ニューカマー4組の才気が激突した『SPACE SHOWER NEW FORCE vol.2』詳細レポ
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ぼくのりりっくのぼうよみ Photo by Ray Otabe
SPACE SHOWER NEW FORCE vol.2 2016.11.11 渋谷WWW X
スペースシャワー主催のショーケースライブ『SPACE SHOWER NEW FORCE』。今年の2月に行なわれた「vol.1」に引き続き、11月11日(金)、渋谷WWW Xにて開催された「vol.2」には、シンリズム、パノラマパナマタウン、PELICAN FANCLUB、ぼくのりりっくのぼうよみという「近い将来にブレイクが期待されるニューカマーをピックアップし、紹介する」というコンセプトにふさわしい、才気あふれる4組が集結。会場に訪れた早耳なリスナー達を激しくうならせていた。
シンリズム
シンリズム Photo by Ray Otabe
ファーストアクトとして登場したシンリズムは、テレキャスターを軽やかにかき鳴らし、「彼女のカメラ」でライブをスタートさせた。ギター、ベース、キーボード、ドラム、トランペット&パーカッションというバンド編成で、瑞々しくて豊潤なサウンドを届けると、軽く自己紹介。「みなさんに負けないように、良い演奏をして帰りたいと思います」と意気込みを話す。そして、ライブ当日が11月11日ということで、「ポッキーの日ではありますけど、実はベースの日でもありまして……」(11月11日=縦線4本=ベースの弦が4本という理由で)と、続く「ラジオネームが読まれたら」は、ベースを弾きながらサラリと歌いあげていた。
シンリズム Photo by Ray Otabe
10代にしてその洗練された音楽性から「天才ポップマエストロ」という異名を持つ彼。どことなくクールで知的な佇まいではあるが、アコースティックギターを手に取った「心理の森」のアウトロで、サポートメンバー達と顔を合わせながら音を重ねている姿は、年齢など関係なく、ひとりの音楽家として、とにかく音楽をしているのが楽しいという興奮が、はっきりとした熱を持って伝わってきた。そして、「バーン!って終わって帰る感じの雰囲気ですけど、もう1曲!」と、ラストは「Music Life」。最後の瞬間まで、フレッシュで心地よいポップミュージックを届けてくれた。
シンリズム Photo by Ray Otabe
パノラマパナマタウン
パノラマパナマタウン Photo by Ray Otabe
強烈なフィードバックノイズで幕をあけたのは、パノラマパナマタウン。「Gaffe」のガレージーでずっしりとした爆音を轟かせると、そこからヒップホップ色の濃い「パノラマパナマタウンのテーマ」、「よっしゃいくぜ!」とギアをあげて「ロールプレイング」へなだれ込み、前のめりで激しく転がっていく。「俺らは“このバンドはこうだ”っていう決めつけとか、ジャンル分けとかが嫌いで。こういうごった煮みたいなイベント、めちゃくちゃ大好きです」と、この日のライブについて岩渕想太がMCで話していたが、様々な音楽を取り込んだ「ごった煮感」があるのが、彼らのサウンドの特徴でもあるだろう。
パノラマパナマタウン Photo by Ray Otabe
そして、ときにヒステリックなまでに泣き叫ぶギターをかき鳴らし、豪快なグルーヴで力強く巻き込んでいきながら、そこへ言葉数多めにラップをぶちかましていくところは、かなりのストロングスタイルだ。そんなサウンドだけでなく、「世界最後になる歌は」では、ギターを置き、ハンドマイクに切り替えた岩渕がステージからフロアに降り、オーディエンスの中に入って言葉を叩きつける。そして、フロアの柵に座り、「そのアーティストがどういう音楽やってるかとか、何にも関係ないです。こんな感じでみんな一緒に楽しめるし、そんな壁、全然ないと思ってます」と宣言。求心力のあるパフォーマンスでも客席を魅了していた。
パノラマパナマタウン Photo by Ray Otabe
PELICAN FANCLUB
PELICAN FANCLUB Photo by Ray Otabe
続いて登場したのは、PELICAN FANCLUB。「クラヴィコードを弾く婦人」で、甘美かつ透明感のあるバンドアンサンブルを高鳴らし、間髪入れずに「Dali」へ。USインディーや、ドリームポップを彷彿とさせるサウンドが特徴的な彼らだが、まさにそんな陶酔感がフロアをゆっくりと飲み込んでいく。また、リズム隊が放つグルーヴがかなり躍動的なこともあり、凄まじい高揚感もそこに付加され、実に幻想的な空間を生み出していた。
PELICAN FANCLUB Photo by Ray Otabe
そして、「いい感じ!」というエンドウアンリの一声の後、突如、凶悪なまでにヘヴィなギターにスイッチし、「説明」になだれ込む。世の中に感じる憤りを綴った言葉達を、韻を踏みながら畳みかけ、何度も激しい叫び声をあげていたエンドウは、「ここを花柄にしたい!」とオーディエンスに手をあげてもらい、「音楽にすべてぶつけよう」と、<平日が続く/ヘイトが溜まる/平気なフリなんてしなくていい>と、即興で言葉を紡いでいく場面もあった。MCでは、「ぼくりりくんが楽屋にきて、一緒に人狼をしていた」というエピソードを交えながら、68年振りのスーパームーンに興奮しているということで、「“月”の新曲をやります」と、未発表曲を披露。アップテンポでありながら、それでいてどこかメランコリックな雰囲気が漂っていたところに、彼ららしさが溢れていた。
PELICAN FANCLUB Photo by Ray Otabe
ぼくのりりっくのぼうよみ
ぼくのりりっくのぼうよみ Photo by Ray Otabe
この日のトリを務めたのは、ぼくのりりっくのぼうよみ。サポートメンバーにDJとキーボードを迎えた彼は、幻想的な「Venus」が流れる中、ステージに姿を現わし、「お前ら全員バカばっか」と歌い始めたのは「Black Bird」。優麗に奏でられる鍵盤の上で、メロディアスなラップを届けていく。そこから「Newspeak」「sub/objective」と、退廃的でありながらも、叙情性のある美しい曲達を繋いでいった。世の中に漂っている空虚感や、生きているとなんとなく感じる息苦しさを描き出したリリックや、緩急/抑揚のあるフロウもさることながら、彼の少し憂いを帯びた歌声がとにかく心地よく、オーディエンスの身体を絶えず揺らし続けていく。
ぼくのりりっくのぼうよみ Photo by Ray Otabe
そんな魅力を見せつけつつ、MCでは、今日のライブを見ていて、全部違ったジャンルでおもしろかったと話しつつも、「オチのなさがすごい……ここからどういう方向で歌い始めればいいんだろ(笑)」と、かなり緩めな雰囲気。しかし、曲に入った途端、スイッチが入ったように表情が変わる。「CITI」では時折声を荒げたり、続く「A prisoner in the glasses」では高速ラップを交えたりと、軽快なリズムが心地よいトラックを畳みかけ、「Sunrise(re-build)」で本編を締め括った。また、この日初めてイベントでトリを務めたということもあり、人生初のアンコールを経験。そして、現在レコーディングが終了し、「超良いのができちゃった」と話す2ndアルバムの中から「Shadow」を初披露し、オーディエンスを喜ばせていた。
ぼくのりりっくのぼうよみ Photo by Ray Otabe
この日、出演したアーティスト達も話していたように、まったく異なった音楽性の4組が集まった『SPACE SHOWER NEW FORCE vol.2』。それぞれ別の道を歩んできた彼らが、この日、この場所で交わったことは、ここから彼らが大きく羽ばたいていく未来に、大きな意義を持つ一日になっただろう。
取材・文=山口哲生 撮影=Ray Otabe
シンリズム
1. 彼女のカメラ
2. ラジオネームが読まれたら
3. 春の虹
4. 心理の森
5. Music Life
1. Gaffe
2. パノラマパナマタウンのテーマ
3. ロールプレイング
4. シェルター
5. SHINKAICHI
6. MOMO
7. 世界最後になる歌は
1. クラヴィコードを弾く婦人
2. Dali
3. 説明
4. 新曲
5. 記憶について
1. Venus(SE)
2. Black Bird
3. Newspeak
4. sub/objective
5. CITI
6. A prisoner in the glasses
7. Sunrise(re-build)
[ENCORE]
8. Shadow