「池田純矢という人が起こした事実を劇場で目の当たりにしてほしい」池田純矢・鈴木勝吾インタビュー『エン*ゲキ#02 スター☆ピープルズ‼』
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俳優・池田純矢が作・演出に挑む舞台『エン*ゲキ#02 スター☆ピープルズ‼』が2017年1月5日(木)から紀伊國屋ホールにて上演される。池田が作・演出を務めるのは2015年に上演されたエン*ゲキ#01『君との距離は100億光年』以来。前回は朗読劇の形をとったが今回はいよいよ本格的な舞台の演出に挑戦することとなる。これまで何度となく共演している鈴木勝吾が本作の主人公「スター」を演じる。気心知れた「相方」のような池田と鈴木の関係性は本作でどのように変化、深化するのだろうか。二人に話を伺った。
――満を持して、池田さん作・演出の作品を世に出すことになりますが、今の率直なお気持ちは?
池田:怖さとか恐ろしさももちろんありましたが、それもありきで取り組んできました。今は目の前にパーツが揃った状態なので、早くこの作品を組み立てたいと思っています。頭の中で組んでいた時との違いもあったりしますが、今は揃ったパーツの一つ一つに「おお、すげえ」と感動しているところです。
――そのパーツの大きな一つとなるのが鈴木さんです。
鈴木:いや、他のパーツと大きさは一緒ですよ!
――池田さんから鈴木さんには「この作品に出てほしい」という話をされたのか、それとも「こういう役を演じてほしい」と話をされたんでしょうか?
池田:最初はこの作品で、という話をしまして、そのあとで具体的には役がこれだよって。
鈴木:それを聞いて、「なんで俺がこの役??」と思ったよ。だって……ね!
――ちなみに、他の役を知ったあと、この役のほうが自分らしいと思った役はありますか?
鈴木:「フラッシュ」。でも自分ぽいって自分じゃよくわからないですしね。自分が望んでいる自分の姿かもしれないし。
池田:今まで僕が持っていたしょーちゃん(鈴木)のイメージと、しょーちゃんが持っている武器を全部使うなら、その役のほうが良かったと思うんです。でも今回は武器をあえて持たないでほしい、そしてこの役をしょーちゃんで見たいって思っちゃったんです。
鈴木:でも俺が本来持っているものは今回演じる「スター」かもしれないな。普通の人間だからこそ普通であることを認めたくなくてふざけてみたり……裏返して、普通なのが本当の俺なのかもしれない。そもそも「普通」って何?って話だけどね。
――出演をオファーされたときの率直な気持ちは?
鈴木:嬉しかったですね。「僕で?」って思った。さっきパーツの大きさは一緒って言ったけど、僕らがいくらそう思っても他人から見たらそうは思っていただけないとも思うので。「主演でしょ?」って見られるのでその責任と、それより大きなものを彼は背負ってますからね。まぁ、俺が失敗しても、全部純矢のせいなので(笑)。
池田:あはははは。まあそうだね。
鈴木:今までの演出家って年上の方が多くて、そんな人たちがときには「俺を信じろ、失敗したら俺のせいなんだから」という訳です。そうおっしゃってくださった上で役者が責任をもつ関係でした。でも、同年代の人間が演出をするってのは……誰かが「いいんだよ、勝吾じゃなくて演出家が責任取ればいいんだし」って言ったとしても、その演出家の気持ちが身に染みてわかりますね。気分がわかるというか。主演はその責任の一部を託していただいている役どころでもあるので、それが僕でいいのかな? とは思いましたね。
池田:今回、しょーちゃんが主演でこの役をやることは安全パイではなく、結構攻撃的な選択だと思っているんです。僕には見えないことを年上の演出家さんはたくさん見えていると思うのですが、同年代で演出するからこそできる演出もある訳で。僕にしかできないことが絶対あるはずだし、しょーちゃんとのこの関係性だから見えていることもたくさんある。それをフル稼働させればこのキャラクターで、攻撃的なキャスティングをしたこの作品……僕には勝算がある、と。だから僕を信じてね、と思ってます。
鈴木:信じますよ。稽古に入ってからケンカしないようにします(笑)。
――まあ、ケンカはともかく、稽古に入ったら意見のぶつかり合いは何かしらあるんでしょうね。
池田:今回は僕が台本を書いているので、僕がいちばん作品を知っているはずじゃないですか。なのに自分が役者をやっている時は、「この役は~」って作者を差し置いて偉そうによく言ってたなあ、って今更ながら恥ずかしく思います。でも自分が作者の立場になってみると、役者にあれこれ言ってほしいんですね。絶対打ち負かす自信があるので(笑)。
「これってこういう解釈だよね?」って役者が演出家と違うベクトルを出してきた時に、よく「なるほどそっちも面白いね。やってみてよ」って言ってくれたりする演出家さんはすごく心が広いなって思います。自分の書いた本で、自分で演出していて、役者に自分の解釈と違うことを言われても面白がれたりできる演出家さん……。僕は役者でもあるのでどっちの気持ちも分かる事ができると思うんです。
だから、もし意見が違うならとことん戦いたいし、そこで相手にも折れて欲しくないです。その意見を貫かれた時に僕は軌道修正をすることになるけど、そっちの意見の方が楽しいと思えばそうしますし。
――この作品で池田・鈴木コンビでの出演は10作目なんですね。成り立ちこそ違いますが、地球ゴージャスの岸谷五朗さんと寺脇康文さんのような関係にいつかなるんじゃないだろうか…と思ってみたり。そんな将来的な目論見はありますか?
池田:(笑)。今はそんな目論見はないんですけど、まあ……「エン*ゲキ」という屋号はずっと背負っていこうと思っているので、その上で合う役があればしょーちゃんにオファーしていきますよ。しょーちゃんの事が役者として純粋に好きなので。ただ僕はアテ書きはしないので、何か作品を書いてみてしょーちゃんにハマる役がなかったらオファーはしないです!(キッパリ)
鈴木:オファーを受ける以前に、俺はずっと演劇で闘っていけるように力をつけていかなきゃなあ。彼に対して恥ずかしくない役者でありたいし。
――この作品ができるまで、の話を聞かせてください。
池田:前作の『君との距離は100億光年』は、元々自分で書いた小説の重要なところだけを抽出して、あとはほぼカットして上演台本にしたんです。それでもいろいろな役者さんが出てくださって、すごくいいものが出来上がったんですが、どうせなら0から始まって100で終わる話をやりたいなって思っていたんです。それが『君距離』でやり残したこと。いろいろな想いもあって、「宇宙」を舞台にもう1本書きたいと思っていました。今回キャラクター数が8人と多い方なのですが、この8人全員をどうやって愛せるようにしようかな? と思った時に、何かの能力=アビリティが欲しいと思って。でもただの超能力じゃ面白くないから、いっそ要らないだろそんな力……というものにしました。
僕の中で、まずは8人のキャラクター像が出来上がったんです。こんな人たちがいたら良いなって。その段階ではまだ各人の能力は決めてなかったんですが。このキャラクターをどう動かせば魅力的に見えるだろう、と考えて書きました。あと自分がどうしても書きたかったことを…。でもそれを前面に出すと重たくなってしまうので、あくまでもスパイスとして、物語を作りました。
――台本を最後まで読みました。この作品、続編がありそうな気がしました。
池田:2行で終わるかも(笑)。この作品を観にきていただいて、別に深いことを考えなくても良いんです。楽しく観終わった後、街で知らない人と肩がぶつかっても「てめえこの野郎」と言わなきゃいいな。そんな一日があってもいいな。それだけなんです。
鈴木:(池田を見ながら)めっちゃカッコイイ事言ってるし……いいわーー!
池田:あはははは。
――池田さんがこんなことを考えている人だって思ってましたか?
鈴木:思ってましたよ。そういうことしか考えてない人だと思ってました。「こじらせている人」ってイメージがあります(笑)。
池田:こじらせてねーわ(笑)。
鈴木:でもそれがいいなって思います。ずっとそうあり続けてほしいです。今って「言わないほうがカッコイイ」的なところがあるじゃないですか?俺は「言えや!」「やれや!」って割と思うタイプなので。言って動く純矢はかっこいいですね。少なくとも演劇をやっている人たちは違うんだなというのを如実に感じていますね。
――そんな池田純矢という人をどのように理解して舞台に臨もうとしていますか?
鈴木:理解されたい?
池田:理解しなくていいよ。何だったら今言っていた事は僕だけが思っていれば良い話だし、お客さん、役者さん、スタッフさんの誰に押し付けるものではない。ただ物語の中だけに集中してくれればいい。その裏で僕が何を考えているかまでは考えなくていい。しょーちゃんが「スター」という役で物語の中にいてくれればそれだけで成立する話だから。
――この関係性がいいですね。これで稽古が始まるとどうなるんでしょうね?
鈴木:意外と純矢が「うわーっ!」ってなっちゃうかもね(笑)。
池田:「うわーできないよー! なんでこんなに上手くいかないんだ!!」って叫んでいるかも。
鈴木:無きにしもあらずだよね。やってみないとわからないから。
池田:いちばん懸念しているのは、役者としての僕自身のエゴが出ないかってことですね。
鈴木:プレイヤーとしての自分が、ってこと?
池田:そう。それが邪魔になるような展開になったらいやだなあって。でも必要なときには前に出て演出をしないといけないんだろうね。
鈴木:葛藤が起きちゃうからね。でも出演と演出ってすごいよね、今さらだけど。恐ろしいと思うもん。
池田:いや、出なくていい話なら出ないもん!
――この作品で自分が完全に演出だけをやる、という選択肢は考えたことがありますか?
池田:考えますよ、今でも。でもこうやって(ポスターを見ながら)名前出しちゃったし(笑)。
鈴木:もう無理だね。逃げられないね(笑)。
池田:でもこれまでずっと池田純矢を観てきた人、舞台を観にきてくれる人はきっと役者としての池田純矢を観たいんだろうと思うし、ギブアンドテイクじゃないですけど、観にきていただく対価として自分が出演しないとお客さんに対して不誠実だなと思うので。本当は今でも演出だけでいたい(笑)。
鈴木:これは「池田純矢、パンク説」がマジでありそうだな(笑)。
池田:今回の舞台で池田純矢は役者だけじゃなく僕が書く本や僕の演出が好き、と思ってくれる人が増えたら、舞台に出ない、という選択肢もあるかもしれない。望まれている限りは役者として出ますよ!
――これだけ男性がたくさん出演する作品ですが、エロとかラブとかが足りないように思ったのは気のせいでしょうか?
池田:ラブは前作に置いてきちゃったので、今回は持ち込まなかったんです。実は前作との関係があって、ラブを持ち込むと前作の登場人物に失礼だなって思ってしまったんです。僕は僕が書いた全部のキャラクターが好きだから。
鈴木:……いろいろ考えてんやな…俺すごい今無防備に話を聞いてたけどアタマにスッと入ってきたわ。
――全部のキャラクターが好きだとおっしゃいましたが、その中でも特に好きなキャラは?
池田:全部が愛娘愛息子なんで、優劣つけづらいですね。言葉をいっぱい書いたのは「スター」。文字量だけでいうと一番多いと思います。だからこそ「スター」の事で悩んだし、「スター」はかわいいですね。
――手のかかる子ほどかわいい、という感じですね。そんなかわいい役をいちばん信頼できる人に任せたってことですね。
池田:そうですね。自分で書いていてなんですが、僕はやりたくない役ですから。
鈴木:ん!?
――そんな演出家の期待が込められている役をどう演じられますか?
鈴木:期待というかなんというか…がんばります……(笑)。 このカンパニーで、紀伊國屋ホールで、作・演出が池田純矢で、若さだったりタイミングだったりいろいろなことに希望をもって稽古に臨みたいです。池田純矢という人が起こした事実を劇場で目の当たりにしてほしいんです。単純に。なんやかんやいってもこの事実、観ておいた方がいいと思うんです。観た結果がつまんなかったとか、おもしろかったとか人それぞれ思うことは違うと思いますが、見ないでなんやかんやいうのは嫌でしょ。だからこそ、まずは観たほうがいいと思うんですよ。
■日程:2017年1月5日(木)~11日(水)
■会場:新宿東口・紀伊國屋ホール
■作・演出:池田純矢
■出演:鈴木勝吾、透水さらさ、赤澤燈、井澤勇貴、吉田仁美、オラキオ、池田純矢、酒井敏也
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プレイガイド先行販売:2016年10月17日(月)〜23日(日)
一般発売:2016年10月29日(土)〜
■公式サイト:http://www.enxgeki.com/