ゴッホとゴーギャンの共同生活に注目『ゴッホとゴーギャン展』 小野大輔、杉田智和が2名を演じる音声ガイドも

レポート
アート
2016.10.12
開催直前の会場エントランス

開催直前の会場エントランス

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ポスト印象派を代表するフィンセント・ファン・ゴッホポール・ゴーギャン。この二人が共同生活を送った2ヶ月間にスポットを当て、それまでとその後の画家人生を紐解く展覧会『ゴッホとゴーギャン展』が、東京・上野の東京都美術館で開催されている(2016年10月8日~12月18日開催)。公開前日のプレス内覧会より、みどころをご紹介しよう。

《自画像》フィンセント・ファン・ゴッホ/クレラー=ミュラー美術館 ©Kröller-Müller Museum, Otterlo

《自画像》フィンセント・ファン・ゴッホ/クレラー=ミュラー美術館 ©Kröller-Müller Museum, Otterlo

《自画像》ポール・ゴーギャン/キンベル美術館 ©Kimbell Art Museum, Fort Worth, Texas

《自画像》ポール・ゴーギャン/キンベル美術館 ©Kimbell Art Museum, Fort Worth, Texas

日本のみならず、アジア初の二人展

19世紀のフランス・アルルの地で、約2ヶ月間の共同生活を送ったゴッホとゴーギャン。「現実」を描くゴッホと、「想像」を描くゴーギャンは、性格も画風も全く異なる。時にはお互いの作品に影響されたり、激しく議論する中で創作意欲を高め合っていった。その個性を浮き彫りにする「二人展」は、日本のみならずアジアで初の試みとなる。世界各地、日本全国から集められた名品の数々は、2人の初期から晩年にかけての油彩画約50点を含む約60点にのぼり、見応え十分だ。

会場の様子

会場の様子

ゴッホの自画像3点に見る表現の変容

本展のみどころ3つを、東京都美術館・大橋菜都子学芸員が語ってくれた。

1つ目に注目したいのは、ゴッホの3点の自画像。パリ時代に描かれた約30点の自画像のうち、1年の間に描かれた3点が並べて展示されているのである。この展示により、ゴッホが印象派の影響を受け、筆致も色もどんどん自由になっていった過程がよくわかるのだ。「新しい表現を試すのに自画像は最適である」と語ったゴッホの、意欲的な制作姿勢がうかがえる。

ゴッホの3点の自画像が並ぶ

ゴッホの3点の自画像が並ぶ

二人の「収穫」

ゴッホとゴーギャンがそれぞれ「収穫」をテーマにして描いた作品たちが、2つ目のみどころだ。ゴッホの《収穫》は、「現実」の風景を色鮮やかに描いた一作。豊かに実ったアルルの麦畑と清々しい青空の色の対比が美しいものとなっている。ゴッホ自身も「他のすべての作品を完全に圧倒する」と語った自信作だ。

収穫》フィンセント・ファン・ゴッホ/ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) ©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

収穫》フィンセント・ファン・ゴッホ/ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) ©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

一方、ゴーギャンの《ブドウの収穫、人間の悲惨》では、アルルのぶどうの収穫風景にブルターニュの女性を配し、「想像」の世界が描かれている。悲嘆にくれる女性の姿は、ペルーのミイラから着想を得たもの。ゴーギャンはこの作品を「今年の最高傑作」とし、ゴッホも熱烈に賞賛したという。画家自身が傑作と称した2点を並べて鑑賞することで、それぞれの個性が際立ってみえてくる展示となっている。

《ブドウの収穫、人間の悲惨》ポール・ゴーギャン/オードロップゴー美術館 ©Ordrupgaard, Copenhagen Photo: Anders Sune Berg

《ブドウの収穫、人間の悲惨》ポール・ゴーギャン/オードロップゴー美術館 ©Ordrupgaard, Copenhagen Photo: Anders Sune Berg

生涯の友情を感じる2つの椅子

最後のみどころは、二人がお互いを想って描いた2つの椅子の絵だ。ゴッホの《ゴーギャンの椅子》は、静かに置かれた椅子の上の蝋燭と本が、イマジネーションの画家であるゴーギャンを暗喩している。

《ゴーギャンの椅子》フィンセント・ファン・ゴッホ/ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) ©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

《ゴーギャンの椅子》フィンセント・ファン・ゴッホ/ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) ©Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

ゴーギャンの《肘掛け椅子のひまわり》は、ゴッホの死から11年後にタヒチに移り住んで描かれている。わざわざフランスからひまわりの種を取り寄せ、育てたというゴーギャン。共同生活が破綻したのちも、書簡を通して交流を続けた二人の、生涯にわたる友情をうかがい知ることができる。

《肘掛け椅子のひまわり》ポール・ゴーギャン/E.G. ビュールレ・コレクション財団  ©Foundation E. G. Bührle Collection, Zurich

《肘掛け椅子のひまわり》ポール・ゴーギャン/E.G. ビュールレ・コレクション財団 ©Foundation E. G. Bührle Collection, Zurich

声優・小野大輔、杉田智和が演じるゴッホとゴーギャン

本展の音声ガイドは、声優の小野大輔がゴッホ役、杉田智和がゴーギャン役となり、書簡や著作から画家自身の言葉を伝える。当時、彼らがどんな思いで制作に向き合っていたか、お互いの存在をどう捉えていたかが、豊かな感情表現で再現されている。非常に聞きごたえがあるので、来場した際にはぜひ音声ガイドの着用をオススメしたい。

東京都美術館

東京都美術館

 
イベント情報
ゴッホとゴーギャン展
会期:2016年10月8日(土)~12月18日(日)
会場:東京都美術館 企画棟 企画展示室
休室日:月曜日、10月11日(火) ※ただし、10月10日(月・祝)は開室
開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室:金曜日、11月2日(水)、3日(木・祝)、5日(土)は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
観覧料:
当日券  一般 1,600円 / 大学生・専門学校生1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円
団体券  一般 1,300円 / 大学生・専門学校生1,100円 / 高校生 600円 / 65歳以上 800円
※団体割引の対象は20名以上 ※中学生以下は無料 ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料 ※いずれも証明できるものをご持参ください
特設サイト:http://www.g-g2016.com/

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