本格文學朗読演劇 極上文學シリーズ第11弾『人間椅子/魔術師』 足立英昭インタビュー

インタビュー
舞台
2016.11.17
足立英昭(撮影/大倉英揮)

足立英昭(撮影/大倉英揮)

ビジュアルと音楽、動きで魅せる人気シリーズ、本格文學朗読演劇「極上文學」の第11弾となる『人間椅子/魔術師』が、この冬、東京と大阪で上演される。これまで坂口安吾、芥川龍之介をはじめとする日本文學の有名作家たちの上質な世界観を、〈読み師〉と〈具現師〉〈奏で師〉という斬新なスタイルで立体的に表現、高い評価を得てきた。
 
今回原作となるのは、江戸川乱歩の書いた『人間椅子/魔術師』。「人間椅子」は椅子の中に入り込んだ男の話、「魔術師」は宝石商の一族の連続殺人事件の話、それぞれ乱歩らしい妄想とサスペンスに彩られた文学世界となっている。その「人間椅子」でヒロインの佳子夫人として〈読み師〉を務める足立英昭に、ビジュアル撮影現場でこの作品への抱負を語ってもらった。
 
 



予想が大きく覆され、読み終わって怖さが残る
 
──今回の「人間椅子」で、足立さんは女性役を演じるそうですね?
 
女流作家の佳子という役を演じます。女性役は初めてなのですが、この佳子という人がどういう人物で、物語にどう関わるのか、純粋に一読者として本を読んで、その気持ちをそのままお客さんに伝えられればなと思っています。
 
──佳子夫人はどういう人だと思いますか?
 
外交官の妻で、すごく美しく上品な人で、それでいて作家なので自分の執筆活動もしていますから、行動的な面もある人かなと。小説には佳子夫人の人となりが事細かに書かれてるわけではなかったのですが、これからも何度も読み返して、彼女のことを読み取っていきたいし、それと同時に、最初に読んだときに感じたイメージを大事にしながら演じられたらと思います。
 
──原作そのものについてはいかがでした?
 
本当に怖かったです。読み進めていくうちに、こうだろうなという予想はしていたんです、でも最後にそれが大きく覆される。覆された後にも、自分の中にまた疑念が湧いてきて、読み終わった後になっても怖さが残る作品になっていて、すごく面白かったです。
 
──このシリーズに出演することで、文学作品に触れる機会も多いでしょうね?
 
今年6月の極上文學『春琴抄』にも出させていただいたのですが、原作の『春琴抄』はじつは句読点がほとんどないんです。でも江戸川乱歩にはちゃんと句読点があるとか、文學作品は作家によって文章がすごく違っていることなどもわかって、面白いです。以前はミステリーや推理小説は苦手だったんですけど、こういう機会があると興味が湧いてきて、乱歩の作品ももっと読んでみたいと思いました。
 

 
朗読劇でもなく、普通の演劇でもないカテゴリー
 
──この『極上文學』とほかのお芝居と、ここが違うというところは?
 
最初は朗読劇というのはどういうものかわからなくて、緊張していたのですが、『春琴抄』で、皆さんが「朗読劇でもなく、普通の演劇でもない新しいカテゴリーだね」と話しているのを聞いて、なるほどと思いました。僕にとっても、本を読みながらお芝居をするということは斬新でしたし、色々な発見がありました。本を持って文字を追っていることで、セリフを言うときよりもさらに、噛んではいけないという心理が働いてしまって、最初は緊張しました。また、お芝居に入りすぎると〈読み師〉としては違ってきますから、そのニュアンスの違いを表現するのが難しかったですが、慣れていくとそれが楽しくもありました。
 
──芝居を作る上で共演者の方とのコミュニケーションなどありましたか?
 
僕は『春琴抄』では利太郎という役を演じたのですが、同じく利太郎を演じていた富田翔さんには、「僕はこうやっているんですけど、どうやってますか?」とか、いろいろ相談することが多かったです。
 
──ダブルキャストも稽古は一緒だったのですか?
 
それぞれ稽古時間は別だったのですが、僕が不安だったこともあって、ちょくちょく翔さんが稽古をしているときに見学に行っていたんです。
 
──熱心なのですね。この〈読み師〉という形ですが、言葉は覚えるものなのですか?
 
覚えてしまったらただの演劇になってしまうということで、覚えることはしませんでした。ただ、『春琴抄』の最後のシーンなどは、勢いがある場面ということもあって、無意識に覚えてしまいましたが。それ以外では、「読む」ことを大事にしていました。
 


あの人は女性ではないかと思ってもらえるように
 
――『人間椅子』の話に戻りますが、女性役へはどう挑もうと?
 
女性の衣装を着るのも初めてですから、まったくの新境地です。今日、初めて衣装を着てみたのですが、女性ってすごいなと思いました。ヒールを履いたんですけど、よくこれで女性は真っ直ぐに立っていられるなと(笑)。それにメイクをしたら気持ちも変わるんですね。演じるにあたっては、男の人が女性を演じていると思われないように、あの人は女性ではないかと思ってもらえるように演じたいです。『春琴抄』でも女性の役を男性が演じていて、それを見て興味を持って、女性の役をやってみたいと言っていたんです。でも僕は身長も高いので、まさか女性役ができるとは思ってなくて。ですから今回は演じられることがとても嬉しいです。
 
──役作りで、何か参考にしていることなどはありますか?
 
動画やDVDを観ます。立ち方や振る舞い方などを、少しでも身に付けたいなと思いながら観ています。
 
──今日、衣装を着けてみての撮影はいかがでしたか?
 
やはり着てみないとわからないことが多かったです。ポーズのことなども色々考えてきたんですが、実際の撮影になるとイメージ通りにはいかないものだなと。男性の骨格なので角度でうまく見せないといけなかったり、難しかったです。ビジュアルが公開に、皆さんがどう思われるか。その反応も楽しみです。
 

 
恐怖だったり妖しさを楽しんでください
 
──女性を演じてみたいと思ったことがきっかけで、今回女性役を演じることになったわけですが、これから演じてみたい役はありますか?
 
『春琴抄』の利太郎もそうですが、ほかの舞台でも主人公と敵対する悪い役が多かったので、逆に正義の味方もやってみたいですね。もちろん悪役も大好きですし、利太郎を演じるのも楽しくて仕方なかったです。悪い人間って感情をむき出しにするし、ある意味人間臭くて気持ちがわかるんです。
 
──今回演じる佳子夫人も、普通の女性ではない役柄ですね。
 
好奇心が旺盛な女性なので、怖い出来事があっても進んでいっちゃうんですよね。作家だということもあって、人一倍好奇心が強いのかもしれないですね。そんなところもうまく表現できたらと思っています。
 
──間もなく稽古も始まりますが、稽古場にはどのように臨みたいですか?
 
60%くらいのところまで考えて、それを演出家のキムラ(真)さんに見ていただいて、その上で一度30%くらいまで崩すことがあるかもしれないけど、残りの30%は保てるといいなと思います。そこから60%まで戻して、最終的にはみんなと一緒に100%に持っていけたらなと。やっぱりガチガチに決めていくよりも、柔軟にできる部分を残しておきたいので。
 
──最後に、この『人間椅子/魔術師』を楽しみにしている皆さんに一言お願いします。
 
江戸川乱歩の作品は、恐怖だったり妖しさがあって、これまでに出会った世界とはまた違う魅力を、僕自身感じています。それをお客さまに伝わるように演じたいと思っていますし、最後までハラハラドキドキしながら楽しんで見ていただければ嬉しいです。
 


あだちひであき○1993年生まれ。舞台『のぶニャがの野望』トライアル公演、『人猫「このニャかに人猫がいるニャ」』(2015年)で舞台初出演。以来、舞台を中心に活躍中。最近の出演作品は、聖地ポーカーズプレゼンツ『HOLD THEM』、舞台『大きな木の下で』~あの頃俺らの毎日はウザいくらいアツかった~、Am-bitioNプロデュース『ユースフル☆メソッド』、舞台『ラズベリーボーイ3 THE FINAL』~ハチャメチャ演劇部、ついにラスト!?~、本格文學朗読演劇 極上文學シリーズ第10弾『春琴抄』、舞台『覇権DO!!』 ~戦国高校天下布武~、舞台『大きな虹のあとで』~不動四兄弟~など。
 
【取材・文/西森路代 撮影/大倉英揮】
 

〈公演情報〉
 
 


全労済ホール/スペース・ゼロ提携公演 
本格文學朗読演劇 極上文學 第11弾 『人間椅子/魔術師』
原作◇江戸川乱歩
キービジュアル◇尚 月地
演出◇キムラ真(ナイスコンプレックス)
脚本◇神楽澤小虎(MAG.net)
出演◇
<読み師>足立英昭、石井マーク、伊勢大貴、小西成弥、長江崚行、松田洋治、松本寛也、水澤賢人、村田 充、ROLLY(50音順)
<具現師>赤眞秀輝(ナイスコンプレックス)、福島悠介、濱仲太(ナイスコンプレックス)、太田守信(エムキチビート)、萩原悠
<奏で師・音楽>橋本啓一
●11/30~12/4◎全労済ホール/スペース・ゼロ
●12/23~12/25◎近鉄アート館
〈お問い合わせ〉CLIE  03-6379-2051(平日11時~18時)




 

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