ダイアモンド✡ユカイ、ミュージカル『ミス・サイゴン』初挑戦への思いを大阪で語る!
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『ミス・サイゴン』取材会より、ダイアモンド✡ユカイ(撮影/石橋法子)
『レ・ミゼラブル』の製作チームによって1989年にロンドン、91年にニューヨークで開幕したミュージカル『ミス・サイゴン』。ベトナム戦争を背景に、サイゴンで出会ったベトナム人少女キムと、米兵クリスの苛烈な愛の変遷を全編歌で綴る。日本では92年の初演から通算上演回数1368回を数える大ヒットミュージカルだ。2016年版はキム・スハら国内外から新キャストを迎える。中でも、市村正親、駒田一とのトリプルキャストで本作初登場を飾るロックミュージシャンのダイアモンド✡ユカイ。大阪で開かれた取材会では、物語の鍵を握るエンジニア役への思いと作品への意気込みを語った。
「間違いなく人生の一大転機。全力でロックなエンジニアを表現したい」(ユカイ)
--作品との出合いから教えてください。
公演を観たのは一昨年の2014年版が初めてですが、作品への興味は本田美奈子.さんが出演されていた20年以上前からありました。ただ当時はロックミュージシャンとして全米ナンバーワンになることを目指していたので、ミュージカルへの憧れはあっても別世界のものでした。
--それが時を経て出演することに。
舞台は歌の題材を探す意味もあって、いろいろと観てはいたんですよ。「裏歴史ントん協会会長」を名乗るぐらい歴史にも興味があるので、『レ・ミゼラブル』などはフランスの歴史作品として客観的に観れたんですが、一昨年の『ミス・サイゴン』を観たときは雷に打たれたような衝撃を受けた。どんどん引き込まれていきました。
--具体的には、どんな点に引き込まれたのですか?
一番は音楽。どこをとっても素晴らしい曲で美しい。あとはベトナム戦争という時代背景ですよね。ビートルズがそれまでのロックのカテゴライズをぶっ壊して以降、ロックが一番熱い時代でもあった。60年代中期から後半にはフラワームーブメントが起きて、アメリカやイギリスのロックシーンにはジミ・ヘンドリックス、ドアーズ、ジャニス・ジョップリンらがいて、自分が憧れたロックがその時代にあった。また、うちのおふくろは太平洋戦争を生き抜いた世代なので、子供のころから戦時中の悲惨な話を聞いて育ちました。それらの思いが頭を巡る中で、戦争にうちひしがれていく人々の切ないストーリーと音楽に、どんどん引き込まれました。
--シェーンベルクの楽曲の魅力について、もう少し教えてください。
聴けば聴くほど美しい。じつは、世が世なら自分はオペラ歌手になりたかったという思いもあるので、そういう意味で言えば、オペラに匹敵するような音楽の素晴らしさを感じる。中でも、エルビス・プレスリーがゴスペルに影響を受けて歌った曲に近いようなメロディの『ブイドイ』は感動するね。キャラクターにもそれぞれテーマソングがあって、切なかったり、怖かったり。それが必要な場面で繰り返し出てくるのも効果的なんだよね。コンサートで聴いても素晴らしい楽曲ばかりだと思う。
--また、エンジニア役はオーディションで勝ち取られたそうですね。
「俺がここにいる。(エンジニアは)ダイアモンド✡ユカイそのものじゃないか」と思ったんですよ。歌っている曲の内容もロックそのものだし、最後に『アメリカン・ドリーム』を聴いたときは、雷に打たれたような感覚だった。自分が30年間ロックをやってきて、表現したいことがこのミュージカルの中に詰まっているなと。「この曲を歌いたい!」と思ったのがまず最初です。ミュージカルをやることへの葛藤や、できるのかという不安もあったけど、50歳を過ぎても何かに挑戦しようと思う、この気持ちがロックなんじゃないかなと。
--そして、見事オーディションに受かりました。
歌は自分なりの表現で歌ってきたので、自信はあったんですけど、特にダンスが苦手で。エンジニアはそこまで踊らなくていいと聞いてたんですが、課題曲『アメリカン・ドリーム』にはバンバン踊りが入っていて、入ってるじゃん!っと。要はミュージカル俳優にとっては、それほどたいした振りではなかったという(笑)。自分には未知の世界なので大変でした。
--ポスターなどで公開されている、オールバックのヘアスタイルも新鮮です。
本番ではどうなるか分かりませんが、自分としてはロックっぽい感じを出していきたいなと。どちらかというと育ちがいいのでオールバックにすると、市村さん、駒田さんのようにワイルドにはならないんですよね(笑)。
エンジニア役のダイアモンド✡ユカイ
--トリプルキャストで違いを出すには、まさに育ちの良さがポイントに?
いやいや、いまのは冗談ですけど(笑)。市村さんは演劇の巨人だし、駒田さんは経験豊富ないぶし銀で2014年版にも出演されていたので、市村さんをエンジニアの師匠とすると、駒田さんは俺にとって兄弟子みたいな人だね。市村さんに言われたのは「ユカイちゃんはさ、雰囲気が良いから」って。それしか言いようがなかったとは思うんだけど、でもその言葉が役作りの助けになっています。どれだけ頑張っても絶対にみなさんと同じようにはできないから、特技があるとしたら雰囲気だよなと。不器用ですが先輩たちの胸を借りて、ダイアモンド✡ユカイにしかできない何かを絶対に見つけて、思いっきり『アメリカン・ドリーム』を歌い倒したい気持ちでいっぱいですね。
--実際、稽古に入られてみていかがですか。
年齢が近いこともあって、駒田さんに一番仲良くしてもらっていて、ごく基礎的なところから教わっています。稽古で凄いなと思ったのは、ベトナム戦争とはどういうものだったのか、という勉強から始まるんですよ。その「サイゴン・スクール」で互いにディスカッションしたりね。次にそれぞれの歌のレッスンに入っていく。俺なんか、まだ芝居の稽古も始まっていないのに、楽曲を聴いただけで泣いちゃいましたから。これに芝居がついたら、もう感動なんてレベルを超えるなって思いました。
--新たなエンジニアの誕生に、期待が高まります!
ロックミュージシャンとしてデビューして、バラエティの世界に挑戦したときも転機だったけど、『ミス・サイゴン』は一大転機になると思う。自分の人生にとって、大きな意味のあるものであることは間違いない。新たな挑戦を始める度に「ダイアモンド✡ユカイは何者なんだ」って叩かれもしたけど、いつも本気だったので。一期一会のなかで自分が出来る全てをここにぶつけて、ロックなエンジニアを表現したい。毎公演最後のつもりで全力を尽くすので、いま見逃すとダイアモンド✡ユカイの『ミス・サイゴン』は観れないよと。劇場で待っています!
エンジニア役のダイアモンド✡ユカイ
2016年10月15日(土)~28日(火)プレビュー
2016年10月19日(水)~11月23日(水・祝)
会場:帝国劇場
2016年12月10日(土)、11日(日)
会場:岩手県民会館 大ホール
2016年12月17日(土)、18日(日)
会場:鹿児島市民文化ホール(第1)
2016年12月23日(金・祝)~25日(日)
会場:久留米シティプラザ ザ・グランドホール
2016年12月30日(金)~1月15日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール