本の旅行とはまた違った移動ができると思うんですね。その2つの点を結びつけるのが、「旅」というテーマになるかと思います」と語った。
この日の夜には、「名古屋東急ホテル」でオープニングレセプションも行われ、港芸術監督をはじめ、大村秀章愛知県知事、河村たかし名古屋市長、佐原光一豊橋市長、内田康宏岡崎市長らが登壇。広い会場内は、参加アーティストをはじめ、芸術祭スタッフ、報道陣や招待客など人、人、人で埋め尽くされ大賑わい。開催に寄せる注目度と期待の高さが伺える圧巻の光景に。
オープニングレセプション終盤には、アーティストやスタッフ、関係者らが壇上にてんこ盛り状態で記念撮影
また、翌日の夜19:30からは「豊橋市公会堂」にて、線をモチーフにカラフルな絵画や映像を手がける参加アーティスト、石田尚志による映像プロジェクション『絵馬・絵巻/プロジェクション』を実施。こちらも広場いっぱいに多数の人が詰めかけ、開幕を華々しく飾った。
石田尚志の映像プロジェクション『絵馬・絵巻/プロジェクション』の一部より
これまで以上に未知のアーティストや作品、新たな試みが多いということは、それらを知っていく喜びや、自分の感性で魅力を発見する面白さをより味わえるということ。その手助けとなるべく、各アーティストやプログラムを創作の現場から追った制作レポート(全7回)も連載中なので、こちらもご参照あれ。
港芸術監督のことばを借りれば、虹のキャラヴァンは出発したばかり。地元の方は、毎日のように開催される各種イベントにも参加して、芸術三昧の刺激的な日々を過ごしてみては? また、遠方の方も夏休みや連休を利用したり、舞台芸術の集中公演期間「レインボーウィークス」(10月6日~23日)に休暇を合わせて、名古屋めしと共にご堪能を!
■テーマ:虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅
■芸術監督:港千尋
■日時:2016年8月11日(木・祝)~10月23日(日) 74日間
■会場:名古屋地区/愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場、栄会場、名古屋駅会場 豊橋地区/PLAT会場、水上ビル会場、豊橋駅前大通会場 岡崎地区/東岡崎駅会場、康生会場、六供会場
■料金(国際展):◆普通
■問い合わせ:あいちトリエンナーレ実行委員会事務局 052-971-6111
■公式サイト:http://aichitriennale.jp/