『ポッピンQ』特別インタビュー連載 「GO TO POP IN Q」vol.2金丸裕プロデューサーに聞く 「刹那を描くアニメーション制作が刹那的ではいけないと思う」
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©東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016
この連載から少しでも『ポッピンQ』という作品が見えれば……。 さあ、「POP IN Q」を始めよう。
SPICEアニメ/ゲーム編集長 加東岳史
金丸裕氏
――連載企画「GO TO POP IN Q」松井プロデューサーに引き続いては金丸プロデューサーです。
よろしくお願いします。
―今回の企画はそれぞれの方が業界に入られたキッカケ、なぜこのお仕事をしようと思ったのかというところからお話をお伺いしたいなと思っています。金丸さんはどういう経緯でこの世界に?
僕は単純に、アニメをやりたくなったのが高校なんです。実家が宮崎県の田舎なので親に相談してもわかんないんですよね。「アニメを仕事にするってなんですか?」というような。「大学に入れ」と。
――まあわからなかったらそれはありそうですね、アニメを仕事にするってイメージが湧きませんものね。
そうなんです、アニメーションの専門学校へ進学を希望したんですが叶わず、大学に進んだんです。だけどアニメを作りたい気持ちは消えなかった。それをどう実現しようか考えて、勝手に大学卒業前にアニメの専門学校受けて、入る準備をしちゃって。それで親に話を持っていったんです。大学を卒業したら専門学校に入ることを許してもらいました。
――改めて学校に入り直すってことですよね。
そうです。大学4年卒業して、それまで僕工学部でプログラミングとか、統計とか、ユーザーインターフェースとかを研究していました。全く畑のちがう専門学校では兎に角アニメを2年間勉強して東映アニメーションに入りました。でも入ったのもプロデューサーではなくて、演出助手で採用していただいたんです。ADで『フレッシュプリキュア!』の演出助手の勉強をして、そこから企画に移ったと言う感じですかね。
――アニメがやりたかったきっかけの作品とかは。
きっかけは完全に庵野秀明さんやその世代のアニメの世界の方々ですね。『トップをねらえ!』を見て、「こんな面白いものを作る人がいるんだな、世の中」って。僕もそういうモノを作ってみたいなという、自分の中で熱が湧いたんです。小中高ずーっとアニメは好きで見続けていたんですけど熱は冷めず……。
――僕もアニメにはまったきっかけがいくつかあるんですけれど、その中の一つが『オネアミスの翼』ですね。
あー、僕も好きです! でも正直オネアミスは公開当時は理解ができなかったんです。
――僕も大人になって、改めて見返して「すごい!」って。
そうなんですよね、当時少年の僕がいちばん感化されたのが『ふしぎの海のナディア』からの『トップをねらえ』でした。
――当時のガイナックスの作品群ですよね。
あの時代の作品を見て、「アニメは凄いな」って。超面白い!って。
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――アニメ制作は『フレッシュプリキュア!』から入られたということで良いんですか?
演出を志望して、色々勉強させて頂いていたんですけれども、映画を作る部署で今居る部署ができたんです。そこで若いやつがいないかと声をかけていただいて。映画にモチベーションがあったので移ったんです。
――じゃあ、作ったアニメの中で印象に残っているアニメって何でしょう。『ポッピンQ』は抜きましょうか。
企画に移って携わったのが『トリコ 3D 開幕!グルメアドベンチャー!!』と『ONE PIECE 3D 麦わらチェイス』という3D映画を2本同時にやらせて頂いたんですよね。それをアシスタントで担当したんですけど、それが個人的には凄く勉強になったというか、非常に面白かったですね。
―何か理由があるんですか?
理由は2つあって、1つはONE PIECEがフルCG表現の映画なんです。トリコは2D作画で描いたものを3Dに変換するっていう形式の映画で、どちらも3Dの作品を映画でやるっていうのが弊社は殆どなかったので、それを制作していた時、アニメーションの物作りって面白いなって思ったんですね、作り方も含めて。
――大変そうですよね、2Dを3Dに持っていくっていうのは。
そうですね、もう僕その3D変換のチェックで視力落ちましたからね……。毎日4時間ぐらいチェックするんですよ、「このシーンをもっとこうしてください」とか。3Dの視差をディレクションする方がいらっしゃって、拘りがすごいので。目が疲れて疲れて。
――それはそうですよね。
でもいい経験でしたね。映画が完成したら視力戻りました。
―そんな中で今はプロデューサーという立ち位置で『ポッピンQ』で初プロデュースということですが、今回はどんな思いを持ってこの作品に携わっているのか。
一般論ではなく個人論で、かつこの作品論になりますが、僕は“監督と向き合おう”というスタンスを决めてて。宮原監督も初監督作品で、僕も初プロデュース作品で。最初は松井さんと宮原監督と僕の3人で5年前に、オリジナルを作りたいねって始めた企画ですので、僕は宮原直樹の長編初監督に対して、ひたすら向き合うしか無いと思ってました。
――でも初プロデュース任されました、じゃあ長編初監督の宮原監督とやりましょう!そして、東映アニメーション60周年記念作品です! ってプレッシャー凄くないですか?
正直申し上げるとあんまりなくて。これは松井さんに「アニメーション制作において金丸のこだわりを徹底しろ」と言ってもらえたので、そこに関してはあまり気負いは無かったです。
©東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016
――なるほど、そんな『ポッピンQ』ですが、改めて金丸さんの口から『ポッピンQ』はどんな作品かと。
宮原監督にしか作れない卒業物語かな。人間は変化して成長していくと思うのですが、この映画では卒業という言葉がぴったりだなと思いました。
――僕の見た印象としては、本当に雑感になってしまうんですけど、東映アニメーションがずっとやってきたことを全部ちゃんと詰めてます!なんです。
結果的にそうなっちゃったんですよ(笑)。
――キャラクターデザインだったりとかダンスシーンがあるとかもちろんそうなんですけど、そういうのを全部ひっくるめてもこれは東映の作品だよね、って一発で分かるっていうか。
僕個人としては監督と向き合う中で逆を行こうとしたんです。僕は今回監督に何かをぶつけていこうを思ってたから、宮原さんに対して、「それじゃだめなんじゃないか?もっとこうなんじゃないか?」という意見をぶつけるのをずっとやってたんですよ、この5年間。
―それは例えばどういう感じで?
「こういうお父さんは居ませんよね?」とか、「この娘はこういうこと喋りませんよね?」とか「このキャラは国語好きそうですよね」とかっていうのを全部監督にぶつけ続けたんですよ、毎日毎日。監督は「いやでもこの子はこういう所あるよね」とか「ああ、それはそうかもしれないね」って言って一緒にディティールをずーっと作り続けていました、そうやって宮原監督が積み続けた結晶が『ポッピンQ』。この作品にとってコンプレックスになりそうな意見はプロデューサーとしては言い続けようと决めてましたね。
――でも、どこを切り取っても「東映アニメーション」。これは逆に凄いと思います。
宮原監督の答えだと僕は思いますね。監督が作ったものがそれだから。それはもう否定しようがないんです。
――この作品のテーマは「卒業」「思春期」「大人になる」この3つだと思っていて。
そうですね、あとは「出会い」かな。この世界に出会う、この子達に出会う、ポッピン族に出会う。
――まさに「POP IN」ですよね。
僕はこの出会うっていうことを大事にしました。スタッフ、キャスト、音響スタッフ、あらゆる人達に出会うっていう機会が今回プロデューサーとして初めてなので。
――僕は95分見ているなかで、最後に「良かったー」って心から思うシーンがあったんですよ。主人公たち五人が出会えて良かったと心から思えるシーンがあった。
出会えてよかったですよね、他の四人と、あの世界と。
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――凄い小さな仕草や存在の仕方が細かいんですよ、正に演出の妙だなと思ってて。正直見る前からこれは東映アニメーションの作品だ、という刷り込みが僕の中にはあったんです。その刷り込みを超えてくる細かい演出がすごい入ってるなと。
逆に言えばディティールが多いですよね。
――多いですね、この作品は。羽佐間道夫さん演じるおじいちゃんも良かったし。
ディティールの多さはわざとです。企画の段階でディティールを増やすことにしました。
――また個人的ですけど、宮原監督凄いなと思ったのは、今回の主人公たちはダンスを学んでいくんですよね。だから最初の方に上手く踊れないっていうシークエンスがあるんですが、その間違え方がやたらリアルなんですよね。描き方の「あるある、一人だけ音がずれていくこの感じ」っていうのが凄いんですよ。手の上がり方がちょっと違うとか。
アレは大変でした。監督凄いなって僕も思うんですけど、モーションキャプチャーのアクターさんが宮原監督とずっと一緒にやってきた人たちで、その人達は演じるっていうのはダンスを演じるだけじゃなくてキャラクターを演じるっていうアクターの方々なんです。アクターさんに監督が出したオーダーが、「下手にやってください」と。それは下手に踊れるっていう演技をヒロイン達を通してやらないといけないわけです。1つ1つ丁寧に。この子はこういう性格でこういうことだって説明して、撮って、さらにもっともっと駄目にしていく崩しをしてます。
――出来る人が出来ない演技をするのってめちゃくちゃ難しいじゃないですか。
逆説的に撮りました。完璧なものから崩していくって言う作業です。この子は運動はやってるけどリズム感はないとか、この子はリズム感はあるけど運動はできないとか。キャラクターで下手にっていうところに最後行き着いた。それが出来たから本編ができたかなって。
――演出として凄いですよね。正にキャラクターのディティールだなと。
難しいことをあまり難しく見せないように見せてるのが凄いです。
―そんな難しさを超えて完成したわけですが、映像ができて、声が入って、編集も終わって、初プロデュース作品の完成品を見たときはどうでした?
僕は0号試写で、スタッフの皆さんと同じ席で一緒に観るって言うことができなかった。席を外しましたね。脇で一人で立って見る以外できなかったです。
――それは何か自分の中であったわけですか?
なんだろうなあ、初めてメインスタッフみんなで一緒に確認をする本編全部を確認する場だったのにもかかわらず、出来たものに対して自分で理解できないっていうところに行っちゃって。なんか複雑な感情になって立ち上がっちゃいましたね。
――自分の中で湧き上がる思いがあったんでしょうか?
グッとは来なかったんだよなあ、なんだろう。それよりも公開日まであと3ヶ月っていう方向の意識のほうが強かったですね。一緒にできたことを分かち合うっていうよりは、さあ大変だっていう。
――どう見てもらうかっていうところですね。
見て「さあ大変だ」と思いました。どうお客さんに届ければ良いんだろうって。
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――松井さんもおっしゃってましたが、こう「観てもらうまでは伝わりにくい作品な気がする」な気がしています。ここで改めて今作のテーマのお話をお伺いできれば。
プロデュース的には「卒業」って言葉を置き換えて出会うってことなんですけど。卒業と出会いは一緒だと思っているので。
――劇中でもそういうセリフありましたもんね。
なにかを抜け出したとき、もしくは自分のハードルを何か1つ超えたとき、新しいものに出会えるというか、新しい価値に出会えるっていうところが、この映画で僕が一番感じて貰いたい要素かなとは思いますね。
――突っ込んだ話もさせてください。『ポッピンQ』は所謂“東映アニメ”感があって、ファンタジーでダンスがあってアクションが盛りだくさんの作品だと見られがちだと思うんですけど、でも凄くディティールだったり、語られてないところに監督、制作陣の思いがメチャメチャ詰められてて、これは逆に見る側が試されてるなと思ったんですよ。
あはははは、そうかもしれない(笑)。
――言い方悪いんですけど、時間が余ったからちょっとアニメでも見ようかってコーラとポップコーン持って適当に95分過ごしたら、伝わらない気がしたんですよね。
伝わらないかなぁ(汗)。
――僕の中では純文学なんですよこれ。アニメと言うか、思想が純文学だと思ってて。ペラっと読んだら「ふーん」で終わっちゃうというか。
凄い所来ましたね(笑)。 ポッピンQは自信をもって子供から大人まで楽しんで頂けると思います。ですが僕が担当させてもらった作品という意味では、個人的にアニメファンに対するメッセージも強いです。それこそ今アニメ好きで、アニメ楽しいと思う人。僕の世代で今見ていなくても、当時アニメを好きでいた人に対する問いかけみたいなものを結構詰め込んであるというか。
――それは言葉にするとどうだとかいえますか?
おー、難しいな……『苺ましまろ』みたいに「可愛いは正義」みたいなことが言えたら良いんだけど(笑)。 難しいんですけど、「終わらない」って言うことですかね、「アニメーションは終わらない」。
――その言葉良いですね……。ホントにパッと見ると子供向けなんですよこれ、でもなんか細かいディティールが後からグイグイ来るというか。帰りの電車の中でチクチク来るというか……。 それがなんだろうと思ってて、今日まで正直消化しきれなくて。
僕の中でアニメファンである加東さんがチクチク来てくれたのだとしたら、それは「アニメーションは終わらない」っていうメッセージが刺さったのかなって思いました。
――アニメは終わらないモノ、というか。
モノじゃないんですよ、何ていうんですかね……人間の感覚の中で終わらないコンテンツと言うか。
――ああ、わかる。僕も本当に好きな作品て何本かあるんですけど、終わんないですね。
終わんないですね、なんか残っちゃう。ファンの中では終わってない。生き続けると言うか、残り続けるというか、その時間は繋がり続けているんですよ。
――その可能性はすごく感じましたね。
うん、だからアニメ―ションは終わらないよね、っていうのが問いかけですかね。
――僕こう見えて今日すごく緊張しているんですよ、これちゃんと伝えないとサラッとした東映アニメの作品だよね、っていうところで終わっちゃうと思って。
僕も色んな方の試写の感想をいただいて、難しいなぁと。 説明をしない限りは深くは見えないような気もしてて、だから終わらないと思うのかもしれない。
©東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016
――変な話ですけど、『君の名は。』って言うビッグタイトルがって出ちゃったじゃないですか、今年のアニメ業界はあの作品の存在って避けて通れないじゃないですか、金丸さんにとってはどうですか? 『ポッピンQ』を作った、控えてるって言う情況で、あれだけ跳ねた日本のアニメがあって。それに『シン・ゴジラ』も特撮ですが、正に憧れの庵野秀明との対決じゃないですか。
興行的に12月23日公開を決められた身としてはですね、今年の波を宣伝的に活かしたいいうことはありながら、作品を監督と一緒に作った身としてはやっぱり最後に違う感覚に触れて欲しいなって思います。映画を見てコレとコレが見れてよかった。っていう感覚よりは「あ、これはまた変なものが出てきたな」「これはまた面白い映画が出てきたな」っていう感覚にしてもらえるように見てほしいとは思います。
――アレの作品と比べてどう、っというよりは『ポッピンQ』って何かこうだよね、みたいな。
『ポッピンQ』ってあのキャラって、この話って、宮原監督って……って言う風にお客さんに感じてほしいと思いましたね。
――なんか思春期の棘みたいな作品ですよね。僕らもぶっちゃけオタクだったりするわけじゃないですか。アニメ好きだし。でも30過ぎても、当時から刺さり続けているものってあるじゃないですか。
あるある、未だに何でも言えるから。『ふしぎの海のナディア』とか『カードキャプターさくら』の話なんて(笑)。
――当時の自分に対して後悔もあるし、あれでよかったというのもあるし。でも、『ポッピンQ』は自分を投影するというよりは、「あの時自分はどうだったかな」と立ち返る感じでしたね。
やっぱりアニメファン、もしくはこれを見ていただいた大勢のファン、子供たちもそうですがこの作品で、新しい自分に出会ってもらえる作品になればいいなと。
――こんなに禅問答のように自分と向き合う作品だと思ってなかったんですよ。「東映の娯楽アニメ、ダンスもあるよ!」という雰囲気で見に行くと怪我する(笑)。
そういった意味ではポッピン族ってキャラクターが今の日本のアニメーションの作品の中では特殊だなとは思いますね。ポッピン族って存在っていうのはある意味写し鏡じゃないですか。
――それが見ないとわからない。
見ないとわからないんですよ。説明できない。
――でも何かしら確実に棘が刺さる作品にはなった気がするんですよね。最初から結構覚悟決めてみたからかもしれませんけど(笑)。
僕はそれは意識しています。意識したというよりは作り方の途上でそうなりました。これは奇跡的な出会いですね。黒星紅白先生にキャラクターを作っていただいて、浦上さんを始めとする作画の方々が素晴らしいリアリズムを持ってアニメーションを作ってくれたから出来たことですね。
――めちゃくちゃファンタジーな世界だけど、細かい仕草だったりやたらリアリティがあるというか。
人っぽいんですよね。人間がそこに立っている地続き感。
――色々お話をお伺いしていて、本当にアニメが好きな人が、松井さんで言うなら映画好きな人が「俺は映画を作る人になる」って言う確固たる自信じゃないですけど、当たり前のように、息を吸って吐くように映画を作るところに来ている人がいて、金丸さんもめちゃくちゃアニメが好きで、「俺はアニメを作るんだ」ってその道に真っすぐ進んでいる人が居て作られたものだから、なんか可愛いアニメの皮をかぶった恐ろしいドロドロとした濃い作品のような気がしますね。
ありがたいですね、なんか伝わった気がする(笑)。
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――今後、『ポッピンQ』を一回忘れるとしたら、どういう作品を作っていきたいとかありますか?
抽象的だけど、瞬間を生きているキャラクターを、より深掘りしていける作品を作ってみたいなとおもいますね。即時性じゃないですけど、もっともっと刹那的にしたいなと思いました。
――永遠というよりは刹那。
そっちにしたいなと思いましたね。
――何か理由はあるんですか?
アニメだから。実写だと無理だと思っているからかな。
――なんか分かる。アニメーションって刹那の切り取りですからね。
それをもっと深掘りしていきたいなと思いました。今回やってみて特にそうですけど。
――なるほど、例えば『風の谷のナウシカ』とかだと文明世界は崩壊しているじゃないですか、あの瞬間しか無いんですよあの世界って。でも永遠に僕たちはあの世界を焼き付けている。
僕と加東さんは世代近いから『エヴァンゲリオン』とか『ラーゼフォン』とか『機動戦艦ナデシコ』とか、あのへんのアニメ作品にやられてるんですよね。この世代って精神的に一人で居ることが多いんじゃないかと思ってて、だからこそ刹那的な表現とかキャラクターの面白い部分ていうのをアニメーションで出来るような作品を作ってみたいなと思います。
――アニメーション現場の最前線って言っていいかわからないですけど、ど真ん中に居るわけじゃないですか、2016年現在、アニメーション業界を取り巻く環境とか情況とかで思われてることってあります?
そうですね、少数で物を作れる環境が必要なんだなって思いました。
――作品が50本超えというタイトな情況で、アニメ作られている、しかも劇場版も作られているという情況で、業界をどう見ているのかなとかだったり、アニメファン、ユーザーを含めたアニメーション現場って言うモノに対して、プロデューサー目線でどう見てるのかお聞きしたかったんですよ。
所帯を大きくって言うよりは、小さいチームからスタートするっていう環境、制作環境っていうのが本当に必要になるなって思います。時間もコストも掛かるだろうけど、そうしないと継続できないんですよね、前の作ったものを、ノウハウとか技術っていうの。それこそアニメ作りが刹那になったら終わりなので。
――それはいい言葉ですね。刹那のアニメを作るのに刹那になってはいけないって。
アニメ作りはその瞬間を作るためにこういう準備をしてこういう時間をかけて、最後お客さまに届けるまでやらないといけないから。なんかそこをやれる環境論が今後大事になるなって思ってます。
――刹那的なものを作るためには、環境が刹那的ではいけないっていうのが凄くわかります。
作り続けたいし、そうじゃなきゃいけないですからね。
――では最後に皆さんへの共通質問ですが、今回「思春期」もテーマということで、思春期の頃の自分に今出会えたとしたら、どういう声をかけますか?
えー?どうなんでしょうね。凄いつまんない一言で言うと、「悪くないな」。僕は子供の時、大人に対しての偏屈な考え方を持っていたところがあって。あと田舎だったので、未来がないなと思ってたんです。何かを作りたいとは思っていたんです、でもあまり希望がなかった、作れる環境に行けるかわからないし、どうやったらそれが出来るかわからなかったから。でも今、悪くはないぞ、と。
――なんか良いですね。未来が見えない自分に対して「悪くないよ」って言える人が作った思春期のアニメですからね。
怖いなー、そういう風に言われると(笑)。
――今聞いてて、僕もこの作品に対して「悪く無いじゃん」っていえるというか、まさにそういう作品な気がしますね。
また監督が宮原直樹でよかったなと思います。監督やスタッフの皆さんとの出会いに感謝ですね。
元々は金丸さんとの出会いがこの企画のスタートでした。「普通にアニメを紹介するインタビューじゃないものをやりたいんです」。 そう言ってくれた金丸さんが作り上げた『ポッピンQ』がどんな作品になるか僕はずっと楽しみにしていました。そして完成したものを見て、「ああ、アニメが好きな人が作ったものだな」と実感しました。印象的だったのは「宮原監督を信じた」という言葉。そこまでこの人に作らせたいという物があるのが監督という職業。それを委ねられるのがプロデューサーという職業なのでしょう。 次回インタビューはその委ねられた人。監督の宮原直樹さんです、お楽しみに。
インタビュー・文・撮影=加東岳史
©東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016
2016年12月23日(金・祝)より全国ロードショー
監督:宮原 直樹
キャラクター原案:黒星 紅白
企画・プロデュース:松井俊之/プロデューサー:金丸裕/原作:東堂 いづみ
脚本:荒井 修子/キャラクターデザイン・総作画監督:浦上 貴之
CGディレクター:中沢大樹/色彩設計:永井留美子/美術設定:坂本 信人/美術監督:大西 穣/撮影監督:中村俊介/編集:瀧田隆一
音楽:水谷 広実( Team-MAX )、片山 修志( Team-MAX )
主題歌:「FANTASY」 Questy(avex trax)
アニメーション制作:東映アニメーション
配給:東映
製作: 「ポッピンQ」Partners
【キャスト】
瀬戸麻沙美、井澤詩織、種﨑敦美、小澤亜李、黒沢ともよ
田上真里奈、石原夏織、本渡 楓、M・A・O、新井里美
石塚運昇、山崎エリイ、田所あずさ、戸田めぐみ
内山昴輝、羽佐間道夫、小野大輔、島崎和歌子