30-DELUX×SQUARE ENIXプロデユース『ロマンシング サ・ガ THE STAGE』ビジュアル撮影レポート
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清水順二
「2・5次元」舞台を世界に通用する演劇コンテンツとして世に放つ。そんな大きな夢を持って作られる『ロマンシング サガ THE STAGE』。原作は言わずと知れた、ゲーム会社のスクウェア・エニックスの大ヒット作『ロマシング サ・ガ』である。この舞台を制作するのは近年話題の演劇ユニット「30-DELUX」。彼らが結成15周年という節目を迎え、強力なパートナーと共に今作を上演する。2017年4月15日(土)、東京・サンシャイン劇場を皮切りに、大阪、名古屋、福岡と全22ステージを行う予定だ。12月28日正午よりそのメインビジュアルが解禁された(本記事トップの画像)。SPICEは、その撮影現場に立ち会っていた。今回はそのレポートをお届けする。
11月初旬の午後15時、冬の寒さを感じ始めた都内某スタジオにて、30-DELUX SQUARE ENIX Special Theater『ロマンシング サガ THE STAGE』のビジュアル撮影が行われた。
清水順二
スタジオの大扉を開けるといきなり熱気に当てられた。すでに興奮を抑えきれないスタッフの人いきれで汗が頬を滴るほどだった。目の前には重厚な衣装をまといメイクを直しながら、静かに目を閉じて呼吸を整え、ハリード役に成りきる30-DELUX製作総指揮、清水順二が立っていた。カメラマンやアートディレクターの指示を受けながら頷き、小道具の剣を持って構えては振る動作を繰り返す。表情は険しく、ときおり目を閉じると集中力をさらに高め、撮影に備えていた。
打ち合わせをする清水順二
そもそも、30-DELUXは、タイソン大屋(元・劇団☆新感線)、清水順二(元・MOTHER)らが2002年に立ち上げ、芝居とアクションを一体化した「アクションプレイ」と名付ける舞台を上演、オリジナル娯楽エンターテインメントを追求すべく日々活動を続けているユニットだ。今回は、ゲーム業界では知らぬものなしのスクウェア・エニックスとのコラボを決意した。
清水順二
彼らが選んだ原作『ロマンシング サ・ガ』は、1992年にスーパー・ファミコンで発売されて以来、フリー・シナリオ制の導入や、数人の主人公から1人を選択してゲームを進めるシステムなど、本来のRPGにない自由度の高さから、ゲーム・フリーク(筆者は前身にあたるゲーム・ボーイ版からやっている)からRPG好きのコスプレ少女まで虜にしている話題作だ。
今作は、8人の主人公たちと、圧倒的な力で天空を支配する四魔貴族ビューネイとの命を賭けた決戦を描いていく。今回は、「サ・ガ」の生みの親である河津秋敏が世界観監修・脚本原案をつとめている。脚本はスクウェア・エニックスのシナリオ・ライターであるとちぼり木との強力なタッグ。
清水順二
そんな話題作を成功させるための意気込みと、劇団結成15周年に記念碑的な作品を作りたいという願いが相まって、清水順二の体からは人を近づけないほどの気迫が垣間見えた。スタッフの中には彼に近づかず遠巻きに見ている人さえいた。すでにそこには孤高の戦士ハリードがいるように見えた。
カメラマンがアシスタントたちと撮影準備ができたことを確認し合って「ゴー」の指示を出すと、清水はそっと歩きながら、まるで今にも舞台が始まるかのように気持ちを高ぶらせて撮影場所に立った。カメラマンのチェックのあと、シャッターの音とストロボの光がスタジオに溢れる。ここからは息をつかせぬほどのカメラマンと清水の気合いがぶつかり合う撮影となった。カメラマンの切るシャッター音が小気味好くスタジオに響きながら、ハリード役の清水は悲哀に立ち向かう荒ぶる戦士になろうと、雄叫びをあげたり、目を細めて睨みをきかせ、ファインダーを覗いていた。
清水順二
特筆すべきは、原作を忠実に再現しようとする衣装と小道具の剣だ。本物と見間違うぐらいの精巧さでできており、柄には緻密にレリーフが施されていた。衣装は、元・王族で孤高の戦士というキャラクターに合うように作られた紺色を基調としたアラビア風のイメージ。首には赤いスカーフを巻いて胸元を開けていた。
清水順二
清水は大きな剣を振りかぶりながら次々とポーズを決めていった。そして、カメラマンが撮影した写真を確認し、「違う」とつぶやきながら、再び撮影場所までゆっくりと歩いて役にのめり込んだ。いくたびもポーズを変えて、舞台にしかいないハリードを作り上げようと苦闘していた。次第に清水の目には、母国の復興と生き別れの恋人を探そうとする決意のようなものが浮かび始めた。カメラマンとのセッションは濃密で、一瞬たりとも目の離せない現場だ。それが続いたのは30分ぐらいだろうか。気づけば壁掛け時計は、16時半を指していた。
清水順二
カメラマンの「オーケー」の掛け声の後、彼は一息ついて、少しはにかんだ後、こちらに近づいてきた。続いて撮影の順番を待っている、カタリナ役の緒月遠麻にアドバイスをするためだ。
撮影のアドバイスをする清水順二と緒月遠麻
カタリナは聖剣を使いこなす武人であり、ロアーヌという名家の娘だ。わずか15歳でモニカ王女(山本ひかる)の侍女と護衛を任されるほどの天才で真面目で一途な性格の持ち主。そしてミカエル王(中村誠治郎)に淡い恋心を抱いている。
緒月遠麻
緒月遠麻は、元・宝塚歌劇団宙組の男役スターだけあって、その佇まいだけで凛としたものがあった。女性的というよりも男性的で、まさにカタリナ役にぴったりだった。綺麗な白銀の髪、美しいマント、深いブルーを基調とした装い、スカートにはスリットが入っていて腰にはコルセットを巻いていた。中世の美しい貴族といったところだろうか。彼女の持つ剣も素晴らしく精密にできていた。
画面奥で見守る清水順二と緒月遠麻
彼女は、清水のアドバイスを受けながら、カタリナ役に入っていった。アシスタントが準備を整えていくなか、カメラマン、ディレクターのディレクションを真剣に聞いていた。そしてカメラマンの掛け声とともにレンズを覗いた瞬間、そこには一人の美しき天才剣士が立っていた。シャッターに合わせて表情を変えてポーズを決めていった。
緒月遠麻
剣を抜き、スリットから太ももを突き出し、今にも斬りかかろうとする姿勢になった。カメラマンも「素晴らしい」の一言。周りの女性スタッフからも「綺麗」という声が上がっていた。
緒月遠麻
ときおり、撮影した写真を確認しにきて、カメラマンに「いいね」と言われると「一生の宝物にします」とあどけない笑顔になった。ひとたび「撮影」との声が上がれば、再びカタリナ役に入り込んだ。そのギャップに驚いてしまった。
画像を確認する緒月遠麻
最後には、風にあたりながら、銀髪をなびかせてポーズを決めている瞬間は、カッコイイの一言だった。カメラマンは深くうなずきながら、ディレクターも頬をほころばせていた。「お疲れ様でした」とカーテンコールのように拍手が鳴り響いた。彼女もホッと胸を撫で下ろして満足そうな顔をしていた。
緒月遠麻
取材を終えた時、外はもうすでに真っ暗で、空には綺麗な三日月が浮かんでいた。そして少し肌寒いことを知ってスーツを脱いでいることに気づいた。とても凝縮された時間を過ごした2時間のフォトセッション。原作が好きな人も、原作に触れたことのない初めての人も、ポスターやチラシの出来上がったイメージを見て驚くだろうと予感させる素晴らしい体験だった。
緒月遠麻
(取材・文・撮影:竹下力
日時:2017年4月15日(土)〜23日(日)
場所:サンシャイン劇場
〈大阪公演〉
日時:2017年4月28日(金)〜4月30日(日)
場所:サンケイホールブリーゼ
〈名古屋公演〉
日時:2017年5月3日(水)〜4日(木)
場所:愛知県芸術劇場 大ホール
〈福岡公演〉
日時:2017年5月6日(土)〜7日(日)
場所:久留米シティプラザ ザ・グランドホール
〈出演〉
清水順二
緒月遠麻
中村誠治郎
馬場良馬
村瀬文宣
長谷川かすみ
山本ひかる
新垣里沙
他
〈スタッフ〉
世界観監修・脚本原案:河津秋敏
脚本:とちぼり木
演出:米山和仁
主催:『ロマンシング サガ THE STAGE』製作委員会
〈公式サイト〉
http://saga-stage.com/