V6からエレカシ、いきものがかりまで、ジャンルを超越した数々の瞬間 テレビ朝日ドリームフェスティバル 2016・2日目
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いきものがかり 撮影=岸田哲平
テレビ朝日ドリームフェスティバル 2016・DAY2 2016.10.23 代々木第一体育館
V6
『ドリフェス』2日目のトップバッターにして、全部根こそぎ持っていってしまったんじゃないか?
そんな気にさせられるくらい、エンタテインメントの全てを凝縮した見事なステージをみせてくれたのは、V6だ。
とんでもない歓声の中、まずはデビュー当初からの『MUSIC STATION』出演時の映像が時代に沿って流れる。映像が終わり、「代々木、盛り上がって行こうぜ!」の声にステージ上へと目を向けると、すでに6人の姿が。白のジャケットに黒のインナーと細身のパンツというシンプルな出で立ちで、「MUSIC FOR THE PEOPLE」からスタートする。彼らのデビュー曲であり、会場となったバレーボールの聖地・代々木第一体育館とも関わりの深い曲だ。そのまま炎の演出とともに「TAKE ME HIGHER」、カミセン/トニセンに分かれて花道へ、そしてセンターステージへと進み喝采を浴びた「Believe Your Smile」と、ド派手な演出でV6スタンダードの楽曲を並べた。
MCでは、センターステージから戻る際に立ち位置を間違えた坂本昌行を「ものすごい迷子」とみんなで弄ったり、男女別にコール&レスポンスした際に男性の声が大きかったことを受け「男の声っていいよね」(三宅健)と喜んだり、テレ朝のキャラクター・ゴーちゃんにちなみ「こっちの剛ちゃんも頑張ってますんで」(井ノ原快彦)と紹介された森田剛が何故かはにかんだりと、わちゃわちゃしていてなんとも微笑ましい。
ステージ上に6枚のパネルが登場し、そこに映る映像との融合をみせた「fAKE」からのブロックは、オトナなダンスミュージックで魅せた。ときにスタイリッシュにときに優雅に、舞い、踊る。オートチューンでエフェクトをかけたボーカルもセクシーだ。「SP<エスピー>“Break The Wall”」では岡田准一と長野博のラップ、ソロパートに大いに湧いた。
普段、フェスに出ることがほとんどない彼ら。喜びと感慨、緊張を口にしながらも楽しそうにライブを進めていく。衣装替えのタイミングで井ノ原からトークのバトンを受け取った岡田が、困ったあまり森田に振って2人でモジモジする……という一幕に沸いたあと、後半戦へ。赤いラメのジャケットに着替え、まず秦 基博による最新曲「Beautiful World」を披露。肩を組んで歌う三宅と井ノ原に嬌声が上がる。「Darling」からのメドレーでは6機のトロッコに一人ずつ乗車して、アリーナのブロック間を移動しながらの歌唱で会場中を興奮で包み「CHANGE THE WORLD」「愛なんだ」と代表曲を連発してくれた。
「ラスト、一緒に歌って踊ろうぜ!」と流れ出したラテンのリズムは「WAになっておどろう」だ。見渡せばみんな右手で半円を作って左右に振っており、もう会場は完全に一つに。なんというピースフルな空間だろう。デビューから21年間、常にトップランナーであり続けるその真髄を見せつけ「このあとも楽しんでください! ありがとうございました!」と爽やかにステージをあとにしたV6。間違いなく最強のトップバッターであった。
星野源
星野源 撮影=岸田哲平
“仕事帰りのサラリーマン”の設定ということで、スーツ姿で自転車に乗りながら登場した星野源。花道先端にある彼の部屋をイメージしたスペースへ辿り着くと、コーヒーを淹れ、一息ついてからアコースティックギターを爪弾き始める。そう、この日は全編弾き語りだったのだ。
「みんな立ってるのつらくない? V6さんが素晴らしいライブでね、このあとはレキシさんだから。ここで休憩しましょう」と観客を気遣いつつ、奏でられた1曲目は「くせのうた」。温かみのある音色が空間に染み渡り、ステージと客席の距離がグッと縮まる。まさにアットホームと言うべき空気感でのライブが続く中、「こんな感じで行きますけど、いきなり『代々木ー!』とか言ったりしますので」と予告した通り、抜き打ちで星野が客席に呼びかければ「イェーイ!」と返してみせる11,000人。星野は「みんな優しいですね」と表情をほころばせる。そんな微笑ましいやりとりが、このライブ中に何回もあった。
星野源 撮影=岸田哲平
1年ほど前に喫茶店でV6の三宅健から「星野源さんですか? ファンなんです」と声をかけられた、という驚きのエピソードを披露しつつ、中盤には「くだらないの中に」を演奏。一際ハッキリとした口調で歌われた<僕は時代のものじゃなくて/あなたのものになりたいんだ>というフレーズは、聴き手の生活とともに息をする彼の音楽の在り方をそのまま表すかのようだ。そのあとはテレ朝さんの主催フェスでアレなのですが……」とちゃっかり宣伝をしてから、最新曲「恋」へ。弾き語りバージョンを披露するのは今回が初だったそうだが、原曲のダンサブルな印象から一転、テンポを落としてバラードに変身していた。
あっという間にラスト、「SUN」の軽やかなサウンドで盛大な手拍子を巻き起こしたあと、星野源は再び自転車に乗って去っていく。行きとは違って上り坂のため少々フラついていたが、そういうお茶目なところも含めて彼らしいステージだった。
星野源 撮影=岸田哲平
レキシ
レキシ 撮影=岸田哲平
3組目の出演者登場を前に、すでに場内には稲穂が生えている。法螺貝が鳴り響き、走り出てきたのはレキシ。そしていきなり始まるMC。『ドリフェス』の舞台においてもその奔放なステージは変わらない。
「みんな、V6と源ちゃんで終わっちゃってない?」「なんで呼ばれたのか全くわからないんですけど」などとぼやきながら(?)レキシが放った一曲目は「きらきら武士」だ。ファンキーなイントロが跳ねれば、レキシもまた駆け回り飛び跳ねまくりのハイテンションで、巧みなコール&レスポンスも交えて一気に場内を引き込んでしまった。こういった盛り上げに関しては、天下一品だ。十二単(じゅうにひとえ)を着用した2曲目の「SHIKIBU」では、心地よく横に揺さぶってくるバンドサウンドに乗せて会場中がブンブンしている。
レキシ 撮影=岸田哲平
MCコーナーでは(といってもずっとMCみたいなものだが)、再び自らがこの日のメンツにラインナップしたことをネタに「どうみてもおかしいでしょ? 俺だけMステ出てないですから。Mステのエの字も無い」と前置きし、「これで(出演に)一歩近づいたかな」とニヤリ。大きな声援を浴びていた。そしてトークは会場のファンが手に持ったもの=稲穂の話題になり、「皆さん騙されて買うんですよ、何の役にも立たない稲穂を」などと言いながらも、レキシ本人もオーディエンスもみな嬉しそうだ。そして「この曲を知らない人は“PPAP”でググればすぐ出ますから」「ペンパ“イナッホー”」とタイムリーなネタをぶっ込んだら、お待ちかね「狩りから稲作へ」の時間だ。パフォーマンスばかりに目が行きがちだが、手練のバンド陣が生み出すグルーヴィなサウンドがオシャレ極まりないことも記しておきたい。
曲間にV6「WAになって踊ろう」やいきものがかり「ありがとう」、星野源「SUN」の替え歌などを織り込んで「今日で干されるな。もう世に出ることないから、目に焼き付けて帰って」と爆笑を誘った頃には、会場を完全に掌握していたレキシ。ラストは、場内をイルカ(の浮き輪)が泳ぎまわった「KMTR645」の高速ダンスビートとロックギター、そして「キュッキュッキュ」の大合唱で締めくくった。本気の楽曲クオリティと脱線上等のトーク力、散りばめられた歴史ネタというオリジナリティ。初見の観客も少なくなかったはずのこの日においても、やっぱりレキシはレキシだった。
レキシ 撮影=岸田哲平
PUFFY
続いては、今年デビュー20周年のPUFFY。真っ赤な照明がステージを染める中、サポートバンドの面々とともに大貫亜美、吉村由美が登場する。アーティスト写真と同じように、2人はパイロット&キャビンアテンダントの衣装だが、よく見ると騙し絵風になっているのが面白い。1曲目は「サーキットの娘」。陽性のサウンドとともにキュートなツインボーカルが躍り出るオープニングだ。
亜美「私たち初めての——」
亜美&由美「ドリフェス!」
由美「あ、ハモったね。(ハイタッチをしながら)ハッピーアイスクリームタッチ!」
と、MCでも息がピッタリな2人。亜美は「今振ってるそれ何? V6のグッズ?」とドリフェス公式グッズの青色のペンライトに興味津々のご様子だったが、続く「パフィピポ山」にて観客が青い光を波のように揺れ動かす景色を目の前にすると、どうやら手応えを感じたらしく、「今度グッズで作ろうと思います!」と宣言していた。
PUFFY 撮影=岸田哲平
「ほぼ(PUFFYを観るのが)初めての方だと思うので懐かしい曲を」という言葉とともに後半戦へ突入。予告通り、パワフルなドラムのビートに合わせて手拍子が起きた「愛のしるし」、カラオケ風映像とともに歌詞が大きく映された「渚にまつわるエトセトラ」、<溢れ出ても 代々木>と歌詞を替えた「アジアの純真」……と、色褪せない名曲たちを大放出。潔すぎるくらい、一切の出し惜しみがないからすごい。
ふと見渡してみると、歌詞を口ずさむ人、2人の振り付けを真似る人、ペンライトを上下に振りかざす人、と楽しみ方は人それぞれだが、客席のテンションは右肩上がりだ。そうして幸福感が膨れ上がる中、2人は光の洪水のようなサウンドを背負って<誰かが泣いてたら 抱きしめよう それだけでいい/誰かが笑ってたら 肩を組もう それだけでいい>と力強く歌い上げていく。デビュー20周年。確かな説得力を持った歌声と堂々たる佇まいに、何だか叫びたくなるほど胸が熱くなった。
PUFFY 撮影=岸田哲平
エレファントカシマシ
静寂の中を歩み出たエレファントカシマシ。宮本浩次(Vo/G)の「こんばんは、じゃあ聴いてください」というシンプルな挨拶に続き、奏でられたのは「俺たちの明日」だ。ロックバンドとしてはこの日唯一の出演、しかもエッジの立ったバンドだけに他出演者のファンからはどのように受け止められるんだろう?なんて考えていたのだけれど、その問い自体が間違いであったことにすぐ気付かされた。聴く者に寄り添い鼓舞する彼らの楽曲とパフォーマンスは、受け止められるのではなく受け止める側。客席に向かって何度も拳を握る宮本による「頑張ろうぜ、エヴリバディ!」の叫びには、のっけからどでかいリアクションが起きる。
「昨日までライブハウスでやってたから。広いですね、ここは」と宮本。派手な装飾や照明を背負ったエレファントカシマシとそこで聴く「悲しみの果て」や「風に吹かれて」といった名曲たちは、観る側としてもすごく新鮮で格別だ。30年近いキャリアを持ったバンドだけあって演奏面でも見どころは充分で、特に演奏中にアイコンタクトをしながら、宮本の意向に沿って自在にテンポを上げ下げして攻めたり聴かせたりする高緑成治(B)と冨永義之(Dr)のリズム隊はさすがの一言につきた。
エレファントカシマシ 撮影=岸田哲平
セットリストこそ代表曲を網羅したフェス仕様となっていたが、パフォーマンス面はワンマンライブと変わらずアグレッシヴ。むしろランウェイとセンターステージがあることで、宮本はいつも以上に躍動していた気がする。絶えず走り回り拳を突き上げ、「i am hungry」や「RAINBOW」でハイトーンのシャウトを連発するなど、曲を追うごとにどんどんテンションを振り切っていった。
後半に入ると、石森敏行(G)と宮本が肩を組むシーンも見られた「夢を追う旅人」、音源よりも速いライブ仕様からさらにテンポを上げ、宮本の鬼気迫る歌唱で圧倒した「ガストロンジャー」と次々に演奏し、ラストは「今宵の月のように」。月ならぬたくさんのサイリウムが輝くという彼らのライブにおいてはいささかシュールな光景の中を、染み入るようなメロディが響きわたっていた。
生々しく抜き身のステージで、エレファントカシマシとは、ロックとは何たるかを体現した40分。最後に「輝こうぜ、エヴリバディ」と言い残した彼らから、明日への活力や勇気をたっぷり受け取ったのは筆者だけではないだろう。
エレファントカシマシ 撮影=岸田哲平
いきものがかり
2日目のトリを務めるのは、いきものがかり。暗転の中静かにメンバーが姿を現すと、まずは3人だけのアコースティック編成でデビュー曲「SAKURA」を演奏した。2曲目は「ありがとう」。一歩一歩踏みしめるようなサウンドと会場全体を包み込む吉岡聖恵(Vo)の歌声は、温かく優しい。一人ひとりの心の隙間に入り込み、何も言わずに寄り添ってくれる。いきものがかりのバラードは、いつだってそんな温度で鳴らされてきた。
最新シングル収録曲「ラストシーン」までバラードを続けたあとは、水野良樹(G)のエレキギターが吠えるように響き、山下穂尊(G/Harmonica)のハーモニカが吹き荒れるセッションを機に、会場の空気を一変させる。ソリッドな一面を見せる「ブルーバード」、ポップでわんぱくなサウンドが花開く「Sweet! Sweet! Music!」と、タイプの異なるアッパーチューンを連投し、聴き手の心の扉を鮮やかに開けていく様子が痛快だ。
いきものがかり 撮影=岸田哲平
曲に合わせて人格を変えるようなボーカルが魅力的な吉岡は、地面を蹴り上げたり、その場に寝そべったり、「ジャンプ!」と元気に煽ったり……とアクション面でもアグレッシヴ。さらに勢いを増していく客席の盛り上がりを目の前に、大きく「○」サインを作って笑うと、観客へのお返しと言わんばかりに<今すぐ 連れ出して My Sweet Sweet 代々木>(「気まぐれロマンティック」)と歌詞を替えてみせた。そうしてますます歓声が沸き上がったかと思えば、直後の「笑ってたいんだ」ではテープキャノン発射! 観客だけでなく、もうこの会場自体が喜んでいるように見えるくらいのナイスタイミングだ。
「みなさんにとってもドリームだと思うんですけど、私たちにとっても憧れのステージで。みなさんが最後まで残って一緒に笑ってくれたり、真剣な表情で聴いてくれたり。踊りを間違えたりしながらもこうして一緒にいてくれて。それが宝だなと思いました。呼んでいただきありがとうございました!」
音楽を聴いて抱く感情は人それぞれ。それでも今、ひとつの場を共有して息をしているのだという事実と、その尊さ。本編ラストのMCで吉岡が語っていた内容は、そのあとに届けられた「風が吹いている」で歌われていることと通じる部分も多い。8分弱、想いを乗せた渾身のバラードは、聴き手の心の元へ、悠々と羽ばたいていったのだった。
いきものがかり 撮影=岸田哲平
ライブ定番曲「じょいふる」を演奏し、タオル大旋回の眩い景色を生み出したアンコール。迸る情熱を、透明なその歌の隅々に行き渡らせるように「コイスルオトメ」を鳴らしきったあと、3人はステージを去っていった。本日の出演者の中で最年少にも関わらずトリということで恐縮している、とMCでは話していたが、紛れもなくいきものがかりにしかできないライブだったことは言うまでもない。嚙みしめたくなるような余韻を胸に、11,000人が会場をあとにしたのだった。
取材・文=風間大洋(V6、レキシ、エレファントカシマシ)、蜂須賀ちなみ(星野源、PUFFY、いきものがかり) 撮影=岸田哲平
いきものがかり 撮影=岸田哲平
1. MUSIC FOR THE PEOPLE
2. TAKE ME HIGHER
3. Believe Your Smile
4. HONEY BEAT
5. fAKE
6. will
7. SP<エスピー>“Break The Wall”
8. Beautiful World
9. over
10. Wait for You
11. Darling
12. CHANGE THE WORLD
13. 愛なんだ
14. WAになっておどろう
1. くせのうた
2. 化け物
3. 地獄でなぜ悪い
4. くだらないの中に
5. 恋
6. SUN
1. きらきら武士
2. SHIKIBU
3. 狩りから稲作へ
4. KMTR645
1. サーキットの娘
2. 海へと
3. パフィピポ山
4. これが私の生きる道
5. 愛のしるし
6. 渚にまつわるエトセトラ
7. 誰かが
8. アジアの純真
1. 俺たちの明日
2. 悲しみの果て
3. i am hungry
4. 風に吹かれて
5. RAINBOW
6. 夢を追う旅人
7. ガストロンジャー
8. 今宵の月のように
1. SAKURA -Acoustic ver.-
2. ありがとう
3. ラストシーン
4. ブルーバード
5. Sweet! Sweet! Music!
6. 気まぐれロマンティック
7. 笑ってたいんだ
8. 風が吹いている
[ENCORE]
9. じょいふる
10. コイスルオトメ
興奮の3日間をもう一度!
今年のドリフェスの模様がCSテレ朝チャンネル1で、2017年1月に放送されることが決定した。
豪華アーティストによる夢のステージを一挙5時間にわたって目撃できるチャンス、お見逃しなく!
※テレビ朝日ドリームフェスティバル2016の全ての演目が放送されるわけではありません。
【テレ朝チャンネル1】
スカパー!(ch.298)、プレミアムサービス(ch.611)、ひかりTV(Ch.556 )、auひかりテレビサービス(Ch755)、J:COM(Ch.755)またはケーブルテレビでご覧いただけます。
→ 視聴方法 http://www.tv-asahi.co.jp/ch/method