GOOD ON THE REEL 儚くも美しい、希望と光に満ちた初の野音ワンマン

2016.10.14
レポート
音楽

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

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『HAVE A “GOOD” NIGHT vol.50』ANIVERSARY SPECIAL 2016.10.9 日比谷野外音楽堂

10月9日。GOOD ON THE REELの自主イベント『HAVE A “GOOD” NIGHT』の50回目であり、初の日比谷野外大音楽堂ワンマンの当日。東京は朝から雨が降っていた。

以前、SPICEで行なったインタビューで、野音公演について「せっかく「雨天決行」っていう作品も出したので、小雨ぐらいは降ってほしい」と、ボーカルの千野隆尋が笑いながら話していたが、なんというか、これはちょっとシャレにならないほどの雨……というか、なかなかの豪雨だ(苦笑)。このままだと“リアル雨天決行”になるな……と思っていたのだが、昼過ぎには雨もあがって一安心。開演時刻が迫った夕暮れどきには、雲の隙間から青と赤が入り交じった秋空と、大きな上弦の月が顔をのぞかせていた。

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

そんな美しい空を見上げていると、ゆっくりとステージの灯りが落ち、幻想的なSEをバックに伊丸岡亮太(G)、岡﨑広平(G)、宇佐美友啓(B)、高橋誠(Dr)の4人が手をあげてゆっくりと登場。そこから少し遅れてタオルを掲げて姿を現わした千野は、マイクの前で一礼し、4人が鳴らす音を背中で受け止めながら、両手を大きく広げる。

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

千野「やっとこの日がきました! 10年目にして辿り着いた野音がきました! 50回目の『HAVE A “GOOD” NIGHT』へようこそ!」
嬉しさや興奮だけではなく、ここまでの苦悩や葛藤など、様々な想いが入り交じったであろう千野の声色に、いきなり胸を揺さぶられる。そして、この日の1曲目として5人が高鳴らしたのは「雨天決行」。変則的かつ性急なビートで突き進んで行くエモーショナルなサウンドスケープに、さらに胸を熱くさせられた。

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

この日のセットリストは、彼らがこれまで発表してきた2枚のフルアルバムと、7枚のミニアルバムの中から、満遍なく曲がピックアップされていた。伊丸岡と岡﨑の奏でるギターが心地よく絡んでいく「2月のセプテンバー」や、クライマックスでは泣き叫ぶかのように千野が歌い上げた「花」、ステージ後方から差し込んでくる光がセンチメンタリズムを加速させた「エターナル・サンシャイン」、そして、高橋が叩き上げるずっしりとしたドラムから、彼らの初作品『世界分の一節』の1曲目である「夕映」へと、バンドのこれまでを紡ぐように、次々と曲が届けられていく。「10年前に作った曲を、今まさにここで歌える、演奏できるのが嬉しい」「その曲達もこうやってたくさんの人達の耳に届く事ができて、すげえ喜んでると思います」と千野は話していたが、5人が奏でる音を、オーディエンス全員がしっかりと噛み締めるように受け止めていた。そんな光景から、この10年間でGOOD ON THE REELと、彼らが生み出す音楽を求めるリスナーが築き上げてきた確固たる関係性がはっきりと伝わってくる。

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

ライブ中盤では、「夏の大三角」「つぼみ」「24時間」の3曲を、アコースティック形式にアレンジして披露する場面も。「アコースティックを野音でやるのは僕の小さな夢だった(千野)」とのことで、オーディエンスに着席してもらい(立ち見の人達には“すみません……”と謝りつつ)、じっくりと曲を届けていた。途中では、宇佐見が話し始めると、伊丸岡と岡﨑がアドリブでギターを弾き始め、「このままちょっと聴いてみる?」と、提案されるものの、すぐに演奏を終えてしまうなど、メンバー同士だけでなく、オーディエンスとの会話も挟みながらの、アットホームな光景もみられた。また、曲を終えると、会場の周りを囲んでいる木々が風に揺れる音や、秋らしい虫の声が聞こえてくるところも心地よい。とうに日も暮れ、肌寒さがあったものの、そこにはゆったりとした暖かな時間が流れていた。

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

宇佐見「起立! ダラダラしない! いや、ダラダラしちゃうよな(笑)」
千野「アコースティックやっといて申し訳ないんだけど、ここから楽しい感じになるよ? 大丈夫? いけますか!? (オーディエンスの“イェーイ!”という歓声) いいね! 俺らのライブでは珍しい!(笑)  一緒に雨の音で踊りましょう!」
と、「rainbeat」へ。軽やかに音が弾ける瑞々しいサウンドに、千野はステージをぐるぐると回りながら何度も飛び跳ねる。そこから透明感のある「ゴースト」になだれ込み、アコースティックコーナーで作り上げた暖かい空気を増幅させつつも、徐々に躍動的なものへとシフトしていった。そんな中で「今日、寒いよね?」とオーディエンスを気にかけながら「僕もいつもより、汗をかいてません(笑)」と告白する千野。

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

千野「でも、その寒いとか暑いっていうのも、生きているから感じていることであって。当たり前すぎて気づけないことがたくさんあると思うんだよね。生きてるっていうことすらも。だから、今からあなた達が“息をしている証”を見せてください。あなたがこれから“生きてく証”を、僕らと一緒に見せあいましょう! よろしく!」
そんなMCの後に届けられたのは「シャボン玉」。より一層力強くかき鳴らされるサウンドと共に、ステージ前から大量のシャボン玉が吹き出され、その様子を見た(もしくは歌詞を引用したMCに反応した)オーディエンス達も、入場時に配布されたシャボン玉セットを取り出し、一斉に飛ばし始める。会場の至るところからシャボン玉が次々と現れては、野音の夜空に消えて行った。ときには風に流されて、とんでもない方向に飛んで行ってしまったり、もしくは膨らませている途中で割れてしまったりしながらも、たくさんの泡達が何度も何度も空高く昇っていく。そんな、儚さや切なさがありながらも、それと同時に力強さや、希望や、光のようなものを感じさせる美しい光景は、まさに彼らの音楽を聴いたときに胸に宿る感覚そのものであり、それを多くの人達が一体となって作り上げていたその景色は、本当に、本当に感動的だった。

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

千野「今、僕らとあなた達で作った景色は、ここからまだまだ生きて行くっていう約束の景色だから。絶対に忘れないでください!」

本編の最後に届けられた「シャワー」では、青と赤と白のテープが空高く発射され、オーディエンス達はクラップをしたり、サビではぐるりと大きく腕を回したりと、多幸感に満ちた空間に。またひとつ、忘れられない景色を生み出していた。そこからほどなくして始まったアンコールでは、50回目もイベントが開催できたことや、バンドを10年続けてこれたこと、そして、豪雨の中でステージを設営してくれたスタッフに向けて感謝を伝え、「ちょっと久し振りの曲を」と、「うまくは言えないけど」を披露。そして、定番曲である「ハッピーエンド」でライブは終了……と思いきや、鳴り止まないアンコールに応えて、メンバー達が再び登場! 「この日が、みんなの中で蕾や種になって、思い出したときに花が開いて、少しでも笑えるように、願いを込めて。みなさんどうか、かけがえのない日々を送ってください」という言葉と共に届けられたダブルアンコールの「Mr.Week」まで、彼らの音楽とメッセージをじっくりと堪能できた2時間半を超えるステージだった。

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

大成功の初野音ワンマンとなったが、現在、GOOD ON THE REELは“制作真っ最中”とのこと。たくさんの曲達がすでに生まれてきているそうで、この日のアンコールでは、「砂漠」という新曲を披露してくれた。<彼らにはなれなかった>というネガティブな言葉を耳に残しつつも、それでも生きること、前に進むことを歌った、とにかく力強くてまっすぐな、彼ららしい曲だった。この曲が、そして、すでに生まれてきているというたくさんの曲達は、いつ届けられるのだろうか。大きく膨らむ彼らへの期待と、明日を生きるための活力に満ちたなんとも心地よい余韻と共に、50回目の『HAVE A “GOOD” NIGHT』は、幕を降ろしたのだった。
 

取材・文=山口哲生 撮影=安藤未優

GOOD ON THE REEL 撮影=安藤未優

セットリスト
『HAVE A “GOOD” NIGHT vol.50』ANIVERSARY SPECIAL 2016.10.9 日比谷野外音楽堂
1. ユリイカ
2. それは彼女の部屋で二人
3. 2月のセプテンバー
4. 花
5. エターナル・サンシャイン
6. 夕映
7. 夏の大三角
8. つばみ
9. 24時間
10. rainbeat
11. ゴースト
12. シャボン玉
13. REM
14. サーチライト
15. ホワイトライン
16. 素晴らしき今日の始まり
17. シャワー
[ENCORE] 
18. 砂漠(新曲)
19. うまくは言えないけれど
20. ハッピーエンド
[ENCORE 2]
21. Mr.Week