三上真史×原田優一インタビュー 2年ぶりの『ぼくとしょ』シリーズの見どころとは?
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(左から)三上真史、原田優一
俳優を“国語の先生”、観客を“生徒”に見立て、リーディングを“素敵なお話を聞かせてくれる授業”として楽しませてくれる朗読劇『ぼくとしょ』シリーズが2年振りに帰ってくる。多彩な役者陣がオムニバス形式で届ける新感覚のリーディングは一度見たらクセになる面白さ。その気になる見どころを、レギュラーメンバーの三上真史と今回初参加となる原田優一に直撃した。
――おふたりは何度か共演されているんですよね?
三上:最初は昨年末の明治座(『晦日明治座納め・る祭~あんまり歌うと攻められちゃうよ~』)ですよね。
原田:そうだね。でも当時はそんなに絡みもなかった。三上くんは特別なキャラクターを演じてましたから。盆栽王子だし。
三上:あ、そこ?(笑)
原田:(笑)。でもあのときはホントに稽古場でもずっと集中していたから、あまり話したりとかもできなかった。
三上:ホントに。とにかくあの役は……、坂上田村麻呂は特別だったので、もう誰とも会話せず俗世間からも遠ざかりました。
原田:あまりみんなとしゃべってなかったもん。
三上:人の声が聞こえて、人のことが信じられなくなって、という役でしたから、稽古場でもずっとそういう気持ちで、もう誰のことも信じなかった(笑)。だから今は伸び伸びと「生きてるな~!」って気持ちです(笑)。そのあとの『TARO URASHIMA』では多少交流する時間は取れました。
原田:できればこれからもっともっと親しくなっていきたいなっていうところなので……プライベートでもね。
三上:もちろん! 年齢もひとつ違いでしたっけ? 原田さん、貫禄は50代くらいですけど。
原田:ほんと? ありがと(笑)。
三上真史
――今回は朗読劇での共演なので、またお芝居とはひと味違う交流ができそうですね。『ぼくとしょ』シリーズにはどんな思いが?
三上:僕はこのシリーズにずっと出させていただいていたので、2年振りの公演、「久しぶりで嬉しいな」、「帰ってきたな」、という感触ですね。元々リーディングの新しいカタチを目指して立ち上げられた公演でしたから、リーディングだけどいっぱい動くし、お客さんも一緒になって楽しめる演出があり……ただ静かに読み聞かせるのではない“体感型”の朗読。
しかもいろいろな作品を楽しめる「図書室」という設定で、僕ら役者は全員国語の先生でっていうのも楽しいんですよ。担当する作品もそれぞれの個性を生かして決めていただいて。演出も個性的ですし。
――誰もが知っている名作を大胆な解釈で掘り起こす。洒落の効いたラインナップもこの『ぼくとしょ』の特徴ですからね。
三上:今回は『クリスマス物語』。聖書系できたか!という意外性にけっこうどきどきしてますけど。
原田:僕なんて『マッチ売りの少女』ですよ。少女!
三上:いや、でもなんとな~く想像がつきます(笑)。
原田:お前、やるんだろうなって?(笑)
三上:そうそう!
原田優一
――シリーズ初参加にして“少女”。
原田:楽しみですね~。参加するにあたっては、僕だけじゃなく、ほかにも『たけくらべ』とか『不思議の国のアリス』とか、もうホントにいろんなところをチョイスしていっちゃう。それをまとめてお届けするという、このシリーズのアイデア自体が素敵だなぁ、っていうのはまず思いました。
しかもマッチ売りの少女・原田は、リーディング・ミュージカルだっていうじゃないですか! リーディングの枠から飛び出していろんなことができそうだぞって、今からわくわくです。過去の作品も映像で拝見しましたけど、衣裳も動きも表現も、朗読の概念を超えたセッティングで、ホールに入った瞬間からわくわくできる。劇場という空間のよさを上手に生かした演目ですよね。
三上:『ぼくとしょ』では僕らが先生なので、お客様は生徒ってことになるんですけど、みなさんホントにいい生徒さんばかりですよ。「起立・礼」もやってくれますし。構成としては1回で3作品、作品と作品の間それぞれが先生がブリッジとして繋いでいくというのもあって、そこはもう台本はありつつも基本自分たちでどうしようかを考えてやっているので、まさに授業を組み立てるようなカンジで取り組んでるんです。そこもまた今回どうなるのかな?って。
原田:そういうところがね、初参加組から見るともう役者さんもお客さんも鍛えられてるなっていう印象があるんですよ。みんな何を振られても……三上さんもね、アドリブの振りにスッと返していけるって手腕がこのカンパニーにはあるなぁと。やっぱり普通の役者さんはそういうときに「あ?」「え!?」ってなっちゃうもんなんです。しかもみなさんウィットに富んだ返しが素晴らしくって。
――そういうライブな体感も、リーディングならではの味わいのひとつ。
三上:そうなんでしょうね。でも大丈夫、原田さんもすぐできますよ。おそらくもう俺らなんかよりもさらにウィットに返していきますよ。ウィット? ウェット? もうびしょびしょです(笑)。
原田:いやいやいや(笑)。そのあたりは『TARO URASHIMA』でも少し経験しましたけど、あれね、本番の舞台でいきなり振られて上手く返せないと、楽屋に帰って「クッソ! なんでもっと上手くできなかったんだ!!」ってめちゃめちゃ悔しいんです。
(左から)原田優一、三上真史
――それはもう……好きな証拠です(笑)。
原田:ふふふふっ。
三上:でもそうやって……ん?
??:ウエーイッ!(たまたま通りかかった滝口幸広が登場)
三上:あ、うるさい人きちゃった。
滝口:ゆうちゃーーん!
原田:たっき~!
三上:ハグしてる。そして去って行く……(笑)。こんなカンジで、僕らファミリーのようにやらせてもらってますので。
――そこもまたお客様が作品を好きでいてくれるポイントです。さて、先ほども少し出ましたが、今回はクリスマスシーズン真っ只中の公演にちなんで様々な「愛の物語」がチョイスされています。改めてご自身の担当作品について教えてください。
三上:僕は『クリスマス物語』。イエス・キリストの生涯を物語っていくんですが、アレです。“『聖○○○さん』”的な世界です(笑)。わかる人はわかると思いますが、僕も大好きなアレ。全体としてはちょっといいお話、マリアさんとヨセフさんの回想物語になる予定です。
原田:僕の『マッチ売りの少女』は、“マッチ売りの少女・38歳。あれから30年経ってしまいましたって”いうお話らしいですよ。
三上:ええーっ! そういうことですか……。
原田:もう何本マッチをすってきたんだろう、と(笑)。しかもミュージカルですので、これは乞うご期待!ですね。
原田優一
――観る前から妄想が広がる強力なラインナップです(笑)。さらに今回はクリスマススペシャル公演・本編の公演・大晦日のマチソワ後のカウントダウンと、ウインターシーズンならではの多彩なアプローチも用意されていて、本当に盛りだくさんの、これぞ“特別授業”!
原田:なにをやらされるのかな(笑)。
三上:贅沢ですよね~。大変そうだけど(笑)。
原田:今年はイヴが土曜日、クリスマスが日曜日という貴重な並びでしょ? そこを僕らと過ごしていただけるなんて、光栄ですよねぇ。
三上:スペシャルな時期に『ぼくとしょ』の劇場に来ることを選んでいただけるわけなので、より気合いが入りますね。
原田:内容も、全部ぶっ飛んでるわけじゃないですからね。
三上:もちろん! “真面目にふざける”をテーマにじっくりとお聞かせする演目も賑やかな演目も取り揃えておりますので、そこもご安心を(笑)。
原田:ミュージカルナンバーも、音楽とピアノを担当されている伊藤(靖浩)さんがオリジナルで書き下ろしてくださるんですよ。素敵ですよね。
三上:ホントに。贅沢にも毎回生ピアノも披露していただいてますし。あと、チラシにはそれぞれの物語に数名の出演者の名前がありますけど、おそらくここに書いていないところにも「この人がここに!?」みたいな登場もあると思います。そのあたりは毎回稽古中のアイデアで臨機応変にやってるので。
原田:そうか! それも楽しいね。
三上:稽古は、かなり真剣に集中してますんでね。意見を出し合って、みんなで仕上げていくのも『ぼくとしょ』の醍醐味です。
三上真史
――大阪公演のみだった初演から、こうして人気の演目へと成長した『ぼくとしょ』。ぜひ今後も続けて欲しいです。
三上:そうですよね~。最初はホントに知る人ぞ知るで、「これをもっと自分たちで広めていくぞ」って思いながらやってました。
原田:それがすでに4作目。僕の周りでも「『ぼくとしょ』に出るんですね」って、知っている方ばかりでした。すごいね。嬉しいね。
三上:嬉しいですね。
原田:今回はどうなるんだろう? 僕は気心知れてる人たちと、とりあえずなんでもやってみちゃう、どんどんトライできる稽古場が今から楽しみ。朗読と歌というスタイルも自分的には初体験なので、こういうほかではないような切り口の朗読ミュージカルを自分としても新たなジャンルとして開拓して確立できたら素晴らしいですよね。
まずはこのマッチ売りの少女……マチコというらしいんですが(笑)、彼女のとあるラブストーリーを全力で演じていきたい。役づくりが大変かも。中途半端なマチコにはしたくないのでね。自分に厳しくハードルは高く(笑)。お客様にはいろんな意味でびっくりして欲しいです。
三上:うわ~、なんかもう全然想像つかないわ~。マチコ、僕も楽しみにしてます! もちろん僕もこれからキリストのこともいろいろ勉強して、みなさまに感動していただけるクリスマスの物語をお届けしないと。自分のパートだけじゃなく、互いにパスを繋いでいくのもこの公演の肝なのでね。協力して創っていきましょう。
とにかくこれまでの朗読劇のイメージを壊す、新鮮な印象も持っていただけるであろう『ぼくとしょ』。今回は6つの愛のカタチの物語、お好きな作品をお楽しみくださいませ。
原田:うーん……全部おもしろいですけどね。
三上:そうなんですよ(笑)。なので、できればコンプリートしてください!
(左から)三上真史、原田優一
インタビュー・文=横澤由香 撮影=中田智章
【東京】
日程:2016年12月24日(土)~12月27日(火)
会場:有楽町朝日ホール
【大阪】
日程:2016年12月31日(土)
会場:サンケイホールブリーゼ (大阪府)
監修:板垣恭一
演出:西森英行
音楽・ピアノ演奏:伊藤靖浩
出演:三上真史/滝口幸広/中村龍介/井深克彦/木ノ本嶺浩/原田優一
■三上の「クリスマス物語」
脚本:西森英行 出演:三上真史 ft.木ノ本嶺浩&中村龍介
■たっきーの「奥のほそ道」
脚本:吉増裕士 出演:滝口幸広 ft.三上真史&木ノ本嶺浩
■りゅうの「たけくらべ」
脚本:登米裕一 出演:中村龍介 ft.滝口幸広、井深克彦
■かっちの「不思議の国のアリス」
脚本:ほさかよう 出演:井深克彦 ft.全キャスト
■みねの「細川忠興とその妻」
脚本:赤澤ムック 出演:木ノ本嶺浩 ft.原田優一&三上真史
■「マッチ売りの少女」原田
脚本:加藤啓 出演:原田優一 ft.中村龍介&滝口幸広