『SUMMER SONIC』を彩るUSデザイン界の重鎮、Tom McPhillips
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現在、東京と大阪で同時開催中の『SUMMER SONIC 2016』。サマーソニック東京に参加したことがある人にはお馴染みの、幕張メッセ内の各ステージ・エリアに飾られた巨大デコレーションは誰の手によるものかをご存じだろうか。
今回は、サマーソニックの幕張メッセ内のMOUNTAIN STAGE、SONIC STAGEなどの全ステージと一部のエリア装飾を担当しているATOMICの創始者であるTom McPhillips氏にインタビューをすることに成功した。
ATOMICの歴史は長い。ATOMICの創始者であるTom McPhillips氏は、1976年、イギリス・ロンドンで劇場のステージセット製作を手がけていた。活躍の場は劇場からロックンロールの世界へと移行し、80’sから90’sにかけてザ・フー(The Who)、ジューダス・プリースト(Judas Priest)、オジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)などのコンサート・ツアーのステージセットを次々手がけるようになる。
1994年、アメリカからのオファーが増えたことから活動拠点をアメリカ・ペンシルベニアへと変え移住しATOMICを創立。ライブ・コンサートのステージセットのデザインの他にも、TVショー、照明、装飾部材のレンタルなどエンタテインメント業界における様々な分野で展開し現在に至る。
近年では本国アメリカ以外にも日本をはじめ、ドイツ、シンガポールなどの現地企業と提携して事業を拡大しており、日本では『EXILE ATSUSHI LIVE TOUR 2014 & 2016』、ケツメイシ、MISHAなどのツアーのステージセットのデザインを担当した経歴を持つ。
普段語られることのない、サマーソニックを支える外国人クルーの貴重なインタビューをお楽しみいただきたい。
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――ATOMICは2009年のサマーソニック10周年からの参加ですが、毎年進化していく装飾を見るのを楽しみにしているオーディエンスも多いと思います。
サマーソニックの装飾を手がけられることは光栄です。クリエイティブマンと仕事ができることも嬉しいことですし、私は日本が好きなので毎年来日するのを心待ちにしています。我々が担当しているのは幕張メッセ内の全ステージとマリン・スタジアムの外周に設置する風車です。初年度は比較的小さなデコレーションを用意しましたが、実際に会場を見てみて、もっと大きな装飾を施したいとクリエイティブマンに提案し、年々進化して現在に至ります。
――今年も新しい装飾がありますね。
はい。すべて弊社のオリジナル・デザインです。
――サマーソニックに参加して8年目。クルーの一人として、サマソニをどう見ていますか?
サマーソニックは我々が手がけるアメリカの音楽フェスティバルと大きく違います。例えば、ミシガン州ロスバリーで開催されている『Electric Forest Festival』の場合はEDMに特化しています。そういったジャンルが絞られたフェスティバルが多いのが現状です。しかし、すべてのジャンルを網羅するように音楽の多種性を持ち、オーディエンスに多角的にアプローチしていることから生まれる独自のバイブがサマーソニックにはありますよね。それが最大の魅力でしょう。
――日本とUSでのフェスティバルの進行方法も異なるのでは?
サマーソニックはとてもよくオーガナイズされているフェスティバルだと思います。そして日本人のクルーは皆、真摯に自分の仕事に打ち込んでいて、ひとりひとりの意識が非常に高い。遊んでしまっているようなクルーはどこにもいません。その点が私はこの上なく好感を持っています。これはアメリカとの最大の違いでしょうね(笑)。
――オーディエンスを見て何か感じるものはありますか?
日本の皆さんはとてもマナーが良いですね。それから、先ほども言いましたがサマーソニックにある独自のバイブはサマーソニックのオーディエンスが創り出しているものでもある。それぞれが好きな音楽を聴いて、それぞれがハッピーになっている。その姿を見るのは嬉しいものです。
――最後に、あなたのようなデザイナーになりたい日本の人々に向けて一言ください。
ただひとつ伝えたいことは、デザイナーとはこれ以上に面白い職業はないということ。派手な世界で働きたい、有名になりたいという理由でデザイナーという職業を選ぶのではなく、何事に対しても実直に、ひとつひとつの仕事を全うすることを続けることが大切だと思います。
ATOMICの巨大なデコレーションの数々に興味を持った人は幕張へ! と言いたいところだが、残念ながら開催2日目である本日・8月21日(日)の東京会場
写真=Tom McPhillips
協力=クリエイティブマンプロダクション
取材・写真・文=早乙女‘dorami’ゆうこ