Rhythmic Toy Worldが立った宿願の舞台、そして始まりの地=赤坂BLITZに刻んだもの
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Rhythmic Toy World Photo by MASANORI FUJIKAWA
「HEY!」の「HEY!」による「HEY!」の為のツアー 2016.10.21 赤坂BLITZ
7月にリリースした2ndフルアルバム『「HEY!」』を引っ提げた全国ツアー『「HEY!」の「HEY!」による「HEY!」の為のツアー』。今回のツアーが決まった時、「ツアーファイナルはソールドアウトしないように」と事務所と話し合って決めたのだそうだが、そこには「本当にライブを観たいと思っているみんなに観にきてほしい」という想いがあったという。そういう心意気もまたこのバンドらしいが、蓋を開けてみれば危うく(?)ソールドアウトしそうなほどの満員だったこの日。ライブスタート前には「今日は須藤憲太郎ワンマンライブ、ツアーファイナルに来てくれてありがとう!」と須藤 憲太郎(Ba)本人による影アナが流れ、「すーさん!」コールで早くも盛り上がった。
Rhythmic Toy World Photo by MASANORI FUJIKAWA
定刻を少し過ぎて暗転、のちのSE。真っ赤な照明の中メンバーが登場したが、三つ編みが目印の彼の姿がそこにはない。不思議に思っているうちにライブがスタート。アカペラでの歌い出しであの声を聴いたところでやっと、センターに立つショートカットの男性が紛れもなく内田 直孝(Vo/Gt)本人であることを理解できた(本当に申し訳ない……)。でも実際、フロアの空気感から察するに、私と同じように戸惑った人も少なくなかったのでは? 昂揚感と緊張感が混ざったような何とも言えない空気感でのオープニングは、ある意味貴重だった。ちなみにツアーファイナルに合わせて髪を切った理由は、本人曰く「“終わりは始まり”を自分の身体で体現しただけ」とのこと。機材車に乗ろうとしたら他メンバーに「すみません、部外者は乗れません」と断られてしまった、という切ないエピソードを後のMCで明かしていた。
Rhythmic Toy World Photo by MASANORI FUJIKAWA
1曲目「フレフレ」からそのまま「始めるぞ、赤坂!」と内田が号令をかけ、「Team B」へ。所属事務所・チームぶっちぎりに向けて書いたという同曲で描かれる“団結感”を体現するように、パワフルかつエネルギッシュなビートを鳴らすのは磯村 貴宏(Dr)。髭がトレードマーク、少々強面ではあるが、これでもかとオーディエンスを煽りまくる姿が誰よりも熱いのは須藤。岸 明平(Gt)は真っ白なギターのボディで照明を乱反射させながら、閃光のようなギターソロを響かせた。ちなみにこの日岸が使用していた楽器は、ESPギタークラフト・アカデミーの協力の下制作したシグネチャーモデル。満を持しての初お披露目だったにもかかわらず、内田の髪型ばかりが注目の的になっていることをどこか不本意そうにしていたため、ここにしっかり書いておこうと思う。
Rhythmic Toy World Photo by MASANORI FUJIKAWA
赤坂BLITZはワンマン史上最大規模の会場。最初の2曲ではメンバーも緊張している様子だったが、「あの日見た青空はきっと今日に続いている」が始まった頃には4人とも笑顔を見せる回数が増えてきた。そしてこのバンドのお客さんは能動的というか、前のめりに音楽を楽しもうとしていることが気持ちよすぎるくらいに伝わってくる。だから自然とバンドがオーディエンスに歌を託していくような場面が増えていくのだろう。「俺たちとお前らが出会った場所」のことを<一人だって欠けちゃいけない/僕らの輝く場所>と歌う「ライブハウス」、そして「Cheki-Cheki」――という2曲の流れには、“形がないし目にも見えないけど、今この場所に確かにある想い”を何よりも信じるこのバンドの性格がよく表れている。ハンドマイクに持ち替え、身振り手振りを交えながら歌う内田のボーカルにも、一層気持ちがこもっていた。
Rhythmic Toy World Photo by MASANORI FUJIKAWA
抱いた感情を一つ残らず言語化することなんて不可能だ。だから彼らのように人の想いに基づいた音楽を鳴らすことは、極端な話、「言わなくても伝わるでしょ? ほら、感じてよ!」と独りよがりになってしまう危険性もあるが、このバンドに至ってはそうではない。『「HEY!」』リリース時にインタビューで語っていた「ライブの場で鳴らされることを想定して制作した」という話は、つまり、“伝えるべきことは今伝える”という視点で書かれた曲ばかりが詰まっているということであり、だからこそこのバンドの音楽は誰にとっても開かれたものでいてくれるのだ。そういう意味でこの日のハイライトだったのは、「今日は絶対この曲をやらなきゃって決めてた曲を……」と内田が前置きしてから始めた「カルテット」。バンド結成初期の、「音楽でもっとたくさんの人と繋がって喜ばせたい/驚かせたい」という気持ちが芽生えてきた時期に制作されたという同曲は、他の曲と比べて青さの残る演奏だったが、全部の楽器が声を枯らしながら歌っているかのようで、それがかなりグッときた。
Rhythmic Toy World Photo by MASANORI FUJIKAWA
後半戦に突入するとアッパーチューンが続くが、ここで歌詞を口ずさんでいるオーディエンスの数の多さに驚く。じっとステージを見つめている人も、顔をクシャクシャにしながら腕を突き上げている人も、嬉しそうにモッシュしている人も、だ。それはバンドの言葉が聴き手一人ひとりにしっかりと届いているのだということの証明そのものであるし、そんな光景の中だからこそ、誰のことも置いてけぼりにしない気持ちとともに先へ進む意志を歌う「あなたに出会えて」は確かな説得力を宿す。そして「全部は分からないよ、そりゃ。だけど、楽しい時、悲しい時、ムカつく時、なるべく同じような気持ちでいたいじゃん。無理って言われるかもしれないけど、俺らの勝手だろ? 俺らはそういうスタンスで気持ちでやっていきます。だからRhythmic Toy Worldと一緒に未来へ歩いていってほしい」と内田が改めて伝えたあと、本編ラストに演奏されたのは「輝きだす」。最大光量の明転がバンドのこともオーディエンスのことも燦々と照らし出す中、会場一丸となっての大合唱が場内を満たしたのだった。
Rhythmic Toy World Photo by MASANORI FUJIKAWA
アンコールでは、ファンが本ツアー中に集めたという寄せ書きがステージ上に掲示されるサプライズも。驚きと感動のあまりメンバーは思わず声を詰まらせていたが、その直後に披露した新曲は、全国各地で受け取った想いをデッカい塊に変えてまたオーディエンスへ手渡すかのような、そういう温度感のものだった。バンドと聴き手、いち人間同士ガチンコのぶつかり合いを繰り返しながら、Rhythmic Toy Worldはここから先へ突き進んでいく。この日のステージを締め括ったのは「ファーストコール」。<今日が僕らの記念すべき日だ/始まりの一歩だ>というフレーズが高らかに響いていった。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=MASANORI FUJIKAWA
Rhythmic Toy World Photo by MASANORI FUJIKAWA
2016.10.21 赤坂BLITZ
1.フレフレ
2.Team B
3.あの日見た青空はきっと今日に続いている
4.s.m.p
5.十六夜クレーター
6.描いた日々に
7.ライブハウス
8.Cheki-Cheki
9.カルテット
10.8535
11.波紋シンドローム
12.S.F
13.Dear Mr.FOOL
14.MUSHIBA
15.ミーン宣言
16.いろはにほへと
17.エンナ
18.あなたに出会えて
19.輝きだす
[encore]
20.新曲
21.とおりゃんせ
22.ファーストコール