本当の本当に、新しい日本のロックが、ここにあった パノラマパナマタウンがCreepy Nutsを迎えたジャンルレスなツアー初戦
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パノラマパナマタウン
パノラマパナマタウンのPROPOSE ツアー 神戸編 2016.10.22 music zoo KOBE 太陽と虎
パノラマパナマタウンの2枚目となるミニアルバム『PROPOSE』のリリースツアーが神戸・太陽と虎にて幕を開けた。地元である神戸、名古屋、そして下北沢と3公演行われる、彼らにとって初めての本格的な自主ツアーは、2マンスタイルで行われるものとなった。
そのツアーの最初の場所は今も彼らのホームである神戸、お相手はヒップホップユニットのCreepy Nutsである。言葉を巧みに操る達人R-指定と、日本有数のターンテーブルマスターであるDJ松永によるCreepy Nutsと、ヒップホップ以降のグルーヴから生まれるガレージロックを変幻自在に操る新時代のロックバンド・パノラマパナマタウンによるライブは、両アクト共に神戸で人気を誇っていることを含め、多くの人が駆け付けるものとなった。
先陣を切って登場したのはCreepy Nuts。UMC(ULTIMATE MC BATTLE)を3連覇した日本一のフリースタイルラッパーR-指定と、 DMC JAPAN FINALで全国2位となり(ちなみに全国1位のプレイヤーは世界一にも輝いた)、トラックメイカーとして自身の作品もドロップしているDJ松永によるライブは、そのスキルにまったく溺れることの無い、見事なエンターテイメントショーとなった。
「高校中退、大学中退の“たりないふたり”な俺達が神大(神戸大学)のイケメン達(パノラマパナマタウン)にぶつけるぜ!!」とR-指定お得意のアジテーションから「たりないふたり」をドロップし、ど頭からフルスロットル。そんな2人のテンションに応えるべく、オーディエンスも「たりない!」コールで応酬。自然とクラップが生まれ、オーディエンスをスマートに包み込んで沸点をどんどん上げてゆくDJ松永のトラックと胸に突き刺さるR-指定の言葉の濁流が会場を飲み込んでゆく。
「ジャンル関係なく、いいものはいい、カッコいいものはカッコいいって音楽を楽しめる人、この中にどれだけいますか?」とMCでもガンガンに観客を煽り、本日のジャンルレスな2マンにぴったりの「みんなちがって、みんないい。」に雪崩れ込んだ。曲の途中で、「俺達の動き(アメリカのクラブで流行っている新たな盛り上がりポーズ)を真似してくれ!」と26歳未だ童貞を誇るイケメンDJ松永によるレクチャーを挟み、会場の距離がぐっと縮まっていく。その後、観客から集まった「広島」「9月10日」などアトランダムなリリックによるお題でR-指定がフリースタイルを披露する即興「聖徳太子フリースタイル」に移ると、バラバラなお題を見事に盛り込んだR-指定のストーリーテリングなラップがオーディエンスを掌握。さらに重なるのは、DJ松永の超絶テクニックを超絶アクロバットアクションで披露するDJプレイ!? ここまでのめくるめくセットの応酬で、太陽と虎は完全なるヒップホップファンタジーと化した。続く「合法的トビ方ノススメ」でフロアの熱気は完全に沸点を超え、Creepy Nutsもオーディエンスも飛ぶ、跳ぶ、トぶ。その後は一転してディープかつスピリチュアルな楽曲を極めてシリアスに演じて「影」の部分もしっかりと叩き付け、独自の存在証明を50分というセットに深く刻み込み、パノラマパナマタウンへとバトンを渡した。
熱が未だ冷めないステージに上がってきたパノラマパナマタウンは神戸で結成されたバンドで、今回の会場である太陽と虎は彼らがシーンに進出するきっかけとなった大事なライブハウスだ。だからこそここから新たなページを開こうとした、そんな彼らの気概が遺憾なく発揮されたライブとなった。
ファンの温かい拍手と歓声を岩渕想太(Vo/G)がじっくりと見渡しうなずくと、どっしりと重いリフから始まる「Gaffe」がかき鳴らされ、ライブがスタートした。無邪気かつ予測不能なパフォーマンスと、乱暴にも思えるほど愚直なサウンドが会場をぐいぐい引っ張っていく。その後、YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=CfXBKNejrVY)でも話題のリード曲「シェルター」や、岩渕の故郷の北九州が過疎化してシャッタータウンになっていることを歌う「真夜中の虹」などでシリアスなバンドの姿勢を伝えながら、時に「ホワイトアウト」では、祭り囃子のような軽快なビートに乗って浪越康平(G)が阿波踊りを模した振りで客席を陽気に煽ったりと、まさに変幻自在な音楽が変幻自在なパフォーマンスで表わされて行った。
パノラマパナマタウン
「自分らのやりたい曲、音楽を曲げずに、メインストリームでそれをやっていきたいので、これからも宜しくお願いします。そんな僕らの始まりの場所である神戸、新開地に愛を込めて」と決意のMCとともに、愛する自らの出自である街を歌った「SHINKAICHI」が始まった。耳に残るギター、言葉が溢れてくるラップが荒波となり、ロックやヒップホップの垣根をひょいと飛び越え、音楽を愛する人達にストレートに届いた。というか、ホームである神戸・太陽と虎を初めてパンパンにした彼らを観るオーディエンスの想いも極まっていたのだろう、幾人の目からは涙が落ちていた。
パノラマパナマタウン
ラストは岩渕がステージを越えてフロアを縦横無尽に駆け回り、最後は2階席(照明席)まで駆け上っては「まだ何にも決まってないけど、まだまだ僕ら伝えたいことがある。だからいつか絶対に太陽と虎でワンマンやります、皆さんよろしくお願いします!」と力強く誓ってこの夜の宴は終わった。
パノラマパナマタウンのPROPOSEツアーはこの後、10月28日の名古屋編、11月4日の下北沢編と続く。対バンは、名古屋がlovefilm、そして下北沢がDENIMSという、激しくも洗練された豪華な布陣だ。パノラマパナマタウンの熱く醒めた衝動をまだ目撃していないというロックファンは、是非この機会に彼らの初期衝動を浴びて欲しい。
パノラマパナマタウン
パノラマパナマタウンのPROPOSEツアー 名古屋編
日時:10月28日(金)
開場 / 開演:18:30 / 19:00
会場:池下 CLUB UPSET
対バン:lovefilm
パノラマパナマタウンのPROPOSEツアー 東京編
日時:11月4日(金)
開場 / 開演:18:30 / 19:00
会場:下北沢SHELTER
対バン:DENIMS