J×minus(-) 対バンで見た互いへの敬愛と強い絆
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J
J 2016 LIVE “10 Days of GLORY -10 Counts for Destruction-”
2016.11.19(SAT)恵比寿LIQUIDROOM
構築と衝動、理性と野生、月と太陽、すなわち“陰”と“陽”。毎回異なるゲストを迎え、全10本にわたり行なわれるJ主催のツーマン企画『J 2016 LIVE “10 Days of GLORY -10 Counts for Destruction-”』の第8夜が11月19日、恵比寿LIQUIDROOMで開催された。そこで繰り広げられたのは真逆の性質を持つ2アーティストの共演だからこその個性際立つパフォーマンスと、故に生まれる奥深い熱狂、そして彼らの間に結ばれた強い絆だった。
minus(-)
最初に現れたのはJと四半世紀の交流を持ち、この日ゲストとして招かれたminus(-)。今回のライブ参加が発表された直後、メンバーの森岡賢が急逝するという悲報がもたらされたが、残った藤井麻輝の強い意志により叶ったステージの幕が開くと、まずはミステリアスなノイズと胎動のような重低音がフロアを包む。そこに美麗な鍵盤音が重なりツインドラムがスパークして、藤井がマイクに囁く「The Victim」で始まったパフォーマンスは、いわゆる“ライブ”の既成概念をブチ壊す、実に斬新で創造性に富んだものだった。まず驚かされたのが、ラップトップPCとシンセサイザーを備えた司令塔に立つ藤井を中心に、舞台前方の左右に2つのドラムセットが鎮座するステージ構成。向かって左側に山口美代子(DETOITSEVEN、BimBamBoom)、右側にYuumi(FLiP)と二人の女性ドラマーがサポートを務めるのだが、黙々とダンスビートを刻む山口にそれを豪快なドラミングで彩るYuumiと、客席間近で繰り広げられる鮮やかなプレイに目も耳も魅せられてしまう。加えて熱を増してゆくドラミングと、舞台後方の一段上から仁王立ちで機器を操る藤井という静と動の対比も見事。トドメとばかり瞬く煌びやかなライトに五感への鮮烈な刺激を与えられて、心も身体も躍るばかりだ。
minus(-)
そこから妖艶でエキゾチックなムードが溢れ出す「No_4」、目を焼く光とノイズが競演する「RZM」と矢継ぎ早に繰り出されるが、タイトなビートに乗る藤井のボーカルには強力なエフェクトが掛けられて、その響きは宇宙からのテレパシーや天の啓示を思わせるほどに神秘的。続く「Maze」では森岡のボーカル音源に自らの声を重ね、時折彼の声に耳を傾ける様が時空を超えての会話を思わせて胸に迫る。その後ろに流れる憂いを帯びた旋律と爆発的なドラムが絡み合い、カオスの美を炸裂させて「LIVE」へと雪崩れ込めば、タイトルが示す通り身体を芯から突き上げるアグレッシヴなサウンドにフロアは熱狂。最初は戸惑い気味だった初見のオーディエンスも、イントロから手拍子を贈り、頭上で左右に大きく腕を振る、その変貌ぶりが凄まじい。さらに「Descent into madness」でも湧き起こった大音量のクラップは、ステージから放たれる強烈なダンスビートと一体化して狂乱の熱を頂点へと押し上げたその瞬間、なんと藤井が段を下りて前方へ! 生前は森岡がボーカルをとっていたナンバーで、これまで常に静謐を保ってきた藤井がマイクスタンドで歌うという従来ならあり得なかった光景に、フロアが天井知らずでヒートアップするのも無理はない。驚くべきことに「No Pretending」からは自らハンドマイクを握り、その歪んだ歌声で客席を沸騰させ、「Dawn words falling」では光それ自体が歌うかのように明滅するライトの下、人々が大きく両腕を振ってエモーションを爆発させる。そこに生まれるエネルギーは恐ろしく開放的で、力強い“生”の息吹を確かに感じさせた。
「ありがとう。じゃあ、最後なんで、歌のゲストを呼びます。J!」
minus(-) × J
ここで藤井に呼び込まれたJは彼と固い握手を交わし、「盛り上がっていくぜ!」とベースを奏でながら歌い始めたのは、昨年リリースされたミニアルバム『G』でJ自身がボーカルを務めた「Peepshow」。誰もが持ち望んでいたコラボレーションに大きくうねり、高らかに鳴るシンセ音に腕を掲げるオーディエンスをJも「イケるか!?」と煽り立て、そうしてセクシーな低音ボイスを聴かせる彼の姿を、藤井が一観客のように見やる場面も。特異なステージングで人々を魅惑し、唯一無二のminus(-)ワールドに惹き込んだあげく、最高の贈り物で締めくくられたライブには、悲しみを超えた未来へのヴィジョンが確かに灯っていた。
J
後攻となったJのステージでは、ベース音が鳴らされただけで猛烈な手拍子が湧き上がるフロアに、「OK、トバしていこうぜ!」と「go crazy」が投下されるや、早くもダイバーが発生。鍛え抜かれた分厚いプレイに拳をあげて飛び跳ねるファンとバンドとの一体感、それを叶える互いへの信頼と新しい朝を告げるリリックに心が奮い立ち、得も言われぬ高揚感で胸がいっぱいになる。しかし、その熱量高いパフォーマンスもminus(-)のライブを目の当たりにしたことと無関係ではないらしい。「なんだ、アレ!? ヤバすぎねーか? 凄いもの見ちゃったな!」とJも興奮を隠さず、「楽屋で観てて、俺も我慢しきれなくなって出てきちゃったんだけど、どうだった? ブチ上がっていこうぜ!」とソロ始動時からお馴染みの「PYROMANIA」でフロアに着火。一斉にライターの火を翳したオーディエンスの大合唱に、「スゲーな、おい! 今日はみんなの声が届きにくい会場なのに、すげー届くんだよ。アッチにも届かせようぜ!」と声を張り上げる。その“アッチ”が何処を指し、誰のいる場所なのかは言うまでもない。
J
続いて最新アルバム『eternal flames』から3曲が披露されて、1997年から2015年へと一気に時間を進めるが、楽曲に溢れる彼特有の瑞々しさは少しも変わらない。明朗でポジティヴな響きに合唱が湧く「Verity」に、温かみのあるミドルテンポに差し込まれる“時は止まりはしない”というリリックが胸を締めつける「I know」。確信を持って鳴らされる音とドリーミングな歌詞で拍手を呼ぶ「Immortal galaxy」と、彼の音楽はサウンドのみならずメッセージ性の強さをもってこそ、人々の熱い支持を獲得しているのだと再確認させてくれる。
「ここから見える景色は素晴らしいです。みんなの熱が充満してます。大好きな会場で大好きなバンドと一緒にやれて、本当に幸せです。トコトンいこう。トコトン盛り上がっていこうぜ!」
感慨深げなMCからの後半戦、「Twisted dreams」ではJがモニターに乗っかって語りかけるように歌い上げながらも、「恵比寿! やっちまえ!」の声に再びダイバーが転がってゆく。さらに“オイ! オイ!”と拳があがる「RECKLESS」、興奮の度合いを高める客席に「止まらない! 止めるな!」と切迫感をもって号令する「break」と、Jが呼びかけ、オーディエンスが応える相乗効果の爽快なことといったら! これこそ自分の感情を偽らず、衝動を素直に形にするという変わらぬスタンスを、約20年ものあいだ貫いてきた賜物であるに違いない。
「最高の夜をどうもありがとう。最後に一発ブチかますぜ!」
本編ラストの「Go Charge」では、高速で駆け抜けるビートに人でギチギチのフロアが揺れて、曲が終わってからはアンコールを求める“J!”コールで会場がいっぱいに。そこで再び登場すると、森岡の訃報について「ショックで残念なことだったけど」と前置きをして、こう告げた。
「とても悲しいこと、とても辛いことだけど、それで済ませちゃいけない。彼が作った音楽に触れて、ドキドキしたり最高な想いをしたわけだから、それを膨らませていくのが僕たちの使命だと思います。minus(-)には、これからも熱い音を作り続けていってほしいし、みんなも前に進んでいきましょう」
そしてJいわく「すごく優しい」という森岡が、ある日楽屋に現れるや「Jくん、SUGIZOと仲悪いの?」とブッ込んできて「そんなことないっすよ!」と返したという秘話に、場内は大爆笑。「唯一ですよ! そんなこと言ってきたの。みんな腫れ物に触るようだったのに、森岡さんだからって得してる!」と、誰からも愛された彼の人となりを示す思い出話は共にシーンを創り上げ、94年にはLUNA SEAとSOFT BALLETとして対バンツアー『LSB』で全国も回った彼らの間柄だからこそ。「その一言を言われたときは、いきなりフックが入った感じで(笑)。でも、森岡さんだから……ホント最高です!」の言葉に、思わずフロアも泣き笑いになってしまう。
さらに、今夜は10公演中の8夜目ということで、これまで発表してきた10枚のオリジナルアルバムから、8作目の『ON FIRE』についても想いを語ってくれた。
「音楽ってやっていると完成に向かっていくような感覚があって……でも、自分はそこを求めているんだろうか?と。やっぱり自分自身が燃え上がるような一瞬一瞬の音の響きを表したい。そんな思いでアルバムタイトルも考えていて、ちょうどスタジオで写真を撮っていたときにも、突然、照明が燃え始めたんだよ! これはまさに俺ら『ON FIRE』だと、燃え上がるようなクレイジーなテンションで作ったアルバムです。その中から1曲」
そうして贈られた「here we go」の切り裂くような鋭い音は、まさしく瞬間の衝動そのもの。「最後の曲に全てを込めます。お前たちの胸の炎、俺に見せてくれ!」と放たれた「Feel Your Blaze」では自分自身の心を、本能を、つまり一番大事なものを忘れるなというメッセージが力強く打ち鳴らされて、フロアには賛同の拳と大合唱とダイブが吹き荒れる。それは見る者の胸を熱くする素晴らしく感動的な光景だった。
演奏を終えると今日のライブに関わった人々への感謝を述べ、最後には「森岡さん、どうもありがとうございました!」とも。「次、会うときまで約束だぜ。次、会うときまで、何があっても、くたばんなよ!」というお馴染みの挨拶の、一言一言を噛み締めるような口調に、いつもより強い想いと願いが籠もっていたように感じたのは筆者だけではないだろう。
積み重ねてきた知識と経験を駆使して緻密に音を構築していくminus(-)と、どれだけキャリアを重ねても失われることのない衝動で、太陽のように眩しく周りを照らすJ。まさしく、それは陰と陽になぞらえられるほど対照的なものだが、“陰極まれば陽に転じ、陽極まれば陰に転ず”という古代中国の教えに沿えば、その行き着く本質は同じ。どんな光も闇を抱え、どんな闇にも一筋の光は差す。揺るぎなく己の信念を貫く彼らの歩みは、これからも共に止まることはないはずだ。
取材・文=清水素子
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J 2016 LIVE <10 days of glory -10 counts for destruction->ファイナル
放火魔大暴年会
2016年12月30日(金) 東京・渋谷TSUTAYA O-EAST
17:00 / 18:00
Special Guest:DOOM / RADIOTS
10 Days of GLORY特設サイト:http://www.j-wumf.com/10days-of-glory/
Jソロデビュー20周年を記念した、全国ツアー来春開催決定!
2017年5月5日(金・祝) 大阪 BIGCAT 16:30 / 17:30
2017年5月13日(土) 高崎 club FLEEZ 17:30 / 18:00
2017年5月14日(日) 柏 PALOOZA 16:30 / 17:00
2017年5月21日(日) 札幌 cube garden 16:30 / 17:00
2017年6月3日(土) 高松 DIME 17:30 / 18:00
2017年6月4日(日) 岡山 IMAGE 16:00 / 16:30
2017年6月10日(土) 金沢 AZ 17:30 / 18:00
2017年6月11日(日) 名古屋 CLUB QUATTRO 16:15 / 17:00
2017年6月17日(土) 福岡 DRUM Be-1 17:30 / 18:00
2017年6月18日(日) 広島 CAVE-BE 16:00 / 16:30
2017年6月24日(土) 仙台 Rensa 15:15 / 16:00
2017年6月25日(日) 東京 EX THEATER ROPPONGI[FINAL] 16:00 / 17:00
Jオフィシャルファンクラブ「F.C.Pyro.」にて
【受付】12月13日(火)23:59まで:http://www.fancube.jp/fcpyro/
F.C.Pyro.NIGHT vo.14
2017年5月4日(木・祝) 大阪 umeda AKASO 17:30 / 18:00
2017年5月7日(日) 東京 恵比寿LIQUIDROOM 16:00 / 17:00
※ファンクラブ会員限定公演のため、
2016年12月24日(土) OPEN 14:30 / START 16:00